※少し本文を訂正しました。
インフィニット・ストラトス、通称ISと呼ばれる『兵器』の性能に全世界が揺れた。そんな中、一夏は自分のマネージャーである巻紙礼子と打ち合わせをしていた。
「つーことで、明日から刑事ドラマの子役すっから、台本の中身覚えておくのと、当日スタッフや他のキャストにちゃんと愛想よくしとけよ」
「その口調でよくもそんなこと言えますね。初対面の時のあなたはどこ行ったんですか?」
「るっせー」
この巻紙礼子、とんでもなく素の口調が悪い。初日で一夏をスカウトに来た品行方正なあの姿が嘘のようである。
「所で、お前ISってどう思う?」
「どうって?」
「感想だよ。なんかアンだろ。女尊男婢とかで仕事なくなるぅーとかよー」
ニタニタと笑いながら聞いてくるマネージャー。一夏は一瞬、こいつ本当に俺のマネージャーか?と思ったが顔に出さず口を開けた。
「そんな大して変わんないと思うけどな……だってISって兵器なんだろ?だったら扱う人間にもそれ相応のモラルなり何なり求められるんじゃない?人格破綻者にミサイルのスイッチ持たせられないでしょ?」
一夏の答えにうわード真面目に答えやがったよと言いながらアイスコーヒーを飲む礼子。
実際、ISが発表されたが一夏の生活に劇的な変化が訪れた訳じゃない。CMの収録や、雑誌の一ページを飾るために写真を撮ったり、バックダンサーとしてダンスをしたり、ドラマで公園で遊んでいる子供モブAの役をしたりとそんなものである。そもそもISとタレントじゃ畑違いすぎて接点が見当たらない。
変わったといえば、多少なりとはいえ有名人になったからか学校での兄一派による苛めがなくなったことと、ISの発表で姉である千冬の帰りが更に遅くなったことだろうか。
(まぁ、
因みにISの開発者こと天災篠ノ之束氏は、一夏の出ている雑誌や映像の永久保存作業に勤しんでいるらしい。
「それにこのご時世、戦争したがる先進国なんてのもいないですしね、国防かその内、絶対防御を生かした危険区における救助活動や宇宙のような未踏空域での探索と資源採掘に使った方が建設的です」
「……前々から思ってたんだが、お前ほんとに小一のガキか?」
「やだなー、今も現役バリバリの小学一年生の子供ですよ。現にこうやって炭酸入りオレンジジュース飲んでいるんですし」
いや、ガキかどうかの基準にオレンジジュースはないからな?礼子は内心ツッコミを入れながら、一夏を送迎するために車を取りに行くと一言いってからこの場をあとにした。
礼子が去ったあと、一夏はこれからの事を考えていた。
(先ずは、ここで干されない様に頑張らなくちゃな。でなきゃ、独立出来ない。ちー姉の収入がどれくらいかはわからないけど、一般的なアルバイトの収入じゃたかが知れている。このままこの状態を維持できれば義務教育が終われば自立出来る。そうすれば、ちー姉の負担はかなり減るはず……)
だが、数ヵ月後、彼はこの芸能界の真の地獄に直面することになる。
それは彼が新しいヒーロー戦隊の番組で主人公の少年時代の少年役という子役ならではの役を貰った時のことだ。子供かと疑われてしまう一夏も子供らしい感性を確かに持っている。だから、オーディションでの合格通知が来たときは笑顔を浮かべて喜んでいた……
(そのときの自分をぶん殴りてぇ)
「何を呆けておる!戯けが!」
この主人公、幼少期から特殊な格闘技を身に付けており、丁度一夏の時くらいには、奥義を含め免許皆伝を得ているという反則的な才能を持っており、悪の秘密結社相手にもそれを戦闘の基本としている……
(だからって、リアルにそんなスペック求めるなぁぁぁぁ!!)
「もう一度よく見よ!!こうだ!奥義!超○覇王電影弾!!そしてこれが最終奥義!石破○驚拳!口でいってもわからんかぁぁぁ!!ならば身体で覚えええい!!」
(普通にビーム出してるけどアレCGじゃないんだよな……)
訳がわからなかった。今目の前に起きている現象所か、架空の武術を使える人間がいるという現実に。そして、一カ月でそれを会得しなければならないという理不尽に。そして光が一夏を覆い尽くした。
(ビームに撃たれても痛みはほとんど無いとはいえ……と、特撮の撮影ってこんなに過酷だったのか……っ!)
通りで、一部の特撮番組の演出や演技がなんか、鬼気迫るというか、役者たちの気迫がテレビ越しでもわかるというか、妙にリアリティーを感じるというか、とにかく凄味を感じるわけだと走馬灯のように今までの特撮番組をみて納得した一夏。改めて思い返すと、自分のお気に入りの特撮は皆目の前の人が手掛けていたような気がする。
だが一夏は折れなかった。元々、一夏はやると決めたら最後までやりきろうとするタイプの男だった。だから五反田食堂のバイト(一般的な時給で)は今も続けているし、剣術指南書も毎日読んで実践している。そして、そのお陰で、一夏は今の地獄に耐えられていた。
「(こうなったら意地でも習得してやる!)監督!もう一度お願いします!」
何よりこの場で退くのは、自身のプライドが傷つくし、自分の人生を左右しかねない。コレが原因で事務所をクビにでもされたら笑えない。こんなところで立ち止まるわけには行かないのだ。
「うむ! それでこそ真の役者よ!」
「待てぃ! 織斑!」
「何ですか? 監督?」
「お主、今時の若者にはないガッツがある! 正直いって、ワシの撮影に最後までついてこれるとは思っていなかった!」
「は、はぁ……(いや、最後の方は俺も記憶がないんですけど)」
「だからこれからも定期的に、お前を使うことにした! フッフッフ、これから忙しくなるぞ!」
(いや、毎回あんな撮影してたら死ぬんですけど!?)
「覚悟しておけぃ!」
(嫌だあぁぁぁぁぁぁぁ!)
心の中で絶叫をあげていることなど露知らずこの日、一夏は監督の奢りで夕食をとり家まで送って貰った。
後日、学校から直接事務所に来るとマネージャーが待っていた。
「おう、生きてやがったか」
「幽霊か暗殺した人物に対面したかのような言い方やめてくれませんか?」
開口一番に物騒なことを言われ呆れる一夏。
「いや、あの監督、この業界じゃ頭のネジが数本へし折れていることで有名でな……」
話を聞くと、あの監督、どうもCGといった技術が好きでないらしく、それならこっちで出来るようにしてしまえばいいと、見た目が人外等、本当に不可能なもの以外はあんな撮影になったらしい。
「んな、無茶苦茶な……」
「けど、あの人が最後まで手掛けた作品は軒並み、賞受賞するし、視聴率も常に高い。しかも、あの人によって
「何だろう……素直に喜べない」
だが、この後頭のネジがへし折れているのはあの人だけじゃないことを知り乾いた笑いをすることになる。
「そう言うな、マドカなんかあの人の撮影に参加できるなんて羨ましいとかほざいていたんだからよ」
「マドカ?アイツ俺より仕事貰ってんだろ!?」
「まあ、アレだ……地方巡業や、ドラマとかのモブの撮影ならアイツも喜んでやるんだが、雑誌の写真撮影ばっか仕事に舞い込んでくるからな。そんな中で、お前が主人公の少年時代の役貰ったんだから嫉妬くらいするだろうよ」
「でも、俺より仕事貰ってますよね?」
「まあな」
「悪かったわね!アンタより仕事貰ってて!」
話に割り込んできたのは件の織斑マドカだった。
織斑マドカ、苗字が一夏と一緒というミラクルに意気投合した中である。一応、芸歴という意味では一夏の先輩にあたる。
「全く、こっちは一役貰うのに四苦八苦してるのになに贅沢な文句言ってんだか……」
「おう、そりゃ悪いな。だが、こっちも(生死的な意味で)四苦八苦してたんだ。愚痴りたくもなる。それに本当に悲惨なのは……コレだろ」
徐にクビを切るジェスチャーをする一夏。
「アレは自業自得でしょ?文句ばっか言って、ろくすっぽ努力しないで、そのくせISがでて女だから優遇しろとか馬鹿じゃないの?クビになって当然だよ」
ISは女性にしか乗れない。それが原因で今、女尊男婢が密かに社会問題になっていた。最も、芸能界は主に頭のネジがへし折れている輩のせいで、実力主義の面が強いため直ぐ淘汰されてしまったが。一夏の所にも男という理由で、嫌味や暴言を言われたが後日その女はお偉いさんの男を怒らせてクビになった。しかも現在、名誉毀損で訴えられておりニュースにもなっている。
「まあ、今回の番組の視聴率のお陰でオメーの知名度もそこそこ上がるだろうよ」
「精々、足元救われないことね!」
「なら先ずは、お仕事済ませないとね?」
「!?」
突如響く鋭く刺すような声、何故か冷や汗をかいているマドカを除き声のした方向を見ると女性が立っていた。
「ス、スコール……」
「マドカ? 私昨日言いましたよね? 明日は朝から雑誌のインタビューと写真だって……あなたがルーチンワークのような毎回同じような仕事が嫌いなのは知っているけど、限度はあるのよ?……困ったわ~これを済ませられないのなら貴女のマネージャーとしては次のオーディションは受けられそうにないわね~」
「わー!分かってる!分かってるって!ちょっとコイツに会ったから、話してただけだって! ってもういない!?」
マドカは、一瞬一夏達にじゃ! と言うと、慌ててスコールと呼ばれたマネージャーを追いかけていった。
「ま、何にせよ。あの監督が気に入ったと言ったなら、これから仕事が舞い込んでくるだろうよ。あの監督この業界の最古参の一人だからな」
「何だろう、嫌な予感しかしない」
その言葉通り、この後、様々な仕事が舞い込んでくることになる。しかし、何れも
「三刀流奥義!」
「これぞ我、百八ある奥義の一つ!」
「皆、オラに元気を分けてくれ!」
と、案の定、無茶苦茶な
そんな生活が数年続いたある日のことだった。それは、兄が友人の家に遊びに行っており、珍しく千冬と一夏の二人しかいなかった時のことだ。
「一夏、少しいいか?」
「何? ちー姉? 学校のテストなら昨日92点だったよ。」
「いや、それは知っている。大体、勉学でお前に文句を言った覚えはないぞ? お前、いつもテストは最低80点はとるからな。じゃなくて、その……ISは知っているな?」
「知っているよ……ああ、確か近いうちにISを使った世界大会が行われるんだっけ?ニュースになってたな」
ISが発表されて凡そ三年、この頃になるとISの兵器使用に関する取り決めや新時代の催しとしての一面が押し出されていた。この世界大会もその一つである。
「モンド・グロッソだ。実はそれに日本代表として出ることになった」
「ふーん……ん? 今なんて言った?」
「モンド・グロッソに日本代表で出ることになった」
さすがの一夏もこれには面を食らった。自分の姉がISに関わっているのは予想はついていたが。まさか、姉がそんな大会に出るとは思っていなかったのだ。
「ちょっと待て、そもそも日本代表ということは、オリンピックみたいに予選があるはずだよな。それは?」
「昨日決まった。それで頼みがあるんだが……」
「応援というのなら、モンド・グロッソ当日はロケで俺は一日いないぞ。それと代表おめでとう」
「そ、そうか、それは残念だがそうではなくてその……だな……それに伴って、テレビのインタビューに出ることになったんだ。どうすればいい!?」
ドンッと机を叩き前のめりに出す千冬。
「いや、ちー姉さ、先ず代表決定戦出て代表になったんだったらそのときにインタビューされたはずじゃ……」
「そのときはあまりの報道陣の数に逃げ出した。そしたら、後日に史上初のIS世界大会だから、宣伝目的で政府からインタビューを受けろとな……それで今回コツ……というのも変だがとにかく教えてほしいんだ。ほら、一夏は職業でインタビューとか受けるだろう?」
(へぇ~ちー姉もあたふたするんだ……)
一夏にとって、千冬は私生活でのズボラな所は多いが、逆に言えばそれ以外での欠点は見当たらないし、何より例え弟といえども弱味や弱音はけっして出さなかったからだ。そんな以外な一面が見れて、驚きが半分と内心頼ってくれた喜びが入り交じる。
「まぁ、史上初の大会だからな。注目は嫌でも集まるものでしょ? 俺から言えることはそうだな……外にでて恥ずかしくない格好とマナー……てこの辺はちー姉大丈夫か。なら後は、最初に言うべきことを考えておいてカンペに書いて、その後は臨機応変に質問に辺り差し障りないように答えればいいんじゃないかな?」
「そ、それだけか? 何かもっとこうあるんじゃないのか!?」
「これ、普段テレビにでない……例えば、大学教授とかスポーツ選手なんかがニュースのインタビューに出ているときなんかそうなんだけど。基本的に噛んだり、言葉詰まったりするのが普通だからあまり問題じゃないんだよなぁ」
「そういうものなのか?」
「そういうものだよ。まぁ、ちー姉の場合、特に言葉に気を付けた方がいいかもね。今、ISが原因で差別問題が表面化し出しているから国の代表であるちー姉が、それを助長するような発言したら悪化するし、何よりも国の総意と捉えかねられないから」
「そうか……有り難う感謝する!」
そう言って千冬は自室に戻っていった。その後、千冬の言葉には何一つ問題はなく、無事に第一回モンド・グロッソに優勝し『ブリュンヒルデ』の称号を得たのだった。それに伴い千冬はインタビューの依頼が、一夏は元々あった知名度に加えブリュンヒルデの弟という事で益々有名になるのだった。
だがその一方で篠ノ之束が忽然と姿を消し、そのせいかどうかは一夏は預かり知らぬところだが、織斑家が世話になっていた篠ノ之剣道場は閉鎖されることとなった。
恐らく、ISは公表されてから暫くの間、兵器としてしか見られていないと思いますので。最初の時点では、白騎士事件の件もあって一夏も兵器としてしか見ていません。なので、ISに直接関わる事もないと思っており興味もたいして無いです。女性にしか扱えないし。
また、世界大会の出場者なのにインタビューやテレビ番組にでないのもおかしな話なので千冬さんにテレビにでてもらいました。兄は……お察しください。
後、芸能界の古参や重鎮は皆あんな感じです(笑)