【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。


NO.008 個性把握テスト

「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者に申し訳ないとは思わんのか!」

「思わねぇよ! テメーどこ中だよ? 端役が!!」

 

いきなり爆豪と眼鏡の人が教室の中で喧嘩をしている光景を目の当たりにして出久とお茶子は互いに苦笑いを浮かべていた。

しかし爆豪が出久が入ってきたのに気づいて、

 

「てめぇデク……なに俺の許可なくこの教室に入ってきてんだぁ?」

「ひうっ!」

 

威圧の言葉に怯えてしまっていた出久。

猫耳も恐怖で垂れ下がってしまっていた。

 

「あっ……出久ちゃん!? ちょっと君! いきなり酷いんじゃないの!?」

「うっせぇまるがお!」

「まるがお!?」

「君は礼儀を知らないのか!? すまない、その……ぼ、俺は飯田天哉だ」

 

眼鏡の人、もとい飯田が名前を名乗ってきたので、

 

「えっと、緑谷出久です……」

「麗日お茶子だよ」

「緑谷君に麗日君だね。それより爆豪君、いきなり女子に対して失礼だとは思わないのか!?」

「うっせーよ! 俺の勝手だろうが!」

「君って奴は!」

 

飯田の怒りのボルテージが上がってきたところで、いきなり下の方から声がしてきた。

 

「喧嘩をする元気があるなら先に進めてしまっても構わないか……?」

『わっ!?』

 

教室のドアには寝袋に包まれている男性がいた。

男性は壇上まで歩いていって、

 

「ハイ。静かになるまで8秒もかかりました。時間は有限だ。君達は合理性に欠けるね」

 

やっとの事静かになったので男は名乗りを上げる。

 

「俺は相澤消太……このクラスの担任だ。よろしくな……さて、早速だが体操服を着てすぐにグラウンドに集合だ。急げよ? 時間はすぐに減っていくんだからな」

 

出久たちはそれで急いで更衣室で体操服に着替えてグラウンドへと向かうのであった。

ちなみに出久はまだ女子との着替えを一緒にした事がないためにお茶子が見えないようにしてくれたので今回はどうにかなった。

 

「出久ちゃん、慣れて行かないとアカンよ?」

「そ、そうだよね……でもやっぱり罪悪感というかなんというか……」

「そうだよね。後でみんなに事情を話そうね」

「うん……」

「お二人とも。早くグラウンドに行きませんと相澤先生が怒りますわよ?」

「あ、はーい!」

 

少し丁寧な言葉使いの女子にそう急かされて二人もすぐに着替えて向かっていった。

そしてグラウンドに到着してみれば、相澤はこう話した。

 

「それではこれから個性把握テストを行うぞ」

『個性把握テスト!? 入学式とかは!?』

「ヒーローになるならそんな悠長な行事なんて時間の無駄だよ」

 

とは相澤の弁である。

でも出久は内心ホッとしていた。

もしかしたら首席代表とかの挨拶をしないといけないのではと思っていたからだ。

 

「雄英は自由な校風が売り文句だ。当然、それは先生側にも適用される。覚えておく事だな」

 

それから話される個性把握テストの内容。

ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横飛び、上体起こし、長座体前屈。

この八種で個性ありきで測定していくという。

 

「そんじゃ試しに……主席入学の緑谷。個性を使って円の中から投げてみろ」

「えっ、あ。はい!」

 

出久が呼ばれて前に出て行くのだが同時に声が上がった。

 

「あの女の子が主席入学!?」「男子ならともかく女子に負けるなんて……」「デクぅ! てめぇどんなインチキかましたんだ!?」

 

と、皆それぞれ声を上げていた。

それで出久は少しだけ胃がキリキリする思いであった。

そこに相澤が一同に向かって、

 

「緑谷が女子だとかそんなのは関係ねぇ。ただ結果が一位だった。それだけの話だ。合理性に欠ける言葉なんて出すんじゃねーよ。緑谷は気にせずにぶん投げろ」

「は、はい……」

 

なんか妙に僕に優しいなぁ……と出久は思いながらも、

 

「それじゃ……せぇのー……スマーッシュ!!」

 

身体強化・怪力とワン・フォー・オール・フルカウル10%を同時に発動させ、脚の踏み込みとともに一気にボールを投げた。

ボールはすごい勢いで飛んでいってフェンスに直撃してなお威力を発揮していたために、

 

「ふむ……さすがだな緑谷。いきなり測定不能を叩きだすとは」

 

相澤が素直に褒めている一方で、

 

「おいおいおい!? あの女子の細腕からどうやったらあんなに飛ぶんだよ!」

「彼女にはなにか隠された力が……?」

「さすが主席という事か……」

 

出久の実力に素直に驚いている者、考察する者、褒める者と多様だった。

そんな中で、

 

「デクてめぇ! 個性は猫じゃなかったのかよぉー!?」

「うわぁああ!?」

 

手から爆発を起こして向かってくる爆豪。

だがそこで相澤が布を爆豪に巻き付けて動きを封じる。

 

「この個性って!? まさか!」

 

出久が驚く。

この個性には見覚えがあったからだ。

抹消ヒーロー。その名も、

 

「イレイザーヘッド!?」

「ああ、そうだ。だから俺の武器はこの炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ『捕縛武器』だ。俺はドライアイなんだからそんなに何度も個性を使わせるなよ?」

 

一同は思った。

 

『そんなすごい個性なのにもったいない!』と。

 

「それと爆豪。緑谷の個性は猫だけじゃなくて身体強化・怪力というものがある。覚えておけ……」

「なんだよそれ!? おいデク、いつそんなのを身に着けやがった!?」

「えっと……僕も分からないんだけど修行中に発現したっていうかなんていうか……」

「ふざけんな!!」

 

出久の説明にもいちいち反論する爆豪の姿を見て他のみんなは、

 

「なんだよあいつ。教室の時もそうだったけど女子に対してやることじゃねぇよ」とは背の小さい男の子、峰田実の発言。それに頷く一同。

 

「あー……うるせーぞ爆豪。いい加減大人しくしないと、除籍させんぞ?」

「ッ!」

 

相澤のその一言でようやく大人しくなった爆豪。だけどまだ出久には睨みは利かせたままだった。

まぁなにはともあれ出久の実力を垣間見た一同は競技内容も含めてつい「面白そう!」と発言してしまう。

それがまた相澤の逆鱗に触れることとも知らずに……。

 

「面白い、か……これからの三年間でそんな腹づもりでいく気なら、そうだな。こうしようか。トータル成績最下位の生徒は見込みなしと判断して除籍処分にしてやろうか」

『ッ!?』

 

その発言に一同は一気に焦らされる。

理不尽にも程があるからだ。

 

「理不尽というが、世の中さまざまな災害やヴィランの暴走といった唐突な事件が発生する。その度に迅速に対応できないと世の中やっていけねーぞ? それも踏まえて覆していくのがヒーローってもんだろ?

放課後に遊びたいと思っているなら諦めろ。これから三年間、俺達教師陣はお前たちに様々な苦難を与えて行く。それを乗り越えてこそヒーローになれるってもんだ。プルス・ウルトラの精神で頑張れよ。でないとすぐに振るい落としていくからな」

 

それで気持ちが引き締まった一同はさっそく競技に入っていく。

出久も頑張ろう!と張り切った。

 

第一種目の50m走では各々が実力を見せて行く中で出久はというと、

 

「いっくぞ!」

 

身体強化・怪力にワン・フォー・オールに加え脚力強化を付随し、一気に高速移動をしてタイムは1秒01という堂々の一位を叩きだした。

 

「くっ……緑谷君は足の方も速いという事か! さすが個性が猫なだけあるな!」

 

飯田に素直に褒められていた。

 

 

第二種目・握力測定。

 

「ふんっ!」

 

先程と同じように個性の合わせ技で出した結果は、600kgw。

一位は万力を創造した八百万だったが、それでも二位だった。

 

「俺の記録を抜かれるとは思わなかったな……」

 

怪力では自信があった障子目蔵が静かにそう話す。

 

 

 

 

第三種目・立ち幅跳び

 

 

「おい! 軽く100mは跳んだんじゃねーか?」

「すごい脚の力してるな……」

「すごいですわね」

 

一位でぶっちぎった。

 

 

 

第四種目・反復横飛び

 

 

「移動系なら!」

「ケロ。緑谷ちゃん、分身しているようにも見えるわ……」

 

結果、峰田と同時で測定不能。

高速移動は伊達ではない。

 

 

 

第五種目・ボール投げ

 

 

これに関しては先ほどとあまり結果は変わらないが二位だった。

ちなみに一位のお茶子は∞の数値を叩きだして抜くものがいなかった。

 

「麗日さんすごいね!」

「出久ちゃんもすごいよー!」

 

二人はあははと笑いあっているけどすごいの一言である。

爆豪の目つきがすごいことになっているのが何よりもの証拠だ。

 

 

 

第六種目・上体起こし

 

 

これはさすがに出久も常人くらいの回数だったので逆にすげーと言われていたり。

 

 

 

第七種目・長座体前屈

 

 

ここで猫の個性が日の目を浴びた。

身体が柔軟なために足に手が完全に引っ付いているのだ。

その件で脚に埋もれている胸を見て、

 

「緑谷の押し潰れた胸……! はぁはぁ……!」

 

と峰田の気持ちを高ぶらせていた。

 

 

 

第八種目・持久走

 

 

これに関してはまだスタミナはそんなにないので普通の結果だった。普通というにはすごかったけどもね……。

 

 

 

 

 

そしてすべての競技が終わって、結局総合一位は出久だったので、

 

「主席はすごいな……」

「見た目に騙されちゃいけないな」

「本当におんなじ女子なのぉ?」

 

と言われていたり。

ちなみに相澤の言った除籍というのは嘘で、合理的虚偽だったことが告げられて最下位の峰田はホッとしていたとかなんとか……。

それから色々あって下校時間になった。

 

「でもー、やっぱり出久ちゃんはすごかったねー!」

「そんな事はないよ。でも今までの努力の成果って奴なのかな?」

 

と、お茶子と一緒に帰り道を歩いている時だった。

後ろから、

 

「緑谷君に麗日君、ちょっといいかい?」

「あ。飯田君だ。どうしたの?」

「いや、一緒に帰ろうと思ってね。ところでさっそく聞きたいのだが緑谷君。爆豪くんが言っていた『デク』というのはどういう意味なんだい?」

「あぁ、それね……。あはは、それって昔からかっちゃんが僕の事を無能なデクって感じで呼んでいたんだ」

「蔑称か……あの男はつくづくどうしようもないな……」

「本当だよ! でも、デクって良い響きだと思うな! なんか頑張れって感じのデクって感じで!」

「デクでいいです!」

「いや、いいのかい!?」

 

飯田は思わずツッコミを入れる。

 

「それじゃこれからデクちゃんて呼ぶけど、いいかな?」

「うん。そっちの方が色々な意味で呼ばれ慣れてるから大丈夫だよ」

「俺は緑谷君で通させてもらうからな。本人はいいと言っていても元は蔑称なんて使えないからな」

「うん、わかったよ」

 

そんな感じで三人は仲良く下校していったのであった。

ちなみに他の人の目線だと飯田が一人だけ女子に交ざっている感じだったので妬みの視線を浴びせられていたとか……。

 

 




実力を見せた出久ちゃんでした。

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