第21話 話を蹴るか話者を蹴るか
浅田「協力を要請?お前に出来ないことなんざそうそう無いだろう」
曽我「お褒めに預かり光栄だね。でも起きちゃったんだな、それが」
そう言って曽我は懐から小さな世界地図とボールペンを取り出した。その赤いボールペンで世界地図の中の一点、中東のペルシャ湾沿岸の北部を小さく赤く染める。
曽我「この事は関係者以外には言っていないのだが君を見込んでの話だ。聞いてくれ。つい2日前だがここの国の沿岸部が何処かの艦隊に襲撃され、壊滅した」
そんなぶっ飛んだ話を聞かされて目を見開く。と言ってもあまり内心驚いてはいなかった。あまりにも突飛すぎて現実味を帯びないのだ。
浅田「んな事言われてもな...。本当だとしたら大変な話だろ。石油なんてどうするんだ」
曽我「ああ、だから困っているんだ。1ヶ月後には最悪石油輸入量が半減する」
浅田「今まで以上に享楽主義になって石油の使用量が増えた現代日本においては命取り...って所か」
曽我「そういう事だ。と言うわけで君の協力を仰ぎたいんだが....」
瑞鳳「ど、どうする?国が困っちゃうなら助けた方が...」
浅田「断る」
曽我「...理由」
浅田「まず第一に、だ。あの翔鶴への一件で分かった。お前は邪悪だ。手は貸したく無い。第二に国が困ってるから助けるなんてのは英雄様のやる事だろ。俺は守ってもらう側の人間だよ」
そう締めくくってから煎餅に手を伸ばす。それを掴み、包装を破きかけたところで曽我が口を開いた。
曽我「確かに君はただの探偵だ。だが君には他には無い力がある。それを借りたいと思うのは間違ってるか?」
浅田「なるほど合理的だ。だがその相手が拒否をしているのだ。それでも使うのは非人道的では無いか?」
曽我「非人道的なものだ。国家というものは」
瑞鳳「でも!道理が通らないよ!?」
瑞鳳が口を挟む。個人的に意外な横槍だったのだが曽我はそれにもすぐに対応する。
曽我「一々道理を通しては支配が及ばん。それが政府というものだ」
瑞鳳「そんなぁ...」
浅田「...よし。ある条件下ならお前の話を飲もう」
曽我「ふむ。聞こう」
浅田「第一にこの全権は俺に委ねる事。第二にこの契約を絶対に国民にバレないようにする事」
曽我「善処する。一体なんのつもりだかは知らんが...まぁ君なら国を獲ったりはしないかな?」
浅田「...さあな」
曽我「何だい?今の空白。まぁいいや。もう需要なさそうだからそこの猫回収しとくね」
そう言って窓際にいるウチの黒猫に手を伸ばす。
浅田「いや、待て待て待て。何自然にウチの飼い猫連れてこうとしてんだ」
瑞鳳「幸治郎。やっぱりこの話なかった事にしようよ」
浅田「お前そんなにこの猫と仲よかったっけ」
曽我「えー、でもな...。こいつロボットだぜ」
瑞鳳「....え?」