【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。


NO.072 個性:変化って実は万能個性?

 

 

強化合宿二日目の朝、A組の面々がすでにお決まりの通りに相澤にB組よりも早く訓練が開始されている一方。

そんな中でB組の面々も遅れながらも強化訓練場所へと歩いていた。

B組の担任・ブラドは相澤と同じようにB組の面々に“個性”を伸ばす旨を話しながらもこう付け加える。

 

「前期ではA組が目立っていたが、後期からはA組ではなく我々B組だ。いいか!? A組ではなく、我々だ!!」

 

そう力強く宣言するブラドを見て、

 

『先生!! 不甲斐ない俺らですみません!!』

 

と、ほぼ半数以上の男子生徒達が涙も隠さずに一緒に悔しがっていた。

まぁ、言われてしまえばそうとしか取れないのだが、USA襲撃、体育祭、保須事件……ついでに言えばインゲニウムの治療と言う成果。

どれを見ても関わっていてさらに目立っているのはA組の面子ばかりなのだ。

B組もA組と同じくヒーロー科……こう言っては襲われたA組に対して失礼だがB組はこれといった活躍をしていないのが現状なのだ。

だからブラドもどうにかしてB組の生徒達を活躍させたいと日夜考えを巡らせている。

静かに着実に厳しく育てていく相澤に対して、ブラドは生徒に寄り添った教育をしているので相澤とは別の意味での信頼を生徒達から獲得している。

…………まぁ、それ故に物間という少し性格に難がある生徒に対して厳しくできていないためにブレーキが少し外れたままでいるのも仕方がない……。

そこに関してはブラドも苦々しく思いながらも承知している、そしてそんな物間のストッパー役を買って出てきてくれるクラス委員長の拳藤には感謝の思いでいっぱいなのである。

 

 

 

―――閑話休題

 

 

B組の生徒の一人である取陰切奈がブラドに話しかける。

 

「ですが先生。突然“個性”を伸ばすって言っても……20名20通りの“個性”があるのに……何をどう伸ばせばいいのか分かんないんスけど……」

 

取陰の質問はまさに的を得ている。

今話したように個性は誰一人として同じではないのだ。

それぞれに得意苦手があり、普通の訓練ではどうしても全員に指導などは出来る訳がない。

取陰の質問に同意するように両頬から刃が飛び出している鎌切尖が「具体性が欲しいな……」と続ける。

他の面々も同様のようでうんうんと頷いていた。

ブラドはそんなB組の面々に対して冷静に説明をしていく。

 

「筋繊維は酷使することにより壊れて……それ以上に回復した時に倍以上に強く、太くなる……“個性”も同じだ。使い続ければ強くなり、でなければ一気に衰える。今のご時世……20代ならまだ挽回の目途は立つが、使い続けないでいた30代、40代ともなればもう“個性”は衰えに衰えているだろう……故に……」

 

広い場所へと到着した一同。

そこで目にするのは阿鼻叫喚の地獄絵図……とまではいかないが、物々しい雰囲気であった。

ブラドは一度全員の方へと振り向いて宣言する。

 

「すなわちやるべきことは一つ! 限界突破(リミット・ブレイク)だ!!」

「「「「「いっ!?」」」」」

 

そこでは凄まじい訓練が行われていた。

 

 

 

 

 

まず爆豪勝己。

ドラム缶の熱湯に両腕を突っ込んでそれによって汗腺の拡大及び爆破を繰り返して規模を大きくする特訓。

 

「くそがぁぁぁぁぁ!!」

 

爆豪本人はもうそれは苦しい事だろう。

ニトロの汗が熱湯に溶け込むのだから冷めるどころか余計に温度は上がっていく。

両腕を天に掲げて限界以上の爆破を放つ光景はまさに“壊す”特訓と言えよう。

 

 

 

 

次に轟焦凍。

これまたドラム缶を使用するスタイル。

さらにはそれに沈んで凍結と炎を同時に出してお風呂の温度を一定にする。

とても冷たい凍結に体を慣れさせて、炎の温度調節を試みる特訓。

 

「はぁ……はぁ……ッ!」

 

急激な温度の変化に荒い息を吐きながらもドラム缶を叩いて交互に個性を発動する轟。

もしかしたら同時に発動できるかもしれないのだが、過去の出来事から体育祭まで炎は封印していたために同時使用をするのにはかなりの訓練が必要になるだろう。

今までのツケが一気に襲ってきた感じである。

 

 

 

 

続いて瀬呂範太。

肘からテープを出し続けることで容量の拡大、テープ強度と射出速度を強化する特訓。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」

 

やろうと思えば無限にテープを出し続ける事ができるのだが、如何せん出し続けると非常に激痛が走るのである。

これに慣れたらやっと次の段階に進めるといったところか?

 

 

 

次、切島鋭児郎&尾白猿夫。

硬化した切島を尾白が尻尾で殴ることで互いに個性強化を高める特訓。

 

「こい、尾白!!」

「おぉぉぉーーー!!」

 

ようはただの叩き合いなので一見地味だが、それでも切島は硬化の強度を、尾白は尻尾の操作と練度を高めることができるので有効である。

 

 

 

 

次、上鳴電気。

大容量バッテリーと通電することで大きな電力にも耐えられる体にする特訓。

 

「びゃああああああああーーーーー!!!?」

 

上鳴の個性『帯電』は自身の体で電気を作り出す事ができない以上は容量を増やす以外に道はない。

ただ、電気に耐性があるから耐えられているが、下手したら感電死してもおかしくない感じである。

 

 

 

 

次、口田甲司。

生き物を操る声が遠くまで届くように声帯を鍛える発声の特訓。

内気な性格を治すにも効果的である。

 

「ああああああああああああーーーーー!!」

 

ただ、別視点から見たら可愛いだけなのだが……ここは言わないお約束である。

 

 

 

 

次、青山優雅。

腹痛を起こしても続けてネビルレーザーを撃ち続けて体を慣らし、かつレーザーの飛距離アップを目指す特訓。

 

「ふんっ! ふんっ!…………(ゴロゴロゴロ)うぅっ!?」

 

近くに仮設トイレが置いてあるのがせめてもの救いだが、とてつもないモノが来たら大惨事になることは請け合いである。

 

 

 

 

次、常闇踏陰。

洞窟の中の暗闇で暴走する黒影(ダークシャドウ)を制御する特訓。

 

「あぁあああっ!? ダークシャドーーー!?」

 

…………中では一体どんなケンカ、もとい争いが起きているのか分からないが、普段冷静な彼が悲鳴を上げていることから相当のモノなのだろう……。

 

 

 

 

次、麗日お茶子。

無重力でピクシーボブが操作する土の上を回転し続ける事によって三半規管の鍛錬と酔いの軽減、また限界重量を増やす特訓。

 

「うぅぅう、うう、うーーー!!」

 

回転ボールの中で必死に酔いと吐き気に耐える彼女の姿はもう決して麗らかではないだろう。

もし、もしもだがボールの中で出してしまったらもう乙女として生きていけないほどのトラウマを抱えてしまうだろう。

 

 

 

 

 

次、飯田天哉。

脚力と持久力を高めるために走り込みの特訓。

 

「ふんふんふんふんふんっ!!」

 

これに関しては一見いつもと変わらない風に見えるだろうが、今日の訓練が終わるその時までずっと走り続けないといけないのだから普通に考えても何回かはバテテしまうかもしれない。

ただ、そんな失態は彼の性格上隠すだろうからデスレースが続くのだろう……。

 

 

 

 

 

次、蛙吹梅雨。

全身の筋肉と長い舌を鍛える特訓。

 

「(ケロ、ケロ、ケロ……意外にきついわね)」

 

何度も崖を舌を使ってさらには全身を使ってよじ登っていく訓練は地味ではあるがハードな訓練である。

山頂に登り切ったらまた地上へと逆下りをしていくので頭に血が昇らないか心配だ。

 

 

 

 

 

次、砂藤力道。

個性の発動に必要な甘いものを食べながら筋トレをしてパワーアップを図る特訓。

 

「はぐはぐはぐっ!!(あ、甘すぎぃ……)」

 

延々とお徳用のケーキを食べる姿はスィーツ好きにとっては羨ましいだろうが、個性柄将来的には免れることができないであろう糖尿病が心配になってくる光景である。

 

 

 

 

 

次、八百万百。

砂藤と同じく食べ続けながら個性を発動して物を作り出し創造物の拡大、創造時間の短縮を図る特訓。

 

「うむうむっ……」

 

こちらに関しては砂藤ほど糖尿病に関しては心配はないだろう。

すぐに創造物に変換されていくのだから。

ただ、やはり見ていて胸やけを起こしそうな光景である。

 

 

 

 

 

次、耳郎響香。

耳のピンジャックを壁に叩きつける事によって音質を高める特訓。

 

「おらぁあああっ!!」

 

体の一部でもあるのだから壁に全力で叩きつけるのは相当の負荷を負うだろう。痛そうである。

 

 

 

 

 

次、芦戸三奈。

手から断続的に酸を出して壁を溶かし皮膚の耐久度を上げる特訓。

 

「うぅうううううっ!!」

 

常に手が酸に晒されるのだから耐性があるとはいえとてつもない激痛を伴う事だろう。

さらには女子で一人だけ赤点なのだから居残りで相澤の授業を受けることになるのだからヤバい。

 

 

 

 

 

次、峰田実。

頭のもぎもぎをもぎってももぎっても血が出ないように頭皮を強くする特訓。

 

「うっ、ううっ、うううっ、ううう!!?」

 

見た目以上に血が噴出しているために貧血で倒れないか心配になってくる光景である。

もぎった数はそこら中に転がっていて、さらには血が付着しているために実に生々しい……。

 

 

 

 

 

次、葉隠透&障子目蔵。

気配を消す葉隠を障子が複製椀を素早く同時に変化させて探すことで互いの個性を強化する特訓。

ただこれに関しては少し、いやかなり特訓(?)と思わざるを得ない。

障子は複製椀の特訓になるだろうが、葉隠はただひたすらかくれんぼをしているだけなのだから。

まぁ、特訓なのだろう……。

 

 

 

 

 

とこどろころで悲鳴や叫びが轟いてくる中で平然と相澤がB組に近づいてくる。

メンタルが強いと言わざるを得ない。

ブラドが今回の特訓の説明を相澤とともに話していき、ワイルドワイルドプッシーキャッツの面々も登場して説明も交えていく。

だが、ふとB組の拳藤が指を折りながら数えていた。

 

「あの……相澤先生」

「なんだ……?」

「その、数えてみたんですけど一人だけいないような……?」

「ああ、それならすぐに分かる……」

「それって……」

 

拳藤が疑問の言葉をかけようとした瞬間だった。

『ズゥーーーン……』という巨大ななにかが崩れる音がした。

それと同時に一人腕を高速回転させていたピクシーボブが、

 

「ねこねこねこ……まぁた壊されちゃったか……」

 

全員はピクシーボブが見た方角を見る。

そこには今まで気づかなかったが巨大な、それは10メートルはあるであろう岩の巨人が立っており、そこに出久が『脚力強化』で一気に近づいて腕だけを猫の巨大な腕に変化させて、さらには変化で爪の大きさも変化させて巨人を切り裂いたり……。

また炎術の個性を変化させて掌から炎の所謂レーザービームを放ち大穴を開けたり……。

また『叫ぶ事による衝撃波』の個性を変化させて口から衝撃波を放つように見せかけて衝撃の塊をいくつも刻んで放つという息継ぎの分刻みとかなりの神経を使う技を使ったり……。

最終的には『身体強化・怪力』と『ワン・フォー・オール』を合わせて使用し、10メートルはある巨人の腕を掴んで、

 

「はぁあああああああーーーーー!!!!」

 

気合の叫びとともに地面にたたきつけて最後に、

 

「SMAAAAAAASH!!」

 

という叫びとともに腕を振るって巨人に大穴を開けている光景があった。

B組はそんな光景を見せられて、

 

「「「「「すごっ……」」」」」

 

と、呟いたとか……。

だが、よく見れば出久は消耗からフラフラになっていて、しかし、

 

「……つ、次、お願いしまーす!」

 

と叫んできていた。

 

「……と、まぁ、あんな感じで一人だけ個性を複数も持ってるから余計ハードにならざるを得ないんだよな」

 

呆れ声で相澤がそう締めくくる。

まだまだ訓練は一週間もある。

B組も呆けている暇はないぞぅ!

 

 

 




お久しぶりです。
今回変化の個性によって新たに増えた技がありますがまぁそこはおいおい……。
新たな技を考えるのと他の用事もあって遅れました。

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