【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。


NO.048 続く有限の日常

色々気まずくなるような事がクラスのみんなにばれてしまった出久だったが、それはそれ。

学校生活は毎日通わないといけないのだから当然次の朝にはみんなと顔を合わす事になり、

 

「緑谷さん! おはようございます! それでつかぬ事を伺いますが、私の家が管理・経営している病院には結構な重症患者の皆さんがいるのですが、緑谷さんの力をぜひお借りしたく!」

 

盗聴器と言うある意味最悪な手を使って知ってしまった八百万が、とても泣きそうな顔でありながら、そんな事を言ってきた。

他にもお茶子や蛙吹が、

 

「デクちゃん! 今まで辛かったんね! 大丈夫! 必ずデクちゃんを呪いから解放してあげるからね!」

「そうよ、出久ちゃん。ヒーローはケガが付き物……きっと出久ちゃんの力は役に立つわ」

 

と、もう過保護な感じで出久にそう言ってきていた。

それ以外にも男子がそれはもう出久の事を気遣うようになってきていて、さすがの出久も居た堪れないという感じで、

 

「えっと、みんな……気持ちはありがたいんだけどそんなに焦っても仕方がないんじゃないかな……?」

 

と、いつも通りに謙虚な振る舞いをしていた。

 

「うむ。緑谷君の言う事も正しい。地道にコツコツと消化していけばいずれは解放されるからな」

「だがよ、飯田。そんな事言っちまって緑谷が取り残されちまったら嫌だぜ?」

「そうだそうだ! おいらも協力したいぜ!」

 

そんな感じでヒートアップしていく教室内。

そこに冷静に事を見ている常闇が口を開き、

 

「それに、呪い……言いえて妙だが、例の猫の罪滅ぼしと言えば聞こえは良いが……結果的には誰かが傷つかないといけない、不幸な目に合わないといけない……ヒーローとは本来誰も傷つかない事を望まないといけないというのに、この矛盾っぷり……茨の道と言わざるを得ないな」

 

それを聞いてある意味現実的な意見に全員が改めて出久のこれからの道が辛く厳しいものだと実感した。

 

「あ! それだけどね。一つ思った事があるんだけどいい!!?」

 

そこに空気を変えようとして芦戸が声を上げる。

なんだなんだ?と騒ぎ出す一同。

 

「ねぇ、緑谷?」

「なに、芦戸さん?」

「えっとね……その生命力をあた……じゃなかった。他人を治癒する個性ってどの程度の範囲まで可能なの?」

「えっと……そうだね。死んでさえなければ重傷者だったら一か月分くらいの生命力を与えれば全快にまでできるかな? 傷が完治しているんだったらもう治せないけど治療中とかならリカバリーガール以上の治癒力は発揮できると思うよ」

「そっか! 飯田! いい事だね!?」

 

そこでいきなり話を振られた飯田は困惑気味に首を傾げながらも、

 

「なにがだい、芦戸くん?」

「なにが、って……あんたの家族の事だよー! インゲニウム、まだ治療中なんでしょ!?」

「あっ!?」

 

その事に気づいて飯田は出久に顔を向けて思いっきり頭を下げながら、

 

「緑谷君……頼む。兄さんを、全快とはいかなくても、ヒーローに復帰できなくともいい。兄さんを治してくれ!」

「飯田君……うん! 任せて!」

「ありがとう……!」

 

そして日を改めて出久は飯田とともに入院しているインゲニウム……飯田天晴がいる病室へと赴く事になる。

結果はその時に話すとしよう。

それで涙を流す飯田に「よかったな!」と次々と声をかける一同。

そこにいつもの感じで、

 

「―――おはよう」

 

その相澤の言葉とともに全員がすぐに席に着席する。

相澤はそれで一度全員を見渡しながら、

 

「………うん。全員いるな。それじゃ朝のホームルームを始める前にお前らに伝えておく事がある。当然、緑谷の件だ」

 

それで苦笑いの出久と爆豪以外は冷や汗を流す。

当然である。

二人だけの会話……それも結構重要な話を聞いてしまったのだからそれなりに処罰は受けるというものだ。

 

「もう知っちまったもんは仕方がねぇが、このクラスの奴ら以外には絶対に緑谷の秘密はばらすなよ? 個性が個性だ。誰かに話しちまったことで良からぬ奴ら……特にヴィランなんかに目を付けられて緑谷が狙われる事になったら本末転倒だ。

だからというわけじゃねーが、緑谷と爆豪以外の全員には反省文を書かせることにした。特に盗聴器を使った八百万は他の奴らよりもびっしりと書かせるからな?」

「承知しておりますわ……むしろそれだけで済むのでしたら出来る事でしたらなんでも致します」

 

それで他のみんなもそれだけで済むならと……と、気持ちよく反省文を書く気でいた。

 

「まぁ、心から反省してんならそれでいい。それじゃホームルームを始める」

 

そして始まるホームルーム。

 

「で、だ。もうすぐ夏休みが迫ってきているが、もちろんお前らが30日間一か月休めるなんて道理はこの雄英では通用しない」

「まさかッ!!」

 

それで先ほどまでの空気が変わって全員は別の意味で緊張をする。

期待も含まれている事もあり、相澤の次の言葉を待つ一同。

 

「夏休み、林間合宿をやるぞ」

 

その言葉を持ってして、

 

「知ってたよやったー!!」

「肝試し!」

「お風呂!」

「みんなで花火」

「みんなで作るカレーもいいな……」

「行水!!」

 

と、やりたい事を次々とみんなが口に出す。

それで騒ぎ出す一同だったが、

 

「ただし……」

 

相澤の言葉と個性の発動による睨みでシーン……と静かになる一同。

 

「その前に期末試験があるんだが……合格点に満たなかった奴は……もれなく学校で補習授業が待っていると思え」

「みんな頑張ろーぜ!!」

 

切島のその叫びに勉学に乏しいものは冷や汗とともに「おー!!」と腕を上げていた。

実に騒がしい教室である。

爆豪はそんなやり取りを聞きながらも、「くだらねー」と呟くが、仲の改善を図る事に成功した出久が後ろの席から声をかける。

 

「……か、かっちゃん。そ、その、一緒に勉強しない……?」

「あぁ!?」

「ひぃ!? ご、ごめん……! さすがに出過ぎたよね!?」

 

と、怯える出久を見て爆豪は少し頭を冷やして、

 

「……まぁ、いいけどよ」

「あ、ありがとう。かっちゃん!」

 

それで嬉しそうに頬を緩ませる出久。

それを聞いた一同は、

 

「「「「「(ここで幼馴染というポジションが役立つ日がこようとは……!)」」」」」

 

と、爆豪の出久への対応が今までが今までだっただけに、爆豪のツンからのデレ化に対して全員がある意味焦りを感じていたり。

 

「……緑谷。それじゃ俺も教えてやれない事もないんだが……」

「轟くん……?」

「デクちゃん、勉強教えて!」

「麗日さん……?」

「俺も教え合う事も出来るが……」

「飯田君……?」

 

と、出久に集りだした数名。

それによって爆豪がキレて、

 

「デクは俺を頼ってきたんだ! だからてめーらは付いてくんな!!」

「爆豪だけ緑谷を一人占めとかずるいぜ!?」

 

と、また賑やかになる教室。

相澤はそんな一同を白けた目をしながら見ていながらも、

 

「(……まぁ、こいつらのこの反応なら緑谷の個性に対する偏見とかによる関係悪化はなさそうだな……むしろ関係向上してないか……?)」

 

教師の視点で「いい事だな」と思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事が行われている一方で裏側では、

 

「まさかヒーロー殺しがやられるとはね。だが、彼のおかげで死柄木弔に仲間が増えそうであるのは喜ばしい事だ」

 

チューブを何本も付けられた男がそう話す。

 

「しかし、彼に任せられますかな? むしろワシは先生が前に出ればとも思いますが……」

「ははっ。それなら早く体を治してくれよ、ドクター。……ああ、こういう時にあの子の個性が欲しくなってくるねぇ……僕がやられてから姿を消したあの子……フォウはどこにいるのか……いや、もうおおよその見当は付いているのだがね」

 

そして映し出されるは出久の顔写真。

 

「緑谷、出久……フフフ……。彼女はどうやって手に入れたのか分からないけど……また首輪を付けたいものだねぇ……」

 

先生と呼ばれた男はニヤリと笑みを浮かべるのであった。

 

 

 




この話、原作だとたった4ページ分だという事に先は長いと感じざるを得ない今日この頃。



何と言いますか、私の書いてきた今までの話で共通点があるとすれば、『TS』『本人とは別の誰かが宿っている』『最終的にすごい力に目覚める』傾向らしいんですよねぇ……。
まぁ、別に構わないんですけど……。

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