【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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久しぶりに更新します。


猫娘と強化合宿編
NO.069 強化合宿の始まり


 

 

 

―――林間合宿当日……。

 

 

 

「え!? A組、補習対象者がいるの? つまり赤点を取った奴がいるって事だね! おかしくない!? おかしくない!? A組はB組より優秀なはずなのにねーーー!? あっれれー!? おっかしーなぁ!?」

 

林間合宿に赴こうとするA組一同にそう罵倒を投げかける男、ご存じB組の少なからずA組を妬んでいる男、物間寧人(ク ズ)

こう言ってA組に対して某少年探偵のようなきつい言葉を吐いているが、その実、B組でも唯一赤点を取ったものなのだから、知っているものからすればただの強がり……もしくは滑稽にしか映らないのが現状である。

さすが精神破綻者!

 

「ちょっとー!? 誰だか知らないけど今だれか僕の事をバカにしなかったかい!?」

 

そんな不快感をあらわにする物間。

聞こえもしない声を聞き取るとは……。

そして天の声に物申してくるとは恐れ入る……。

 

「うるさい!」

「う゛っ!?」

 

案の定、物間はB組の姉御的存在の委員長である拳藤にチョップを食らい、いつものごとく力なく崩れ落ちる。

 

「ごめんな」

 

そう言って謝ってきて物間をさっさとバスへと放り込む拳藤をよそに、B組の他の女子達が話しかけてくる。

 

「あはは……物間、あいかわらず怖……」

「まぁ、いつもの事だから放っておこう。それより体育祭ではいろいろあったけど、よろしくね、A組」

「ん」

「うん。よろしくね」

 

普段そんなにクラス間で話はしない女子一同ではあるが、たまにではあるが共通の会話等はする事がある。

その内容とはお互いの個性の把握であったり、戦闘スタイルであったり……。

同じヒーロー科同士。

そこまで仲良くはしないでも、嫌いあう必要もないのだから。

特にB組のメンバーは体育祭の一件から出久に対しても一目を置いている。

あの出久の宣誓以来、やはりたった一年で鍛えただけでここまで上り詰めてきた出久に思うことはあるのは確かなことで。

物間などは素直には認めはしないだろうが、それでも出久の存在がA組だけでなく、B組にもなにかしらの良い影響を与えている。

だから、B組の女子達は出久に近寄って行って一言。

 

「緑谷さん、お互い頑張ろうね」

「あ。うん!」

 

握手を交わす出久達。

こうして仲は深くなっていくものである。 

そんな挨拶をかわすとともに一同は一旦分かれてそれぞれのバスへと入っていく。

だがその際に峰田がB組の女子達をじっくりと観察して、そして何かを思い至ったのか一言。

 

「よりどりみどりかよ……ッ!!」

 

と、隠しもせずに変態発言をして、これまた隠しもしないで盛大によだれを垂らす。

そんな光景に場の空気に即座に慣れることに定評がある切島でさえもさすがに峰田の変態行動には目を見張るものがあったためにいつも以上に不憫に思ったのか、

 

「おまえいい加減ダメだぞ、そろそろ……」

「エヘ、エヘ、エヘヘヘヘーーー……」

 

切島の憐みの言葉は脳内有頂天の峰田の耳には届かなかった……。

だから切島もさっさと説得を諦めてバスへと向かっていく。

バスの前では委員長である飯田がすでに誘導を開始していた。

さすがまとめることに定評のある飯田である。

程なくしてA組の乗るバスは林間合宿の場所へと向かって出発したのであった。

バスの中ではそれぞれに楽しむもの、騒ぐものと様々な様相を呈しているが、ふと出久は考え込んでいた。

そんな出久の表情を見て女子の数が半端で一緒の席に男女で座るしかなかった飯田は出久の顔を覗き込みながら、

 

「どうしたんだい、緑谷君? どこか浮かない顔をしているけど……」

「飯田君。うん、なんか今バスで向かっている方向がどこかデジャブがあって……」

「デジャブ……?」

「うん。なんか頭の端っこに引っかかるような……知っているような……」

 

そう言ってまた考え込む出久。

 

「聡明な緑谷君がすぐに思い出せないのならそこまで重要な事でもないのではないかね……?」

「そうなんだけど、やっぱりどこかもやもやがすっきりしないと気分が悪くて……」

「そういうものか。まぁ、その時になれば自ずと分かるものさ。今はこれからの事を話していこうとしようか。…………そう言えば、話は変わるが、メリッサ君とはあれから何か聞いているかい……? アドレスは交換したと聞いたが……」

 

メリッサというのは夏休みに入ってA組のみんながそれぞれ各自で行った『I・アイランド』にて知り合った無個性の女の子の事である。

その際に、出久達はちょっとした事件に遭遇したのだが、今はもう済んだことなので今はもう過去の話ではあるが、繋がりがなくなったわけではない。

 

「うん。デヴィット博士の傷は僕がすぐに治したから事なきを得たけど、同時に傷の回復を待つという時間を短縮できたから今はデヴィット博士周辺は裁判とか色々とごたごたしているらしいけど、それでもメリッサさんとのメールのやり取りだとそんなに暗い内容でもないみたいなんだ。情状酌量の余地は多少はあるらしくて……」

「そうか……いい結果になればいいものだな」

「うん」

 

そんな感じで出久は今は遠くにいる友達の事を思い馳せながらも時間とバスは着々と進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

…………そして一時間後。

休憩エリアに到着して止まるバス。

一同はわらわらと体を伸ばそうと外に出ていく。

だが、不思議な事にパーキングエリアはおろか、休憩所すらない崖の高台な場所。

気づけばB組のバスすらなかった。

だが、一人……峰田はそんなこともお構いなく尿意と一人戦っていたために必死にトイレを探している。

そんな不思議な事態に、でも出久もさすがに勘が冴えてきたのか、今自分たちがいる場所をなんとなくだが把握してきていた。

 

「ここって、まさかね……」

 

そう出久が一人ごちるが、それを肯定するように背後からA組と相澤以外の声が聞こえてくる。

 

「……―――いいえ。あなたの考えている通りよ、緑谷さん」

「えっ!?」

 

出久が振り向くとそこにはいつぞや職場体験でお世話になった人達がいた。

 

「よーう、イレイザー!!」

「ご無沙汰しています」

 

相澤もとうに把握していたのだろう、待っていたかのようにその声の主に挨拶をする。

 

「え、え、え……」

 

そんな相澤をよそに出久は少し混乱していた。

まさかこんなに早く再会する事になるとは思っていなかったがゆえに。

 

「煌めく眼でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

座して登場したのはこの方達。

 

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」

 

そこにはマンダレイ、そしてピクシーボブ……最後に出水洸汰の三人の姿があった。

 

「マンダレイ! ピクシーボブ! それに洸汰君!」

「ねこねこねこ。久しぶりね、緑谷」

「はい! お久しぶりです!」

「洸汰も緑谷さんに会いたがっていたから今回は依頼された時は渡りに船だったのよね。ほら、洸汰?」

「おう……」

 

そう言ってマンダレイの背後から恥ずかしそうに顔を出す洸汰。

洸汰は顔を少しだけ赤くさせながらも、

 

「久しぶり、出久姉ちゃん……」

「うん。久しぶりだね、洸汰君!」

 

そんな和気あいあいな空間が形成されているけど、他の生徒達はどこか置いてかれ気味で、代表してお茶子が出久へと話しかける。

 

「その、デクちゃん? この人達は?」

「あ、うん。前に職場体験でお世話になったワイルド・ワイルド・プッシーキャッツの皆さんだよ、麗日さん」

「あ! そう言えばそんな事を言ってたね!」

「うん。あれ……? でも、それじゃ合宿所までまだ結構な距離ありますよね?―――まさか……」

 

出久の勘は当たっているといえよう。

相澤が話し出す。

 

「少し話が脱線したが、もうすでに強化合宿は始まっている」

「え、それって……」

「言葉の通りよ。あなた達の宿泊施設はあの山の麓ね」

 

指を宿泊施設がある方角へと刺すマンダレイ。

 

「嘘だろ……?」

「おいおいおい!? 冗談だろ!!」

「…………今はAM9:30。早ければ十二時前後かしら?」

 

そんな不吉な言葉をマンダレイが漏らす。

それによって出久はもうすでに諦めの境地に達していた。

だが、まだ現実を受け入れられないA組一同は我先にとバスへと逃げ込もうとするが、遅かった。

土を操る個性のピクシーボブが地面を操作してA組全員を崖の下へと無理やり運んでいく。

その際に、洸汰は出久に手を振りながら、

 

「宿泊施設で待ってるよ」

 

と言葉を零していた。

崖下へと落とされた一同に頭上からマンダレイの声で、

 

「ここは私有地だから個性使用は自由よ。今から三時間、自分たちの力で施設まできてちょうだい! この……魔獣の森を抜けて!!」

 

そんな、どこか不吉な『魔獣の森』というワードを聞いて、不安がる一同。

どういう意味か考えるが、その答えはすぐに分かった。

 

「グルルルルルル……」

 

そこにはおよそ三メートルあるかないかの大きさの土くれの魔物が出現したのだ。

 

「「「「魔獣だーーーーー!!!?」」」」

 

騒ぐ一同。

だがいち早く正気を取り戻した口田が「鎮まりなさい獣よ、下がるのです」と動物なら通じる個性を発動したのだが、魔獣は一切反応をしない。

 

「みんな! あの魔獣はピクシーボブの個性で作った土くれ! だから破壊するしかないよ!!」

 

そう出久は言いながらも魔獣へと飛び掛かっていって、その爪で切り裂いていた。

だが、続々と姿を現す魔獣の群れ。

一同は各自で対応を迫られることになる。

果たしてたった三時間で宿泊施設まで到着できるのか……?

 

 

 

 

 

 

…………補足しておくと、尿意を我慢していた峰田は色々と手遅れだったと記載しておく。

 

 




二週間も放置していてすみませんでした。
艦これ二期を改めて海域全開放やら、夜勤の仕事続きで体力的に手を出す暇がなかったのです。
また今後も間が開くかもしれませんが、しっかり続けますので安心してください。

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