【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。


NO.037 合同職場体験・二日目 出久自身の戦い方

 

 

職場体験二日目となって、出久はまたコスチュームに着替えて朝からグラントリノと虎とともに戦闘訓練を行っていた。

 

「よし! どんどん打ちこんで来い!」

「はい!」

 

出久が拳を放てば虎はその柔軟な体でやすやすと回避を行う。

そこにグラントリノが何度も足から空気を吐き出して出久に高速で迫っていく。

ちなみに今戦闘訓練を行っているのはピクシーボブの個性によって形成された四角い部屋の中みたいな場所である。

だからグラントリノは高度な三次元跳躍移動を可能としている。

 

「くっ!」

 

猫の反射神経でなんとかグラントリノの姿を追う出久であったがまだ反応速度が追い付かないために何度も拳を受けてしまう。

そこにさらに追撃とばかりに虎が重たい拳を出久に当てようとして来る。

出久はなんとかその虎の拳を拳でぶつけることによっていなそうとするのだが、

 

「ふむ……足で牽制して拳を見舞うという戦術がないように見えるな。三人の言った通り少しもったいないな」

 

虎にはそんな小手先の技術では通用するはずもなく一気に壁まで吹き飛ばされてしまう。

壁に激突してずるずると崩れ落ちる出久に二人は、

 

「一旦休憩とするか……」

「ですな」

「あ、ありがとうございました……」

 

二人の許しを得て出久はその場で女の子座りをしながら軽く乱れた呼吸を正していた。

そこにグラントリノが歩いてきて、

 

「ふむ……体の方は出来上がっているようだな。これなら教えやすいな」

「ありがとうございます」

「オールマイトもたった一年であるがいい仕事をしたようだな。てっきり元から体が出来上がっていたあいつならもっと雑な教え方をして今の様な動きはできなかっただろうと思ったのだがな……」

「あ、それは恐らく僕の猫の方の個性である身体強化・怪力のおかげかと思います。

この個性は初期頃に出てくれたおかげでオールマイトにワン・フォー・オールを託されるまではそれを雛形のように常時展開して鍛えていましたから」

「ほう……なるほどな。それならまぁ理由も分からなくはないか。だが、もしその力がなかったらもっと不出来な状態だったと思うぞ?」

「あはは、確かに……」

「それに学生時代にすでに出来上がっていたからあいつからそう言う発想は出にくいからな」

「それって……オールマイトの学生時代の話ですか!」

「うむ。ただひたすら鍛えるために実戦訓練で毎度の事ゲロを吐かせておったわ」

 

出久はそれでオールマイトがあんなに恐れていたのかー……と納得する。

そこにグラントリノが小さな声で憂いのこもった表情をしながら呟く。

 

「……生半可な扱いはできんかったからな。今は亡き盟友に後を任されたものだからの」

「亡き盟友って……オールマイトの先代の事ですよね? お亡くなりになっていたんですか……?」

「なに? 聞かされていないのか……?」

「は、はい……」

 

それでグラントリノは思案の顔をしながら、

 

「(俊典……お前はまだワン・フォー・オールを引き継ぐものの宿命を教えていないのか? 後で叱っておくか。いずれはこの小娘も知らなければならない事だからな……)」

 

そう判断して、だが今はその事は頭の片隅に置いておくことにした。

それよりも今は出久の強化プランを教えないといけないからだ。

 

「それよりお主。少しいいか?」

「はい。なんでしょうか?」

「恐らくだがまだお主はオールマイトに倣っているところがあるだろう」

「それって……?」

「オールマイトの振るう拳は確かに重く強い。それゆえにほとんどのヴィランはオールマイトの一撃で倒されてきた。

だが、お主にはまだそんな強い力はない。

故に己自身の戦闘方法も開発していかないといけない」

「はぁ……僕自身の戦闘方法」

「昨日の訓練の内容を聞けばお主はオールマイトのように拳だけで戦っていたそうではないか? せっかく豊富な能力があるのにもったいないとは思わんのか?」

「で、ですが使う時はハウリングとか炎の力とかもちゃんと使っていますし……」

「それもまぁお主の力だろう。だが、せっかく“脚力強化”なんてスキルがあるのにそれを移動だけに使っているのは実に惜しい……。ワン・フォー・オールに身体強化・怪力と脚力強化の三つの力を同時発動する事によって、普段から常時使用している脚力の方が拳よりも数倍以上の力を発揮できるのであろう……?」

 

そのグラントリノの一からの自身の能力に見合った説明を聞いて出久はそこで考え込む。

 

「そうだ…………確かに僕は今までオールマイトであるべきだと思って拳だけで戦ってきた……。でも、脚での戦闘を取り入れればさらに幅は広くなる……」

「そうだ。お主にはお主の個性に見合った戦い方と言うものがある。オールマイトではなく、お主だけの……」

「そうですね。シンプル過ぎて気づかなかったですけど、僕の戦い方を開発した方がいいですね」

「だろう? だから今から足の訓練も取り入れてやってみんか?」

「いいと思います。でも、そうなると少し足の方の防具が不安定に過ぎますね」

 

出久はそう言って足に目を落とす。

動きやすい感じの膝まである軽い素材のブーツであるが、もし三つの個性を同時発動して本気を出したら破けてしまうかもしれないからだ。

 

「ふむ。では足の方の特訓は控えめにして、お主はお主で雄英高校に戻ったらサポート科のものに話を振ってみたらどうだね?」

「わかりました! ちょうど話が分かりそうな人がいますから相談してみます」

 

出久の頭の中には雄英体育祭で協力したとある女子・サポート科の発目の顔が思い浮かべられていた。

相談をするならパイプを持ったものが一番だろう。

それから段々とパイプを広げていけば将来きっと役に立ってくれる。己にとっても相手にとっても。winwinの関係になれたらそれはもう力強いだろう。

そして今回だけでは身につかないと踏んでいるために、雄英に戻ったら飯田にも足技を教えてもらうのもいいだろうと思う出久。

それで飯田の事を思い出して、

 

「(飯田くん……無茶をしていないといいけど……)」

 

そう思っていた。

そんな感じでその後にまた戦闘訓練を再開してグラントリノと虎に足技も含めて鍛えられながらも、午後は山岳救助に関して学びながらも一日がまた終わっていこうとしていた。

そんな折に出久は夜になってどこかに行こうとしている洸汰の姿を発見して、悪いとは思ったが後を着いていくことにした。

実は昨日、マンダレイに就寝につくころに聞かされたのだ。

洸汰がヒーローを嫌う理由を……。

 

 

『洸汰の両親ね……二年前にとあるヴィランと戦って殉職しちゃったのよ。

普通に育っていればヒーローを目指したんだろうけど、物心がつくくらいの年齢で先立たれちゃったから洸汰、ヒーローと言う人種に嫌悪感を抱いてすらいるの……』

『そんな事が……』

『だから実際私達にも一定の距離を置いているのよ。他に行くところがないから私達のところにいるのであって一緒にはいたくないんじゃないかな……?』

 

マンダレイはそう言って悲しそうに表情を曇らせた。

出久はそんな話を聞かされたのが起因して、このヒーローとヴィランの社会には色々な人がいるのだと気づかされた。

自分が介入してどうにかなる問題ではないが、それでも話に付き合う事ならできるかもしれない。

たとえきつい言葉を吐かれてもいい、出久はそういう人を放っておけないのだ……。

 

到着した場所は見晴らしのいい崖の上の空間。

そこで出久は見た。

個性の訓練を隠れてしている洸汰の姿を……。

 

 

 

 




次回は洸汰との二人きりでの話を書こうかと。
そしてその次で保須市にグラントリノとだけ向かってステインですかね。
その時だけの状況なら責任はグラントリノだけになるという方向で行こうかと。

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