雨が降っていた。いま遺産相続の決着がついた帰りだ。今回の相手は面倒だった。最後の最後に粉飾を加えてくるとは....。
?「ニャー」
浅田「ん?」
猫の鳴き声が聞こえた。はて、ここに住み始めて5年が経つが野良猫なぞ見たことがない。では飼い猫でも逃げたのかと思い鳴き声がした方を見る。その声の主は黒い子猫だった。
濡れた段ボールの中に入っていて蹲りながらこちらを見上げていた。段ボールには『拾ってください』の文字。
浅田「テメエもか」
いつの間にか猫に話しかけていた。もちろん猫は喋らないし鳴きもしない。
浅田「テメエは要らないって言われたのか」
「ニャー」
浅田「さみしいよな、そう言われんのは」
ーーーー
浅田「帰った」
瑞鳳「あ、お帰りなさい...うわぁー!猫ちゃんだ!どこで買って来たの?」
浅田「イヤか?先ほどそこで拾って来たもんだが」
瑞鳳「いや、すごい嬉しい!ありがと幸治郎!」
そう言って瑞鳳は猫を抱きかかえながら風呂場に向かっていった。
それにしてもあいつは猫が好きなんだろうか。鼻歌を歌っている。
非常に可愛らしい。
そこまで考えてから頭を振り思考を止めた。
俺は何を考えているんだ。
瑞鳳「ねえ見てみて!すごい綺麗になったよ!」
そう言ってその黒猫を突き出してくる。
でもどの辺りが綺麗になったのかよく分からない。元々の黒いままだからだ。ただちょっと毛並みは先ほどに比べてツヤツヤしているかもしれない。
浅田「ああ、綺麗になったな」
そう言って黒猫を撫でる。
瑞鳳「え?それって猫のこと?」
なぜかモジモジしながら聞いてくる。
浅田「あ?それしかねえだろ」
瑞鳳「あ、うんそうだよね」
そう言ってあははと笑い猫をわしゃわしゃと撫で始める。ちょっと乱暴に、
瑞鳳「そういえばこの子の名前どうする?」
浅田「いや、黒猫は黒猫だろ」
瑞鳳「え、名前はつけなくていいの?」
浅田「いいのさ、愛着なんて湧かせなくて」
瑞鳳「でもこの子がかわいそうだよ」
浅田「...........分かったよ。じゃあ瑞鳳がつけていいから」
瑞鳳「えっとね、じゃあブラックジャック」
浅田「待て、なぜ無免許名医の名前を出した」
瑞鳳「え、いやだって黒いしジャックって名前いいかなって思って...」
浅田「いやそこはどっちかにしろよ」
瑞鳳「じゃあジャック」
浅田「それでよし」
ジャックって名前の方がまだマシだと思う。海賊みたいな名前だけど。流石に手●プロダクションに怒られる。
ピンポーン。
玄関の呼び鈴がなる。誰だろうか。まあ心当たりがあるのは1人だけだが。
浅田「はいはい今出ますよーっと」
瑞鳳「誰?」
浅田「多分俺の友達のナメクジ脳みそ野郎だと思う」
瑞鳳「...本当に友達なの?」
浅田「一応な」
そう言ってドアを開ける。
?「おほー、遊びに来たぜ幸ちゃん!」
浅田「帰れ」
そこにいたのは丸刈り頭のガタイのいい男だった。