【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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ちょっと息抜きに始めました。
よろしくお願いします。


猫娘と入学編
NO.001 覚醒


「だい、じょうぶ……?」

 

まだ小学生くらいのぼさぼさした緑の髪の少年が血だらけになりながら必死に守った命があった。

そこで少年―――緑谷出久の命は尽きかけようとしていた。

だけど……。

 

 

 

 

 

 

それから時は経って、出久は中学三年生になっていた。

過去の大けがの事もあって半年は入院をしていた出久の事を母・引子以外には意外にも一番気にかけていたのはいつも出久が『無個性』だからとイジメていた爆豪勝己―――かっちゃんその人だった。

表面上はやっぱり出久の事を下に見ていたけど、出久が事故に遭う光景を間近で見てしまっていた彼は……無個性なのに迷わず飛び出していった出久の姿がいつまで経っても頭から離れずにいてしまい、今ではそっけない態度を取りつつもいじめの頻度は減っていた。

しかし、だからといってこの世界総人口の8割以上がなんらかの個性を持つ社会では無個性の出久はやはり舐めた視線を浴びることは多々あり勝己も己のヒーローの夢を目指すためには夢を諦めていない出久は少しばかり目障りな存在の一人だという事は変わらない事実だった。

 

そんな折に、学校の授業で進路希望が行われて当然、爆豪が雄英高志望という事を聞いてざわめくクラスメイト達。

 

「当然だ! 俺はなぁ、雄英に行ってオールマイトをも越すヒーローになって高額納税者ランキングに名を刻むんだよ!」

 

爆豪はそれはもう楽しそうにそう語る。

それを見ていた出久は体を丸めるように縮こまりながらもそれを聞いていた。

 

『すごいな、かっちゃんは……。でも、僕も!』

 

出久もわずかな希望を胸に雄英高を希望をしていたのだ。

だけどそれが先生の口から話された瞬間に沸き起こる笑いの声。

なにより出久が受けることを知らなかった爆豪はすぐに怒りの眼差しを出久に向ける。

 

「デェクゥゥ!? なぁに考えとんじゃ!? 無個性のお前がヒーローになるだと!」

「そ、そうだよかっちゃん。僕も……やってみなきゃわからないだろ!」

「……そうかよ。まぁ前にお前が助けそこなったあいつみたいになるのが関の山だと思うがな」

「ッ!!」

 

 

爆豪のその一言に出久は必死の睨みをする。

 

 

「けっ……まぁどうせ落ちるんだから構やしねぇけどな。ただし俺の邪魔だけはすんなよ!」

「……」

 

 

出久はなにも言い返せずにただただ胸中は悔しさを滲ませていた。

 

 

 

 

 

その放課後に出久はいつもの癖で付けているヒーローノートをカバンに仕舞おうとして、そこでまたしても横から爆豪にノートを取られてしまう。

 

「かっちゃん! 返してよ!」

「ヒーローノートか……ほんとに諦めていないんだな。フンッ!!」

「ああっ!?」

 

 

あろうことか爆豪はヒーローノートを燃やしてしまった。

 

 

「諦めろデク。お前じゃ誰も救えねぇ……それに、またあんな思いはしたくねぇだろ……?」

 

 

それは偏に爆豪なりの多少残されている優しさだった。

だけど出久はそれに気づく事が出来ずにただただ「それでも、諦めたくないんだ!!」と叫んだ。

涙を流す出久に対して爆豪はただ無言で燃えたノートを放り投げて取り巻きとともに教室を出て行った。

 

取り巻きの少年たちは爆豪に対して、

 

 

「いいのかよ爆豪? あいつは結構必死っぽかったけど……」

「いいんだよ。あいつは無鉄砲が過ぎるからな……無個性でよかったんじゃねぇか?」

 

 

とある過去を思い出しつつ、「胸糞わりぃ……」と吐き捨ててそのまま帰っていく。

 

 

 

 

 

 

 

出久はとぼとぼと帰りつつ、溜息を吐いていた。

 

『かっちゃんの馬鹿野郎……僕だって、僕だって……あの時ほんとだったら』

 

出久も過去を思い出すけど、救えなかった事実は変えられない真実のためにそれ以上は考えることをやめていた。

そんな時だった。

出久の背後に影が出来て、

 

「Mサイズの……隠れミノ……」

「ッ!?」

 

 

出久はとっさに振りむいたけどヘドロのようなヴィランは出久に纏わりついてしまった。

そこから聞かされる体を乗っ取るという発言に、出久は死の恐怖を抱きながらも助けを求めた。

そんな時に頭にどこからともなく響いてくる声……。

 

『………―――イカイ……?』

「えっ……?」

 

その謎の声に耳を傾けようとして、その前に、

 

 

―――もう大丈夫だ少年。私が来た!!

 

 

その力強い言葉とともに出久の憧れのヒーロー・オールマイトが出久を助けてくれたのであった。

 

 

「HAHAHAHA!!」

 

 

颯爽とヴィランを捕まえて軽快に笑うオールマイトが出久にサインや言葉を贈ってその場を立ち去ろうとしたのだけど、出久はオールマイトに掴みかかっていた。

 

 

「少年!? 離したまえ!」

「嫌です! その前に僕の話を聞いてくれませんか!?」

 

 

出久の必死の言葉にオールマイトは少しだけ考えて、

 

 

「オーケイ。だからどこかに降りるとしようか……コフッ!(まずいな……)」

 

オールマイトはわずかに血を吐きつつそのままビルの屋上へと降り立った。

そして、

 

 

「オールマイト……個性がなくとも、ヒーローはなれますか……?」

 

 

出久の心から来る願い。

母には思った言葉は言われなかった。

だけどオールマイトならば!

だがしかし、その答えを聞く前にオールマイトは萎んでしまっていた。

大いに驚く出久。

仕方がないかとオールマイトは語りだす。

自身の過去にあった事件で重傷を負った事とヒーローはいつも命がけだという事を。

 

「夢を見ることは悪い事ではない。だがな少年、それ相応に現実を見なければならない……」

 

期待した応えは返ってこなかったことに対して出久は絶望を味わう。

僅かな希望だったオールマイトに縋っても結局は無個性ではこの世の中ではほそぼそと生きていかなければいけないと思い知ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

絶望に打ちひしがれる出久は様々なクラスメートの言葉を思い出していて「もう、諦めるしかないのかな……?」と思い、

 

「フォウ……僕はどうしたら……」

 

 

かつて救えなかった子の名前を呟く出久。

だけどそこで爆発音が響いてきて気乗りしないけどいつもの癖で見に行ってしまう出久。

そこで目撃したのは先ほど自身を捕えようとしたヘドロヴィランがまた暴れている光景。

どうして……という思いと同時に見てしまう。

捕まっている人が爆豪勝己だという事に。

 

「(かっちゃん!?)」

 

気づけば出久は駆け出していた。

 

「バカヤロー!! 止まれー!!」

 

ヒーローの叫ぶ声が背後から聞こえてくるけど出久はただ走った。

だけど瞬間、出久は自身の動きがスローモーションのようになっている感覚を味わう。

そしてまたしても先ほどの声が語り掛けてきた。

 

 

『―――イズクは、カレをスクイタイノ?』

『当然だよ!』

『カレは、イズクの事をイジメていたんだよ……?』

『それでも!』

『それでも?』

『助けを求めているんなら助けるのがヒーローだろ!?』

『そっか……。うん、わかった。イズクは相変わらずだね……それじゃ、私からプレゼントを上げるね』

 

それを最後に謎の声は聞こえなくなっていた。

スローモーションから解放され、何かの力が湧いてくる感覚を出久は覚えながらもヘドロヴィランに飛び付いた。

 

「何でてめぇが!! っていうかなんだその姿!?」

「なんでって……君が助けを求める顔をしていたから!!」

「もう少しなんだよ! 邪魔するな!!」

 

ヘドロヴィランが腕を振るってくる間際に出久は自然と腕を振り上げていた。

次の瞬間、ヴィランの苦しむ声が響いた。

出久はなにごと!? と思ったけどさらにそこにオールマイトの声が響いてきて、

 

「君を諭しておいて……己が実践しないなんて!! プロはいつだって命がけだ―――!!」

 

オールマイトの一撃によってヘドロヴィランは吹き飛び、その風圧で起こった上昇気流で雨が降り注いできた。

 

「オールマイト……よかった……」

「おい、デク!! なんだその姿と力は!? 目を覚ましやがれぇ!!」

 

 

爆豪の声が聞こえてきたが出久はそれを見届けて静かに気を失った。

 

 

 

 




またTSものです。すみません。石は投げないで!

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