【完結】猫娘と化した緑谷出久   作:炎の剣製

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更新します。


NO.097 回想《2》 メリッサとの出会い

 

 

 

 

『ただいまより入国審査を開始します』

 

そんな、電子音声とともに出久とオールマイトがモニターのパーソナルデータに表示されて、二人は空の旅から陸地へと入っていった。

そんな入国審査をされている時にオールマイトが「緑谷ガールにクエスチョンだ!」と言う。

出久はそれで少し考えて、そうだなーと思った。

師弟の間柄だとは言え、それを堂々と言えるほどまだ度胸はないし、問題になることは請け合いだし、ここは雄英高校の教師と生徒と言う間柄を演じようということだろう。

 

「えっとですね。世界中の才能を集め、『個性』の研究やヒーローアイテムの発明等を行うためです。それからそれから…………ブツブツブツブツ…………」

 

そこで出久のヒーローオタクの顔が表に出て、いつもの独り言が早口で繰り返されていた。

オールマイトはそんな出久の行動を止めるために大声を出す。

 

「そういうの本当に詳しいね、君は!!」

「あっ……すみません。またトランスしてました……」

「別に構わないさ。そういうところも君の個性だしね!」

 

HAHAHAHA!といつものアメリカンな笑い方をするオールマイト。

そうこうしている間に、

 

『入国審査が完了しました』

 

と、アナウンスがかかる。

そしてI・アイランドの説明や現在は『I・エキスポのプレオープン中』という宣伝も律義にしてくれた。

そんな感じで入場も可能になったので二人は空港を出て中へと入っていく。

出久は入ってすぐに「わぁー!」ととても嬉しそうな声を上げる。

そこには様々な施設が目白押しであったのだ。

中には『水しぶきで文字を描く』などや『楽器から音楽が流れるたびにオンプ記号が実体化する』など、そこかしこで個性を使用しているものも多数見受けられる。

まさしく、ここは科学の最先端の場所であり、入場している人々が誰もが笑顔を浮かべていた。

出久もその一人に該当するわけで胸のわくわくが先ほどから止まらなかった。

オールマイトと出久の二人はこれだけの人の数に驚きを感じながらも、オールマイトが説明をする。

 

「I・アイランドでは日本とは違って、個性の使用も暴れない限りは基本的には自由だからね。だから今見えているほとんどの施設で使われているアトラクションも個性で作り出しているんだ。あとで見に行ってみるといい」

「はい!」

 

もう出久の興奮は止まっていなかった。

耳がピョコピョコ、二股の尻尾がゆらゆらと激しく揺れており、オールマイトも素直な子だ……と思いながらもなごんでいた。

 

「さて、それじゃそろそろホテルの場所に向かおうか」

 

そう言っていると、そんな行動に気づいたのか一人の案内係であろう女性が近づいてきた。

 

「I・エキスポへようこそ……って、オ、オールマイト!?」

 

お手本のように声を掛けたつもりが、相手が相手だったために我も忘れて大声を上げてしまった案内嬢。

その叫びにまわりで歩いていたコンパニオン、観光客、各取材陣などがオールマイトへと殺到してくる。

出久は「わっ!?」と一瞬怯みそうになるが、オールマイトがすかさず腕を引っ張って背中へと隠してくれたのでなんとか難を逃れていた。

 

「(少し待っていなさい)」

 

それぞれに対応をしながらも小声でそう言われたので「はい!」と答えておいた。

ただ、取材クルーの何名かが出久の事にも気づいたのか、

 

「もしかして、あなたは雄英高校一年ヒーロー科の緑谷出久さんですか!?」

「えっ!? えっとー……はい」

「オールマイトと一緒にいるというのはどういうご関係でしょうか!? 一生徒として着いてこられたのでしょうか?」

「雄英体育祭での宣誓の時の事を詳しくお聞かせくださいませんか!?」

「インゲニウムを治療した個性はなんなんですか!?」

 

と、いつの間にかオールマイトと出久で半々に群がられていたために、出久は少し混乱しているためにオールマイトはさすがにまずいと感じたのか、

 

「HAHAHAHA! みなさん、今はせっかくのお祭りです。そこまで真剣に聞くのも慣れていない彼女には辛いものでしょう。ですから今回だけは控えていただけないでしょうか?」

「「「「は、はひ……」」」」

「オ、オールマイト……」

 

オールマイト的には紳士的に対応したつもりだったのだが、結構真剣な顔で言っていたために取材陣が委縮してしまっていた。

天然だったのか「おや……?」と言っているが、もう流れはオールマイトに流れてしまっていたので次第にいなくなっていた。

 

「どうしたんだい、彼らは?」

「オールマイト……すごい切羽詰まった顔になってましたよ?」

「む……まぁ、結果オーライだよ! HAHAHAHA!」

 

笑ってごまかすオールマイト。

 

「さて、少し足止めされてしまったけど、約束の時間には間に合いそうだな」

「約束の時間、ですか……?」

「あぁ。久しぶりに古くからの親友と再会しようと思っていたんだ。だから緑谷ガールももうしばし私に付き合ってくれないかい?」

「オールマイトの親友……もちろん喜んで!」

 

出久は迷わず即答した。

オールマイトと親友になれる人などかなり限られてくるだろうからである。

オールマイトほどの有名人となると、親友になりえる人など極少数だと出久は感じたからだ。

特に悪い意味ではないのだが、ワン・フォー・オールの秘密の関係上も関係してくるので、その親友と言う人は果たして知っている人なのかどうか、と出久は考えていた。

だが、その疑問に対する答えはすぐにオールマイトから聞く事になった。

 

「あ、それとその彼にはワン・フォー・オールや緑谷ガールに個性を譲渡したことは話していないから、そのつもりでお願いね?」

「あ、やっぱりそうなんですね?」

「うむ。何度も言うようだがワン・フォー・オールの秘密を知る者には危険が付きまとうからね」

 

出久自身も含めてワン・フォー・オール関連の情報を知っているのはかなり限られてくるだろう。

話しても危険に巻き込むだけだから今一度出久は用心して取り掛かろうと思ったのであった。

そして大きい背中をしているオールマイトにいつか追いつくために、フォウから引き継いだ個性も含めていつか必ずワン・フォー・オールを使いこなそうと心に決めた。

 

そんな時に、二人がいる場所から向かって階段が続いている方からなにかの跳ねるような音が何度も聞こえてくるのに、出久の猫耳の聴覚は気づいた。

オールマイトも気づいたのかそちらへと視線を移す。

 

「おじさまー!」

 

そこにはホッピングに乗っかっている金髪で眼鏡をかけている見るからに美少女がやってきた。

少女は「マイトおじさま!」と言いながらもオールマイトへと飛びついた。

オールマイトも「OH! メリッサ!」と言って満面の笑みを浮かべている。

出久はただただその光景を眺めているだけであった。

 

「お久しぶりです、マイトおじさま。来てくださってとても嬉しい」

「こちらこそ招待してくれてありがとう」

 

それからオールマイトと少女が少しの間戯れている中で、出久はこの少女がオールマイトの親友……?と考え込んでいた。

親友にしては若すぎるし、なにかしらの個性か……?と見当違いな方へと誤解が広がっていた。

出久がそんな事を考えている間にも、

 

「デイヴはいまどこにいるんだい、メリッサ?」

「フフ……今は研究室にいるわ。研究が一段落して、それでお祝いとサプライズを兼ねて、マイトおじさまを招待したの」

「そういうことか。それで、どんな研究内容なんだい?」

 

そうオールマイトが聞くが、それで少女は顔を俯かせて、

 

「守秘義務とかで教えてもらえなかったの……」

「そうか……研究者も大変だな。っと!」

 

そこでようやくオールマイトは色々と考え込んでいる顔をしている出久に気づいたのか、

 

「あぁ、緑谷ガール。彼女は親友の娘で……」

「メリッサ・シールドです。はじめまして」

 

そう言ってメリッサは出久に手を差し出してきた。

出久は内心で早とちりだったかと反省し、握手をしようとしたのだが、

 

「あ……」

 

そこで出久は肘まで手袋があったので取りずらい事に気づいたので、

 

「す、すみません。このままでいいでしょうか?」

「うん。大丈夫よ」

「それじゃ……はじめまして。雄英高校ヒーロー科、一年の緑谷出久です」

「雄英高校……それじゃマイトおじさまの生徒!?」

「う、うん……」

「自慢のヒーロー候補さ!」

 

それでメリッサは目を輝かせながらも、

 

「それじゃ将来有望だね。でも、あれ……? そういえば、確か前にテレビで見たことがあるような…………、あ! 例のインゲニウムっていうヒーローの脊髄損傷の傷を治療したっていう!?」

「あ、うん……やっぱり知っているんだ」

「それはもう! 確か出久さんって複数の個性を持っているんだよね? どんなのを持っているの?」

 

それで出久のヒーロースーツを触りつつ観察していた。

 

「手袋が指先だけないのは、指関係の個性? あ、靴にもなにか細工があるみたいだね! 猫耳に二つの尻尾……?」

「あわわわわ!」

 

出久はさすがに女性になったとはいえ、まだまだ女子との付き合いなど慣れないモノであり慌てていた。

そんな出久に気づくこともなくメリッサは触り続けていた。

 

「出久さんって、どんな個性を主に使うの?」

「超パワーかな。最近は足技も取り入れようと思っているけど……僕の個性ってオールマイトに似ているし」

「マイトおじさまに……それだと、足の方はいいとしてちょっと腕や拳の方を少し改良をした方がいいかもしれないね……」

「すごいね……そんなことも分かるんですか?」

「まぁ、これでも一研究者だからね」

 

そこでオールマイトが一回咳払いをした後に、

 

「メリッサ、そろそろ……」

「あ、ごめんなさい。少し夢中になっちゃって……それじゃすぐに向かいましょう! パパが待っています!」

 

それでメリッサははしゃぎながらも二人の先を進んでいった。

出久とオールマイトはそんなメリッサを微笑ましく思いながらも着いていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

…………その一方で、とある場所では、

 

「会場内には問題なく入れた……」

 

そこには顔に大きく傷がある男がI・アイランドのエキスポ会場をじっと見ていた。

この男が今後、この島で最悪の事を引き起こす事になる……。

 

 

 




今回はここまでです。

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