艦娘アパート   作:リバプールおじさん

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第2話 28歳、少女と張り込みをする

盗聴器を依頼主の女性に渡した後に俺は自宅の使われていないもう1つの布団を引っ張り出した。

いつも使わない布団だ。だが時々使うときがある。

 

そう、艦娘がやって来たときだ。だいたい彼女たちが俺の家に現れるのが仕事終わりの深夜だったため彼女たちに布団を貸し、次の日の朝に警察に突き出すと言った感じの生活サイクルを繰り返している。

 

彼女たちがいた短い時を思い出してシーツを握りしめた。あの娘達は確かにここに居たんだ。ただ俺が送ってしまったんだろうか。

 

いや、断言は出来ない。そうだ。もしかしたらただの見間違いかもしれない。そうだ。もしかしたら俺の見間違いかもしれない。

 

そう思い事務所に向かう。そろそろ今日は後片付けをしよう。そう思いボロアパートのドアを開ける。

 

瑞鳳「ん?あなたがここの家の人?瑞鳳と言います」

浅田「......またか」

 

 

散らかりきった部屋の中にいたのはセミロングの茶色の髪を一房ポニーテールに纏めて紅白のハチマキと同じ模様の髪縛りをした女の子。

 

服装は赤く縁取られた白い弓道着を着て少し大きめの弓道着を薄水色の紐で結っている。

 

そして少し小柄だ。全体的に新米の巫女さんと言ったところか。非常に可愛らしい。

 

瑞鳳「大丈夫?どうかしたの?」

 

浅田「ああ、いや、なんでもないよ」

 

そう言いながらも頭はフル回転していた。

この娘をどうするか。

またあの孤児院に置いてきてもらってしまおうか。

 

今俺が養ったとしてもカツカツだ。育てる自信がない。

そうだ、まだ決まったわけじゃないじゃないか。そうだよ今まで通り俺は送ればいいんだ。

 

本当に?心のどこかが叫び出す。

 

でも、もしかしたら、かもしれない。こう言う言葉に探偵という種族は弱い。

 

 

浅田「....俺の家来るか?」

瑞鳳「え?行っていいの?」

浅田「構わん、ただし!条件がある」

瑞鳳「....何?」

 

途端に顔がこわばった。確かにこんな怖い顔してる男にそんなこと言われたら怖いだろうな....。

 

浅田「俺の家の家事を手伝ってもらおう」

瑞鳳「....え?そんな事でいいの?」

浅田「そんな事とはなんだ、俺は家事がからっきしだからな。非常に大切だぞ」

瑞鳳「....うん!じゃ、私張り切っちゃいますよ!」

浅田「ぜひ頼む」

 

 

 

 

ーーーー

3日後

 

とある日の朝食にて。

浅田「なあ瑞鳳」

瑞鳳「どうしたの幸四郎」

浅田「幸治郎な」

瑞鳳「あ、ごめんなさい」

浅田「いや別にいいんだけどさ...それよりも聞きたいことがある」

瑞鳳「何?」

 

 

 

浅田「なんでお前が作るやつ全部卵焼きなの?」

瑞鳳「え?」

浅田「いや、結構腹に来るんだよ」

瑞鳳「え、もう作っちゃった...食べりゅ?」

浅田「....食べる」

 

 

そう言って瑞鳳が運んできた卵焼きを口に入れて咀嚼する。甘すぎずとても美味しいのだがこれを3日間食べ続けるのには限界がある。

 

瑞鳳「そういえば幸治郎はさ、お仕事何やってるの?」

 

いつの間にか隣の椅子に腰掛けていた瑞鳳が話しかけて来る。体が小さいから椅子とアンバランスだ。そんな事を思いながら質問に答える。

 

 

浅田「探偵」

「え?」

 

浅田「民間の探偵をやってる。まあ、今はその本業よりも大事なことがあるが」

 

瑞鳳「なにかあるの?」

浅田「......話してほしい?」

瑞鳳「うん」

 

浅田「じゃあいいお知らせと悪いお知らせがある。どっちから聞きたい?」

 

瑞鳳「じゃあいいお知らせ」

浅田「君の仲間がいる」

瑞鳳「え、祥鳳姉とかも?」

浅田「ああ、いる」

 

瑞鳳「そっかー、えへへ。じゃあ悪いお知らせは?」

 

浅田「そいつらが今危険かもしれない」

 

瑞鳳「え?どういう事?」

 

これは俺の推測だが、と保険をかけながら話し始めた。

俺の事務所に瑞鳳のように何処からともなく艦娘が現れる事。

そしてその娘達は警察送りにして生活し始めたのは瑞鳳が初めての事。

そして孤児院がもしかしたら法的にアウトかもしれない事。

怒るかもしれないと思っていたが一通り話し終えて彼女の顔を見ると意外にも彼女の表情は穏やかだった。

 

瑞鳳「そっか、じゃあみんなを助けようとしてくれてるの?」

浅田「さっき言ったろ。全ては俺の推測に過ぎない」

瑞鳳「でも結果的に助けようとしてくれてるよね、少なくとも気にはかけてくれてる」

浅田「まあな。俺はお節介なやつだから、な。探偵なんて人種はそんなもんさ」

 

瑞鳳「フフフ、あ、じゃあそのお仕事いつするの?」

浅田「もうこれからだよ」

瑞鳳「もう!?」

 

 

なんだ、夜中は12時からじゃないのか。午後9時なんて夕方の延長戦だぞ。

 

浅田「なにを驚く必要があるんだよ、善は急げ、だろ?」

瑞鳳「う、うん。まあそりゃそうだけどさ。そんなに行動力あるとは思わなかったんだもん。探偵って、ほら、なんかもうちょっと慎重に...?」

 

浅田「そんなトロくさい事やってられねえよ。オラ行くぞ」

瑞鳳「どこに?」

浅田「張り込み」

瑞鳳「はりこみ?」

 

浅田「ああ、楽しい楽しい犯罪行為さ。探偵と刑事の特権だよ」

 

 

 

ーーーー

 

 

 

その日の夜、隣町の例の孤児院がよく見える公園の滑り台の上に立って張り込みを始めた。

時刻は夜中の1時だ。

 

瑞鳳「しゃ、しゃむい....」

浅田「ククク、だから言ったろ寒くなるから着込んで行け、と。張り込みは動かないから寒いのにお前と来たら。オラこれでも羽織っとけ」

 

茶色いコートを渡しながらも目は片時も離さない。手にしてるカメラも電源がきっちりついてるし動画で取れるようにとスマホの動画機能もいつでも出せるようにしている。

 

深夜3時。もう電気が消えてもいい時間だ。街明かりなんて最早街灯だけになっている。

だが孤児院の電気は消えない。

 

浅田「....来た!」

 

瑞鳳「へぇ?どこ?どこ!?」

 

こいつ寝ぼけてやがるな。コートの裾も擦れてる。それ結構愛用してたのに....。

 

だが一刻も無駄にはできない。

 

右手にカメラを、左手にスマホを構えて夜中の3時に滑り台の上に立っている変人がそこにはいた。

 

だがそれよりも大事なのは窓の中の影絵。

演者はもちろん女の子と思しき影と一回り大きな男の影である。

 

 

浅田「瑞鳳、見るなよ」

 

その影絵の内容は簡単だった。男が拳を振り上げ、振り下ろす。女の子が消える。また現れる。おそらく立ち上がったのだろう。今度は男が蹴る。

 

そんなのが2分程続いた後に男が窓の影から消えて終わった。

 

「もういいぞ」

 

目を強く瞑り手で目を隠している彼女に声をかける。意外にも泣いていた。

 

浅田「お前見たんだな?見るなと言ったのに」

瑞鳳「...ごめんなさい。気になって...そしたら、蹴られてて...殴られてて...」

 

浅田「分かってるよ、ンなもん。ほら、帰るぞ」

 

瑞鳳「...うん」

 

 

駅前に向けて歩き出す。タクシーでもあるだろうか。なければ歩いて帰るしかない。ただ個人的には勘弁してほしい。なにせここから家まで5㎞はある。

どうしたものかと悩んでいるときに瑞鳳が右腕に組みついて来た。

 

浅田「どうした?コート返すのならなら家ついたらでいいぞ」

瑞鳳「ねえ幸治郎。君は、あの男の人みたいにならない?」

浅田「誰がなるもんか。あんな腐れ外道」

 

 

そう言った後にしばらく歩くと駅前についていた。

人は誰も歩いてなくてただ一台タクシーがあった。

 

浅田「おい運ちゃん。隣町の浅田探偵事務所まで頼むよ」

運ちゃん「ああ、あそこですね。じゃ、シートベルト締めて下さーい」

 

 

家まではそこから15分ほどでついた。

布団を敷いてそのまま横になる。

 

浅田「じゃあな、おやすみ瑞鳳」

瑞鳳「うん、おやすみ幸治郎」

 

そう言ってしばらくの眠りの世界を謳歌しようとした。

その落ちるまでの間にいろんなことを考えた。

明日の依頼は相続だったな。確かあそこのおばさんは頑固そうだった。

そして今日の朝飯は俺が作ることになりそうだ。しばらく寝させてやろう。

 

...卵焼きじゃなくてパン食べたい。

 

 

ーーーー

 

 

?「で、そのような男が確認されたと」

?「そのようですよぉ、あの後駅前でタクシーに乗ったのでそれを尾行して住所は控えておきましたケド」

?「そうか、上出来だ。全く国民というのは酔狂な連中と馬鹿どもしかおらんわ...」

 

 

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