ヒトナツの物語   作:カサス

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やっと、代表決定戦。楽しんでいただければ幸いです。


05 VSセシリア(結果見えてるとか言わない)

 クラス対抗戦当日、一夏は今日丸々一日授業を休む許可をもらい、資料室でセシリアの専用機を洗いざらいしらべあけていた。

 

「第三世代型IS、ブルー・ティアーズ……装備は大口径レーザーライフル『スターライトmk3』、近接用アサルトナイフ『インターセプタ』、そして期待の名前の由来でもある高機動全方位制圧射撃システム……通称ビットシステム『ブルー・ティアーズ』が六基か……」

 

 正直いってこの機体に勝つと考えると、現実的な策は二つ。一つは、相手の武装をすべて無力化する。もう一つは、シンプルに一つしかない。

 

「近付いて斬るしかないな……」

 

 わざわざ、相手の得意とする土俵で戦う必要性などない。近接戦闘用装備がナイフ二本なら、如何様にも対処できる自信がある。

 無論、最初から密着して戦う何てことはできないので、最初はセシリアの土俵で戦うことになる。

 

「まぁ、考えてもしょうがないや」

 

 元より、この程度の情報収集はただの気休めである。知っていると知らないでは相手の行動をある程度予測できる。

 

(後は、俺がどれだけ動けるか……これにつきるか)

 

 

 

 

 

 

「来たか」

 

 午後、一夏は、アリーナの格納庫に来ていた。午後の授業が終わればそのまま代表決定戦だ。

 

「お前は、発覚してから、IS学園の入学まで時間がなく、今日まで録にISに触れていない。だからここと代表決定戦で基礎的なデータをとる」

 

「ウィース」

 

「ちゃんと返事をせんか!」

 

「アーイ」

 

「全く……これがお前の『専用機』だ」

 

 渡されたのは、灰色の機体。

 

「打鉄……」

 

「正式名称は、『打鉄玉鋼』だ。体を預けるように乗ってみろ。お前のリクエストも可能な限り実現した」

 

「はい」

 

 乗り込んで見る一夏。

 

「よしそのまま、基本的なデータを入力する。少し待て」

 

 本来なら、入学試験の際に済ませるのだが、一夏は、今と後に控えている代表決定戦で本格的なデータをとることになっている。

 

「パーソナルデータ、モジュール、ファッティング……共に問題なし」

 

 淡々と作業をこなしていく千冬の姿に不躾ながら一夏はちー姉工学できたのかと感心していた。

 

「これでも教師だ、これくらいならIS操縦者じゃ必須科目だ…………」

 

「おっと表情に出てたか……なら俺にはやっぱISは無理だな。俺文系だし」

 

「……(全部が全部そうじゃないが)『乗るだけ』ならISは文系の方が相性良いがな…………ISの適正はBか、普通だな」

 

「?」

 

 適正の前に言っていた声は一夏には聞きとれなかった。

 

「さて、基本的なパーソナライズは済ませた。後は、お前次第だ。まぁ、クラス対抗戦まで少し、時間がある。アリーナの外は授業で使うが、この辺を歩くくらいなら構わん。装備の確認もしておけ。但し、解除は30分はするな。今、最適化して一次形態移行(ファーストシフト)している最中だからな」

 

「りょーかい(どれどれ、現在の装備は……)」

 

 

 

 

 

「い、一夏!」

 

「ん? 何だ? 篠ノ之?」

 

「それがお前の専用機か?」

 

 現れたのは箒だった。一夏の専用機をまざまざと見ている。入学試験の実技で乗った普通の打鉄と比べると、鋭角的だが、装甲が薄いように箒は感じた。

 

「なんというか……普通だな」

 

「まぁ、打鉄だからな。俺はこのメタリックボディ嫌いじゃない。多少は、俺好みの改造を施してもらった。それより何でお前ここにいるんだ?」

 

「何でって……もうすぐ、試合だぞ! 結局本当に練習……しなかったのだな……お前」

 

「する時間無いからな」

 

 一夏のあまりの能天気さに思わずため息が出てきてしまう。これは単に、三人それぞれの気持ちの持ち方が違うのである。セシリアは代表候補生としてのプライド以前に、ISに人生を捧げる覚悟があるためこんなところで負けられない。秋正も、セシリアはこの戦いでフラグが建つから兎も角、一夏に関してはここで完膚なきまでに倒しておきたいという負けられない理由がある。

 対して一夏は、この試合に『ある一点』を除いてその価値を見いだしてはいない。自分の事情は、千冬が一番よく知っているためクラス代表になんか先ずならないし、今日はじめて乗った素人でしかない自分がセシリアに逆立ちしたって勝つのは不可能だ。だから、気負うことなどしないし勝ち負けに拘らない。普段のオーディションのときも、落ちた場合はそこで引きずらないようにしているくらいだ。男のプライドで勝てるほど甘くはない。だから、最低限(・・・)の備えしかしていない。

 

「絵描きがサッカーに全力出さないだろ?それと同じだ。気楽にいけば良いんだよ、気楽にな」

 

「あれ?先客がいる。まぁいいや、一夏~!それが専用機?」

 

「お、鈴じゃん、おう、玉鋼だとさ」

 

「ふーん、普通ね」

 

「それさっき篠ノ之に言われた」

 

「まさかの二番煎じ!?……って篠ノ之ってだ……「一夏さん(イッチー)」……れ」

 

 再び聞き覚えのある声二つ。簪と本音だった

 

「おーイッチーの専用機だぁ!」

 

「やれやれ(賑やかになってきたな)」

 

「普通の打鉄と比べて機動力の底上げがされてるね~しかも打鉄の装甲を一部外して代わりにラファールの装甲を取り付けて防御力の低下を可能な限り抑えているね。考えたね~」

 

「…………あれ?俺の目の前にいる、この子誰だったけ?」

 

「ほ、本音は整備科志望だから……」

 

 本音の指摘に目を見張る一夏と気持ちはわかると頷きながら説明する簪にひどーいとダボダボの袖を振り回す本音に箒は不満げな顔になっていた。

 

「随分と仲が良いんだな……」

 

「別に悪いことではないだろ?」

 

「……」

 

 どうしても、話が進まない。どうやら箒は二人きりなら話が弾むが、他の人がいるとそうでもないらしい。

 

「それより聞いてよ! アイツ、また私にしつこくゴチャゴチャ言ってくるのよ!? 」

 

「アイツ?」

 

「こいつの兄よ!」

 

「ああ、アイツか」

 

 箒が理解し、秋正を思い出すと眼のハイライト(SAN値)がどんどん消えていく。

 

「彼ね……」

 

「あれ?簪もアイツにあったの?」

 

「ううん、でも、アイツのおかげで私の専用機開発一時凍結しかけた。だから今は自分で組み立てて作っている」

 

「流石に、日本を背負うかもしれない代表候補生の専用機を凍結させる気は政府もなくてね~、面目丸潰しだし、まぁ、開発所の倉持技研の一部がモルモット(秋正)の研究に力を入れたいから秘密裏に勝手に凍結させようとしてたのが原因だし~、まぁ、それがバレてトップを含めた何人かは総辞職したよ~、まぁ、そのときにはすでにかんちゃんは、自分で作るからって言って作りかけの専用機もらちゃったんだけどね~、因みに今は日本政府の援助で作っているんだよ~」

 

「うわぁ……」

 

「お前も、苦労しているんだな」

 

「うん……」

 

 ここに、秋正被害者同盟が結成された歴史的(?)瞬間であった。正確には簪の件に関しては、秋正は直接関係ないのだが、一夏が専用機授与を辞退した理由が理由だったため、余計に秋正に悪感情を募らせているのである。せめて、それで困る人はいないのか位聞けば印象は変わっていたかもしれない。

 

「まぁいい、とりあえず俺もピットに向かうからお前らも、さっさとアリーナの席で観戦しとけ」

 

 その言葉に四人ともアリーナの観客席に向かっていった。尚このとき、ファンブルでも起こしたのか、秋正にエンカウントして逃げ回るはめになる。

 

「「「「来るな!」」」」

 

 

 

 

 

 セシリア・オルコットは貴族である。

 そんな彼女が今、話題の男性IS操縦者に対する感情は侮蔑と興味である。侮蔑は一人目の男性である織斑秋正。彼に関しては、失笑しかでない。知り合いなのか意中の女子なのかはわからないが、一人の女子に固執して追いかけ回す、しかも相手は明らかに良い顔をしていない。しかも、二組に転入生が来たらそっちの尻を追いかけ回す始末。相手から、教えを乞うばかりで自発的に努力しない。セシリアが最も嫌うタイプの男だった。恐らく、両親が死んで、家を一人で支えるためにIS業界に入りたてだったの女尊男卑思考の頃なら間違いなく晒し者にしようとしていた自信がある。

 それを捨てたのは、単にモラルや品位の問題だけでなく、家を支えることにも、上を目指すのにも、そんなものの必要性がないと悟ったからである。ISが出てからは女性の立場が強くなったと思っているのは、一部の頭がお花畑の女性だけである。実際は男と女の力関係に大差は出ていない。IS業界にも男の働き手はいるし、男が重要なポストについていたりもする。まぁ、一つ言えるのは、世界は元の鞘に収まったということなのだろう。有能なら重宝され、そうでないなら淘汰される。その現実から目を背けた女性が向かう先が女尊男卑というわけだ。

 話を戻すが、セシリアにとって、一人目の男に興味はない。何か、隠された一面があれば話は変わってくるだろうが、あの男では悪い意味でしか発揮しない気がするとセシリアの勘が言っているのだ。

 だから、今の彼女の興味は二人目に向かっている。可能であれば話をしてみたいと思ったが、流石にクラス代表戦前の期間に話しかけるのは憚られた。

 

(まあ、この戦いでわかるでしょう……一夏さんの経歴は誇ってよいもの……だから、彼は恐らくただで終わりはしない)

 

 だって自分と彼は似た者同士なのだから。

 

 

 

 一年一組クラス代表戦、総当たり戦

 

 一回目、織斑一夏VSセシリア・オルコット

 

 

 

 元より、この試合に一夏が出る必要性はない。絵描きがスポーツに情熱を注がないように。一夏もISに情熱など注がない。

 では何故か?一つは、このクラス代表戦が実質彼にとってIS学園入学試験で行われる実技試験の代わりであるということ。彼も学園側の意を全く酌めない訳じゃない。そしてもう一つは―――

 

「来ましたわね」

 

「ああ、お手柔らかに頼むよ」

 

「何でしたら、降参してもよろしいのですよ?貴方がやる気がないのは経緯からして仕方ありません。やりたいことに全力を注げると思ったらこれですもの。私ならグレますわよ?」

 

「フム、実に魅力的な案だが、遠慮しておこう。確かにISに情熱は注げない……『IS』にはな」

 

「?」

 

『まもなく、試合を開始します。両者、規程位置に着いてください』

 

 会場のアナウンスと共に、二人の会話は終わる。先ほどの言葉は少々気になるが、それに気をとられるほどセシリアの精神は柔じゃない。一瞬で切り替え試合に集中する。

 

 

 

 

 

 そして試合開始のブザーが鳴った。

 

 

 

 

 

 

 最初に動いたのはセシリアだった。己の得物であるスターライトmk3が火を吹き一夏に迫る。が、それを一夏はバーニアを吹かせて避けた。そしてそのまま、高速で大回りにアリーナをぐるぐると回り続ける。

 

(なるほど、銃と戦う心得は持ち合わせている……というわけですね)

 

 基本的に銃は動き回る的に当てるのは難しい。一夏もそれは心得ている。だから常に動き回って狙いを定まらせないようにしているのだ。そしてそれは当然銃を扱うセシリアも心得ている。

 初手からここまで動けるのは想定外だが、これくらいならISにある程度乗れば誰でもできる領域、驚異はない。セシリアはあえて構えを解いた。

 

(構えを解いた?……何を考えている?)

 

 一夏はセシリアの意図が読めなかった。そして、数瞬考慮して、その誘いに乗ることにした。

 

(良いだろう、その誘いに乗ってやる)

 

 一夏は玉鋼に装備されている刀を展開しセシリアに近付く。

 

(後ろは当然奴も警戒している、右は得物がある。意表を突く形で正面もアリだが、リスクが高いな……カバーしきれん、となると左だな!)

 

 一夏はスターライトmk3を持たない左から接近して斬りかかることにした。今の自分の技量では上下から斬りかかるという芸当は残念だができない。さっきの動作からしてあの銃は両腕で構えないと狙いを定められないタイプと踏んだからだ。両腕で構えて撃つというアクションを経る間にこちらの一太刀のほうがが速い!

 

 そして斬りかかろうとした刹那―――

 

 

 

 

 

 

 

 片腕で左に向けられた銃口(・・・・・・・・・・・・)が火を吹いた。

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

「……よく避けましたわね。とても今日、初めてISに搭乗した人の動きとは思えませんわ。まさか、瞬間停止した上でバーニアとPICを停止して落下することで射線から逃れるなんて、普通考えませんわよ?」

 

「(今日初めて、か)……元より罠があることを前提に挑んだ。だから対処できた。しかし、それ……片腕でも射てるんだな……ッ!」

 

 瞬間、バーニアを吹かせて背面飛行でその場を離れる一夏。そのすぐ後に、レーザーが通りすぎた。いつの間にかセシリアの第三世代武装BTが一夏の後ろに存在していた。

 

「いえ、狙って撃つなら両腕で構えて撃つ必要がありますがただ撃つだけなら片腕でもできますわよ?」

 

「中々エグいな!だかそういうのは嫌いじゃないぞ!」

 

 いつの間にか四基に増えたBTに撹乱されてしまい、距離が元に戻ってしまっていた。

 一方、観客席では箒はよくわからんという顔をし二人の代表候補生は今のやり取りを見て下を巻いていた。

 

「……凄い」

 

「ええ、まるで詰め将棋?ってやつみたいね」

 

「どう言うことだ?」

 

 箒の質問に簪が答えた。

 

「まず、一夏さんは接近するために円運動をすることで照準を定まらせないようにした」

 

「それは私も何となくわかっている」

 

「次にオルコットさんはわざと隙を作ることで一夏さんの攻撃を誘った。これは逆に言えば、一夏さんの攻撃してくる場所を限定したとも言える」

 

「あのタイプの銃は、普通に使うのなら両手で持たなきゃ的に撃てないけど、引き金を引くだけなら片腕でも簡単にできるからね」

 

「……?それがなぜ凄いのだ?」

 

「つまり、イギリスの代表候補生は、一夏の次の行動を完璧に読みきって左に銃口を向けたのよ。片腕で照準がぶれても、ほぼゼロ距離なら関係ないし……いってしまえば自分から一夏に照準を合わせたんじゃなく、一夏が(・・・)セシリアの照準に誘い込まれたのよ」

 

「でも、一夏さんもそれを読んだ上で誘いに乗ったからこそ瞬時に対応できた。PICを解除して、重力で下降することで!しかも、あの攻撃の最中にオルコットさんが密に放ったBTにも反応して瞬時にPICを再起動して背面飛行で回避していた。相手の次の行動が読めなくちゃ不可能だよ!こんなの!」

 

「あの一瞬でそこまでの駆け引きが行われていたのか……」

 

「それにしてもイッチーすごいね~、普通動かすだけでも凄い大変なのに」

 

 更に管制室では、麻耶もこの戦いの内容に驚いていた。

 

「織斑君、今日が初めての試合とは思えない動きですね。ほら、すでに適正ランクがAになっていますよ!」

 

 まるで、ISの実力者同士の駆け引きに麻耶も嬉しそうに言葉にする。が、千冬は何でもないように答えた。

 

「いや、そうでもない」

 

「え?」

 

「アイツは、確かに今日初めてISでの実戦をしたが、動かしたのは今日が初めてじゃない」

 

 千冬の思わぬ言葉に麻耶は困惑した。

 

「えっと、確か織斑君が動かしたのは適正調査の一回だけですよね? もしかして、目の届かない所でアリーナを借りて練習したとか?」

 

「いや、違う。だが、確かに練習はしていた。アイツの脳内(・・・・・・)でな」

 

「……はい?」

 

 

「少しアイツについて教えておく、アイツは剣術以外にも槍術、杖術、柔術、空手、ムエタイ……それ以外にも様々な武術を修めている。特に剣術は流派まで細かくな」

 

「ええー!? そ、そんなに!?」

 

「アイツは、職業柄、基本的に『思い込む』こととイメージトレーニングが得意だ。何らかの役をもらえば、必ずソレになりきる、例えお伽噺のような世界観のキャラクターでもだ。でなければ客の心は響かないとな。無論、短期間でそれらを可能にしたのは、それだけが理由ではないが……アイツ曰く『自分はソレをしている。自分はソレが出来る。もう出来ている。自分はソレなのだ』と自己暗示に近い程のイメトレをしているらしい。そして、ISの動きは基本的にイメージが重要だと言うのは知っているだろう」

 

「……成る程、織斑君は空を飛ぶイメージがすでに出来ていると」

 

「『出来ている』と言うのは語弊があるな。アイツは疑っていないんだ。自分が空を飛ぶことは呼吸をすることや割り箸をへし折るくらいに当たり前に出来ると……つまり、イメージするまでもない状態に仕上げている。この十日間、奴はひたすらイメトレを行って『ISを扱う自分』の姿に微塵も疑っていない。今じゃ奴にはISは自分の身体の一部という認識だろう」

 

「はぇ~」

 

 イメージだけでそこまで出来るのかと麻耶は感心していた。

 

(最も、それでも一夏は負けるだろう)

 

 それは相手が代表候補生だからだとか、第二世代と第三世代機によるスペックの差じゃない。もっと根本的なところでだ。

 

(それは一夏が一番わかっているだろうがな)

 

 

 

 

 気品と優雅さを面に醸しながらもセシリアは内心驚いていた。

 

(まさか私の戦術をここまで掻い潜るだなんて……)

 

 先ほどから、セシリアは一夏の行動を予測してビットを配置し、放っている。だが、確かに一夏は、その行動をするのだがクリーンヒットしないのだ。相手が近距離装備しかないから、攻撃こそされてないが、これで遠距離装備を持っていたらと思うと背筋が凍る。

 セシリアの第三世代兵装BT平気は、理論上(・・・)は自在に動き回れて、更にビームを偏向させることが出来る。しかし、今のセシリアにそこまでの技量はない。というよりも、現状イギリスでセシリア以上にビット兵器を扱える操縦者がいないのだ。普通の操縦者じゃ、一つ動かすだけで脳を酷使してひどい場合気絶してしまう。それを15歳で全て自在に動かせるだけで、凄まじいと言える。

 だが、セシリアはそこで満足する気はない。何れは理論値までBT兵器を扱いきる気でいるし、本国では新しいBTを開発中と言っている。とは言え、セシリアは出来ないものをねだるような性格ではない。出来ないのなら出来ないなりの戦略を考えれば良い。そして行き着いた先が―――

 

 

 

 逆に考えるのですわ。動けないのなら、動かなくてもいいさと

 

 

 

 そしてできたスタイルが、理論的に相手の思考を読み、行動を抑制し操り、自分の思い通りに事を運び、決して相手にペースを握らせない戦闘スタイルだ。

 それは奇しくも、一夏と似た戦闘スタイルでもあった。一夏もまた、相手の事を考えて戦う……もっと言うなら空気が読めるのだ。これは演技をする際に、相手の空気を読んでアドリブでフォローしたり、ノリをお互い高めてテンションを上げていくのに必須だったからだ。言うなら、相手のペースに合わせ、時に自分のペースに相手を巻き込む……今回もその応用である。

 

(大分動けるようになったな、参考書と授業でISの運用はイメージが大事とかかれていたから、ずっとイメトレしていたが……ここまで動けるのか。でも、このままじゃじり貧だな……かといって仕掛けるにしてもな……)

 

 何とか避けているが時折レーザーが機体に擦って横切っている。その度にシールドエネルギー(SE)が僅かだが削られていく。

 

(やっぱ、熱意の差だなこりゃ。後の『演技』の為の引き出し作りのために動かして戦っている俺じゃ、ISに人生を賭ける彼女とは情熱が違う)

 

 二人を別つ最大の要因はまさにこれである。一夏が、あくまでISを扱うのはあくまで演技の為。ISを操縦したという経験はこれから先の役者人生に役に立つという打算がある。言ってしまえば不純なのだ。演技の為にISを扱う、何処まで行っても一夏は役者なのだから。それを第一と考えてしまう。それが、純粋にISを駆るセシリアとの戦いに結果として現れていた。

 

(まぁ、アイツの思考は大体読めてはいるが……それにしても凄い胆力だな。常人ならここまで、避けられたら普通焦るものだが彼女にはそれが一切ない。さすがは代表候補生か……て言うか、鈴の奴はたった一年で此処まで登りつめたんだよな?……パネェ)

 

 一夏は密に友人に敬意を評しながら、SEが遂に危険域に達したことで最後に一太刀浴びせるための行動に出た。

 

(まずは……左下!)

 

 瞬間、左下に展開されたBT。普通は焦るものだが一夏は流れるようにBTの後ろに回り込み、一線―――叩き斬った

 

「なっ!?」

 

 この試合、初めて驚愕を露にした。あまりに滑らかなその動きに一瞬、これがIS初実戦の動きかと、今まで例えそう思っても冷静に対処できたのに、BTを破壊された動揺から反射的に固まってしまったのだ。その隙を逃さずにそのまま突撃する。

 

「くっ!」

 

 慌ててスターライトmk3を構えて、迎撃しようとトリガーに力を込めた瞬間……

 

 

 

 一夏が、グレネードランチャーを構えていた。

 

 

 

(え?)

 

 

 

 さっきまでは、確かに刀を持っていたはず、いつ展開した?まるで、国家代表クラスじゃないか。いやそもそも、持っていたなら何故もっと早くに―――

 そんな疑問が巡るが、一夏は当然答えるわけでも、答えが出るまで待ってくれるわけもない。

 そして、グレネードランチャーの弾がスターライトmk3の銃口に吸い込まれた。このとき、セシリアも撃鉄に指をかけ丁度、引き金を引いてしまっていた。

 

「キャア!」

 

 結果、スターライトmk3は自らの熱とグレネードランチャーによって想像以上に爆破、セシリアのSEを大きく削る。そしてセシリアが、体制を立て直しつつ残るミサイルビットを解放しようとした瞬間。

 

 

 

 ビィーーーーーー

 

 

 試合時間超過により終了、結果。織斑一夏、シールドエネルギー76。セシリア・オルコット、シールドエネルギー639により勝者、セシリア・オルコット。

 

 

 

 勝敗が決した。

 一夏と千冬の予想通り、一夏の敗北とセシリアの勝利で。しかし、会場はその攻防に沸き上がり、両者に惜しみない拍手が送られた。

 

 




書いててセシリア強すぎな件。
オ、オールレンジ攻撃が出来るなら、自分が動かなくても良い戦いだって出来るはずだからっ!
後、セシリアはイギリス貴族だからね。あんな発想も出来るさ。


さぁ、秋正くんはきっとこれ以上の試合を見せてくれるはず()
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