ヒトナツの物語   作:カサス

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感想があるとモチベーションって上がるものなんですね……(小並感)


04 一足早くやって来た中華娘と代表候補生(ファン)

 ―――ここがあの男のハイスクールね!

 

 学園の校舎前にデーンと堂々と立つ一人の少女。小柄ではあるが快活でお転婆な雰囲気を持つツインテールの美少女だった。

 

 ―――待ってなさいよ!

 

 バッグの中にある『宝物』を手で確認しながらIS学園の敷居を跨がった。

 

「所で総合案内受付所って何処よ!?」

 

 

 

 

 ここで一週間以上経った、二人の男性操縦者の生活を見てみよう。一人目の男性操縦者である秋正は、箒にしつこいほどにISについて教えてもらおうと頼み込んできていた。箒は(悪)夢の同室にテンション(SAN値)が可笑しくなり、剣道しかしなかった。尚これは、大魔王(寮長)千冬が一夏と同じ勘違いを理由に配慮したありがた迷惑()な采配である。

 二人目の男性操縦者である一夏はというと、朝起床したあと、肉体のメンテのため軽いストレッチや、ランニングをし、たまに千冬と(運悪く)エンカウントした場合は剣道場で屍山血河の試合舞台を繰り広げていた。そして、授業を終えた後はいつも通り、撮影に向かうというのが日常である。

 

「ふむ……ここまでか」

 

「ああ、どうやらそのようだ」

 

 一夏と千冬、二人の手にはへし折れた竹刀が合計三本あった。

 

「しかし、二刀流とはな……」

 

「二天流も当然修めている(まぁ、あれ基本的に何でもやる流派だけどな。だからこそ性に合うのは確かだが)」

 

「……話には聞いていたが、芸能界とは凄まじいのだな……その年で、篠ノ之流、新陰流、そして二天流も修めるなぞ正気の沙汰ではないぞ?」

 

「こちとら仕事だぞ。なら手は抜かない。武蔵役するなら二天流を極めるし、新陰流を扱う役ならそれを極める。マスクドライダーも必要ならライダーキックもマスターするよ……まぁ、環境がいいのは確かだけど」

 

「だが、おかげで他流派の極意をさわりとはいえ知れた。ふむ、居合いはこう……」

 

 へし折れた竹刀で居合いの動作をする千冬。すると、剣圧でそこに立て掛けてあった練習用の竹刀が断ち斬られていた。何とも言えない微妙な生暖かい空気が流れる

 

「……お前はなにもみなかった、いいな?」

 

「アッハイ」

 

 そこそこ疲れているからか、それとも時間が押しているからか一夏も特になにも言わなかった。

 

「じゃあ、俺朝から撮影あるから」

 

 今日は朝と放課後に撮影があるというなかなかハードな内容だった。

 

「何の撮影だ?」

 

「関取戦隊 スモレンジャー」

 

「……因みに役は?」

 

「悪の秘密結社スモンゴリーの中間管理職、イケモンゴリ役。因みにネタバレすると、最後はドスコイレッド中心の合体技、ツッパリバスターで爆発四散する。一発役だから受けることにした」

 

「そ、そうか、頑張れ」

 

「おう!」

 

 千冬のひきつった笑みには気付かない一夏であった。

 

 その後、一夏がいない事など露知らず、二組に編入した少女は意気揚々と一組に突撃を強行したが空振りし、また、原作と違う展開に驚きつつも誤差の範囲とあの生意気な弟を公衆の面前で叩きのめして、フラグを建てるチャンスと嬉しい誤算と認識して、その少女に近づいたが……その様子は、猫を愛でようとする飼い主じゃない人間と、猛ダッシュで逃げてシャー!と威嚇する猫のような関係だったと記述しておく。

 

「相変わらずここは風も景色も良いな……弁当が捗る」

 

 一夏は、学園に入ってからというもの朝、晩は部屋で昼はお気に入りであるこの場所で昼食をとっていた。

 

(こういう風に静かだと落ち着くな。心が癒える)

 

 元々、高校にいく気のなかった一夏からしたら、IS学園にいるだけで少なからず心が荒む。それでも、ここの学園の偏差値を鑑みてもエリートだけで構築されているから、少なくとも意欲は有るだろうし、夢に向かって頑張っている姿を見れば多少なりとも溜飲は下がるだろうしやる気も出ると思っていたのだ。

 なのに、ここの生徒は自分を見るなり、サイン来れだの、取材してくれだの、自分が主演の主人公やアニメの名台詞言ってくれだの、酷いときには部屋に連れ込もうとしてくるその体たらくに更にストレスが溜まっていたのだった。恐らく今も探しているのだろう。そんなことして万が一ばれたらスキャンダルどころの騒ぎではない。役者生命一貫の終わりである。現状ですら、割りと綱渡りなのだ。

 

(ここにいる、奴等は分かっているのか?ISに携わるということは、将来軍人になるということに……)

 

 ISとは、宇宙開発が目的のパワードスーツだが、兵器としての側面も当然ある。そんなものを扱う職業といったら軍人しかあり得ない。一夏も、何度か軍隊の訓練を見学したことがあるが、はっきり言って今の同級生がついていけるとは思えない。恐らく三日と持たずに逃げ出すだろう。何せ、軍の教官は、千冬を濃縮した原液並のスパルタをほこる。モンド・グロッソでISは確かに競技としての華々しい一面を得た。だが、その裏にある陰に気付いているの者が果たしてどれだけいるのだろうか?

 

(はぁ……腹が立つな、お気楽さに)

 

 

 

 

 

「だぁーもう!ムカツク!アイツしつこすぎでしょ!?何なの追尾式誘導ミサイルか何か?」

 

 少女は、憤っていた。理由は秋正である。彼女は目当ての人物に合うために、一組に入ったのは良いものの、そこに目当ての人物はおらず、逆にもっとも会いたくない人物がいたのだ。しかも、こちらを認識しては馴れ馴れしく付きまとってくる。

 

(冗談! アイツがやったこと忘れるもんか!)

 

 少女は、日本人ではない。それ故に、小学校に転入した際、手酷くいじめを受けた経験がある。その時、助けてくれたのが秋正なのだ。はて?それなら感謝こそすれ恨みを抱くことはないと思うだろう。

 

(あんな、ヤラセまでして……あのときどれだけ傷ついたか……)

 

 助けてもらった、翌日。少女は礼を言うために、秋正のもとに向かった。そこで見たのだ。

 

「サンキューな!一芝居うってくれて」

 

 秋正と虐めっこが結託して、虐めを行っていたという事実だった。その時、少女はうちひしがれたのだ。そんなときだった、彼と彼の音楽に出会ったのは……

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 

 

 

 結局、昼食の時にも彼は現れなかった。最も、場の雰囲気からして彼が食堂に現れなかった理由も、概ね理解していたがそれでも落胆の気持ちは抑えきれずに探してしまう。

 

(本当にアイツどこに言ったのよ!?)

 

 

 

 

 

 一夏は昼食を終えた後……

 

「凄いです! 尊敬します!」

 

「イッチーって立派だねぇ」

 

(……どうしてこうなった?)

 

 困惑していた。

 切欠は昼食を食べる前から感じていた視線である。誰かに見られ、追っかけを撒くのは茶飯事だが、今日は何故か二人ほど撒けなかったのだ。だから、彼は様子を見ながら伺っていた。自分を追跡するのは生半可なことじゃない。だがらこそ、興味を抱いていた。

 そして、声をかけた……正確には、台本の台詞の練習の復習がてら言ったのである。

 

「てやんでぃ! 誰だぃそこにいるのは?」

 

「うひゃおう!?」

 

「わ、わ、ひゃいう?!」

 

 妙な奇声をあげながら出てきたのは、本音と眼鏡をかけた内気そうな女の子だった。

 

「なんだ、布仏だったかそれと……誰だ?」

 

「ほら~かんちゃんここまで来たんだから……」

 

「わ、わかってる……(すー……は~)は、は、は、は、ひゃじめまして、さ、さ、さ、更識簪と言いましゅ!?ワンサマーさん!」

 

「落ち着けよ。後、ワンサマーってネットでの俺の愛称じゃん」

 

「かんちゃん、いくら憧れの人でも噛みすぎだよ~」

 

 聞くと、どうやらこの簪という少女。一夏のファンらしく、ずっと話す機会を伺っていたとのこと。しかも何とこの少女、日本の代表候補生なのだという。

 因みにどうでもいいことだが、ワンサマーというニックネーム、実は気に入っていたりする。実にストレートなネーミングが琴線に触れたらしい。あくまでネットのなかで使う分には、だが。

 

「ほー、日本の代表候補生の席と言ったら相当厳しいと聞いたが……凄いな」

 

 という話から、専用機の話で一夏が頭を下げて謝ったりそれを慌てて止めさせようと舌を思いきり噛んで涙目になりそれを面白そうに見ている本音という構図ができ、現在に至るのであった。

 

「あー! やっと見つけた!!」

 

 今日はやたらとエンカウントが多い日だと内心苦笑いしながら懐かしい声がした方を見る。

 

「よう、鈴。一年ぶりか?」

 

 一夏の数少ない友人と呼べる人物の一人、凰鈴音(ファンリンイン)がいた。

 

「アンタ、今まで何処いたのよ!? おかげであのクソ野郎にストーキングされてたのよ!」

 

「そりゃ御愁傷さん。だが、俺は生憎今日の午前は収録でいなかったからなぁ~」

 

 ニタニタと笑いながら弁明する一夏。その姿には微塵も誠意を感じられない。

 一方簪は、せっかくの会話を邪魔されて少し不機嫌そうだった。

 

「貴女、中国の代表候補生……」

 

「お?私のこと知ってるんだ」

 

「半年前に、突如彗星のように現れ、代表候補生と専用機の座を手にいれたダークホース。専用機とその経歴からついたあだ名は、彗星龍」

 

「うわ、私そんなこと言われてんの!?」

 

「……知らないの?」

 

「まぁ、私の事をなんか言っているのは聞こえていたけどね。私、基本的にそういうの疎いし気にしないから」

 

 その言葉に表情を暗くする簪。

 

「貴女のことも……まぁ、少しだけど知っているわ。小学生で異例の日本史上最年少で代表候補生になった。ロシアの……」

 

「やめて!!」

 

「っ!??」

 

 突然、鈴の言葉を遮る簪にただならぬものを感じる二人。

 

「ごめんなさい。でも、お姉ちゃんのことは話さないで」

 

 何とも言えない空気になる周囲。耐えきれずに簪が適当に断ってこの場を去ろうとしたときだった。

 

「まぁ、いいや。しかし、お前さんも大変だな、優秀な姉を持つと色々、気苦労が絶えないよな」

 

「……わかるの?」

 

 一夏が、話題を切り替えたように見せかけて、全く切り替えなかった。鈴がツッコミをいれようと思ったが、実のところ簪は一夏の決意を聞いていたので、無意識に言葉がこぼれてしまったのだ。

 

「まぁな、俺も家計見たとき最初思ったのは、姉の凄さと自分に対する情けなさだったかな」

 

「情けなさ?」

 

「姉の奴って、両親いないから自分で何とかしようと全部一人で背負い込むタイプだからさ……けど、そんなことしてたら潰れるのは目に見えている。てか、潰れかけてた。だから働いた。最初は般若のごとく猛反対してたよ。お前はなにもしなくて良い、子供らしく遊んでいろってな」

 

 奇しくもそれは自分が姉に言われたことと似ていた。簪はその時、ショックでなにも言えなかった。だから、彼がどう答えたのか興味があった。

 

「それで?」

 

「だからこういってやった。姉さんが俺のことを大事に思っているのは十分伝わっている。でも、俺のことすら信じられないの?ってな」

 

「……?」

 

「姉は一人で何とかしようと躍起で信じられるものすら信じられない状況になっていてな。だから、突きつけてやった。今の姉が俺たちからどう見えるのか……まぁ、姉の立場で考えればこれくらい容易に想像できた。多分、姉にとって俺たち下の弟の存在こそが生き甲斐だったんだろう……姉が百パーセント悪いって訳じゃない。だけどそれで、俺の生き甲斐を奪ったら本末転倒じゃない?まぁ、それでも、恥ずかしい成績出したら止めさせると言われたけど」

 

 その言葉に、簪は目をパチクリさせて聞いていた。姉の立場で考える……そんなこと、一度も考えたことがなかった。そして改めて考えてみると、家の『特殊性』、姉の『立場』、特にあの日はその『立場』を継承した直後だったはず……そう考えるとあの日の言葉の真意が見えてくる。

 

(それでも、『貴女は無能のままでいなさいな』は無いと思う)

 

 これは、単に二人の精神の差だった。千冬は、あの当時でも、二人の弟たちの事をよく考えて言葉を選ぶことができた。だが、年齢がひとつ違う簪の姉は当時、簪の安全と家のことで精一杯で、簪自身のことまで考える精神的余裕が無かったのだ。なので、本人は考えていたつもりでも、全く考えていなかったのだ。

 

「(今の私が出来ること…………)一夏さん、有難うございます。何だか自分のやるべきことが見えてきた気がします」

 

「そう思うんなら、敬語はいらんぞ。同年代だし」

 

「はい! あの……クラス代表戦、頑張って」

 

 そう言って、簪は去っていった。その姿を見て本音は一夏に頭を下げた。

 

「ありがとね。かんちゃんのトラウマ祓ってくれて……これでかんちゃんも立ち直れるよ~」

 

「おや、まだそうとは限らんぞ?アイツの姉が何かいって更にトラウマ作ったり抉りにくるかもしれん」

 

「その時は…………その時だよ……ま、その時は当主は人の心がわからないとか言っておくから!じゃあね~イッチー!」

 

 何故か一夏は一瞬、背筋が凍ったような気がした。

 

「……随分と優しいわね?」

 

 鈴が話しかけてきた。その顔は何処と無く不満そうである。

 

「まぁな……」

 

「……何?惚れたの?」

 

「うーん、それはないかなー、今回のは、苗字が更識で大体予想ついたし、昔の俺に雰囲気が何処と無く似ていてシンパシー感じて行ったただのお節介だし……」

 

「アンタ……そのお節介は昔からそうよね(それで、何人の女子が惚れたか……)」

 

「俺の手が届く範囲で……だがな。流石に優先順位はあるし(お前含め、その気あるのは認めるが、告白くらいする度胸は欲しいな)」

 

「そう言えば、風の噂で聞いたけど代表戦どうするの?日時は?」

 

「行き当たりばったり、明日、以上」

 

 

 

 その言葉にぐったりする鈴だった。

 

 




という訳で、クラス代表戦前に鈴登場。こういうのも良いかなと……

次回、(ようやく)戦闘回
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