【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。
なお、主人公不在。



猫娘と神野区異変編
NO.084 個性の再認識と目覚め


 

 

 

 

雄英高校・林間合宿がヴィラン連合・開闢行動隊に襲われて少なくない怪我人や意識不明者……そして連れ去られてしまった生徒(出久)

その責任を追及しようと翌日には各テレビ局の報道陣が雄英高校のゲート前でひしめきあっていた。

少しでも顔を出そうものなら批判込みの取材を受けざるを得ないのは確実である。

それほどに今回の事件でヒーロー社会に与えた影響は大きい。

 

 

 

そんな中で雄英高校の会議室では各教師たちがオールマイトも含めて沈痛そうな面持ちで話し合っていた。

やれヴィラン連合に対する認識が甘かった、やれヒーロー社会崩壊の序曲かも、やれ内通者がいるんじゃないか?という一歩間違えば内輪揉めに発展しかねない現状。

そんな事を延々と話し合っていれば自然と空気は重くなる。

 

そんな中でひと際暗い表情をしていたのはヒーローのトップに君臨するオールマイト。

ギリギリッ…と握りしめられる拳に乗せられている怒りはどれほどのものか……。

そして同時に己の不甲斐なさを嘆くという……。

オールマイト自身はヴィラン連合の動きを警戒して林間合宿は未参加であったが、もし現場にいたらどうにかなったのではないか?いや、それでも被害は多少減るくらいだろうという現実を見た認識であった。

何より一番悔しいのは一番弟子であり、ワンフォーオール継承者の出久がヴィランの手に落ちてしまった事だ。

出久の個性の由来であるフォウという猫の過去を鑑みれば、オールフォーワンが狙いをつけるというのは分かり切っていた。

それなのに出久を普通に林間合宿に参加させてしまったのは雄英側の落ち度と言われてもまったく否定できない。

 

 

 

出久の数々の個性の中でやはり目を見張るのは二つの個性……『生命力を奪う』と『与える』。

この二つはまるでコインの裏表のようなものであり、ヒーロー側であれば頼もしく、もしヴィラン側に悪用されようものならとてつもない被害を与える事は確実と言える。

ヴィラン達の生命力を“奪い”、傷ついたヒーロー達をその生命力を“与える”事で傷を癒す。

出久は生命力を奪う個性は使用したくないと言い、そしてフォウのリミッターも掛けられている事もありそもそも使えないからそんな事は起こりえない。

だが、そもそもの前段階ですでに出久の中には推定で四万以上はあっても過言ではないほどの生命力がストックされている。

……もし、もしもヴィラン連合……そしてオールフォーワンがなにかしかの個性を使い、出久に無理やり個性を使わせれば、あっという間に表側だったコインは裏返り、たちまち先ほどの逆の現象が起こる。

すなわち、ヒーロー達は無理やりにでも生命力を奪われて塵と化し、敗北する絶望の未来……。

それはオールマイトですら防げない強硬手段だろう。

 

 

 

なにより一番の問題はそんな出久のヤバいの一言では済まされない個性の全容を教師陣で連携・共有・把握していなかったことだ。

根津校長やオールマイト、リカバリーガールなどが前途の通りに内通者を警戒してか雄英教師達に個性の全容を教えなかったのがそもそもの原因の一つでもある。

オールフォーワンがバックにいるのならばヴィラン連合は出久の情報はほぼほぼ知っていて筒抜け状態だったことになる。

もう今更言ったところで手遅れであるが、もし情報が行き渡っていたのなら林間合宿ももう少し慎重になれたかもしれない……。そう、かもしれないのだ。

そんなたらればで何度か紛糾する会議室。

 

 

 

……そんな中で場違いなコール音が鳴り響く。

 

『で―――ん―――わ―――が―――来たッ!』

 

という、オールマイトの声であった。

オールマイトは一言詫びの言葉を述べて、会議室から出ていく。

 

「(緑谷ガール……私が不甲斐ないばかりに……)」

 

そんな後悔を感じながらもオールマイトは電話に出る。

相手は塚内であった。

そして思いがけない情報が舞い込んでくる。

オールマイトはそれを聞いてトゥルーフォームから次第にマッスルフォームになっていき、電話をかけて有力な情報を伝えてくれた塚内に感謝の言葉を述べて、

 

「塚内君。奴らに会ったら私はこう言ってやるぜ……『私が、反撃に来た』ってね……」

 

こうして反撃の狼煙が上がる準備が開始されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆豪は病院のベットで魘されていた。

 

『かっちゃん……!』

『出久!』

 

夢の中では出久が悲しそうな表情をしながらも、

 

『バイバイ……かっちゃん……』

 

と言ってどんどんと遠ざかっていくというもの。

 

『待てや! おい、どこに行きやがる!? 出久! 出久!! 出久ぅぅぅぅっ!!!!』

 

出久の姿が完全に闇に消えた瞬間に爆豪は目を覚ます。

 

「はっ!?」

 

爆豪は目を覚まして周りを見回す。

清潔な手入れがされている病室で爆豪は寝かされていたのだ。

ふと、右腕を見ればマスキュラーによって切られてしまったが出久によって復元されている腕―――……しかし、切断痕は残ったのか腕を一周するように線がうっすらと見える。そして点滴がなされていた。

 

「あれは……夢なんかじゃなかったんだな……情けねーな……」

 

そう言って爆豪は右腕をギュッと無言で握りしめる。

そんな中で病室の扉が開いて続々と1-Aの生徒達が入ってきた。

 

「お! 爆豪! やっと目を覚ましたんだな!」

「切島……」

 

切島はうっすらと涙目で爆豪の肩に手を置いて無事を喜ぶ。

 

「あれから……どうなったんだ……?」

「それは……」

 

その爆豪の問いに爆豪が目を覚ましたことによって喜ぶ一同の表情に影が落ちる。

よく見れば数名の姿が見えないことに気づいた爆豪は、

 

「出久は……? それにここにいねぇ奴らはどうなった!?」

「その、デクちゃんは……」

 

それでお茶子が泣きそうになっていた。

そこに飯田がお茶子の肩に手を置き、

 

「爆豪君……今ここにいるのはヴィランのガス攻撃でいまだに意識が戻っていない耳郎君に葉隠君、そして頭を強く打ってここに入院している八百万君と……そして最後に、ヴィランに誘拐されてしまった緑谷君を除いた15名だよ……」

 

飯田は実に悔しそうに爆豪にその事実を伝えた。

それを聞いて爆豪は呆然とした表情になった後、少しして再起動を果たして、

 

「はっ……? 出久が誘拐、されただと……? 嘘だろ?」

「…………」

 

飯田を含めて全員は沈痛の面持ちで無言であった。

中には涙を目じりに溜めているものが数名……その数名は女子達である。

 

「…………ふざけんな。ふざけんなよ!! なんであいつなんだよ!?」

「おそらくは……ヴィランに緑谷君の情報が伝わっていたか、もしくは知られていたのだろう……」

「そんな事を言ってんじゃねぇ!! 俺が言えた義理じゃねーが、誰か出久の事を守ってやれなかったのか!!?」

 

そう言われて飯田、轟、障子の三人が肩を震わせる。

障子は常闇を救い出すことができたから非を感じることはないだろう。

だが、飯田と轟は責任を感じていた。

飯田はあの時、痛みで転ばずにもっと足の火傷を我慢していればもしかしたら出久の事をいち早く救い出せていたかもしれない。

轟も轟であと一歩のところまで来ていたが力及ばずに荼毘に先を越されてしまった。

二人はそんな後悔の念で胸がいっぱいだった。

 

「すまねぇ爆豪……俺がもっとうまくやっていれば緑谷は……」

「轟君……君だけの責任じゃない。俺も……足の火傷を我慢していれば……」

「だが……」

 

飯田と轟はお互いに譲らない言葉を言い合っている。

だが、爆豪は現場にいなかったのでそんな心情など知る由もなく、

 

「てめぇら……ッ!!」

 

立ち上がろうとして、眩暈を起こして前に倒れそうなるところを切島に受け止められる。

 

「無茶すんな爆豪! おまえはまだ大量出血の影響で点滴中なんだからよ!」

「そんなん知るか!」

 

と、もう爆豪は冷静でいられる精神状態じゃなかった。

今すぐにでも出久を助けに行きたい気持ちでいっぱいだったのだ。

そんな爆豪を見て切島がある事を提案する。

 

「今はゆっくり休めよ。緑谷を助けに行ける計画は一応はあんだよ」

「計画、だと……?」

「ああ」

 

それで爆豪も含めて病室にいた全員が目を見開いた。

特に飯田は過去の経験から険しい目つきになっていたのは言うまでもない。

果たして1-Aの面々はこれからどういう判断をするのか……。

 

 

 




改めて出久の個性の再認識と雄英教師陣の甘さが顔を出しました。
爆豪も腕の傷は残しました。戒めな感じでいいですよね。

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