ヒトナツの物語   作:カサス

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駆け足ですが原作突入です。


02 IS学園は想定外

「そ、そんな……まさか、に、兄さんなの!?」

 

「M、俺はお前の知っている兄であり兄ではない」「お前はあり得たかもしれない世界の俺自身なのだ!」

 

『劇場版、亡国の企業~Mの真実~ 某月某日 公開』

 

「そうか、頭の中に爆弾が!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カット! よしそこまで! マドカ、一夏、ご苦労だったな」

 

「「有り難うございました!」」

 

 この日、一夏はマドカと共に、マドカが主役の映画のリハーサルとCMの撮影を行っていた。自身の実力と初代ブリュンヒルデの弟というネームバリューのおかげでこの頃でも、一夏の人気は右肩上がりで様々な番組に引っ張りだこだった。最も、本業である学業でもては抜かない。ちゃんと、成績を落とさないように折り合いがつくようにマネージャーと綿密にスケジュールの調整も行っていた。

 

 余談だが、学校に登校する際に素の顔だと、追っかけなりストーカー(日夜、追い払おうとしている天災兎と死闘している)に付きまとわれるのを嫌い、伊達眼鏡やサングラスを着けるようになった。そのせいで、年頃の女子のハートを結果的に射止めているのだが、本人が高嶺の花状態なので中学生最後の年になっても一度も告白されたことがない。

 更に余談だが、一夏の兄は成績こそ一夏より優秀だが、声をかけられたと思ったら一夏と間違えられてガッカリされたり、一夏と違って素行や性格に難があったりするため、顔はいいのに女子に一度も告白されたことがなかった。加えて、一夏のことを主に成績で何かと比べて貶そうとする。断っておくが一夏の成績は決して悪いものではない、十分胸を張って良い成績だ。なので逆に一夏と比べて人間的に劣ると評価される始末だった。

 

 

「はぁ、ぢかれた~」

 

「何だもうバテたのか?」

 

「アンタ、私は一週間前からぶっ通しでこの映画の収録してるのよ……」

 

「そうだったな、俺は逆に普通の役だから逆に新鮮だったぞ。女学園で女装して一週間入れ替わって過ごす役とか……史実の人物が女だったり」

 

「そう言えばアレすごかったもんね……アンタの声色」

 

「伊達にスパイやった訳じゃないからな」

 

 そう色々あった。女装しての学校生活、スパイとしての活動に凄味を持たせるという意味で様々な言語と老若男女を問わない声を習得した。なかでも鮮烈なのは半年前のことだった。

 

 

 

 

「駄目だ!駄目だ!駄目だ!そんなんじゃ宮本武蔵を全然感じられん!」

 

(((そもそも、宮本武蔵は男なんですけど……)))

 

 監督が宮本武蔵役の女優に激を飛ばす。内容自体は、巌流島の戦いをモチーフにした時代劇の撮影だが、何故か武蔵が男装をしている女なのだ。そしてここから監督がとんでもないことを言い出した。

 

「いや、待てよ……一夏、お前女装したことあるよな?」

 

「え?ええ、ありますけどそれが……」

 

「よし! 一夏!お前が女装してやれ」

 

「……え゛!? いや、でも女装してもこの作品の武蔵って男のふりしてるんですよね? 女装してその上で男装するとか無理があるんじゃ?(というか、自分で言ってて訳がわからんぞ!)」

 

「問答無用!とにかくやれぃ!」

 

 その後、思っていた以上にハマり役だったせいか、男装している女性役を男が女装し、尚且つ男装することがブームになった。因みにその女優は小次郎役をすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

「あのときは流石に監督も狂ったのかと思った」

 

「そのせいでアンタ暫くの間、性別偽る役しか出れなかったものね」

 

「やめてくれ……」

 

 少々げんなりしたように休憩室に向かう二人。そこに走ってやってくる影がいた。

 

「おい、一夏! テレビを見ろ!」

 

 血相を変えて礼子がやって来た。何かあったのだろうかとテレビをつけてみる。するとそこに写し出された映像に一夏は驚愕した。

 

『速報です! 何と史上初の男性IS操縦者が現れました!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………で、俺も適正検査を受けろと?」

 

「ああ、日にちはスケジュール何とか切り詰めた。三月最後の週の月曜日だ」

 

「こんな五分かからない検査のために……」

 

「仕方ねーだろ。国の命令じゃ受けるしかねぇ。まぁ、一回受ければ終わるんだ。それに兄弟だからって、必ずしもお前にも適正がある訳じゃないしな」

 

 そして四月まで後、一週間を切った所で一夏の適性検査日

 

「ISが起動したぞ!」

 

「直ぐに、政府に報告しろ!二人目の男性IS操縦者が現れたぞ!」

 

「しかも有名人だ! これは絵になるぞ!」

 

 案の定、一夏にも適正があった。

 

(おのれ、クソ兄貴ィィィィ!)

 

 珍しく、兄に悪態を心の中で呟く一夏だった。

 

 

 更に二日後、一夏は、センター試験を受けるような試験会場に来ていた。勿論、試験を受けるため……というのは名目である。様々な理由、思惑こそあるが世界で二人しかいない男性IS操縦者が入れないという道理はない。あるとすれば実技試験だが、生憎一夏の判明時期からではISを動かす場所を確保できなかった。なので今回は一夏にとって重要な話をすることになっているのだ。

 

「初めまして、織斑一夏君、私はこの学園を運営しております轡木十蔵と言います」

 

「織斑一夏です。本日はこちらの我が儘を聞いてくださって誠に感謝しております」

 

「いえいえ、今回のことはむしろこっちからお願いしたいくらいでした」

 

 応接室にて一夏と、轡木十蔵、そして織斑千冬が対面していた。

 

「そういっていただけるとこちらも助かります。なにぶんこちらも四月からのスケジュールがパンパンでしたので。」

 

 一夏の目的は、これからのスケジュールの帳尻あわせのための交渉だった。何せ一夏は、中学卒業後は完全に芸能界に専念するつもりでいたのだ。スケジュールもその前提で組んでいた。それが、一瞬にしてご破算になったのである。しかも、女学園に男二人となる時点でスキャンダル沙汰になりかねない。一夏にとって、IS学園は正に地雷平原と同義。打ち合わせをするのは当然だった。無論、今此処にいない礼子は、現在進行形で業界の方々に話を通しているところだろう。

 

「先ず第一に、寮部屋は個室が良いです。女子と一緒の部屋なんてそれだけでスキャンダルになりかねないのです」

 

「分かりました。それはこちらで手配しましょう。他には?」

 

「誠に申し訳ありませんが、入学式には出られないです。その日は、アニメの収録なので……直接学園にいきますが、いつこれるかの断言も残念ながらできません。また、私の職業柄、頻繁に外出するのでその許可がほしいです。こちらとしてはとりあえず重要なものはこれくらいです」

 

「分かりました。何れも対処可能な案件です。こちらとしては、護衛の効率性を考えて貴方の兄と同じクラスにすることと、データ収集のための専用機の一件でしょうか……」

 

 専用機という言葉に一夏が渋い顔をした。

 

「おや?なにか不都合でもありましたか?」

 

「いえ、クラスについては問題ありません。しかし、専用機……それはどのような過程を経るか大まかにわかりますか? いえ、私もISに関する知識は一般的な常識内で理解しています。絶対数が決まっているISの専用機となれば、その座にたどり着くための努力は想像もつきません。それを『男だから』という理由で、本来それをてにするべき人間が不当な扱いをされるというのは……」

 

 その言葉に千冬は納得し、小さい頃から努力して今の地位に着いた一夏らしい理由だと思った。

 

「なら、こういうのはどうでしょう学園長。 学園にある訓練機一つを学園に在学中は専用機と同じ扱いにしてはいかがでしょうか? 訓練機なら、元々誰でも扱える機体です。そのような負い目は感じないと思います」

 

「だそうですが、いかがでしょうか?」

 

「まぁ、それなら……」

 

「なら、今、IS学園にある訓練機は二種類あります。どちらを選びますか? ある程度のリクエストなら、お聞きしますよ?」

 

「……それなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園、一年一組

 

 このクラスは現在、言葉では形容出来ない空気が漂っていた。一つは浮わついた空気、もう一つは重苦しい空気、そして最後に今か今かと待ちわびている空気。この三つの空気が混じり合い何とも言えない雰囲気が形成されていた。理由はどれも件の男性IS操縦者である。

 だが、この男性IS操縦者……ISの知識不足はともかく、何故か教科書を古い電話帳と間違えて捨てるという暴挙に出たのだ。そのせいで、一部の生徒が不快な視線を彼に送っていた。そんな中、クラス担任である織斑千冬が教壇に立ち話を切り出した。

 

「授業を始める前に、クラスの代表を決めねばならんな。クラス代表とは、文字通りクラスの顔だ。故に決定したら、特殊な状況を除き一年は変更はない。尚、自薦、他薦は問わない。自薦する者は当たり前だが、他薦された者も責任を持って請け負うことだ。故に拒否権は無い」

 

「はい! 織斑秋正(おりむらあきまさ)君を推薦します!」

 

「賛成!」

 

「私も!」「右に同じく!」

 

 それを皮切りに、次々と手をあげる他の生徒達。少年……織斑秋正は、予定調和(この状況)にほくそ笑んだ。無論、そんな表情は出さず口では『あのときと同じように』反発しておくのも忘れない。一方千冬は、秋正の言葉を一蹴した後、明らかに男だから珍しいからという理由が見え見えの発言に、千冬は半ば諦観した様子でそれを見ていた。

 

(……まぁ、分かっていたことだ。弟二人の護衛と外に対する威圧という意味で、無理矢理クラスの担任を受け持ったから教壇に立つのは、初めてだが実技授業の際の一年の顔と全くかわらん)

 

 だがそれに異を唱える者がいた。このクラスの生徒の中で唯一の、イギリスの代表候補生、セシリア・オルコットだ。

 

「納得いきませんわ!」

 

 この言葉に、秋正は心の中で改心の笑みを浮かべた。後は機を見計らって火に油を注げば自分の思う展開通りになると……だが、そんな上手くいくはずがなかった。

 

 

 

 

 コンコン

 

 

 

 

 

 セシリアが、次の言葉を吐こうとした時、唐突に教室のドアがノックされた。

 

 

 

「あー遅れてすみません。織斑ですが……」

 

 

 

 その言葉に、セシリア以外のクラスの女子がどよめく。

 

「静かにしろ! どうやら、このクラスの最後の生徒が到着した。お前ら静かにするように……入れ」

 

「失礼します」

 

 その言葉に応じて一夏は、教室に入っていった。

 

「織斑弟、自己紹介をしろ」

 

「はい……俺の名前は織斑一夏、年齢は15歳。彼女いない歴=年齢。仕事は芸能事務所『ファントムプロダクション』所属の芸能人で夜は遅くとも8時までには帰宅できるようにしている。現在は声優業に力をいれている。特技は声帯模写。夜は遅くとも11時に寝て必ず8時間は睡眠をとるようにしている……温めの湯船に入った後寝る前に自家製の生姜湯を飲み20分ほどストレッチをして床につくとほとんど朝まで熟睡さ……赤ん坊のように疲労やストレスを残さずに済む。健康診断でも以上なしと言われているよ。ここまで言われればわかると思うが、俺は常日頃から『真面目に心身共に平穏である』ことを願って生きている。『勝ち負け』に拘らず、頭を抱えるような『トラブル』をおこさず、気になって夜も眠れない『敵』を作らない……というのが、私の社会に対する姿勢であり自身の幸福であることを理解している。つまり、先程廊下を歩いていたときに聞こえてきた怒声や、他のクラスの授業妨害になり、俺に注意換気するように織斑先生に伝えておいてくれ、何て言われるような奇声を発するということは俺の頭を抱えるトラブルなので止めていただきたい。以上」

 

「そのまま、面接の自己PRに使えそうな模範的な自己紹介だが、やりすぎだ。見ろ」

 

 そこには、何故か机に伏して悶える女子生徒がいた。しかも、ほぼ全員である。

 

(や、やばい耳が幸せ~)

 

(の、脳が蕩けるぅ~)

 

(一年間この声聴いていたら死ぬぅ~)

 

(もう、ゴールして良いよね?)

 

 一方セシリアは、いくらなんでも自己紹介細かすぎませんか!? とドン引きしていた。

 

(これが俺の自己紹介なんだがな……)

 

 

 




中学時代については、今は書きません。追々書きます。
そしてようやく兄の名前が発覚。尚原作に固執している模様。
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