【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。
ちょっと今回はクオリティが低いかも…。


NO.082 狂気と略奪

 

出久達が合流する少し前、お茶子と蛙吹の二人はトガヒミコと遭遇していた。

腕を遭遇時にナイフで切られて腕から血を流すお茶子。

 

「くっ……!」

「大丈夫? お茶子ちゃん?」

「うん。なんとか……でも」

 

お茶子は襲ってきた相手を見て、誰なのかが分かって顔を引き攣らせている。

 

「あなたはショッピングモールで死柄木弔と一緒になってデクちゃんを襲っていた……ッ!」

「はいー。トガです。お茶子ちゃんに蛙吹さん」

「……ケロ。当然のことながらこちらの内情も知られているのね」

 

ニコニコと笑みを絶やさないトガを警戒する二人。

 

「でも、少し浅かったみたいですねー。この機械はですねー。刺すだけで血をちゅうちゅうするものなんですよー。お仕事捗りますよねー。ですから刺しますね?」

 

二人にそう説明するトガ。

もうこの時点で支離滅裂な感じであり、二人は顔をさらに引き攣らせる。

そんな二人の気持ちなど知らないトガは二人へと駆けてくる。

 

「お茶子ちゃん!」

 

蛙吹がそう言ってお茶子を逃がそうと舌を使って遠くに投げる。

 

「施設へと走るのよ。相澤先生は戦いは許可したけど、きっと『敵を倒せ』じゃなくて『身を守れ』ってことだと思うから! 相澤先生はそう言う人よ」

「だったら梅雨ちゃんも!」

「もちろん私も……ッ!?」

 

話の途中で蛙吹は舌に鈍い痛みを感じてそれを見ると、トガが舌をナイフで切り付けている光景が映った。

痛みを感じながらもなんとか舌を引っ込める蛙吹。

 

「梅雨ちゃん、梅雨ちゃん……カァイイ呼び方だね。今度から私もそう呼ぶね♪」

「やめて。そう呼んでほしいのはお友達になりたい人だけなの。だからやめて!」

 

蛙吹の拒絶の言葉に、しかしトガは気に障ったわけでもなく、余計に興奮したのか、

 

「それじゃ今から私と梅雨ちゃんはお友達ですね! やったー!」

「くっ……!」

 

そしてナイフを投げたトガは蛙吹の髪を木に通して動きを止める。

それからかなりの至近距離まで一気に詰め寄り、

 

「舌から血が出てるねお友達の梅雨ちゃん。カァイイねー。私、血って大好きなんですよー。だから……ちょうだい!」

「(この子……明らかにおかしいわ! やられてしまう……!)」

 

動きを封じられて万事休すかと思われたが、そこでお茶子が走ってきて、

 

「梅雨ちゃんから離れて!」

「あは☆ お茶子ちゃんから来てくれるなんて大胆ー♪」

 

陽気に笑いつつもナイフを差し向けてくるあたり狂気を感じられるというものである。

お茶子はそれを慌てずに避けて職場体験でガンヘッドから教わった武術、ガンヘッド・マーシャル・アーツを叩きこんでトガを抑え込む事に成功する。

 

「梅雨ちゃん! 舌が痛いだろうけど我慢できる!? 手を拘束しないと!」

「ちょっと待って」

 

お茶子が必死に抑え込んでいる。

それだというのに抑え込まれているトガはそれでも笑みを消さずにお茶子に話しかける。

 

「お茶子ちゃん、あなたも素敵だね。私とおんなじ匂いがするわ」

「なにをッ!?」

「好きな人がいますよね? 多分デクちゃんかなー?」

「ッ!」

 

それでお茶子の気持ちが揺らぐ。

確かに出久に対して友達以上の思いがあるのは否定しきれない事であった。

だが、それがあなたと何の関係があるのか?という気持ちである。

 

「だから、なに……!?」

「認めるんだー。カァイイね。私も一緒だよ。そんなデクちゃんみたいになりたい、お茶子ちゃんもそうでしょ?」

「そ、それは……」

「好きな人と同じになりたいって気持ちは当然だよね。同じものを身に着けちゃったりしちゃうよね」

 

どんどんとトガの笑みが歪んでいく。

まるで狂った獣のように……。

 

「でも、だんだん満足できなくなっちゃうよね。その人自身になりたいって思っちゃうんだ。それはしょうがない感情だよね、うん。

お茶子ちゃんの好みはなんとなくだけど分かるけど、どんな人? 私はねー、ボロボロになって血を匂わせる人が大好きです。私もー、テレビで見てボロボロになっていくデクちゃんを見ていた時は興奮を覚えたものです。

そして最後は我慢できなくなっていつも切り刻んじゃうの。

お茶子ちゃん、楽しいねぇ、恋バナ楽しいねぇ!」

「いっ痛ッ!?」

「お茶子ちゃん!」

 

気づけばトガは注射器をお茶子の足に刺して「ちうちう」言いながらも血を吸いだしていた。

思わず蛙吹が叫ぶ。

だが、そこでしげみがざわついて轟達が姿を現した。

 

「麗日!?」

「障子ちゃん、みんな!」

 

その瞬間を見逃さなかったトガはお茶子の拘束を解いて離脱しようとする。

 

「人増えるので殺されるのは嫌だから、バイバイ」

 

 

そのままトガはどこかへと行ってしまった。

逃がしたことを悔しがるお茶子達。

だが、障子達と合流出来て安堵の気持ちもあった。

 

「麗日君! 大丈夫かね!?」

「う、うん飯田君……」

「お前らとも合流出来てよかったな……これで八人か」

「八人……?」

 

轟の言葉にお茶子は首を傾げる。

 

「なにかおかしいか?」

「いや、おかしいかって……今ここにいるのはB組の円場君に、轟君、飯田君、障子君……そして私と梅雨ちゃんだけだから六人だよね?」

「「「ッッッッ!?」」」

 

それを聞いて三人は後ろを振り向く。

そこには先ほどまでいたはずの出久と常闇の姿がいなくなっていたのだ。

 

「緑谷君に常闇君!?」

「どこだ!?」

「いつの間に……はぐれたのか!?」

「え!? デクちゃんと常闇君もいたの!?」

 

それで全員は周りを見回していると上の方から声が聞こえて来た。

 

「彼と彼女なら……俺のマジックで貰っちゃったよ」

 

そこには仮面をつけてマジシャンのような恰好をした男が立っていた。

 

「この二人はヒーロー社会では過剰な力を持っている。こちらで引き取らせてもらうよ」

 

そう言いながらも仮面の男……Mr.コンプレスはその手に二人が閉じ込められているだろうビー玉くらいの玉二つを握っていた。

 

「か、返せ!!」

「嫌だね」

 

Mr.コンプレスはそう言いながらも撤退しようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………出久は油断はしていなかった。

五感強化を満足に使えない状態でももともとの能力が高かったために警戒するために殿を勤めていた。

だが、ふと立ち眩みを感じたのだ。

力の過剰行使がここにきて一瞬だが出久の感覚を鈍らせた。

その瞬間をMr.コンプレスは見逃さなかった。

 

「(貰うよ)」

「ッ!?」

 

気づいた時にはもう遅かった。

そこには仮面が見えていた。

そしてもう背中に手を添えられていて手遅れだと悟った。

 

「(せめてみんなに知らせないと……!)」

 

そう思うがもう圧縮されてしまって丸い球の中に閉じ込められてしまった。

 

「(そんな……飯田君、轟君……かっ、ちゃん……)」

 

出久の意識は闇に沈んでいく。

こうしてヴィラン連合・開闢行動隊の目的は果たされてしまったのであった……。

これから出久はどうなってしまうのか……?

轟達は救い出すことができるのか……。

状況は明らかに最悪だ。

 

 




さて、やっと合宿編が終わりに近づいてきました。
次回、どこまで一同は粘れるのか……。

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