「はぁ」
危うく藍川を殺しかけた。そんなことしたら、お嬢様に迷惑がかかるからなぁ。その前にまずあんな汚物の血液なんて見せたくないしな。というかお嬢様の裸体を見た時、別の意味でも狂いそうになった。欲しい。自分だけの物にしたい。
お嬢様の自室の前に立ち、扉を叩く。
「誰?」
「如月です」
「ちょ、ちょっと待って!」
「かしこまりました」
「もう、タイミング悪いよ...」
服を着替え終え、晴を呼ぶ。言っちゃう、言っちゃうんだよ。もういいよね。もう疲れたよ。
「入ってきていいよ!」
「失礼します」
晴が入ってきたと同時に晴に抱き着く。もう我慢できないもん。仕方ないじゃない。
「お、お嬢様!?」
そう晴が驚いた顔で言ってくる。その表情も、私以外には見せないで欲しいな、なんて...
「お、お嬢様!?」
お嬢様が抱き着いてきた。そうやって、俺の理性を逆なでするようなことはやめてほしい。護りたくて、可愛くて、愛おしくて、自分だけの物にしたくて仕方ないから。
「晴、話があるの」
「話の前に離れませんか!?こんなの...」
「このままで!いい?」
「は、はい...」
抑えられるかな?万が一...
「このまま!いい?」
また...晴が断れないことをいいことに私は...こんな時くらい...
「は、はい...」
ほら、断らない...こんなことくらい...
「別に...断っていいんだよ...?こんな汚れかけた身体と引っ付くの...嫌でしょ...?」
これで突き飛ばしてくれた方が...いいな...まだ引き返せるから...
「いいえ。嫌なはずないでしょう?」
「え?」
ねぇ...なんで...どうして...?
「いいえ。嫌なはずないでしょう?」
だって、この感情は、たとえ、「独占欲」に覆われていたとしても、喜びと楽しさを合わせた「愛」なのだから。
「え?」
言うか?言わないか?いや、いつかはボロが出るんだ。お嬢様が誰か自分以外の人間と結ばれでもしたら、きっと...だから...
「私は、いや俺はな、君を愛してるんだ」
「君を愛しているんだ」
聞けた。絶対にこの人の口から聞けないと思っていた言葉が。わかる。いま私きっと盛大に顔を赤らめて泣いてる。嬉しすぎるよ。嫉妬なんて忘れてしまうくらいに。だから...私も...
「私も晴を愛してるよ。だから」
だから...私のことを...
高嶺お嬢様なんて呼ばずに...
櫻木さんなんて呼ばずに...
お嬢様なんて呼ばずに...
「だから、ちゃんと私のこと、『高嶺』って呼んで?」
「わかったよ、『高嶺』」
そして晴は先から近い顔をもっと近づけて、甘い口付けをする。
「晴、私だけを見て?」
「もちろん、というか君と会ってから君以外見れてないよ」
今度は私から顔を近づけ口付けをする。一段と顔が赤くなったのが自分でもわかる。
「高嶺、そんな顔されたら君の全てが欲しくなる...」
「私は前から君に心を縛られてたんだから、もう私は君の。だからさ...
奪って?」
それから私たちは私の布団に流れ込む。あぁ、ヤる気満々で布団敷いてたのはいいけど、二人用の布団にしておけばよかったかな?
「できるだけ優しくするけど、無理だったらごめんね?」
「大丈夫、きて?」
目を開けると白い天井。手には愛しい人の手。これほど幸せに感じる朝は初めてだろう。
「おはよう、晴」
「おはよう、高嶺」
ずっとこのままでいたいな。学校に行かず、高嶺と一緒に。そんな想いを心に忍ばせ、高嶺に口付けをする。
「んぅ、ぷはぁ、晴、今日は、さ、ちょっと一緒に行きたいところがあるんだけど」
「学校は、欠席かな?」
「うん、連絡お願いできる?」
「もちろん」
「あ、ついでに、彩月たちに、ね?」
「わかったよ」
付き合うってこと言えってことでいいよな、うん。
「ふぅ」
心が軽くなった気がする。愛しい人と寝るのってこんなに幸せに感じるんだなぁ。自分でお願いしたのに早く戻ってきてほしく思う自分がいる。私ってどれだけ欲張りなんだろ...そんなことを考えていると扉をたたく音が聞こえた。
「誰?」
「俺だよ、あと菜月さんと彩月さん」
「入って」
「失礼します、お嬢様、おめでとうございます」
「ありがとう、二人とも」
晴にも迷惑かけてるけど、この二人にも結構苦労かけていたな...
「二人とも、いつもありがとね」
「いえいえ、昨夜はお楽しみだったようで」
菜月がニヤリとほほ笑む。恥ずかしい...
「で、どこに行くの?」
と晴がむっとした顔で問いかけてくる。かわいい。
「あ、そうだった。桜、見にいこ?」
桜は好き、名前が桜に溢れているのが桜に近づいた要因だ。「桜」城「高嶺」と言った感じに桜だらけ。桜も木だから櫻木ならすべて桜。
「まだ二月だから見るのは寒桜になるねぇ」
「うん、できれば高嶺桜が見たかったけど、夏になったら、ね?」
「おっしゃるとおりに」
晴になんか茶化された気分...
「むぅ」
「そんな顔されたら欲が抑えられなくなるのだが?」
「知らないも~ん」
こんな幸せな生活、もっと前からできてたら、良かったのになぁ。そう思わずにはいられない。