「えっと、それで今回はこのお仕事を頼みたいんですケド」
「.......」
今俺は困惑していた。
探偵事務所で今依頼を受けている。
特別難しい依頼というわけではない。
「あの、聴いてますカ?」
「あ、はい」
この金髪のねーちゃん、あの孤児院の依頼を出してきやがった。
まさか知ってるのか?艦娘について、そしてそれらと俺の関連性について。
ま、ただの偶然だろう。考えすぎだ。ここは結構街でも噂だしな。
すると偶然ポロっとペンを机の下に落としてしまった。
「失礼、ちょいとペンが...」
そう言ってしゃがみ込み机の下に落ちたペンを拾う。目の前には彼女の長くて白くて全く傷もシミもない脚。
その脚についている靴を確認して起き上がる。
「えーっと、とりあえずその孤児院の内情調査をさせていただくと言うことでよろしいですか?」
「そうデス。よろしくお願いしますネ」
そう言ってそのねーちゃんは出て行った。
どうしたもんか。
おそらくあのねーちゃんの履いていた靴は誤魔化そうとABC martのロゴで偽装していたがロシアの超希少ブランドの物だ。若い女が買えたものではない。
普通は流通していなく、更にはモスクワの外れあたりの1店舗のみの店なので普通は買えないはずだが....。
少なくとも只者ではない。何となく雰囲気からそんな気はしていたが案外大物なのかもしれない。
「ビンゴかも....なぁ....」
そもそも国から真っ向に歯向かおうとなんて思っていない。
そんなものは激流の中を逆らって泳ごうとするようなものだ。
どんなにうまく事が運ぼうが圧倒的な強者から力業を出されてしまえば弱者の小手先の技なぞ通用しない。
だからその激流を生きて切り抜けるにはどうするか。
流れに逆らわず、少しずつ、少しずつ、知恵と力でずれて岸まで辿り着く。それが一番遠回りで一番難しくて一番賢い方法だ。
俺は支度を始めた。
ーーーー
1日後、俺は支度を済ませ、そのまま孤児院に向かった。下手に変装をすればどんな理由で来たのかが分からなくなるし嘘がバレたらいれなくなる。
だがここで問題が1つ。
「何でお前ついて来てんの?」
「だってー、ジャックは寝ちゃうし1人で家は寂しいでしょ?」
そう、瑞鳳の問題である。勿論説得はした。納得もしてくれた。だがついて来た。
本当にお前そういう所....。
「嫌いじゃないぞ」
「え?何が?」
「いや、なんでもない」
そう言って門をくぐる。警備員が3人ほど俺たちに気付いて近づいてくる。ご丁寧に警棒を構えて。
「どなたですか?引き取りにきてくださったのですか?」
お、意外にも丁寧な対応だ。慇懃無礼と言うのかもしれないが。
「いやー、急にすみませんね。不本意なんですがクライアントにここを調べて欲しいと頼まれまして」
「あー、そうなんですね、はい、はい...。ちょっと上役に掛け合ってきますので身分を証明できるものをご提示ください」
そう言われて自分の名刺を差し出す。ちなみに急ごしらえなので電話番号もない。
だからなんか言われるかと思ったがそんな事はなくそそくさと2人が中に入って行ってしまった。
警備員の中で1人残った大柄な男が意外にも柔らかい物腰で応接間まで案内してくれた。
「こちらです」
そう言われて入ったその部屋は意外にも明るく、清潔感漂う近代的な部屋だった。よくありがちなゴテゴテした装飾品もない。
「いや、悪いね。そんな長話はしないからさ」
「そうですか。まあどうぞゆっくりして行ってください...。あ、上役がいらしゃったようです。では私はここで」
そう言ってその巨漢の警備員は席を外す。代わりに入って来たのは少し線の細めなメガネの中年男だった。ちなみに頭頂部も少し砂漠化が進行している。
「どうも。私、この孤児院で院長をしています尾長啓司と申します」
そう言うと細い目を歪ませて握手を求めて来た。
なんか狐みたい卑屈な笑みが腹たつ。
だがそんな苦い気持ちを噛み潰して俺は握手を交わした。
「では、調査という事でしたな。ぜひぜひどうぞ」
そういうなり案外素直に案内を始めた。先程から一言も発さず俺の上着にしがみついてくる瑞鳳も一緒だ。
狐のような笑みが腹たつ
ヒント、作者