【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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NO.095 始まりの終わり 終わりの始まり

 

神野区での戦いから数日が経過した。

それで世間は一応は落ち着いてきたみたいに見えるだろうが、それは間違いである。

 

警察は今までオールマイト一人に頼ってきたツケを払拭するために改革をしようとしているし、神野での被害者たちなどのこれからの支援などもどうにかしないといけないと頑張っている。

とうの被害者たちはそれでもケガというケガは出久のおかげでないのだけど、それでも恐怖を味わったということには違いはないのだからケアは続けられることになる。

 

ヒーロー社会も同様にオールマイトという不動のNo.1ヒーローが陥落したために、これからは一人に背負させずに連携して事に対応していくという動きを見せており、すでにタッグを組むヒーロー達が各所で見られる。

 

そして、ヴィラン達も同じように、ヴィラン連合のようにまとまれば力強くなるという事を今回の事で学んだために裏の犯罪者たちがヒーロー達と同じように連携する動きも見られていて警察などに警戒をされている。

 

 

 

 

 

 

そして、もう戦えなくなってしまったオールマイト本人はというと、

 

「それで、俊典。これからどうするつもりだ……?」

「どうする、とは……?」

 

グラントリノがそうオールマイトに問う。

オールマイトはもう隠す必要もないためにトゥルーフォームのままでまだ病院で検査を受けている真っ最中であった。

そんな中でグラントリノと塚内の二人が面会に来ていて、こうして話し合っていた。

 

「オール・フォー・ワンはもう敵になることはないだろう。話によればもう自分自身も誰か分からないらしくてな、ヴィラン連合幹部共の所在も聞きだせないのが現状らしい」

「そうですか……」

「そして、あの時オール・フォー・ワンは言った。死柄木弔は志村の孫だと……」

「しかし、それはオール・フォー・ワンのたわ言かもしれないだろう……?」

「そうかもしれない。だが、あのオール・フォー・ワンの言葉は真実だと思う……私は……」

 

それで俯くオールマイト。

そこにグラントリノが釘を刺すように、

 

「いや、もうお前は戦えない体だからな。それだけはダメだ。それに死柄木に会ってどうするつもりだ? お前はもうあいつの事をヴィランとして見れていない、そして同様に奴もお前の事をもう目もくれないだろう……」

「…………」

 

それはそうだ。

オールマイトという強敵を打ち倒すために今まで何度も事を犯してきた死柄木が、いつまでももう戦えないオールマイトに目を付ける理由がすでにない。

オールマイトはもうすでに終わった人なのだ。

それはもう覆せない事実である。

 

「後の事は俺達に任せろ。とにかくお前は雄英に戻って後進の育成に励め。『平和の象徴』ではなくなったとしても、お前はまだ生きているのだから」

「はい……」

 

力なくオールマイトは言葉を発するしかできないでいた。

 

「ところで、塚内君。緑谷ガールは今どうしているんだい……?」

「緑谷さんか? もう今頃は事情聴取も終わっている頃だろう。一緒に来るかい?」

「ぜひ、行かせてくれ。私は師匠として彼女を支えないといけない……。これから緑谷ガールは今回の件で少なからず世間から様々な目で見られてしまうのは間違いないのだから」

「だな……。お前の引退も絡んでくるだろうからな」

 

それでオールマイトと塚内は出久のもとへと向かった。

 

 

 

 

 

その出久はあらかた事情聴取も終わり、後は母・引子が迎えに来て家に帰るだけなのだが、外ではおそらく取材のカメラが待ち構えているだろうからどことなく辛そうな顔をしていた。

そんな中で、なにやら外が騒がしいのを感じ取り、何事かな……と思っていると、

 

「やぁ、緑谷ガール」

「オールマイト!?」

 

そこにオールマイトが突然姿を現してきて、出久は今にも泣きそうな顔になっていた。

それはそうだろう。

何度も言うがオールマイトが引退するキッカケを作ったのはどこから見ても自分なのだから。

ヴィラン連合の幹部達もそれは関係してくるだろうが、今はもうどこにいるのかすら分からないので追及されるべきは出久だけになってしまう。

 

「オール、マイト……僕は……僕は……」

「緑谷ガール……」

 

もう、出久はオールマイトの手を震える両手で握りながら涙をいくつも流していた。

何度も感じてしまう後悔という気持ち。

もし、もっと自身がしっかりしていたらこんな事にはならなかったのではないか……?

そんな感情がリフレインしてしまっていてこうして我慢していたが、オールマイトの登場とともに感情のダムが決壊して涙がとめどなく流れてしまっている。

 

「オールマイトッ……ごめん、なさい……僕は、あなたの事を……!」

「いいんだ緑谷ガール。いいんだ……」

 

出久の背中をさするオールマイトは、改めて出久の心に暗い思いを与えてしまった事に深い衝撃を受けた。

どう言葉を出していいか悩む。

だが、それでも決心した気持ちをとともに、優しく話しかける。

 

「緑谷ガール……私は正式に引退するだろう」

「ッ!!」

「緑谷ガールの治療で表面的な傷は癒えた。だけど、それ以前からの積み重ねが祟っているのは君も知っている通りだ。

だからね。私は、これからは君の育成に専念することにする」

「オール、マイト……」

「そしてこれから君は世間の目に嫌がおうにも晒されてしまうかもしれない……それらから私は君を必ず守る事を頑張るとしよう」

「そんな、事……これは、僕の背負うべき咎なのに……オールマイトがこれ以上重荷を背負っちゃいけないのに……」

「それでも、だ。だからこれからも一緒に頑張っていこうな……」

「う、うぁ……ああっ!!」

 

それでついに出久は涙を止めることもせずにオールマイトに抱き着いて盛大に大声で泣き続けていた。

 

「君の、その泣き虫も治さないとな……」

「うわぁああああああーーーーんッ……」

 

その出久の泣き声は引子が迎えに来るまで続いていた。

取材陣たちもその一部始終の光景が見えていたために、このまだ16歳の少女によってたかって取材をするという気持ちに罪悪感を感じていたために、そしてそのまま泣き疲れて眠りについてしまった出久の事をオールマイトと引子が運んでいく光景をそっと道を開けて通して見送るしかできなかった。

 

 

 

オールマイトは引子とともに出久を連れてタクシーに乗って帰っている途中の事であった。

 

「奥さん……」

「は、はい!」

 

オールマイトに話しかけられて引子はそれで大変緊張をする。

オールマイトもそれを一応雰囲気で分かっていても言葉を続ける。

 

「きっと、これから娘さんは大変苦労な目に合うと思います。ですが、それでも見捨てずに見守ってやってください。私達も今回の件を戒めにして娘さんの事をしっかりと導き立派に巣立つまで見守っていきます」

「オールマイトさん……。はい。大事な一人娘を見捨てるほど私も腐っていません。だから出久のことはしっかりと守っていきます」

「それを聞けて安心しました。娘さんが目を覚ましましたらどうか声を掛けてあげてください。まだ情緒不安定ですから」

「わかりました……」

 

そして家に到着する三人。

オールマイトは最後まで出久の事を心配しながらも、引子に挨拶をしてその場を離れていった。

引子は出久を自室のベッドに横にしながら、

 

「出久ぅ……私はあなたの事が心配だよ。

誘拐されたと聞いた時には心臓が止まりそうになったし、食事も喉を通らなかった。

そしてテレビで見ていたけど、出久がとても立派な事をしていたのも知っているから……それでも、私の大事な子供なんだから……。

だから、どうか遠くに行っちゃやだよ……?」

 

そう言って引子は眠っている出久の頬を撫でた。

出久はそれでもいまだに深い眠りについているのであった。

 

 

 




当分は出久はうつ状態が続くかもしれませんね。
かっちゃんよりメンタル弱いですから。

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