【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。


猫娘と明かされる秘密編
NO.043 久しぶりの学校はカオス


 

出久は病院を退院後、グラントリノの家へ向かっていた。

さすがにもうワイプシのところには行く期間はないので、せめてグラントリノに挨拶でもと。

そして来てみればすでに出久の荷物はわざわざ山奥まで行って取ってきてくれたらしく、

 

「ほら、忘れもんはないか?」

「はい。スーツケースもちゃんとあります。グラントリノ、短い間でしたがありがとうございました」

「俺は特に貢献できたつもりはねぇんだがな……職場体験もあんなだったしな」

「それでも、学べたことはきっと糧にします」

「そうかい? それよりお前、ヒーロー殺しにまだ付け焼刃の足技を使って少しヒビが入ったらしいじゃないか? しっかりと治しておけよ。そして制御をしっかりとするんじゃ」

「はい」

「オールマイトのようになりたいならしっかりと学ぶことも大事だ。精進しろよ」

「わかりました」

 

それでグラントリノはもう話すことは無いかのように後ろを向いて家の中へと入っていこうとしたところを出久は呼び止める。

 

「その、グラントリノはどうしてそんなに強いのに……その、無、無名なんですか……?」

「その件か。俺は元々ヒーロー活動はするつもりはなかったからな。とある理由があって資格を取っただけだ。これ以上は俊……オールマイトから聞けることを祈っておくんだ」

「は、はぁ……」

「じゃあ、以上だ! 達者でな」

「は、はい! ありがとうございました!」

 

出久はもう聞けることは聞いたのでグラントリノの家を後にしようとする。

グラントリノはそんな出久の後姿を見て思う。

 

「(容姿も、性格も、性別でさえ俊典とは違う……だが、確かにお前にそっくりだぜ、俊典。ならば、最後にこいつの名前でも聞いておくとするか)小娘!」

「は、はい?」

「お前は誰じゃ?」

「え!? 今更ですか! 僕は緑谷出……」

「違うだろ?」

 

出久はその謎かけのような質問に一瞬考えを巡らせて、そして気づく。

 

「『出雲』です!」

「…………(お前が過去になるその日まで。……いつかこの名前が新たに平和の象徴として呼ばれるその日まで……楽しみじゃな)」

 

それで今度こそ二人はそこで別れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日になって久しぶりである雄英高校への登校。

教室では様々な体験をしたのか悲喜交々な光景が見られた。

その中で爆豪は不機嫌そうな顔をしながらもベストジーニストとのやり取りもそんなに悪いものではなかったと思っていた。…………強制的に8:2の髪形にされなければの話であるが……。

それで当然いつも絡んでくる切島と瀬呂の二人が爆笑している。

 

「ひーひー……腹いてぇ」

「笑うな……殺すぞ」

「やってみろよ! 8:2坊や!」

 

笑われていて、不機嫌でも今の爆豪は極めて落ち着いていた。

それはなぜか? ベストジーニストによって過去を抉られてから人生相談を受けた形になったのだから感謝はしないといけない。

ゆえに爆豪は無理やり髪の毛をボン!と戻してとある事を聞くために帰りに出久に話しかけようと思っていた。

 

他の場所では芦戸が耳郎と蛙吹と話していてヴィラン退治とかもやったとかで興奮していた。

 

「お茶子ちゃんはどうだったの? この一週間」

「とても……有意義だったよ」

 

蛙吹の質問にお茶子は構えをしながら静かに息を吐いていた。

それはさながら今から格闘技でも始めるのではないかと言う雰囲気である。

スクリューナックルを何度も放っているのはさすがである。

 

「目覚めたのね、お茶子ちゃん」

 

それを見ていた上鳴が言う。

 

「一週間で変化がすげーよな」

「いや、上鳴。女ってのは本性を隠し持ってるもんなんだぜ?」

 

爪をかじりながらそんな事を言っている峰田は果たしてMt.レディのところで何を見たのか……?

上鳴はさすがに見ていて怖いから爪を噛むのを止めさせながらも、

 

「それより一番変化があったのはお前ら三人だよな」

 

見た先には出久、轟、飯田の三人が話し合っていた。

それで各々が心配の声をかけていった。

やはり心配だったのだろう。

出久によって送信された位置だけの情報でなにかが起こっているという事はなにかしら感じられたのだから。

話題はもうヒーロー殺しの事で一色になっていく。

だが、そこで上鳴が不用意な発言をしてしまう。

そう、「ヒーロー殺しってかっこよくね?」と。

 

「上鳴くん!」

 

そこで出久がどこか止めてと言っているような声を上げる。

上鳴もそれで飯田の件を思い出して反省している感じであった。

だが、とうの飯田は普段通りにしていて腕を何度も振って、

 

「確かに信念が通っている男だった。だが、俺はやはりヒーロー殺しの事は認められない……粛清と言う手段を選んでしまったのだから。

だからもう俺のようなものを出さないためにも改めてヒーローを目指すのだ!」

 

それを聞いて出久はやっぱり飯田君はかっこいい!と思っていた。

そんな出久の憧れの眼差しに気づいて飯田は顔を赤くしているのを、目敏くお茶子は感じてしまい、

 

「飯田君……そう簡単にデクちゃんはあげないからね?」

「う、麗日君。俺は別にそんな……」

「麗日さん? 何の事……?」

「デクちゃんはそのままの純粋なままでいてね……」

「えっと……うん?」

 

少し訳の分からなかった出久であったがそのまま時間は流れていき、ヒーロー基礎学の時間になった。

だが出久と飯田はコスチュームが壊れてしまったので今は修繕に出して代わりに体操服を着ている。

 

「久しぶりだな少年少女たち。さっそくだが救助訓練を行おうと思う」

「……? ここはUSJではないですが……」

「あそこは災害時の為で今回はレースをしてもらう感じだ」

 

オールマイトは話す。

ここ、運動場γは複雑に入り組んだ迷路のような細道が続く密集工業地帯。

ここを5人4組で分かれてオールマイトが出す救難信号を目指してレースをするというもの。

 

そして最初のメンバー5人が選ばれる。

出久、飯田、尾白、芦戸、瀬呂の5人だ。

待機組はさっそく誰が一番か話し合う。

 

「このメンバーですと……緑谷さんか瀬呂さんが有利になりますわね」

「だなー。でも、瀬呂は射出する時間があるから常に動いている緑谷にはスピード負けするかもな」

「飯田君、完治していないけど速さでは一番だと思うけどなー……」

「そうね」

 

そんな感じで一斉にスタートをする5人。

予想通り、滞空能力を駆使して出久と瀬呂の二人が同時に躍り出た。

だが、変化はすぐに見て取れた。

ワイプシとグラントリノとの短くも濃かった特訓で足の使い方を学んだ出久はまるで高速移動でもしているかのように足場から足場へと跳んでいるのだ。

おそらく職場体験前よりもさらに動きはよくなっていることが窺える一場面である。

あっという間に瀬呂は置いてかれてしまった。

 

「やっぱ緑谷すげーな……さらに動き良くなってんじゃね?」

「足の使い方が練度が増してるよな」

「デクちゃん、かっこいいよ!」

 

と、出久の成長を見て自分達も頑張らないとなと思う一同であった。

爆豪もそんな出久を見て、

 

「(デク……その力はあの猫の力なのか……? 話してくれるか?)」

 

と、一人考え込んでいた。

今までが今までだったために自分から話しかけるなど難しくなってきてしまっていた爆豪はどう出久に話しかけようか悩んでいるのであった。

 

 

 

そして当然、出久が一番でゴールをした。

その後に他の三組も追々訓練をしていってオールマイトは満足そうに、

 

「よし! みんな個性の使い方が入学時よりうまくなってきているな。期末テストも迫ってきているからこれからも頑張りたまえ!」

『はい!』

 

オールマイトは出久の横を通り過ぎる時に小声で、

 

「………この授業が終わったら私の元へ来なさい。改めて話したい事がある……」

「えっ……?」

「………君についに話さないとならない時が来た。私とワン・フォー・オールの事について……」

 

オールマイトはそれだけ伝えて離れていった。

突然の内容に出久はどんなことを話すのか少し怖く感じていた。

いつものオールマイトではなかったような錯覚を覚えたからだ。

 

 

 

 

 

更衣室にて体操服を脱ぎながらも出久は少しだけ怖い感情をなるべく抑えながらも着替えていた。

そんな時だった。

隣の男子更衣室の方からなにやら峰田の叫び声が聞こえてくる。

 

「なんだろう……?」

「ウチが確認してみる」

 

耳郎がそう言ってイヤホンジャックを壁に刺してあちらの声を聞いてみる。

 

『この穴、ショーシャンク! 恐らく先輩方が頑張ってくれたんだぜ!?』

『峰田君、やめたまえ! 覗きは犯罪行為だぞ!?』

『うるせー! おいらのリトルミネタはもう万歳三唱しているんだよ!』

 

と、なにかを破り捨てる音が聞こえてくる。

さすがにその声は女子の方にも聞こえてきたのか七人とも苦笑いを浮かべる。

 

『八百万のヤオヨロッパイ! 芦戸の腰つき! 葉隠の浮かぶ下着! 麗日のうららかボディ! 蛙吹の意外おっぱい! 緑谷のあざとい猫耳しっぽ姿ぁぁぁぁ!!』

 

ザシュッ!

 

なぜ自分だけ名前が上がらないのだ?

耳郎はその思いとともに穴にイヤホンを通して峰田の目を突き刺して音波を送って黙らしていた。

 

「ありがと響香ちゃん」

「卑劣ですわ! すぐに創造で塞いでしまいますわ!」

「峰田君はまったく……」

 

七人が呆れている中で、まだ抵抗しているのか声が続いていた。

 

『峰田君、もう諦めたまえ!』

『うるせぇ! 飯田、お前だって本当は緑谷の裸を見たいんじゃないのか!?』

『なっ……そんな事は……あっ……』

『おい……そのなんか思い出した様な顔は何だよ……?』

『い、いや! 決して緑谷君の裸姿を見てしまった訳ではー!?』

『『『あ゛!?』』』

 

飯田、見事な自爆である。

 

『おうおう飯田よー……そこんとこ詳しく話せよ? なぁ?』

『と、轟君! 仲間だろ? 助けてくれ!!』

『俺を巻き込むんじゃねぇ!!』

 

それで男子更衣室がなにやらヒートアップしている一方で、

 

「だってよ? 緑谷、ホントなの……?」

「デクちゃん、正直に話してええんよ……?」

「えっと、その……入院中に病室で看護婦さんに体を拭いてもらった後にブラを付けようとしたところで運悪く二人が入って来ちゃって……その、うん……」

 

これ以上は察してほしいと出久は顔を赤くさせながらも話した。

そして、出久が休み時間の間にオールマイトのもとへと向かっている中で、1-Aでは学級裁判が開かれていたとかなんとか……。

 

 

 




飯田君、轟君……君達の犠牲は忘れない……。

次回はオールマイトとかっちゃんの話にしようかと。

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