マジで有難うございます!
「では、これよりISの実技の授業をする」
一夏が入学して初のISの実技の授業……
「先ずは、軽く準備体操をしてからグランド十周する」
しかし、中身は陸上の長距離走かと見間違える程の体育だった。当然一部の生徒が不満をあげた。
「何を驚く? ISバトルと言っても基本的に今までの戦いの延長線にすぎん。自分の肉体と精神がそのままそのISの実力となる。身体を鍛え上げ技能を身に付けるのは必然だ。オルコット、お前は銃は使えるか?」
「はい、ISの為に一から学び、免許も取得しましたわ」
「聞いたな?どんなものであれ、基礎を怠れば結果など出せん。わかったらさっさと走れ!」
織斑先生の一喝で生徒が走り出した。
「それにしても一夏さん、ずいぶん速いですわね……」
「全くだ」
走り出してから数十分経過し、現状、一夏の独走状態だった。
「私達を周回遅れにするなんて……」
一夏は一般生徒を周回遅れにしているセシリアや箒達をさらに周回遅れにさせていた。
「ゴールイン」
「織斑弟か……ま、お前ならこれくらいできるだろうな」
「もちろんです、プロですから。毎朝身体のメンテナンスは怠りません」
まだまだ余裕綽々といった感じの一夏、伊達に鍛えている訳じゃないのだ。因みに秋正は5位から10位位だった。
「では、次だ……」
唐突だが、一日の授業が終わった後のIS学園の生徒達の行動にはいくつかパターンがある。
一つは、アリーナと訓練機を借りた生徒達。当然、ISの練習を借りた時間が許すまで行う。一応、校則では、夕食時の時間帯を除き10時までアリーナが使えるようになっている為、ここには開場しているときはほぼ常に生徒が居るといっていい。
二つ目は、それ以外の訓練施設を使う生徒。ISバトルの性質上、選手を目指す生徒は様々な武器を一定の領域まで扱えなくてはならない。日本に在りながら、IS学園に治外法権が必要なのは一つ目の理由を含めてここにある。未来のIS業界を担う若者を育てる場なのに、一々ISを使うのに国の許可を得たり、日本の法律を適用して銃刀法違反などを適応されて使えないでは本末転倒だからだ。最も、如何にIS学園に治外法権があっても、流石に力関係は国>学園であるため、その気になればIS学園何て簡単にどうにかなってしまうが……故にIS学園は常に国にとって最低限有用な人材を送り出す義務が生じている。三年間、IS学園に在籍して『ISはオシャレなファッションの一つ』等という価値観を持っていたら国からしたら『お前は三年間何を教えていたんだ!?』というバッシングを受け、そうなったら各国は『IS学園より、自国の軍隊で育てた方がいい』という結論が出て潰されかねない。ここ数年、入学時点で代表候補生がいるという事例も増えていることも拍車をかけているため、実はIS学園も必死なのだ。なので、銃や爆薬等の武器の使い方を教える施設がある。これ等が授業で本格的に使われるのは二学期後半からだが、使うだけならいつでも使え、専用の教師もいるし、教師が合格判定を出せば月に一回行われる試験を受けて免許をとる事もできる。専用機持ち以外の、一年生の最初期でここを使う者はまず、本気でISに人生を賭けている者と言えるだろう。
三つ目は部活動に勤しむ生徒。これは主に手持ち無沙汰なため暇潰しに行っている者、気分転換にやっている者である。中には箒のような、真面目に部活動に励むものもいる。そして―――
(突然ですが、私、ワンサマーはとてもお腹が空いております)
(このまま空腹が続けば、私の食への渇望が
(もうこのお客さん、かれこれ一時間迷ってるよ……)
このように魚市で今日の献立に悩む阿呆もいた。
「そういえば気になったんだけど~」
切欠は、夕食を食堂で済ませた、布仏本音の一言だった。
「イッチーって普段、何処で晩ご飯食べているんだろうね?」
その言葉にそういえば……と思い出すいつもの面々。
「外食なのでは?」
セシリアが最もな意見を言うが箒と鈴と簪があり得ないと首を振る。
「一夏の食への探究は尋常じゃない」
「アイツ、『ちょっとラーメン食べたくなった』の一言でスープからチャーシュー、麺、果てはメンマまで作り出すからね」
「前から、某動画サイトで飯テロ動画をあげていた。あれは深夜に見るものじゃない」
「そ、そんなに拘るんですか!?」
すると、本音がポンとダボダボの裾で手を叩いて思い付いた。
「それじゃあ、イッチーの部屋に行こー!」
「「「えぇ!?」」」
「えー……あの魚市での死闘(脳内)により導きだした結果―――」
全部買って、夕食として食べることにいたしました!
「最初からこうしておけばよかったんだ……っ!悩む必要なんてなかったんだ……っ!」
馬鹿もとい馬夏、ここに誕生。一夏の目の前には、様々な魚介類が並んでいた。軽く見ても五人前はある、とても食べきれるとは思えない量である。
「さて、先ずは、魚は内臓を取り出しつつ三枚に下ろして、海老は頭と殻と膓を取り除いて、貝は…………」
訂正、今日そもそも、夕食とれるかも怪しい有り様だった。
「魚を煮付けて、この間に他の魚さばいて刺身にして、他は天麩羅に……ああ、牡蠣は茶碗蒸しにしてしまおうか。余らせた海老は味噌汁作った際に残した出汁に調味料入れて出来たものを浸けて含ませに。魚の切れ端は大葉、白葱、生姜、味噌、日本酒(ちー姉経由で入手)でなめろうにして。サラダは……大根と新玉ねぎの梅風味の和風サラダ……いや、確か、ここに来てすぐに塩麹作っていたからそれも使うか、おっと野菜といったら行者にんにく忘れるところだった!コイツと残りのタネも油にそぉい!」
(※天麩羅を揚げる際は一度に揚げるのは下策ですので本当は少量づつ揚げています。尚揚げるのは野菜から揚げていますのでご安心を)
今日の献立
ご飯(おこげ有り)
刺身各種盛り合わせ
鮃の煮付け
味噌貝焼き
真鯛の幽庵焼き
天麩羅(海老、穴子、鱚、帆立、鮑、鮑(肝)、茄子、南瓜、芋、蓮根、行者にんにく、大葉、かき揚げ)
牡蠣の茶碗蒸し
海老の含ませ
なめろう
味噌汁
大根と新玉ねぎのの和風塩麹サラダ
「あ、デザートの柚子シャーベット忘れてた」
デザート 柚子シャーベット
「んー……暴力的な光景だ!食わずにはいられない!いただきまー……」
コンコン
瞬間、一夏の部屋の空気が凍る……っ!瞬時に、絶対零度もかくやの勢いで凍りついたのだ!
ここだけの話、一夏は食事の邪魔をされるのが一、二を争うほど嫌いなのだ。
(ちー姉かな?……ああ、なめろう取りに来たのか……)
まぁ、それならばいつもの事だと面倒くさいと思いつつも扉を開けようと鍵を開けようとした刹那……っ!
(…………いや、待て!そもそも、ちー姉ならばノックの後に一言声をかけるはずだ!あんなことがあってからそうしたはずだ)
あんなこととは
『ここが織斑君の部屋ね!』
『一夏君がやって来た時がチャンスよ!』
『鍵を開けた瞬間に中に入ってそのまま既成事実を!』
『……(無言の織斑千冬)』
当然、その場に居合わせた千冬に鉄拳制裁と寮内の風紀を乱したということで一ヶ月の学園中のトイレ掃除を言い渡された(現在進行中)。そして、一夏の部屋は急遽、寮長である千冬の隣に移された。
そんな経緯があり、先生がこの部屋を訪ねるときはノックの後、必ず名前を言うことがルールとして定着していた。そして今回はそれがない……間違いなく扉の向こうにいるのは生徒。
(ここの部屋のチェーンロックを使うときが来たようだな!)
彼はそう言っているが、実際は何度も使っている。
「一夏~」
「一夏さん、反応有りませんわね……やはり外食では?」
「いや、一夏に限ってそれは……」
「おー、いい匂い~」
扉の前で、クンクンする本音にお前は犬かと鈴が思わず開けようとした……がチェーンロックがしており途中までしか開かない。そして開けた瞬間!
芳しい柚子+αの香りが四人を襲った。
「「「「?!!」」」」
あまりの香りに思わず、にやけてしまう面々。
「な、何ですの!?この、香りだけで美味しいとわかるこの匂いは!?」
「これは……柚子か?」
「鰹出汁の匂い……」
「味噌と卵の香りだけでお腹すきそう……」
中に何があるのか、僅かに見える隙間から覗こうとする三人。そんな中、一人だけ違和感を感じていた。簪である。
(いい匂いだけど、どうしてチェーンはかかっているのに鍵はかかっていないの?)
少し考えればわかる疑問……そもそも一夏は用心深い。IS学園に入学する前はわからないが、少なくともIS学園に入学してからは学食をしていないし、休み時間も人気のないところで静かに暮らすほどだ。
その一夏が、今に限ってチェーンこそしているが、鍵をかけ忘れるなんて凡ミスをするだろうか?そう思いながら、なんとなく、周囲を見渡した。思えばこれが簪の命運を分けたのだろう。何せ隣の部屋はさっきも言った通り……
泣く子も黙る寮長室なのだから
「……っ???!!!」
とっさに声をあげずに、口を防いだ自分を誉めてあげかった。そして、これは恐らく織斑一夏の罠。寮長室が隣なのだから、寮長千冬がここを通る可能性はかなり高い。そんな中一夏の部屋にたむろしていたら間違いなく制裁案件である。ならばこちらのとるべき策は一つしかない―――
(ごめんなさい)
簪は更識流気配遮断術と歩法術を用いて、その場を後にした。
その後のことは、簪にはわからない。
『チュチュンガチュン』
『言ったそばからまた油断……バカは死ななきゃ直らない!』
「凄いな、これCV一夏なんだよな」
「音域の広さが違う」
「同一人物とは思えないよね~」
「え!?これ両方とも一夏さん何ですの?」
アリーナの観客席で簪と本音が暇潰しに持ってきたアニメを見ながら感想を言う箒とセシリア。
とてもこれからクラス対抗戦が行われるとは思えない雰囲気である。因みに先日の簪が逃走した後の事は全員、記憶からなくなっているらしい。真相は謎のままである……思い出したくないだけかもしれないが。
まぁ、弛い雰囲気なのは彼女達だけではない。
「でさー、その時の顔が」
「マジで!?」
「あ、そういえば昨日の見た?」
「見た見た!ランニングデュエル実装されたね!」
このように、一組全員がこの有り様なのだ。その理由は明白。
第一試合 織斑秋正VS凰鈴音
結果が見えている試合程、退屈なものはないからである。この試合で見るべき価値は一つ、たった一年で代表候補生にまで登り詰めた鈴の実力がどれ程のものか……の一点である。そして―――
『さぁ!青眼白竜選手、前へ向かっていく!おっとここでパス!華麗に紅眼黒竜選手がキャッチ!してそのままシュートするかと思いきや!今度は銀河眼光子竜選手にパス!そして今度こそシュートなるか!?でたぁ!銀河眼選手の『破滅のフォトンシュート』だぁぁぁぁ!ゴールキーパーのメタル・ガーディアン選手防げない!』
スマホでサッカー試合を観戦している阿呆もいた。
「織斑弟!何をしている!?」
阿呆こと、織斑一夏はサッカーの生中継を見ていた。なぜ観客席じゃないかは察していただきたい。
「もうすぐ試合だ」
「はーい」
試合開始前、鈴はISを纏ったまま静かに瞑想していた。何て事はない、試合の前にはいつもやっていることである。
「…………」
鈴は、普段の言動から忘れられがちだが、頭が悪いわけではない。仮にも代表候補生なのだ。ちゃんとISの基礎理論等は頭では理解し熟知している。だが、それ以上に感覚でそれらを理解しているだけなのだ。
一方で秋正はそれらを理解していない。否、そもそも転生者である彼にISを理解するということがそもそも難しいと言っていい。
例えば、魔法、よく用いられる設定において魔力やマナ、エーテルと言った単語が使われるが『じゃあそれって何?』と言われたら殆どの人間は答えられないだろう。仮に『魔法が使える源』と答えても『じゃあなんでそれを使うと魔法が使えるの?』と聞かれたらまず答えられない。『そういう設定だから』としか言えないだろう。
それと同じように、秋正もISがどうやって動いているのか、存在しているのかを理解することができていない。何故なら彼にとって、ISとはラノベの中にある『重要な設定』でしかなくそういうものとしか認識できず、『細かいことを気にするのは無粋』と無意識に理解することを拒絶してしまっている。自分が零落白夜を使えるのも、ラノベで一夏が零落白夜を使える時と同じく『なんだかよく知らないけどそういう設定』としか無意識にしか認識できておらずそれで思考を放棄しているのである。
だからこそ……
「でぇぇぇぇい!」
「ハァ!」
「くぁ!?」
鈴に手も足も出ないのは必然だった。秋正が千冬に教えてもらった瞬時加速を用いた。秋正なりの策である、『開始直後に瞬時加速で接近して零落白夜で斬る』という渾身の戦法も、鈴はいとも容易く背後に回り込んで斬撃と衝撃砲のダブルパンチで凌いでしまった。
「な……何で……」
「んー……勘?まぁ、自然に動いただけの話よ」
理不尽だとこの時秋正は思った。最も、これは今まで鈴と対峙した者全員が懐いた感想である。鈴は、セシリアのような理論武装による戦術はしない。その時の相手の出方によって最適な戦闘スタイルに切り替えているだけなのだ。しかも、鈴の専用機である『甲龍』は、近距離戦闘主体だが空間を圧縮して放つ第三世代兵器『衝撃砲』の存在のお陰で遠距離もこなすことが出来るため、鈴の戦闘をより柔軟に強力にアシストしていた。加えて元々のポテンシャルも高い、秋正に勝ち目などなかった。
そして、秋正の攻撃が雪片二型による攻撃に変わったのを見て鈴も応戦する。一応、秋正とて考えなしというわけではない。零落白夜は莫大な攻撃力と引き換えに発動中はSEを消耗し続けるデメリットがある。故に零落白夜の使用法は主に放つべき時……つまり決められる時に放つ必殺技なのだ。それ以外では使わないのが上策ということくらいは心得ている。だから鈴も最適な行動をとった。
「鈴の奴、パネェな」
「ほう、わかるか?織斑弟?」
「アイツ、わざと接近させて零落白夜誘発させてその上でカウンター咬ましてますね」
鈴は、自分から接近して鍔迫り合いをし、違和感なくわざと秋正に弾かれ秋正が零落白夜を発動した瞬間に、青竜刀と衝撃砲によるカウンターを決める戦闘をしていた。中には、秋正が攻撃した瞬間に瞬時加速をして後ろから攻撃する芸当も見せている。秋正は己の得物の効果による相乗効果によってあっという間に危険値まで追い詰められた。
「そうだ、あの対応力こそが、鈴が一年で代表候補生に登り詰めた理由だ。織斑兄から見たら凰が視界から一瞬で消えたように見えているだろうな」
「相手の隙が多いとはいえ、一歩間違えれば即死ですよ?」
断っておくが鈴は、これが最適だと頭で理解して行動しているのではない。本当に自然に身体が動いているだけなのだ。
「あれで、IS適正Aなのですから驚きですね……まぁ、逆に言えばまだまだ伸びしろがあるとも言えますよ」
山田先生の言葉に一夏も驚きを越して呆れていた。あれで円熟期じゃないのかと。
「本人の中にまだ違和感があるのだろうな。『何で私こんな動きしてるのか』とな」
「疑わなければ良いものを」
「そんなこと出来るのはお前くらいのものだ。私とて現在の適正になるまでそこそこ時間かけたからな」
(まるで俺が変人みたいな言い方だな)
一夏が心の中でそんなことを思っていたときだった。
その時、アリーナのバリアを突き破ってなにかが飛来してきた。
織斑一夏
職業 俳優(最近は声優業も)
悩み 監督……‼ギャグキャラがしたいです……