〜side 北条加蓮〜
4月3日の夜。北条加蓮は外套の女性に手渡された紙を見ながら召喚の儀式を行うための準備を行っていた。
「あとは…。『アイドルに関係あるもの』か。」
私は思い出の品。プロデューサーさんに貰った、歴代のシンデレラガール達の写真集を魔法陣に置く。『お前もいつか、この写真集にのれるようなアイドルになるんだぞ。』彼の言葉が脳裏に蘇る。まっててねプロデューサー。絶対に叶えてみせるから。
「これでいいんだよね…。」
目の前の魔法陣と紙を見比べながら間違いがないかチェックする。
見る限りでは間違えているところはなさそうだ。
「よし。これで。」
北条加蓮は正直半信半疑であった。普段の彼女ならこのようなオカルトじみた行為はしないだろう。ただ、あの外套の女の目を見ていると、嘘をついているようには思えなかったし、なによりも、アイドルをもう一度やりたかった。藁にもすがる思いでこの儀式をおこなっている。
本当に願いが叶ったのならば。他の皆とレッスンしたり。ライブをしたり。プロデューサーさんと笑いあったり。これ以上素晴らしいことはないだろう。
彼女は。決意した。告げる。決意の言葉を。英霊召喚の言葉を。
「ーー誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、偶像の守り手よ―――!」
魔法陣が蒼く光りだす。
そして。
1人の
彼女は加蓮の右手の甲を見てから言った。
「サーヴァント。セイバー。ふーん。あなたが私のマスター?まあ、魔術回路的には悪くないかな。体の方はちょっと病弱そうだけど。」
「う、うん。よろしくね。」
信じられない。説明を受け、理解したつもりで、自分で儀式を執り行ったにもかかわらず。やはり。信じられない。魔法陣から、本当に『英霊』とやらがでてきてしまった。
「これより私の剣はあなたと共にあり、あなたの運命は私と共にある。契約はここに完了した。」
一間置いて、
「私の真名は渋谷凛。貴女と同じ、アイドルだったものだよ。といってもこの世界にいたわけじゃないけどね。貴女達とは別の世界のアイドルだったのだから。」
落ち着いた声色で彼女は話す。何を言っているのかわからないが。別の世界?どういうこと?加蓮が疑問に思ったが
「まあそれはこの聖杯戦争には関係ないけどね。別に説明しなくてもいいでしょ。」
顔にでていたようだ。
「う、うん。ごめんね。」
加蓮はおどおどしながら謝る。
彼女、いや、セイバーは応える。
「いや、別に謝らなくていいって。大丈夫かなこのマスター。貴女は私の使役者なんだから堂々としててよ。」
「わかった。ごめんなさい。」
「だから…。」
セイバーはため息をついてもういいやという顔をし歩きだす。
「外に出ようか。ここら辺の地形把握しておきたいし。私は霊体化して普通の人には見えないようになれるから安心して。」
安心。できないのだが。夜道に元アイドルが出歩くなど。まあこんな時間帯なら人はいないだろうが。
「危ない人が出たら私がなんとかするから大丈夫だよ。」
セイバーは笑った。顔にでていたようだ。
「私も召喚前の事前情報として貴女達の境遇は知ってるけど。アイドル禁止法ってどういうことか全然わからないね。アイドル達は何もしていない。他の大人達の勝手な都合なのにね。」
霊体化したセイバーは外を歩いている加蓮に話しかける。
加蓮は俯き暗い顔をする。
「あ、ごめん。あまり触れられたくないか。」
「ううん…。大丈夫。 ところで、どこまでいけばいいの?結構歩いたと思うんだけど。」
加蓮は問いかける。
「本当は街中全部まわってほしいけどまあそれは明日以降でもできるし、じゃああの大きな建物までで今日は一旦家に帰ろうか。」
セイバーが言った大きな建物。国立の〇〇大学。そこそこ有名な大学で、作家などを輩出している。というのを聞いたことがある。
〇〇大学の近くまで歩くと、校門の前に人影があるのに気がついた。こんな時間に誰だろうとじっと見ると、知っている顔であった。
「文香…さん…?なんでこんなところに…」
元アイドル。鷺沢文香。新人でありながら、落ち着いた、清楚な雰囲気で文学少女の彼女はシンデレラガール候補に初年度から入っていた人気新人アイドルである。加蓮も何度かフェスで一緒にライブをしたことがある。
「文香さんなんでこんな時間に…」
加蓮は問いかける。
文香は一呼吸おいて、
「それはお互い様ですよ。加蓮さん。」
かつて、彼女の目にあった輝きは、ない。
ガキンッ!!
耳が張り裂けそうな金属音。目の前で火花が飛び、夜の静寂と暗黒を切り裂く。
「ッ!?」
「マスター下がってて!」
いつのまにか実体化し目の前で何者かの攻撃を受け止めたセイバーが叫ぶ。加蓮は言われるがまま少し距離をとりセイバーの方をみる。
セイバーは相手の攻撃を受け止めていた剣を振り相手を弾き飛ばす。
「セ、セイバーこれって…」
「うん。サーヴァントとそのマスターだよ。」
…?そんな。文香さんも、聖杯戦争に参加していた…!?
「まさか加蓮さんも聖杯戦争に参加しているとは思いませんでした…。ええ…。でもここで会ったからには戦闘は避けられませんよね…。」
文香は今までに見せたことのない、どこか諦めたような、暗い表情で言う。
「…。ちょっと待ってよ文香さん!この戦いは願いを叶えるための戦いなんだよね?文香さんもアイドルをもう一度やりたいって願いなんだよね!?なら私達が戦う必要は!」
加蓮がそう言いかけた瞬間、文香のサーヴァントがセイバーを攻撃する。
「貴女に私の願いを言う必要はありません。私はこの聖杯戦争に勝って願いを叶える。それだけです。」
文香はなおも落ち着いた声色で淡々と喋る。
「そんな…」
それに対し加蓮はかなり動揺している。一緒にアイドルとして活動した同僚が、今は殺し合いの敵として目の前にいる。加蓮の精神状態を不安定なものとするには充分な理由だった。
「マスター!あんたがしっかりしてなくてどうするの!?」
セイバーが言う。よく通る、いい声だ。
そうだ。
私は決意したはずだ。
聖杯戦争に勝って、文香さんも幸せにしてみせる。
加蓮は目を瞑り呼吸を整える。冷たい夜風が加蓮を奮い立たせる。
そして
右手を突き出し支持をだす。
「セイバー!敵のサーヴァントを倒しなさい!」
material
【クラス】セイバー
【マスター】北条加蓮
【真名】渋谷凛
【性別】女
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運A 宝具B
【クラス別スキル】対魔力 C 騎乗 D
【固有スキル】直感 B ? ?
【宝具】???