【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。


NO.061 期末試験 十回戦目

 

 

 

バスで移動中の二人。

すでにオールマイトは演習試験会場へと向かっていたために話し合う絶好のスペースだ。

 

「………それで、かっちゃん。こうしてオールマイトと本当に当たる事になっちゃったけど、どうする?」

「決まってんだろ、デク。あん時に話し合った通り、真正面からぶち抜く。それでもダメだったら素直に逃げの選択肢も入れておくのも……まぁ、仕方ねーと言えば仕方がねぇ。だが、最後まで足掻くぞ?」

「うん。かっちゃんが冷静で良かった。それなら僕もとってもやりやすい!」

 

出久はそう言ってはにかみながら笑みを浮かべる。

爆豪はそんな出久の顔を見てまた胸に響く何かを感じたが、分からないものは仕方がないために保留にする。

……本当にこの気持ちに自覚して気づいたら大変な事になるだろう事、請け合いである。

ただでさえ、爆豪は過去からのトラウマを持っているわけで、それだけで引け目があったりするのに、それとは別にこうも普通に会話が成立するまでに関係を修繕出来た事に自分自身ですら驚いているのだ。

だというのに、出久はそんな事を気にする素振りすら見せないで自然体で爆豪と接している。

 

 

―――天然か!

 

 

と、思わずにはいられない爆豪であった。

 

それから移動の間に粗方作戦などを話し合った二人は試験会場へと到着する。

 

「やぁ、お二人さん。よく来たね」

「「……………」」

 

そんな、気軽な感じで話しかけてくるオールマイトだが、すでに威圧感などが感じられることから二人は緊張をしていた。

 

「ふむ。いい感じに緊張しているようだね。爆豪少年はおそらくだがモニター室にはいなかったと思うが、緑谷ガールは他のみんなの戦いぶりを見ていたと思う。

そういうのもひっくるめて、かかってこいよ?二人とも。今回は私はヴィランだからね!」

 

HAHAHA!と笑いながらオールマイトは指定の位置へと向かっていった。

そんなオールマイトを見送って、そして二人も指定の位置まで到着する。

 

『それじゃ第十回戦、始めさせてもらうよ』

 

リカバリーガールのその宣言によって、二人は同時に走り込む体勢になる。

すでに出久に関しては増強系の個性は全部発動させて、爆豪も両腕でバーナーを吹かせられるように構える。

 

『スタートだよ!』

「「最初からスタートダッシュ!!」」

 

出久と爆豪は同時に走り出した。

だが二人の移動速度は本気を出してしまうとそれこそ爆豪は置いてかれてしまうだろう、だから出久は爆豪のスピードに合わせて走る。

 

「デク!! オールマイトの位置を探れ!!」

「うん、かっちゃん!」

 

発動する『五感強化』の個性。

これによって超人的な視力、聴覚などを発揮できる。

視力に関しては発目の個性『ズーム』には劣るものの、それでも2㎞くらいならば視覚が可能である。

これによって見えたものはというと、

 

「ッ!? おそらくゴール真正面で拳を構えてる! ッ!!? 避けて!!」

 

出久のその言葉に瞬時に反応した爆豪は、出久とは反対側に避ける。

次いで襲ってくる衝撃波。

それは周りに存在しているビルや建物などを悉く破壊していく。

あまりにも破壊的で、これが本当にあのオールマイトから繰り出されたものなのかと思うほどである。

砂煙が舞う中で、その中からオールマイトがとてつもないほどの威圧感を放ちながら歩いてくる。

その姿になんとか避けれた二人は、それでも戦慄する。

 

「これが……!」

「オールマイトか!!」

 

『平和の象徴』。

これはヴィランにとって最高の抑止力足り得るものだろう。

だが、いざそれがヴィランとして君臨してしまえば、嵐の様な脅威となる。

たとえ、ハンデとして重りを付けているとはいえこれほどの力をいかんなく発揮できるとはとてつもないポテンシャルであろう。

 

「これは確かに演習試験だ……だが、だからといって優しくしてやるつもりはないぞ、ヒーロー? 私はヴィランだ。本気でかかってきなさい!」

「上等だーー!!」

「どの道いつかは越える道です! いきますよ、オールマイト!!」

 

二人の気の合った雰囲気をオールマイトは直に感じて思った事は、

 

「(ふむ。緑谷ガールと爆豪少年はもう見たところは壁みたいなものはなさそうだな。まぁそれはそれで手強い事だろうがな……)いくぞ!!」

 

オールマイトはそう言って二人へと一気に駆けこんできた。

ダンプカーと言わんほどのスピードで走ってくるオールマイトに、それでも二人は冷静に、

 

「かっちゃん! タイミング合わせて!」

「おー!」

 

二人もそんなオールマイトに向かって走っていく。

 

「正面突破かなぁ!?」

 

またもや拳を振るおうとするオールマイトだったが、ついに接触する間際と言わん距離で出久と爆豪は左右に割れてオールマイトと一直線になるように陣取った。

そして、

 

「あ、やば……」

 

オールマイトのそんな言葉が漏れてたが二人はお構いなく、出久は息を思いっきり吸い込んでいて、爆豪はピンを外す素振りをしていた。

 

「くらいやがれーーー!!!!」

「にゃああああああーーーーー!!!!」

 

放たれる大爆破と叫びによる衝撃波。

これはかつて戦闘訓練で放たれて拮抗して打ち消し合った事がある。

そんな二つの技の真ん中にいるオールマイトは果たして無事なのか……?

 

「ぐふぅ……なかなかやるねぇ」

 

多少は食らっただろうが、それでも余裕の笑みをしていた。

 

「かっちゃん、引くよ! 炎幕!!」

 

出久は腕に炎を宿らせてそれを振るった瞬間、炎の煙幕が発生する。

それで一時的に二人はオールマイトの視界から消え失せる。

ヒットアンドアウェイ。

対オールマイト用に考えた二人の戦い方だ。

敵わないのならそれでいい。

ゴールすればいいのだから。

 

出久の狙いは当たったようで炎幕によってオールマイトも二人の姿を見失っていた。

 

「ふむ……なかなかいいチームプレイじゃないか。これは純粋に侮れないぞ?」

 

そう言いながらもオールマイトは笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

出久と爆豪の二人は走りながらも、

 

「最初は何とかなったね」

「ああ……まだまだ敵わねぇって事は分かっていたが、やっぱりオールマイトは強えな」

「うん。とにかくこのまま先行しよう!」

「ああ! もし追いつかれたら俺の籠手で―――……」

「うんうん。それでそれで?」

「「ッ!?」」

 

突然割り込んできた言葉に二人はハッとするとともに同時に構えを取ろうとする、が……それは一瞬の出来事だった。

いつの間にか爆豪の籠手は砕かれて地面に叩きつけられ足で押さえつけられて、出久の腕は両腕を掴まれて身動きできなくなっていた。

 

「「(な、なにが起こった!?)」」

 

二人の率直な感想はこれに尽きるだろう。

それほどにオールマイトは早すぎたのだ。

 

「おいおい……まだまだ本気を出していないんだぜ? これでへこたれないでくれよ?」

「ったりめーだ!! 籠手が砕かれたからってなんだ!? デク、行くぞ!!」

「うん!!」

「ん……?」

 

途端、籠手が破壊されたというのに爆豪は大爆破を引き起こしていた。

籠手がなくなったことでハンデは付くだろうが手加減無用の攻撃が可能になった。

それで二人ともなんとか自由になる事が出来て、

 

「僕も本気で行きます!!」

 

ブワッ!と出久の周りの空気が振動する感覚。

 

「変化!!」

 

そして姿を顕す5mはあるであろう巨大猫の姿。

 

「ほう……もうカードを切ってきたね。それなら本気で行こうか!」

「にゃぁあ!!」

 

そして始まるオールマイトとの拳と拳の殴り合い。

打撃音が何度も響き渡り、どんどんと苛烈さを増していく。

オールマイトはこの中で久しぶりに楽しさを感じていた。

今までここまで付いてこれたのはあの憎き男以外にいなかったからだ。

 

「オールマイト!! 俺の事を忘れてもらっちゃ困るぜ!!」

 

オールマイトの背後から爆破を浴びせる爆豪。

オールマイトはてっきり出久に任せてゴールに向かったものだと思ったのだが、ここで誤算だった。

100%の力を五分限定で発揮できる出久以外にもこうして血気盛んに爆豪という男は挑んできていたのだ。

二人とも勝ちに来ている!

そう感じたオールマイトは「いいねぇ……」と思った矢先に、

 

「にゃああああああーーーーー!!!!」

「うおっ!?」

 

巨大猫となって何倍にも増幅された衝撃波を放ち、オールマイトを吹き飛ばす。

そして爆豪を口で(くわ)えて一気にゴールまで高速移動をする出久。

こうなってしまってはもうオールマイトも追いつけまい。

そして、

 

『緑谷・爆豪ペア、条件達成だよ』

 

その宣言とともに、二人の合格が決まった瞬間であった。

出久はもとの姿に戻って、何度も拳を握ってはを繰り返していた。

 

「どうした、デク……?」

「うん。巨大猫後の弱体化率が減ってる感じみたい。それに多分だけど巨大猫になってられる時間が増えたと思う」

「そうか。『許容重量(キャパ)限界を無くす』個性で強くなってんじゃねーか?」

「そんな感じだね。それはともかく……やったね、かっちゃん」

「あたぼーよ。籠手は壊されちまったが、直してもらえばいい事だしな」

 

そんな事を話しあっている二人にオールマイトが近寄ってきて、

 

「見事だったぞ二人とも。今回の二人の課題だが、本当に仲が改善できているのかを見極める物だったのだが、これならもう安心だな」

「ありがとうございます!」

「うっす」

 

こうして期末試験、全行程が終了してそれぞれ成長できたもの、阻まれたものなどもあったが、これも成長のためのステップなので現実を受け止めてもらうしかないだろう。

とにもかくにもお疲れ様でした。

 

 

 




最新刊で出久が新たに身に着ける風圧を当てるものですけど、この今の出久に果たして必要かどうかについて……。
まぁ、もうフルカウル15%行ってますからオールマイトも教えようとは考えているでしょうけど……。
とにかく、これでやっと期末試験が終了です。

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