黒の銃弾と黒い死神   作:夢幻読書

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 過去最低の文字数なので初投稿です。


第三次関東会戦
第27話 終着


 

 

 

 

 

 鼻をくすぐる瑞々しさを感じる甘い匂いと、頬を撫でる風に目が覚める。

 

 仰向けに寝転んでいた上体を起こす。

 

 周囲を見渡せば、辺り一面を覆う紫のヒアシンスの花畑が、どこまで続いている。

 空を見上げれば、白と黒の市松模様の天井が、どこまでも続いている。

 

 現実の世界ではまずあり得ない光景。しかし、普通なら混乱したり、戸惑ったり、取り乱してもおかしくないそれを目の当たりにしても、不思議と心は凪いでいた。いっそのこと、もう一度地面に横たわって眠ってしまおうかと思ってしまうほどに。

 

「……行かないと」

 

 だが突如として、体の奥底から湧き上がる得体の知れない焦燥感に突き動かされ、立ち上がると同時に足を踏み出す。

 

 前後の記憶は曖昧で、どこへ向かっているのか、どこへ向かいたいのかも分からない。

 何となくでどこかを目指そうとしても、どこまでも続く花畑は、どこまでも続く砂漠と同様に目印なんてない。

 

 だけど、とにかく進まないと。

 

 まるでチェス盤のように、黒と白の正方形が交互に組み合わされた模様の天井の下を、進み続ける。

 まるで海のように、地平線まで埋め尽くす紫の花畑の上を、進み続ける。

 

 早くしないと、みんなが。

 

 記憶は依然として欠落したままで、けれどみんなが危険な状況にあることだけは、漠然と把握し(おぼえ)ていた。

 

 だから進む。募り続ける焦燥感を振り払うように、ただ進み続ける。

 けれど、進んでも進んでも、焦りは薄まるどころかその存在感を増し続けるばかりだ。

 

 ふと、先ほどから、花畑をできるだけ見ないようにしていることに気づいた。そのことを自覚して、意識して花畑を視界に入れると、遠くに少女たちの笑い声が聞こえた。

 

 聞き覚えのある声だった。

 幸せになって欲しいと願った子たちの声だった。

 

 それを認識した瞬間、即座に花畑から目を逸らした。まるで誤って触れてしまった熱湯から慌てて手を引くように、顔に物が飛んできた時に咄嗟に目を瞑るように。二度と花畑を直視しないようにしながら、歩く足を速めた。

 

 どれだけ進んだのか、どのくらい時間が経ったのかも分からない。けれど、ようやく景色に変化が現れた。

 

 遠く、地平の果て。紫色の海の向こう側に、小さな『赤色』が見えた。その『赤色』は、進めば進むほど大きくなって、気がつけばすぐ目の前まで近づいていた。

 

 『赤色』の正体は、彼岸花だった。

 

 そしてその彼岸花は、椅子に座っている白髪の子供を中心にして、血溜まりのように咲いていた。

 

 少年はどうやら本を読んでいるようで、俯いてるせいで顔はよく見えない。

 

「君は……?」

 

 声を掛けると、少年は読んでいた本を静かに閉じて、顔を上げた。

 

 そうして、白髪の子供は、穏やかに微笑んだ。

 

 

 

 

 

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