【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。


NO.030 プライドにかけて

 

 

 

爆豪勝己は天才肌である。

雄英高校に入るまで己より上の存在などいないと本気で思っていた。

だが、それは戦闘訓練で出久に敗北して、さらには他にも強い奴らがいるという事実に爆豪は打ちのめされた。

もう一度言う。

爆豪勝己は天才肌である。

もとから才能があったのに、それをキッカケにして爆豪はクラスの連中の動きを、個性を……よく観察するようになった。さらには今まで以上に鍛錬を重ねていった。

 

USJでは出久の見せた大猫変化にもすぐに対策を立てていた。

騎馬戦では己の個性を最大限に活かせるメンバーを知らないふりをしながらも確実に選んでいった。結果はままならなかったものの、それでも勝ち上がった。

トーナメント戦でも全員の動きを観察していった。

特に勝ち上がってきている奴ら……出久も含めて戦い方を学んでいった。

それを活かせるような対応策もすぐに思いついていた。

轟と出久の戦いではまさか出久が勝ち上がってくるとは思っていなかったが、なら学ばせてもらおうと出久の動きを特に観察した。

そして、そんな出久はトーナメント戦で決勝まで勝ち上がってきて、今……己の前に立っている。

それだけで今までの努力は無駄ではなかったと爆豪は確信した。

ゆえに、

 

「デク……俺は今日お前に勝ってあの時の敗北を清算する!」

 

いざ、始まろうとしていた決勝戦で出久にそう言った。

 

 

 

 

 

 

『さーて、いよいよ最後だ! これで雄英1年の頂点が決まるこの一戦! 爆豪勝己 VS 緑谷出久だ!』

 

会場はそれでもうヒートアップをしていたためにあちこちから声援が聞こえてくる。

お茶子達A組女子は出久の応援を、男子たちはどちらも応援を。

プロヒーロー達ももうこの時点で出久と爆豪のデータは大体収集している為に後はただ楽しもうという意気込みで見ていた。

 

出久は爆豪にそう言われて久々に武者震いを感じていた。

今、目の前に立っている爆豪はあの時の比じゃないくらい強くなっていると肌が感じていた。

ゆえに、出久はすぐに決着をつけるようにすでに三種の増強系の個性を最大限高めていた。

 

『スターーート!!』

 

ゴングが鳴る。

始まった早々で爆豪が仕掛けた。

出久の目を潰すために閃光弾(スタングレネード)を放った。

一瞬で会場は真っ白になり、だが出久はしっかりと対策をしていた。

 

「かっちゃん! それは常闇君の戦いで見たよ!」

 

腕で咄嗟にガードをして目つぶしは免れていた。

そして出久が動き出そうとした瞬間だった。

 

「おらぁ!」

「ッ!?」

 

いきなり背後に爆豪の姿があり、出久は『いつの間に!?』という感想を抱いた。

なんとか出久は腕を交差させてガードをしたが、その上から爆豪が爆破をしてきた。

それで吹き飛ばされる出久。

 

「ぐぅ!」

 

なんとか場外には出なかったものの、いきなり腕が火傷を負っていたために動きが鈍くなる。

 

『爆豪! あの一瞬でどうやって緑谷の背後に回ったんだ!? 閃光で分からなかったぞ!?』

『あいつ、閃光を放つタイミングですでに反対の手で爆破を連続で行って緑谷の背後まで回っていたな』

『マジで!? それじゃ緑谷の読みをさらに読んでいたってか?』

 

事実、その通りだ。

そんな爆豪に出久は笑みを浮かべながらも、

 

「すごいね、かっちゃん……それじゃ僕も本気で行くよ!」

「かかってこいや! 俺が取るのは完膚なきまでの1位なんだよ!」

 

出久は瞬間的に加速をして爆豪の周りを何度も跳躍する。

 

「それはあの脳みその時に見たぜ!」

 

だが爆豪のすさまじい動体視力はそんな出久の動きを正確に捉えていた。

だんだんと慣れてきた出久の動きに合わせて、爆豪は爆破を出久が拳を振るってきたタイミングに合わせて放った。

そんな爆豪の爆破攻撃に出久は何とか後ろに退避する事で避けた。

その後ろに下がるジャンプをしながらも空気を吸い込んでいたのだが、

 

「その衝撃波も息を吸い込むというワン動作があるぜ!」

「ッ!」

 

それでわざわざ外れると分かっているのならやっても無駄と思い、出久は衝撃波を止めて、代わりに爪を展開してさらに炎を宿す。

 

「これなら!」

「はっ! まだ習得して精々二週間もないんだろ!? そんな付け焼刃が利くかよ!!」

 

爆豪は出久の燃える爪を悉く避ける。

そんな戦いを見て相澤は静かに解説する。

 

『爆豪の奴……しっかりと対策を立てて緑谷の個性を一つ一つ封じていってるな……』

『マジかー……緑谷、俺でも結構強いと感じてるんだぜ? それを爆豪はさらに上に行ってるのかよ』

『げに恐ろしきは天才肌の爆豪だな。あいつはただでさえ才能はあるのに努力を本気でしたら強くなるのは明白か』

『やっぱ緑谷の一年だけの鍛錬だけじゃ埋められねぇ差ってもんがあるんだな!』

 

そんな解説を片耳で聞いていた出久は内心でどう挑もうかと必死に模索していた。

だが爆豪はそんな時間を与えてくれない。

出久の至近距離で爆破をして出久をまたしても吹っ飛ばす。

地面に転がる出久に爆豪はこう言った。

 

「おいデク! 本気を出して来いよ! まだあるだろ!? 化け猫形態が!」

「それは! でも……!」

「どうせ半日もありゃ回復するんだろ! だから使って来いよ!? その上で叩き潰してやるよ!!」

 

変化の個性の弱点と回復期間まで察せられている現状に出久は覚悟を決めた。

 

「…………後悔しないでよ、かっちゃん?」

「いいからこいや!!」

 

出久は腕を前に添えて言葉を発する。

 

「猫又、解放!!」

 

その言霊とともに出久の姿は5メートルもの巨大な猫の姿へと変わる。

 

「にゃああああああああああ!!」

 

変化して開口一番に衝撃波を放つ。

それは何倍も増幅されている為に広範囲で爆豪も防ぎようがないだろうと思われるが、それでも上へと爆破をして飛び上がって避けた爆豪は、

 

「あと280秒! おらぁ!!」

 

猫出久の顔面に爆破を食らわせ怯んだところに、体が大きくなって幅が広がり隙が増えたお腹に何度も爆破を繰り返した。

それにはさすがの猫出久も苦悶の声を上げながらもなんとか猫の腕を振り下ろして潰そうとする。

だがそれでも爆豪は止まらない。

来ると分かっていれば避けるのは簡単だ。大振りなら尚更である。

 

「あと230秒!」

「にゃぁ!!」

 

猫出久の猫パンチが何度も爆豪を襲う。

この時だけは出久もワン・フォー・オール100%を振るえるのだ。

しかし、それでもまだ経験が浅いために避けられてしまう。

 

『まるでB級の怪獣映画だが、爆豪の先読みのセンスはさすがというしかないな……』

『なんか、俺見ていて目を背けたくなってきた……』

 

そんな解説がされていく間にも避けては爆破を食らわせるという行為が繰り返されて、5分があっという間に経過して時間切れで出久は強制解除でもとの姿に戻ってしまう。

もう体中は爆破を受けまくって息も絶え絶えであった。

 

「おら……もう個性も弱体化してさっきまでの力も振るえねぇだろ? もう、休め!」

 

そんな声を聞きながら、だが出久は拳を握り、

 

「まだ、戦える……!」

 

そう、出久の猫の個性とワン・フォー・オールは別物の扱いのようで弱体化はしないために最後の一撃をするために力を溜めていた。

 

「そうかよ……なら次で最後だ!」

「負けない!」

 

そして二人は同時に駆けた。

 

榴弾砲・着弾(ハウザーインパクト)!!」

「スマーーーーーシュ!!」

 

二人の技がさく裂した。

それでまたしても衝撃でステージが破壊される。

しばらくして立っていたのは……、

 

『あっと……立っているのは爆豪だ! これで爆豪の優勝が決まった!』

 

そんな解説が聞こえてくる中で、出久は朦朧とした意識の中で、

 

「やっぱり……かっちゃんは、すごいね……」

 

と、言い残して気絶した。

そして医療班に運ばれていく出久を見ながら爆豪は呟いた。

 

「当たり前だ、クソナード……」

 

と。

こうして今日の種目は全部終了となり、後は授与式と閉会式だけになった。

 

 




オチもなく終わってしまいました。
最初は服が爆破で破けるオチも考えていたんですけど、真面目に書いてみました。

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