【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。


NO.020 第一種目・障害物競走

 

出久の選手宣誓は生徒達だけではなくもちろんプロヒーロー達にもとてもウケが良かったとも言える。

 

「あの子は普通なら隠していてもいい事をわざわざ全国が見ている中で言うなんて……大した度胸だ」「それに選手宣誓って事は入試主席って事だろ? 腕も相当のものがあるんだろうな……」「あの子はたった一年で個性を把握して鍛え上げたという事か。性別問題で苦しかっただろうに……」「あの子は要マークだな」

 

と、さっそく出久はヒーロー達に良い意味で目を付けられていた。

その出久はというとお茶子達と話をしていた。

 

「デクちゃん! とってもよかったよ!」

「ああ。緑谷君、君の選手宣誓には感動させてもらった。だが、これからはライバルだ。本気で行くからな?」

「うん! 僕も頑張るよ!」

 

仲良し三人組でそんな会話をしている一方で、

 

「緑谷出久……いきなり目立つなんて、ずるいなぁーーー……」

 

B組の物間寧人が親指の爪を噛んでいて、

 

「こら。一世一代の告白を妬まないの!」

 

と、同じくB組のクラス委員長である拳藤一佳にズビシッ!とチョップを食らわされていた。

他にも、

 

「緑谷出久……一年前まで無個性だった奴……。そんな奴がたった一年でここまでやってきたのか……。俺も、この個性でも……一生懸命鍛えればいけるのか……?」

 

普通科の心操人使が出久に対して羨ましいという感情を抱いていた。

他にも出久の事をよく思うもの、悪く思うもの、あまり気にしないものと多数あったが、それでも時間はどんどん過ぎて行く。

ミッドナイトがモニターを見ながら、

 

「それじゃ第一種目を発表するわね! これは所謂予選よ。ここで多くの者達が篩にかけられて脱落して涙を流すわ。その第一種目は―――これよ!」

 

モニターには『障害物競走』と表示された。

そして説明を受ける。

このスタジアムを一周して帰ってこれたものが次の競技の切符を掴む。

だが道中であらゆる障害が行く手を阻むために、それを自らの力で乗り越えてゴールして見せよ!

コースさえ守れば何をしても構わないバトルロイヤル。

ようするに個性で戦い抜けという訳だ。

 

「それじゃ全員位置について! スタート!!」

 

ミッドナイトの言葉によって一斉に走り出す、経営科以外の10組ものクラスの選手達。

だが、走り出した途端に地面が一斉に凍り始めて足を捕られるものが多数でてしまっていた。

 

「わりぃな……さっそくふるいにかけさせてもらうぜ」

 

一番ダッシュを決めていた轟が先んじて出ていた。

だが、そうは問屋がおろさないとばかりにA組の生徒達は各々でこの攻撃が来ると読んでいたために地面から跳んでいた。

出久もその自慢の脚力ですぐに飛び跳ねて躱していた。

 

「そう上手くいかせねぇよ半分野郎!!」とは爆豪のセリフである。

 

それを聞いて轟は内心で予測していたために慌てずに先を走っていく。

しかし、突如として前方を立ちふさがる物が出現した。

それは、入試試験での0P仮想ヴィランの大群だった。

峰田がそれでどつきを食らって跳ね飛ばされていたが些細な事である。

 

それでも、轟にはなんの障害にもならないと感じたのかすぐに仮想ヴィランを凍らせて先に進んでいた。

他の生徒達も轟の作った道を通ろうとしたのだが、重さで倒れようとしている仮想ヴィランに、

 

「おおおおおーーーー!? あの野郎! 潰されちまうだろう!?」

「轟の野郎! それも狙いか!?」

 

と、個性だだ被りの切島とB組の鉄哲徹鐵が来るであろう衝撃に耐えようとしたその瞬間だった。

背後から一人の影が飛び出してきた。出久だった。

 

「爪牙……一閃!!」

 

出久がその倒れてくる仮想ヴィランをもう鋼以上も切り裂く爪で八つ裂きに切り裂いていた。

それをただボーッと見ていた切島に出久が話しかける。

 

「大丈夫!? 切島君!」

「あ、ああ……ありがとな緑谷」

「よかった……それじゃ僕は先に行くね! 高速移動!!」

 

切島に安堵の表情を浮かべた後に出久は轟に追いつくために高速移動で先を進んでいった。

出久が通る先々では仮想ヴィランが次々と自慢の爪で粉々に切り裂かれていっているのだ。

それによって一直線に通る道が出来上がっていたために、

 

「すげぇな……。さすが入試主席の力だな。まぁなにはともあれ、これで道が出来たぜ!」「緑谷君に後れを取るな!」「さっすが緑谷!」

 

と、次々と主にA組の生徒達を筆頭に先を進んでいく生徒達。

計らずして出久は人助けを行っている結果になった。

 

『おいおい……しかし、あの緑谷の爪攻撃強すぎじゃねー……? あれでも入試の仮想ヴィランなんだぜ?』

『緑谷の実力なら十分じゃないか? 入試でも破壊していたしな……あれでもほんの一部の力なんだから末恐ろしい』

 

プレゼント・マイクの隣で一緒に座って解説している相澤だった。

その解説を聞いていたヒーロー達も、

 

「あの爪は鋼をも切り裂くのか」「見たところ爪は伸縮自在な感じだな」「強度も相当あるだろうな」「エンデヴァーの息子もすごいが、あの子もすごいな」

 

と、もうすでに分析を始めていた。

 

「B組や他の生徒達もそれなりに速いが……」

「だが、様々な困難に一度晒された経験が今も活きている。A組の奴らが抜きんでているな」

 

相澤の言葉は的を射ていた。

もうほとんどのA組の生徒達は第一関門を突破していたのだ。

そして待ち受ける第二関門は落ちたら失格!『ザ・フォール』。

綱を渡って障害を駆け抜けろ!

だが、ビル四階相当のものをも飛び越えることが出来る出久は轟に追従しながらも綱など使わずに足場から足場へと跳びはねていた。

 

『おーい……綱が意味を成してねーぞ? 猫って普通、あんなに跳躍力ってあるっけ?』

『話によれば個性が出てからすぐにビル四階相当はジャンプ出来たとか言う話だ』

『マジで……?』

 

ある意味呆れているかのような会話。

 

『おおっと! 轟と緑谷のデッドヒートかと思われたがそこに爆豪が二人に追いついた!?』

『あいつはスロースターターだからな。そろそろ上がってくる頃だと思ったよ』

 

「デクに半分野郎!! いつまでもいい気になってんじゃねーぞ!!」

「かっちゃん!」

「来たか爆豪……」

 

それによってほぼ三人が並ぶように走り出していてもう後続との距離は結構離されていた。

 

『とにもかくにも、これでもう残すは最終関門だー! 内容は一面地雷原! 怒りのアフガンだ!』

 

見渡す限りの地雷原。

これをどう突破するかが鍵になってくるのだが、出久は走りながら弱点の猫耳を押さえつつ大きく息を吸い込んでいた。

それを見て即座に前に出るのはやばいと感じた轟と爆豪は左右に分かれた。

そして、

 

「にゃああああああーーー!!!!」

 

出久のハウリング・インパクトがさく裂し、前方の道に埋まっている地雷原を悉く破壊しつくした。

 

「手間が省けたな……」

「行かせねぇぞデクぅ!!」

 

またしても三人が一斉に並ぶように走り出す。

 

『これはまた……俺のシャウト並みの威力じゃねーか。おまけに後続にも道を作ってあげている辺り見上げた人助け精神じゃねーか緑谷! イレイザー、お前のクラスの奴らはスゲーな!』

『勝手に強くなっていっているからな……』

 

そして最後の一直線。

ここで出久は本気を出した。

 

「高速移動……二倍速!!」

「あっ!? 待ちやがれデク!!」

「ッ! 追いつけない!?」

 

先程よりさらに加速した出久に、爆豪と轟はそれぞれ個性を最大限に使って追いつこうとするが、それでも出久の足には追いつくことが出来ずに、

 

『選手宣誓での宣言通り、最初にゴールにたどり着いたのは……緑谷出久だーーーー!!!!』

 

それで一気に観客が歓声に沸いた。

この時点で出久は出せる力を最大限に使用して一位を勝ち取った。

爪による切り裂き、脚力による足場から足場への驚異的なジャンプ力、地雷原もその口から発せられる衝撃波によって悉くを破壊……おまけに人助けも実践しているというナイスプレー。

ヒーロー達がそれで感心している中で、早速この競技に参加しないで見学していた経営科が活動をしていた。

 

「彼女の数々の個性はすごいな……」「ああ。エンデヴァーの息子にも負けていない」「彼女を売り込むと仮定してどうやるかさっそく話し合おうじゃないか」

 

と、すでに考えが違うところにシフトしている辺りさすが経営科。

オールマイトも聞き耳を立てていたために、

 

「(さっそくやっているな!)」

 

と感心していた。

 

「(とにかく、緑谷ガール……人助けもしながらの一位通過おめでとう。だがまだ本番はこれからだぞ?)」

 

オールマイトが見る先では後からゴールしたお茶子達に囲まれている出久の姿があり、他には爆豪が悔しそうにしていたのも印象的だった。

 

 

 




こんな感じで出久は一位通過です。
ですが決して最強系ではないのであしからず。上には上がいるのです。

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