【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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文字数多めです。


NO.060 期末試験 七、八、九回戦目

 

 

 

 

第七回戦。

プレゼント・マイクと口田・耳郎ペアの戦いが行われていた。

だが、その内容はあまりにプレゼント・マイクに有利なものであった。

 

「YAHAAAAAAAA---!!」

 

ゴールのゲートの前で鎮座して動かないプレゼント・マイク。

攻めてこないのは舐めているのか……いや、これが彼の戦い方である。

プレゼント・マイクの個性は『ヴォイス』。

どんな叫びにも衝撃波が乗って相手の動きを鈍らせられるもの。

それは物理的な破壊にまで昇華されている為に、本気を出されれば二人はあっという間に鼓膜を破られて戦闘不能にされてしまうだろう。

 

「うううっ!!」

「ッ!!」

 

口田と耳郎は必死に耳を押さえながらも突破口を探していた。

 

「もう! これって緑谷の叫びより厄介じゃない!」

 

あまりの力の差に思わず愚痴る耳郎。

出久の叫びによる衝撃波が瞬間的なものだとすれば、プレゼント・マイクのは持続型。

耳郎の個性である『イヤホンジャック』で発生させる音では下位互換だろう。

口田の個性とも相性が悪い。

口田の個性は『生き物ボイス』。

動物たちに命令を出して操れる個性なのだが、プレゼント・マイクによって命令しても妨害されて逃げられてしまうのだ。

二人に対する対策は万全である。

音がかき消されてしまう中でここをどう攻略するかが鍵になってくるかだろう。

 

言い忘れていたが、今三人が戦っているエリアは森林地帯。

先程も言ったがプレゼント・マイクはゴールで仁王立ちしている為に敢えて攻めてはこない。

それを耳郎は考えた末に、

 

「マイク先生は攻めてこないから、どうにか迂回してゴールまでは近づくことが出来たけど……口田、なにか策はある?」

「(フルフル……)」

 

聞かれた口田は何度も動物たちが逃げてしまっている中で力になれない事を悔しく思いながらも首を力なく振る。

耳郎はそれで今は対策を立て直すことが先決だと感じた。

だが、相手も待ってくれない。

 

「どこだぁぁあああああ!!」

 

またしても盛大な叫びを受けてしまい、二人はもう耳が痛くて堪らなかった。

 

「ううっ!!? どうすれば!」

 

何度か相殺を試みるも効果は薄かったために耳郎も万事休す状態であった。

だが、そこで名案を閃く。

ふと耳郎は地面を這っている虫を捕まえて、

 

「口田! 動物にも命令できるんだから地面の下にいる虫にも命令できるの!?」

 

声が響きにくい地面の下ならば果たして?と言う考えで耳郎は口田に問いかけてみたのだが、返ってきた言葉は叫びだった。

 

「キャアアアアア!?」

「えっ……?」

 

口田は虫を見た途端に一目散に隠れてしまったのだ。

 

「もしかして、虫苦手なの……?」

「(コクコク……)」

 

突破口になりえる策で思わぬ落とし穴だ、と耳郎は感じた。

そこに口田の叫び声を察したプレゼント・マイクが、

 

「そこですかぁぁあああああ!!」

 

今度はしっかりと標準を合わせて叫んできていたためにもろにダメージを食らう二人。

だが、打開策は見えた。

あとは行動を起こすのみであるので、

 

「口田! 出来るかできないかだけ教えて!」

「……ッ!」

 

口田はなんとか親指だけ立てて出来る事を教える。

耳郎はそれならと一つの岩を破壊する。

そこにはおぞましいほどの蟲の姿があり、口田はもうそれで声にならない悲鳴を上げる。

だが、

 

「口田! あんたも雄英に合格できてここまで来れたんだからこのくらいの逆境は克服しないと! それにそんなじゃ緑谷達と肩を並べられないよ!」

「ッ!?」

 

そう耳郎に喝破されて口田は目を見開く。

見ればそう言う耳郎の耳からは血が流れてきていた。

おそらく鼓膜が破れてしまったのだろう。

自分が退いてしまった事でこんな事態に……。

情けない!

そして、出久の名を出されてそうだと口田は思う。

普通なら泣き叫んでもいい、未来に絶望してもいい……そんな状態の出久なのに、出久はしっかりと前に向かって歩んでいる。

そんな出久の姿に僕も頑張らないと、と口田はいつからか勇気付けられていた。

 

「(そうだ! 虫が苦手なくらいなんだ! それを乗り越えてこそプルス・ウルトラだろ!?)」

 

そう踏ん切りがついた口田は地面にいる虫達に向かって、

 

「お行きなさい小さき者どもよ……騒音の元凶たるその男、討ち取るのは今です……いいですか」

「めっちゃ喋るじゃん!!」

 

普段あまり喋らない口田とは打って変わってよく響く声で語り掛ける姿に耳郎の鋭いツッコミが入る。

だが、効果はすぐに出ていた。

もうすぐタイムアップとなる時間で「もうだめか?」と思っていたプレゼント・マイクだったが、ふと地面が盛り上がったのを感じた次の瞬間に這い出てくるおびただしい数の虫達の姿。

一気に自身の身体へと張り付いてきて、そのあまりの気持ち悪さに嫌悪感、体を這ってくる抵抗感にプレゼント・マイクも堪ったものではなく、すぐに意識を消失させて泡を吹きながら気絶をしてしまった。

 

そこを口田と耳郎の二人はひっそりと確認しながらも、

 

「プレゼント・マイク先生……気絶しているね。口田、やるじゃん」

「(ウンウン……)」

 

だが、鼓膜が破られてしまっている為に、正常に立つ事が出来ない耳郎は口田にお姫様抱っこをされながらもゴールを突破する事に成功したのであった。

 

 

 

 

それをモニター室で見ていた一同はと言うと、

 

「あれは……プレゼント・マイク先生でも堪ったものじゃないですね」

「うんうん……」

 

出久の言葉にもう戻ってきていたお茶子が頷く。

 

「虫ごときで情けないねー……まぁいい。緑谷、二人が戻ってきたら耳を治してやりなさいな」

「いいんですか……?」

「あたしが許すよ」

「わかりました!」

 

それで少しして戻ってきた耳郎と口田は出久によって治療をされている中で、

 

「ありがと、緑谷。楽になったよ」

「(コクコク……)」

「よかったー」

 

すぐに治療が終わったたために、モニター室に戻ると、すでに第八回戦目が始まっていた。

相対するのはスナイプ先生と葉隠・障子ペア。

これに関しては特に大きく言う事は無い。

三人で盛大に索敵のやり合いをしていたものだったのだから。

スナイプの個性は『ホーミング』。

狙った獲物は必ずその自慢の銃で狙い撃つ性能を持っている。

だが、今回は透明な葉隠に索敵に関しては一日の長がある障子が相手だ。

だから内容はすでにかくれんぼと言っても差し違えない内容になっていた。

何度も狙撃を食らうが、ギリギリで索敵が間に合い、先んじて隠れると言った感じで淡々と時間は過ぎて行って、気づけば葉隠と障子は最後までスナイプに足取りを把握されないでゴールを突破していた。

 

「可もなく不可もなくって感じだねぇ……」

「はい。最後まで息を潜めていた感じでしたね」

「でも、スナイプなら本気を出せば二人をハチの巣にする事も可能だからねー」

「怖いですよ、リカバリーガール……」

 

そんな感じで続いて始まる第九回戦目。

対決するのは、ミッドナイトと峰田・瀬呂のペア。

だが、エンカウントして早々で、

 

「峰田! 近寄っちゃダメだ!」

「瀬呂!?」

 

突然の瀬呂のテープで後方へと追いやられた峰田だった。

瀬呂の判断は正しい。

少しでも近寄ってしまえばミッドナイトの個性で眠らされてしまうのだから。

ミッドナイトの個性は『眠り香』。

身体から発する香りで相手を眠らせてしまうもの。

女性より断然男性の方が効き目が高い。

よって、峰田を救出したものの、代わりに瀬呂は眠り香に晒されて眠ってしまいダウンしてしまった。

 

「瀬呂ー! てめぇ!!」

 

助けに行くのかと思いきや、峰田は瀬呂の現状に対して血涙を流していた。

なんと瀬呂はミッドナイトに膝枕をされていたのであった。

 

「あいつぅぅ!! いいポジションを獲得しやがって―――!!」

 

もうゲートとは逆の方へと逃げながらもそう叫ばずにはいられない。

それを見ていたみんなはと言うと、

 

「情けないぞ峰田くん!」

 

と、飯田がみんなの代弁をして叫んでいた。

 

「これはダメかもしれないねぇ……ああいうタイプはここで生きていくにはつらいよ」

「それって……」

「雄英は絶え間なく試練を与えていくんだ。そこを乗り越えてこその未来への自信に繋がる。だけど『なんとなくヒーローになりたい』ってだけじゃそのうちダウンしちまうよ。あの子の中にはどんな目標があるのかねぇ……」

 

そう言って峰田の事を見据えるリカバリーガール。

モニターの先では峰田はというと息を切らせながらも、

 

「女体触りたい……モテたい」

 

そんな事を呟いていた。

峰田の心に過去の光景が再現される。

どこに行ってもモテるのはイケメンばかり……。

自分の様な底辺の者達には遠い世界の話。

だが、それでもモテたい。モテてチヤホヤされたい。

ヒーローになればそうなれるのでは……?と、雄英を目指した。

だが、それは雄英に入学して、ヴィラン連合の侵入によって直に死ぬ思いをして考えが変わった。

そう……水難ゾーンでの出来事。

出久と蛙吹に頼られたのに、それでも自信が持てなかった己に、出久は手を握ってくれた、頼ってくれた。

そしたら自然と勇気が湧いてきた。

女子二人に頼られちゃとあったら男見せなきゃいけないだろ!?と……。

そしてなんとか水難ゾーンは突破したものの、脳無との戦闘で出久が率先して前に出て行った時に一緒に戦う力がない峰田は己の力の無さに思わず男泣きをした。

 

 

―――もっと力があれば女子の緑谷に苦労をかけなかったのでは?

 

―――男らしくかっこよく立ち回りが出来たのでは?

 

 

そんな後悔が襲ってくる。

それと同時に、ヒーローだからカッコいいんじゃない、カッコいいからヒーローなんだって悟ったのだ。

 

「だから! オイラの一方的な思いだからって緑谷にはカッコ悪いところを見せられねーんだよ!」

「よく言ったわ! それじゃもうちょっと足掻いてみせてよ!」

 

ミッドナイトは峰田の見た目だけでは分からない変化に気づいて、嗜虐心をそそられて前に出てきていた。

一度でも吸ってしまえば即ダウンしてしまう中で、峰田は口を押さえながらもなんとか逃げおおせている中で、物陰に身を潜めて口に先ほど助けてもらった瀬呂のテープを巻いて息を止める。

そして勝負の時だ!とミッドナイトの前へと躍り出た。

 

「息を塞いでいたっていつまで持つか分からないわよ!?」

「もがもがも(少しの時間があれば十分だ!)!」

 

峰田はモギモギをたくさん放ってミッドナイトが持つ鞭と、それを持っている手にうまく張り付けた。

そして鞭が地面へと張り付いてしまい、ミッドナイトも動けなくなってしまった。

 

「あんたの嗜虐心を煽るのも作戦の内ってね!」

 

思いっきり止めていた息を吐き出しながらも、峰田はゲートへと走っていく。

 

「…………やるじゃん」

 

ミッドナイトも思わずそう呟くのであった。

峰田は眠ってしまっている瀬呂を担ぎながらもなんとかゲートを通過していた。

 

 

 

「参ったね……すっかり騙されちまったよ。それにしても、緑谷。あんた、みんなに好かれてるねぇー」

「あ、あはは……」

 

出久はもう恥ずかしかったのだ。

ほんの数秒とはいえ、峰田の気持ちも聞いてしまった事で。

 

「峰田君……デクちゃんはやらないからね?」

 

と、お茶子も闘志を燃やしていた。

 

「まぁいいさ。それより緑谷。最後はお前たちの番だよ」

「わかりました!」

「デクちゃん、頑張ってね!」

「緑谷さん、ファイトですわ!」

「頑張るんだ緑谷君!」

「出久ちゃん、あなたならできるわ」

「うん!」

 

みんなの声援に見送られながら、出久は移動するバスまで歩いていくと待っていたのか爆豪が立っていた。

 

「デク……行くぞ?」

「うん。かっちゃん!」

 

ついに最後の演習が始まろうとしていた。

相手はあのオールマイト……一筋縄ではいかない相手だ。

二人は突破できるのであろうか……?

 

 

 




峰田の心情が今回結構難しかったですね。
ですが、これで峰田もレースに浮上してきた感じですかね。

それよりやっとここまで来ました。
かなり原作の各期末試験の内容をどう変えるかで時間を掛けてしまいましたからね。
変わっている物もあれば、変わらないものもあるって感じで四苦八苦しました。
今回も結構詰め込んだんでギリギリ5000文字は行かなかったですが、頑張りましたし。

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