【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。


NO.023 お昼と轟の過去

大盛り上がりで終了した騎馬戦。

それを見学していたヒーロー達は口々にある事を言う。

 

「出久ちゃん! 本物の猫になったわ! 可愛い!!」「あれは確かに彼女の言うように潜入任務向けだな……」「轟君の反応からして巨大化もできるのか……?」「エンデヴァーと同じ炎の能力も使ったぞ!?」

 

と、また他の選手の個性もそれぞれに吟味しながら考察が行われていた。

所々で噂されている出久はというと……食堂で無理やり猫姿にさせられていた。

 

「デクちゃんの毛並みは最高だね!」

「その、緑谷さん……ねこじゃらしを創造してみたのですが、どうでしょうか?」

 

と、主にA組の女子にしっちゃかめっちゃかにされていた。

この状態だと猫の言葉しか喋れないのでどうにもならないのである。

おまけに八百万の創造したねこじゃらしによって出久は野生本能が刺激されていて何度も飛び跳ねているではないか。

それを見てさらに癒される一同。

そんな癒しの空間にとある男子が顔を出してきた。

 

「緑谷、飯食う前に少し話があるんだがいいか……?」

 

轟がそう言ってきたので出久はもとの姿に戻った。

それでお茶子達が「あ~……」と残念そうな溜息を吐いているのは仕方がない事だ。

 

「轟君、うんいいよ。それでなに?」

「ああ……少し場所を移動しようか」

「……? うん」

 

出久はそれで移動する轟の後に着いていく。

それで芦戸とかこういう展開好きそうな子達がなんの話をするんだろうね?とキャイキャイしていたり。

 

 

 

場所は移動して裏の道に続く入り口で二人は向かいあう。

 

「それで……なにかな?」

「……ああ。こういう話はお前には少し重たい話になるが聞いてもらいたい。なぜかお前には話しておかないといけないって気がしたんだ」

 

それで轟は話す。

己の過去の事を。

親であるエンデヴァーはオールマイトを超えるヒーローを作るために金と実績で母親の個性を手に入れるために個性婚をした事を。

それで複数の子供が生まれて二人の個性が同時に発現したのが自分だと。

さらに左側の火傷は母親から「お前の左が醜い」と言われ煮え湯をかけられて出来た事も……。

 

「それって……」

「ああ。酷い話さ。親父のただの自己満足だけで俺は生まれたんだからな。だからって事は関係ないんだが緑谷が炎の能力を使った時に見当違いのどうしようもない憤りを感じちまった……」

「轟君……その」

「謝らなくていい。お前はお前でその力を普通に使ってくれて構わない。だけど、俺は親父の“個性”は使わない。()だけでトーナメントを勝ち進む。それだけをお前に知っておいてほしかったんだ」

「なんで、僕にその事を……?」

「なんでかな……? ただお前の選手宣誓に感化されたって訳じゃねぇが、一年前まで無個性だったのにどうやったらそこまで強くなったのか知りたくなってな。それで交換条件ってわけじゃねぇけど……よかったらお前を鍛えてくれたのは誰か教えてくれねぇか? 俺の予想が正しいならこんな短期間でそこまで上げてくれるのはどうやっても該当するのは一人だけだからな。この間見たが一緒に昼飯食べるような仲が普通な訳ねぇしな」

「っ!」

 

出久は思った。

ワン・フォー・オール以外の事は大体見透かされていると。

それで轟の事情を聴いた後でどう答えたらいいかと悩んでいるがなかなかいい回答が思い浮かばない。

 

「その……」

「別に話せないんならそれでも構わない。だが、俺の予想が正しいんだったら……俺はお前にも勝たないといけない。氷だけの力でな。時間を潰しちまって悪かったな」

 

それで轟はその場から離れて行こうとするが出久が声を出す。

 

「轟君! うまく言えないんだけどね……僕も君には負けないよ。いろんな人たちの助けがあって今の僕があるんだ……だから。それにできることなら轟君にも全力を出してもらいたい。そうすればきっと君の悩みも解決できるかもしれないから」

「……ああ。右だけでの全力で相手をしてやるよ」

「そうじゃないの! エンデヴァーの個性を引き継いでいたとしてもそれはもう君の―――……」

 

大事な事を出久は伝えたかったけど、もう轟はその場を離れて行ってしまっていた。

こんな時に大事な事をしっかりと伝えられなかったことに出久は少しだけ後悔の念を感じていた。

さらにはそんな二人の会話を爆豪が隠れて聞いていた事など出久達は知る由もないだろう。

 

 

 

 

 

 

そんな会話をした後で食堂に戻った出久はお茶子に少し心配そうな表情でこう言われた。

 

「デクちゃん。轟君となにかあったの……? とっても深刻そうな顔してたよ」

「うん、まぁ。でもこれは親しい人にも話せない内容だから、僕だけでどうにか解決してみるね」

「思いつめないでね? いつでも相談に乗るよ」

「ありがとう、麗日さん……」

 

どうにかそれで笑顔を浮かべるくらいには気持ちが回復した出久。

そこに峰田と上鳴がやってきた。

 

「おい緑谷に麗日! なんか相澤先生からとある話が来てんぞ!」

「そうそう。相澤先生を怒らせると怖いから従っておいた方がいいぜ!」

 

二人はそれで怪訝そうな表情を浮かべながらも内容を聞く。

出久は思った。

 

「(相澤先生、本気ですか!?)」と……。

 

 

 

 

それからお昼も終わりレクリエーションが始まったのだが、そこでなんと1-A女子全員がチアガール姿で登場していた。

それにはさすがの相澤も呆れの声を上げて「なにしてんだ、あいつら……」と呟いていた。密かに出久の姿に何かの感情を覚えていたが顔には出さないでいる。

ちなみにしっかりと出久は尻尾穴も完備しているのでチア服を創造したヤオモモは仕事が出来る女である。

 

「やっぱり峰田君の策略だったか……先生がこんな事を言うわけないもんね」

「何てこと……どうしてこうも峰田さんの言葉を信じてしまうのでしょうか」

 

どんよりとした空気が女子たちに漂う。

葉隠なんてもう自棄になって踊りだしている始末だ。

 

「とんだハプニングだけど、その前にトーナメント決めでもしましょうか!」

 

ミッドナイトがそう言ってくじ引きで決めようとしたのだが、そこで尾白とB組の生徒が辞退を申し出たのだ。

理由は騎馬戦での出来事をほとんど覚えていないから出る権利がないと言う。

それに皆もせっかく見てもらえる機会なんだから思い直せというけれど、プライドが許さないという事。

主審のミッドナイトがそれで、

 

「そう言う青臭いのは好み!!」

 

といって受諾して二人は辞退と相成った。

代わりにB組の鉄哲徹鐵と塩崎茨が入る事になった。

 

「それじゃ決めるわよ!」

 

各自でくじを引いていき、出久の最初の対戦相手は心操人使になった。

二回戦にも進めれば轟か瀬呂のどちらかに当たる事になったので、出久はもし一回戦を勝ち抜いて、瀬呂が負けて轟と戦う事になったら、先ほど言えなかった事を伝えようと決心したのであった。

こうして出久はその後にレクリエーションの間に心操対策として尾白に話を聞いていた。

 

一回戦から波乱が起きそうな幕開けである。

 

 

 




少し、出久の言葉使いを女の子らしく改変していますけど多少の意識の変化という事で。





まだまだ出久のヒーロー名は募集していますので待っていますね。

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