#■■■■■ 最後の狩人と迷い人【一時休載】   作:7th HeaVen
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モンハンワールドに飽きたので初投稿です。
お気に入り登録、及び評価をしていただいた方々に精一杯の感謝を。
二十分くらい感動に打ち震えてました。やっぱり評価されるとモチベーションがバリバリ上がります。
これからも拙作をどうかよろしくお願いします。


2 死んで、殺して、死んで

何回死んだだろうか。

灯から少し行った先で不意打ちされ、

その先の盾持ちにも殴り殺され、

盾持ちをほぼ相打ち状態で倒したと思えば、死んだふりをしていた獣人に首をかき切られ、

広場へ向かう道で後ろから集団にぶつ切りにされ、

そいつら全員をやり過ごしたところで後ろから撃ち殺され、

そうでなくても広場で火を囲んでいる群衆にリンチされ、

全てを無視して走り抜けた先の大男(レンガデブ)に頭を砕かれ、

綿密にシミュレートした通りに進んでも、思いがけない待ち伏せに片腕を斬り飛ばされショック死し、

自暴自棄になって突っ切ったらそのまま犬に食われ……

 

灯の先の不意打ち野郎を満身創痍になりながら殺したところで、心を完全にへし折られていた。この蘇生の力はもはや苦痛なだけだ。

 

「う……ぐすっ……ひぐっ……」

 

自分が一体何をしたというのか。なぜこんな目に合わなければならないのか。全身を返り血に染めたまま、このひどく不条理で理不尽な現実に打ちひしがれていた。

一度泣き出してしまうとなかなか涙は止まらない。

 

カツン、カツンと足音が聞こえる。あぁ、あいつらだ。これだけ大声で泣いていれば音で寄ってくるのも当然だ。だが、もう抵抗するような気力は残っていなかった。斧を傍らに捨てた。もうどうにでもなれ。

 

理解不能な唸り声をあげながら、草刈り鎌を持った獣人が階段から姿を現す。こちらの姿を確認すると、おぼつかない足取りで駆け寄り、その鎌を振りおろ――

 

「ガァッ!?」

 

すことはなかった。振り上げられた腕は、どこからともなく飛来した投げナイフに斬り飛ばされる。

 

背後から何かの足音がする。ジャラッと無数の金属が擦れ合う奇妙な音とともに。

後ろで風が巻き起こる。風と共に繰り出されたのは、鉛色の鞭。ほとんど視認できないほどのスピードで舞うそれは、獣人の頭だけを正確に()()()()()()

獣とは思えないほどの圧倒的な技術に裏打ちされた、正確無比な、一つの頂点に達した者の一撃。泣き声はとてつもなく強大な獣を呼び寄せたようだ。安心だ。これなら苦痛なく死ねる。

背後から来た足音は、膝をついた自分を通り越した。

 

殺さないのか?

 

その暗い色のロングコートを着た男はこちらに見向きもせず、頭のない獣人の死体の前に膝をつくと、何やら透明なシリンジを死体に突き立てた。シリンジに赤黒い液体が溜まっていく。血だ。シリンジが血で満たされたのを確認すると、懐へそれをしまい込み、こちらへ向き直った。

 

「やぁ。君は……新入りだね?」

 

その杖をついた老紳士はトップハットをかぶり直すと、どこか愛嬌のある笑みを浮かべてそう言った。

 

しばらく目の前の状況が理解できなかったが、老紳士がまともな人間だということを回転の鈍い頭で理解する。

涙が出てきた。この地獄に放り込まれて初めて、同じ人間に出会えた。

 

「……あ、ありがとうございます!」

 

涙で顔をぐずぐずにしながら礼を言う。きっとひどい顔だろう。

 

「いや、いいんだよ。ちょうど輸血液が欲しくてこの辺りにいただけだから。ついでに、ね」

 

まともな人間に出会ったからには是が非でもこの状況がなんなのか聞き出さなければならない。涙を袖でぐしぐしとふき取る。

 

「あの、ここはどこなんですか? 気がついたらここにいて……」

 

その質問に老紳士は目を丸くした。銀縁の丸メガネをくいっとあげながら、

 

「どこって……ここはヤーナムだろう? 君もここに血の医療を受けに来たんじゃないのかい? それで、悪夢に囚われてここにいる」

 

さも当然のことであるかのように答えた。

血の医療? ヤーナム? 悪夢? 知らない言葉ばかりで何が何だかわからない。

 

「え? いや、多分違うと思います……」

「ふむ……そうじゃないとなると分からないな……でも、いずれにしろここは危ない。話は狩人の夢で聞こう。さぁ、戻ろう」

 

そう言うと老紳士は来た道を戻り、ランタンの前に跪く。

 

「さ、君も」

「あっはい」

 

跪くと、辺りの景色が闇に溶けだす。この空間がほどけていくような感覚は二回目だ。

辺りが完全に書き変わった。目の前には墓石。そして無数の白い花。間違いない、例の墓地だ。

 

振り返れば捨てられた人形が立ち上がっている。側にはあの老紳士の姿も。

 

「はじめまして、狩人様」

 

人形が喋った。信じられないが、本当に。人と同じく。球体関節の手を見れば明らかに無生物とわかる女性の人形が、喋った。

 

「ひぅ!?」

 

驚いた拍子に鳥の首を締めたような妙な声が出てしまった。人形はそんなことに動じず、言葉をつなぐ。

 

「私は人形。この夢で、あなたのお世話をするものです」

「え……あ、はい。えと……よろしくお願いします?」

 

軽くパニックを起こしかけながら人形に頭を下げる。横目で老紳士を見ると、いたずらが成功したとばかりにニヤニヤ笑っている。

 

「狩人様、血の遺志を求めてください。私がそれを、(あまね)く遺志を、あなたの力といたしましょう。獣を狩り……そして何よりも、あなたの意志のために。どうか私をお使いください」

「はい……」

 

言っている意味が全くわからないが、とりあえず頷いておいた。さっきから知らない言葉を連発されて、ただいま絶賛混乱中だ。

 

「さて、挨拶も終わったことだし、早速だけど少し聞いていいかな?」

 

ぱん、と手を叩いて老紳士が言った。

 

「はい」

「君は血の医療を受けにヤーナムへ来たわけじゃないんだろう? だったらなぜここに来たんだい?」

 

老紳士は懐から手記を取り出し、何かを書き込みながら質問を投げかけてくる。

 

「それが自分でもわからないんです」

「気がついたら診療所にいて、訳も分からず殺された?」

 

手記に目を落としながら老紳士は言った。待て。なぜ殺されたと分かった? あの診療所には誰もいなかった。わかるはずがない。

 

「はい……え、なんで殺されたって分かったんですか?」

「そりゃあ、僕もそこで殺されたからね。あの真っ黒い熊みたいな獣にね」

 

突然のカミングアウトに目が点になる。殺されたならなぜここに立っているのだ。いや、いくら死んでも蘇る自分が言えたことではないのだが。

 

「僕達はね、悪夢に囚われているんだよ」

「悪夢?」

「そう、悪夢。獣がはびこる明けない夜にずっと囚われる。誰がつけたのか知らないけど、ぴったりな名前だろう?」

 

となると自分はずっとあそこで殺され続けなければならないのだろうか。背中にざわざわと嫌なものが這うのを感じた。

 

「あぁ、そんな顔をしないで。大丈夫。出る方法はあるよ」

「どうすればいいんですか?」

「獣の病の原因を潰す。獣の病というのは、ヤーナムに蔓延している風土病の総称でね。これに罹ったものは例外なく、理性を失った獣と化す。診療所で君が殺した獣がいい例だね」

「原因に目処はついてたり……?」

「ああ。僕の予想では、ビルゲンワースが暴いた古代の墓にあると見ている。そこから何か良くないものをもらってきたか、あるいは、墓に眠る彼らと繋がりのある上位者たちに呪いに近いものでもかけられているか」

 

ダメだ。まだ、この世界について知らないことが多すぎる。老紳士の言っていることは理解できそうにない。

 

「とにかく、獣になりたくなければ、祈らないことだ。祈ったものは、皆例外なく獣になった」

「はい」

 

祈るのはNGと。よくわからないが、先達の言葉は聞いておくべきだろう。

 

「君は狩人の夢を見ることが出来ている。それはつまり、血の医療を受けた証。君も獣になる可能性は孕んでいるんだ。獣と化す前に、悪夢から逃れなければならないよ」

「はい」

 

どうやら残された時間はあまりないようだ。選択肢は残されていない。もしこの悪夢から解放されたとしても、帰れる保証なんてどこにもないが、それでも獣になって誰かを殺すよりはずっといい。

 

「それじゃあ……僕と来るかい? こう見えて僕はなかなか強いんだ。きっと助けになるよ」

 

老紳士は手記をしまい、銀縁の丸メガネをくいっと上げて手を差し出した。

答えは決まっている。

 

「はい!」

「ふふ、元気なのはいいことだ。それじゃあ、行こうか」

 

 

 

 

獣狩りの夜が始まる。




ステータスがクソでもプレイヤースキルがあると意外とどうにかなりますよね。彼、あるいは彼女がゴミみたいなステータスでもギリギリ戦えているのはそういう訳です。
次回更新予定日は四月九日です。







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