【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。


猫娘と職場体験編
NO.032 ヒーローネーム考案


 

 

 

雄英体育祭から二日が経過して出久は気持ちも改めて学校へと向かうために電車に乗っていた。

その道すがら、

 

「あ! もしかして雄英体育祭で活躍した緑谷出久ちゃん!?」「マジか! どこどこ!?」「あの選手宣誓もかなり緊張したでしょ? 頑張ったね……」「すごかったぞ!」

 

と、道中の客たちにある意味もみくちゃにされながらもなんとか出久は「あ、ありがとうございます!」と返事をして頭を下げていた。

もともと性格はまともな出久だからそんなしっかりとした対応に感心の声を上げる人々。

そんな感じで出久は電車から降りる際も「これからも応援してるぞ!」と客の人達に言われてたじたじになっていた。

 

「はぁー……やっぱりテレビに映るって事は大変なんだね……。プロヒーロー達はいつもこんな感じなのかな?」

 

そんな事を呟きながらも出久は雨も降っていたために傘を差して校門まで来た時だった。

後ろから元気な声で「なにを呑気に歩いているんだ緑谷君!」と飯田の姿があり、出久はそのまるでいつも通りの飯田の姿に面を食らっていた。

インゲニウムの事は大丈夫なのだろうか……と飯田に聞こうとするが、どうしてもあと一言が出てこない。

そんな出久の姿に飯田はすぐに気づいたのか、

 

「心配してくれてありがとう、緑谷君。大丈夫……兄の件なら心配ご無用だ。だから、そんな悲しそうな顔をしないでくれ」

「うん……でも、飯田君。無茶はしちゃだめだよ?」

「ああ」

 

二人はそれでようやく普通に会話をすることが出来て、そのまま一緒に教室へと向かっていった。

教室の中ではすでに各生徒達が雄英体育祭のその後について話し合っていた。

 

「やっぱり結構声かけられたよー!」

「俺も俺も!」

「俺なんて小学生の奴らにドンマイコールされたぜ?」

「ドンマイ」

 

そんな感じで教室の中は終始楽しそうな空気が流れていたが、

 

「おはよう」

 

相澤が教室に入ってきた瞬間に全員はすでに自分の席について無駄口を一切しないという徹底ぶり。相澤の教育が実に忠実に行き届いている証であった。

そんな相澤の顔はすでに包帯が巻かれていないのを察した蛙吹が、

 

「先生、包帯取れたのね。よかったわ」

「まぁな。ばーさんの処置が大げさすぎるんだよ。本当なら雄英体育祭の時にはもう包帯はとっても良かったほどだからな」

 

果たしてそれは本当なのか強がりなのかは本人だけが知る事である。

相澤は「それより」と前置きをして、

 

「俺の心配もいいが、今日やる“ヒーロー情報学”は少し特別な内容だ。気を引き締めていけよ?」

 

そう話す相澤の言葉にまたしても教室中は緊張をする。

ヒーローの法律関係を学ぶのか、はたまた小テストをするのか……学が少し疎かな生徒達はそれで何が来るのか戦々恐々としながら次に相澤の話す次の言葉を待っていた。

 

「今日のヒーロー情報学は……『コードネーム』ヒーロー名の考案だ」

「「「胸膨らむやつきたぁぁぁぁぁ!!」」」

 

それによってまたしても賑やかになる教室。

だが、その騒ぎは相澤の睨みで一瞬で冷めて静かになる。

だが、ヒーロー名。

それはヒーローとして活躍するためには必須な項目。

いい加減な名前を付けてしまったら生涯その名で呼ばれ続けることになるから大事な事である。

相澤が話す。

プロヒーローからのドラフト指名の事に関して。

今回はまだ興味だけであるが将来的には使えないと判断されれば切られる事もあるという。

「大人は勝手だ」と峰田が思わず愚痴るが、それは世の常識なのだから仕方がないのである。

 

「ま、そんな感じでこの間に話したプロからの指名の集計が……これだ」

 

電子黒板にそれが表示される。

一位はなんと圧倒的な差を付けて出久が1位に躍り出ていて、2位に轟、3位に爆豪とそれぞれ名前の隣にドラフト指名の数が表示される。

当然、そんな結果に出久は驚愕の顔をして、

 

「ぼ、僕がドラフト指名1位!?」

「ああ。優勝はならなかったものの緑谷の評価は1番だった。主に救助関係のヒーローの指名が多かったな」

「確かに……緑谷の個性って攻撃方面だけじゃなくて災害救助に役立つ能力が多いもんなー」

「そだねー」

 

と、切島と芦戸が話す。

出久は期待し過ぎでは?という感想を持った。

それでも結果がそれを物語っているのは覆せない事実である。

 

「まぁ各自で思うことはあるだろうが、それも踏まえて全員にはこれから職場体験をしてもらう。USJでもうすでに味わったと思うが、改めてヒーローとしてどうやるのかを学べるいい機会だ」

「そのためのヒーロー名なんですね!」

「ああ。だから慎重に決めろよ」

「そうよ! 適当に決めると地獄を見るわ!」

 

そこにミッドナイトが教室に入ってくる。

それから始まるミッドナイトのヒーロー名に関しての説明。

それを出久は聞きながらも内心で焦っていた。

 

「(そういえば、全然考えてなかった!? この一年、ずっと修行だけをしていた感じだから今の僕に見合った名前とか名前とか……なんだろう?)」

 

そんな出久の心の気持ちなど知ったものかと進行していく考案時間。

発表タイムになっても出久はなかなか思い浮かべられていなかった。

他のみんなが発表していく中で、

 

「スムーズに進んでいるのはいい事だわ。あと残っているのは再考の爆豪君と飯田君に緑谷さんね」

 

ミッドナイトの言葉に飯田は果たして自分がもう戦えない兄に託されたインゲニウムを名乗ってもいいのかという葛藤のすえに出した結論は、

 

「飯田君も自分の名前を使うのね。いいのかしら……?」

「はい。今はまだこれで行かせていただきます」

「そう。でももう少し考えてね。まだ学生期間は長いんだから」

「はい……」

 

それでミッドナイトは今度は出久の方へと向く。

 

「爆豪君はまぁ、癖があるからそのうちいいのが出てくるでしょうけど……緑谷さん。もしかしてあなた、まだ考え付いていないの?」

「はい……。お恥ずかしい話なんですけど個性が出たのが一年前でそれからずっと鍛錬ばかりしていましたからこう、良いヒーロー名が咄嗟に出てこないといいますか……」

「まぁそうよね。緑谷さんは個性は猫なんだからそれに近い名前にするのもいいけど……そうね。いい案があるわ」

「どんなですか?」

 

ミッドナイトの提案に出久は耳を傾けた。

 

「クラスのみんなの緑谷さんの印象から出てきた中で自分でこれがいいと言うものを決めるのはどうかしら?」

「それ、いいですね!」

「面白そう!」

 

ミッドナイトの提案にクラスのみんなはすぐに反応した。

 

「実際、相澤先生もヒーロー名はプレゼント・マイクに付けてもらったらしいからね」

「「「へー……」」」

 

意外な事実に声を上げる一同。

それからすぐに一同が手を挙手して出久のヒーロー名を出していく。

まず芦戸が、

 

「『ポシビリティーキャット』なんてどうかな? 実際色々と緑谷多芸だし」

「可能性を秘めし猫ね。いいんじゃないかしら?」

 

続いて尾白が、

 

「『テールランプ』なんてどうかな? 俺とテールで被るけどテールはtale(お伽噺)とtail(しっぽ)の両方の意味を掛けていて、炎も使えるから災害救助とかで導いてくれそうだし」

「なかなかしゃれた名前ね。いいじゃない! どんどん行こうか!」

 

三番目がお茶子が挙手をして、

 

「『デクニャン』! デクちゃんに猫を掛けてみました!」

「可愛らしいわね!」

 

常闇がこう言う。

 

「…………『ベレト』などはどうだろうか?」

「旧約聖書の猫の悪魔か。でも、悪魔の名前は緑谷さんにはちょっといまいちって感じね」

「すまん……」

 

上鳴が、

 

「緑谷の個性って大まかに分けると6個に分けられるから三味線とイタリア語の6を掛けて『シャミセイン』なんてどうだ?」

「うーん……猫愛好家の人達に喧嘩を売りそうな名前ね」

 

 

葉隠が、

 

「『シュレーディンガー』なんてどうかなー?」

「シュレーディンガーの猫から持ってきたのね。でもどこが矛盾なの……?」

「うーん……なんでだろう? 男から女になったからかな?」

 

八百万が、

 

「でしたら最初は無個性だったのですから個性持ちと無個性を繋ぐ意味で『リンカー』などはいかがでしょうか?」

「うんうん。緑谷さんは無個性の人の気持ちに寄り添えそうだからいいと思うわね」

 

 

蛙吹が、

 

「それじゃまんまな気もするけど『ケット・シー』なんてどうかしら、出久ちゃん?」

「猫の妖精ね! 可愛いわね」

 

 

瀬呂が、

 

「『ヴェールシャット』なんてどうだ?」

「まんまフランス語で緑猫ね。単純だけど味がありそうね」

 

 

峰田が小声で、

 

「…………タマモキャット(ボソッ」

「峰田君……欲望に忠実なのはどうかと思うわよ?」

「いいじゃねーか!? 緑谷に巫女服とかメイド服とか裸エプロンとか着せたいじゃん!?」

「うわー……最低……」

 

と、女子の批判を買っていた。

気を取り直して耳郎が、

 

「御利益的な意味で『フォーチュンキャット』なんてどうかな?」

「幸運な猫ね……よく招き猫とかにも使われるからいいと思うわ」

 

その他にも、『万徳猫』や『デクロウ』、『サクセサー』、『フォーリナー』などと意見が上がっていった。

だが、出久はまだいまいち決め手に欠けていると感じていて悩んでいた。

そこに轟が挙手をして、

 

「猫又を和風にして『出雲』なんてどうだ? 名前に緑谷の名前も入っているからいいと思うんだが……」

「出雲……猫又ヒーロー、出雲……うん! いいと思うよ轟君!」

 

出久はその響きがやけに気に入ったようで笑みを浮かべていた。

そんな出久の笑顔を見て轟は薄い笑みを浮かべながら、

 

「それならよかった……」

 

と、言葉を零した。

それで一同は『轟に持ってかれたかー』という感じであった。

こうして出久のヒーロー名は猫又ヒーロー『出雲』に決定した。

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって職員室。

 

「あれ? 今頃になって新たに緑谷さんに応募が来ていますよ?」

「なに? 誰ですか?」

 

オールマイトがその応募してきた人の名前を見て、

 

「こ、この人は!?」

 

と、怯え声を上げていたのであった。

 

 

 




はい。そう言う訳で黒川 蓮様の考案してくださった『出雲』に決めさせてもらいました。ありがとうございます。

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