【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。


NO.028 思いは唐突に

 

 

 

出久は思った。

かなりギリギリだったと……。

あの時に轟が放った最大限の超爆風はさすがに掻い潜るには骨が折れそうだったために、瞬間的にハウリング・インパクトで前方の炎を打ち消して、大技を撃った直後の技後硬直でがら空きだった轟のお腹に特大の一撃をお見舞いしたのだ。

だが、それはなんとかなったために出久の服が少し焦げているだけで済んでいたのであった。

 

「はぁ、はぁ……」

 

轟が全力を振るったように出久もほぼ全力だったために息切れが激しかった。

でも、

 

「なんとか勝てた……」

 

その言葉を吐き出すのが精いっぱいだった。

そしてうつ伏せに倒れている轟に近づいて、

 

「ありがとう轟くん……なんとなくだけど今の僕の現状の限界値も知れた気がするよ」

 

それで医療班がすぐに来て轟が運ばれていくのを目にしながらも、出久も大観衆が見ている中でお辞儀をしてステージを後にしていった。

最後まで礼儀正しかった出久の姿にヒーロー達は、

 

「まさかエンデヴァーの息子を破るとはな……」「炎を使わないでいた最初の方は圧倒していたしな」「瞬時の判断力も相当の物だな。しっかりと対応できていた」「一回戦での戦いの地味さから評価を下げるところだった」

 

と、純粋に出久の実力を実感しているものが多かったが、女子ヒーローは少し感想が違っていた。

 

「甘酸っぱいわね……」「これが若さってものなの……?」「あの二人って結構いい感じなのかしら……?」

 

と、出久と轟の仲に何かを感じているものが多かった。

 

 

 

 

 

そして観客席に戻った出久は1-A女子達に囲まれていた。

 

「デクちゃん! すごかったよ! でも、なんていうかすごく大胆だったかも……」

「え? 何の事……?」

「あ、やっぱり自覚してなかったのか……こりゃ勘違いが増えそうだね」

「え? え?」

 

出久が困惑している中で正直に物事を話す蛙吹が代表して出久に説明を始める。

それを聞いていって次第に顔を赤くさせて行く出久。

 

「―――というわけよ。出久ちゃん、あなたがした事は結構なものなのよ?」

「そ、そんな……僕は、僕はそんなつもりは……えっ、でも、今の僕は男子じゃなくって女の子だから……あれ? あれぇ!?」

 

盛大に混乱をしている出久だった。

自覚をしてしまえば後は落ちていくだけの状況で、そんな場面に問題の人物が遅れて帰ってきた。

 

「緑谷……」

「ひゃい!? と、轟君!? も、もう大丈夫なにょ……?」

「ああ。幸いケガはほとんどなかったからな……」

 

轟は普段通りに出久に接しているのだが、先ほどの説明で今なのだから出久の思考力はかなり低下してしまって言葉も噛んでいた。

それを周りで見ていた一同はというと、

 

「これは……いい展開かもね!」

「うんうん、わかるよー!」

 

芦戸と葉隠が二人でニヨニヨと笑みを浮かべながら(葉隠は透明だから判別できないがおそらく同じ顔だろう)成り行きを見守っていた。

 

「緑谷……お前のおかげで忘れていた事を思い出せたよ。ありがとな」

「そ、そんな! き、気にしないで! 僕のただのお節介なだけだから」

「それでも、だ……」

「う、うん……」

 

それでなんとか丸く収まりそうなところで、

 

「おい、半分野郎……残念だったなぁ」

「爆豪……」

「お前の家事情とか関係ねぇけどもうナメプなんかするんじゃねーぞ? デクなんかに悟らされやがって、てめぇ対策を考えていたのがこれでおじゃんだぜ」

「そうか……」

 

爆豪がそう話すがそれだけやはり轟の事を警戒していたための言葉だった。

そんな言葉を言われたのにどこか静かな感じの轟に爆豪は調子が狂う感じで口を開く。

 

「んだよ……? てめぇならもっと突っ掛かってくるもんかと思ったんだがな……」

「いや、今はどうしても考える事があるんだ。だからよ、それが解決したらお前とも本気で戦ってやるよ」

「お、いい面するようになったじゃねーか?」

 

どこか昔からの悪友みたいなやり取りに出久は見ていて「かっちゃんに轟君、なんか楽しそう……」と思う。

だが、そこで轟が爆弾を落とした。

 

「…………そういえば爆豪。確かお前は緑谷と幼馴染だったな?」

「あ? それがどうしたってんだよ……?」

「お前がいつまでも緑谷に対してそんな態度なら……先に行かせてもらうぞ」

「は……? どういう意味だてめぇ!?」

「さぁな……」

 

それですまし顔になる轟。

そんな話を間近でされた出久はまた「え? え?」と困惑する。

女子達はそれで「キャー!」と黄色い声を上げる。

 

そこにさらに核燃料を放り込むかのように、エンデヴァーがわざわざ生徒の観客席にまでやってきて、周りは先ほどまでの雰囲気もなりを潜めて少しの緊張感を漂わせる。

 

「焦凍、ここにいたか」

「…………んだよ? 俺に何か用か?」

 

エンデヴァーの登場にすぐに剣呑な雰囲気になる轟。

 

「なぁに、息子が負けてしまって情けの言葉をかけに来ようと思ったのだが、ふむ……気が変わった。緑谷出久といったな……」

「は、はい!」

「焦凍との試合前に君に対してテストベッドなどと言った事を今謝罪しよう」

「てめぇ! やっぱり緑谷にちょっかいをかけてやがったな!?」

「まぁそう怒るな焦凍。それも踏まえて緑谷。将来的に焦凍の嫁になる気はないかね? 君なら私も認められるぞ」

「うぇぇ!?」

 

出久はもうそれで盛大に顔を赤くさせてしまい、轟は轟で『個性婚』という言葉を連想させて、

 

「てめぇはどこまでも! 俺の将来は俺自身で決める! 緑谷に迷惑をかけるな!」

「そうだてめぇ!」

 

そこになぜか割り込んでくる爆豪。

 

「さっきから黙って聞いてりゃ都合のいい事をグチグチと!」

「ほう……爆豪といったな? 君も緑谷の事が好きなのかね?」

「ばっ!? バカ言ってんじゃねーよ! 誰がこんなクソナードの事なんか!」

 

自ら突っ掛かっていって盛大に自爆をする爆豪。

エンデヴァーは内心で「これは面白いな……」と思う。

さすがにエンデヴァーの方が歳も経験も年季も格上なために、素直になれない男子二人とも思うことが出来たために、

 

「ははははっ! そうかそうか。俺はお節介だったわけだな。早々に立ち去るとしよう。あ、そうそう。緑谷、職場体験はぜひ俺のところに来てくれ。面倒を見るぞ」

 

と、豪快に笑いながらその場を後にしていったエンデヴァー。

だが出久の心にある意味爆弾を投げまくった結果となったために、お茶子に泣きついていた。

 

「う、麗日さん……僕、どうしよう!?」

「うんうん。デクちゃんはなんも悪くないよ……今はゆっくりと考えようね」

 

と、出久の頭を撫でてやりながらも轟と爆豪に睨みを利かせるお茶子はこう話す。

 

「轟君に爆豪君……デクちゃんを泣かしたら承知しないよ?」

「麗日さん!? それ、どういう意味なの!? ねぇ!?」

 

と、お茶子は出久の心が決まるまでは出久の事を守ろうとそこで思い至った。

もう、なんというかカオスな状況になりつつある中で、

 

「なんだよ……なんなんだよ!? これはよ!」

 

と、爆豪は想定外の状況に混乱の極みだった。突っ掛かっていってしまった自業自得である。

 

さらにはそれを蚊帳の外で見ていた峰田が、

 

「おいらもあの輪の中に入りてぇ……」

「諦めろ峰田……次元が違うぜ」

 

と、砂藤に慰められていた。

もし、次の試合が飯田の場合ではなくこの場にいたら、風紀の乱れだと嘆いていたのだろうか……?いや、さらにカオスになっていたかもしれないだろう……。

 

 

 




意欲熱があるうちに書いていて書き終わった後に見直して思った……ナンダコレ?

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