戦姫絶唱シンフォギア 響き渡る魂   作:招き猫

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前回からまたもや間が空いてしまいました。すみません。
それでも更新は続けて行きたいです。

さて、今期放送中の戦姫絶唱シンフォギアXV。最終章のお題目通りこれまでの集大成って感じで最高ですね。最新の7話を見た招き猫なんかはひたすら「キャロル!?」って言ってました(笑)。


カンパニュラは聞いている

 時は少し遡り、響と未来がフラワーで旧交を温めていた頃。

 渡は1人、都心の一等地から少し離れたとある場所に向かっていた。

 

(えっと、垣さんの話しじゃこの先だっけか)

 

 彼が今目指しているのは、つい最近ビルの倒壊があったとされている場所であった。情報番組や新聞などには局所的な地盤沈下が原因とされているが、SNSなどではその時間帯に空へ昇る謎の虹色の光を見たという声も流れており、渡はマリアらとの関連を睨んで調べることにしたのである。

 

(虹色、光、うーん…。情報(ヒント)が足りなすぎるが、仮にその光が聖遺物によるエネルギーだとしてもなんで多色? 1つの聖遺物を増幅させても色とりどりにならないことは垣さんも言ってたし。じゃあ、そこには複数の聖遺物があった? ……虹色なんて表現されるなら最低でも3色…マリア、翼さん、奏姉でギリギリ足りないこともない。だがそれならなんでエネルギー()は空に上がる? 衝突したのなら全方位に弾けるはずだし…ッ!?)

 

 思考に耽りながら目的地に向かっていた彼であったが、腹の底に響くような重低音を感じ取る。しかも、渡にはそれが普通の音ではないことも認識できていた。彼の持つ音感知能力だからこそ聞き取ることができるそのリズムは、聖遺物の存在を声高に主張していた。

 

(音の強さから言って相当のエネルギー。まだ聖遺物(モノ)がその場に残ってるのか、そうでなくても最近まであったことは間違いない。九割方垣さんの読み通りってことか)

 

 渡は歩調が若干速くなりながら自分たちの味方であるひょろ長博士のことを思い出す。

 その人物の能力の高さと感謝から笑みを浮かべていると、半壊したビルが彼の視界に入った。

 

(おっ、倒壊したビルってあれか? 遠目にも見事にぶっ倒れてやがる。で、廃病院のときみたいにテープで封鎖されてるのは予想通り……んっ?)

 

 立入禁止のためのテープの近くでは1人の茶髪の人物が立っていた。後ろ姿でその表情は読み取れないが、両手を耳に当てて何かを聞き取ろうとしている様子が見て取れた。

 そして渡にはその茶髪に見覚えがあった。自身の予想通りであればと彼は”彼女”に声をかけた。

 

「すいません」

「えっ」

 

 渡の声にその人物は背をビクッとさせながら振り向く。

 想像していた通りの人物の表情に、彼は安堵と申し訳なさを混ぜた笑みが出る。

 

「いや失礼、急に話しかけて。しかしこんな所でまた会うとは奇遇ですね」

「……。あっ、この前の人っ!」

 

 その人物は先日渡をリディアン音楽院に案内した『人助け』少女であった。

 

「ハハッ、覚えてくれていたとは嬉しいです」

「いえいえ、数日前のことですし。流石に覚えていますよ。でもまあ同じ所ならいざ知らず、違うところで会うとは思いませんでしたけど」

「それはそれはすいません。それと先に言っておきますが会ったのはあくまで偶然ですから、追っかけたとかではありませんよ」

「えー、わざわざ言う当たりどうなんですかねぇー」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべる少女であったが、そこに睨めつけるような嫌な視線はなく、寧ろ親しげな雰囲気を纏わせている。

 渡からしてみればありがたいと同時に、彼女の危機感の無さに少々呆れるのであった。

 

「まあ、年下から丁寧じゃなくて(タメで)良いって言ったのに口調を変えない意固地な人が変なこと考えるとも思いませんけど。あっ、なら今度こそタメ口でお願いしますよ。私のためだと思って」

「……ハア、2回目ですし分かりま……分かったっと、これで良いか?」

「はい。私もその方が楽なので」

「了解。ただし君も楽にしてくれ。俺は人から畏まられるようなやつじゃない」

「ふーんそうですか。……えっと……先輩?」

「!? なんでそうなる……」

「だって年上ですし、かといってそこまで離れてる感じでもないんで」

「理屈は分からんでもないが…。俺の名前は古藤(こどう)(わたる)。名前に沿うなら適当に呼んでくれ。ちなみに高2だ」

「では古藤先輩ですね。私は1年なんで。ちなみに名前は音無(おとなし)彩鐘(あかね)です」

「自己紹介の仕方雑だな」

 

 ニカッと笑う彼女──彩鐘の表情は渡にとっても好ましい。少し棘のある言葉を吐きつつも彼も同じように明るく笑った。

 

「それで古藤先輩はなんで私に話しかけたんです?」

「先輩って……としあえずそこはもう置いておくとして。俺はこの辺りで変なモノを見たって噂を聞いたから野次馬根性的に来てみたら、音無さんを見かけたから声を掛けた感じだな」

「へーなるほど」

「音無さんこそなんでここに?」

「私も古藤先輩みたいなものですよ。”変な声”の噂を聞いて見物に来た野次馬」

「ん、変な声?」

「アレ知らないんですか? 古藤先輩もさっき噂を聞いたって」

「それは言ったが、俺の場合は虹色の光が空に昇っていくのを見たって話し。声についてはさっぱりだ」

 

 渡の言葉に彩鐘は視線を泳がし、どこか困ったような表情になる。しかし、すぐに切り替えると渡へ上擦った声で話しかけた。

 

「知らないのなら説明しましょう」

「それは助かる」

「ええ、困っている人を見かけたら助けずにはいられないのが私ですから」

「……この前も言ったような気がするが、音無さんは親切すぎるな」

 

 それから彩鐘の聞いた噂によると、ビルが倒壊した時間帯に現場の方向から叫び声の様なものを聞いた人がいるらしい。彼女自身は”よく分からない”ようだが、何かを呼んでいるように感じたそうだ。

 

「──で音無さんはその声が気になってここにいたと」

「はい」

「ほー、勝手なイメージだが音無さんはそんなキャラっぽくはないな」

「会って2度目の人に吐く言葉じゃありませんよそれ。まあ外れてませんけど」

 

 倒壊したビル痕に視線を向ける彩鐘の顔がどこか曇っているように渡は感じた。先ほどまでの朗らかさとは明らかに違うそれに彼は先日感じた異質さを思い出した。

 

(…やっぱり音無さん(コイツ)はどこかチグハグな感じが…)

 

「なあ音無さん」

「はい?」

「何か困ってるなら相談を聞くくらいはできるぞ」

「……えと、急になんです?」

「なんだか音無さんの気分が沈んでそうだったからな。解決できるか分からんから確実なのは聞くまでだが」

「ハハハ、なんですかそれ。解決できないかもしれないのに相談してなんて言われたの初めてですよ」

 

 吹き出したように笑うその顔はこれまた違うものであった。その後、目尻に涙が溜まるほど一頻り笑うと彼女は渡に口を開いた。

 

「そうですね、困っていると言えば困っているって答えが正しいです」

「ならどうだ。俺自身この間音無さんに案内してもらった借りがあるからな。何か助けにならせてくれ」

「うーん……」

 

 彩鐘は悩んだ様子を見せながら指先でこめかみをトントンを叩いた。

 

「よしっ、じゃあ相談だけで」

「よっしゃ来い、聞くぞ」

「実は私、”人捜し”してるんです」

「おお…」

「あれなんだかリアクション薄くないですか」

「聞くって言った手前、茶々を挟むのも悪いだろ。相づち必要ならハイハイッとか言うが」

「古藤先輩それじゃ相づちじゃなくて合いの手です。反応なさ過ぎるのも暗いですけど、それは絶対ないですよ」

「すまん、腰を折った。続けてくれ」

 

 彩鐘は溜息を吐いて呆れるが気を取りなして話しを続けた。

 

「捜してる相手は私と同い年の女子なんです。この間久しぶりに見かけたんですけど、声が掛けない内に見失ってしまって。”話でもしたいな”と思って捜してるんですが、今のところほとんど手がかりがなくて困ってたんです」

「なるほど。なら、野次馬的にここに来たのはその女子がここに来るかもと考えたからだな」

「そうですね。近くに住んでるわけじゃないですし、あの子が行く当てもそれほど分からなかったので。なので人が来そうなところを適当にぶらついてたんですよ」

「久しぶりに会う”友達”、しかもただ見かけただけのヤツをわざわざ捜そうとするなんてやっぱり音無さんは優しいんだな」

「ッ!? ……ん、いや、そんなことない…ですよ」

「…あー、すまん、変なこと言ったみたいだな」

 

 彼女の口調が途切れ途切れとなり、ばつの悪そうな表情を浮かべているのを見た渡は謝罪しながらそれ以上は構わないと手で制する。しかし、彩鐘も手をフラフラと振りながら気にしないでほしいように彼に伝えるのであった。

 

「すいません、ちょっと変なところ気にしちゃって」

「音無さんが謝ることないさ。こっちが無責任に話を聞かせてくれって頼んだからだよ」

「…そう言われると正直ありがたいです」

「よしっ、それじゃあ借りを返すのはまた別のことにしよう。音無さん他に何か困りごとないか?」

「……いや、古藤先輩ありがとうございました」

「え?」

「古藤先輩が話を聞いてくれたおかげでスッキリしたんです。おかげでこれから全力であの子を捜せると思います」

 

 彩鐘は視線で渡をまっすぐ射抜きながら、感謝と決意の言葉を述べる。

 先ほどまでの会話の何が彼女の琴線に触れたのか、渡にとっては分からなかったが何かを決めたというのであればそれに対して言うつもりはなかった。

 

「よく分からないが、助けになったのなら良かった」

「はい、古藤先輩のおかげで改めて”確認”できましたから。……ここで先輩と会えたのは幸運……そう幸運でした」

「確認? ってか幸運なんて、そりゃ過言なんじゃ…」

「私の悩みを解決してもらえたんですから。言い過ぎじゃないですよ」

「そういうもんか」

 

音無さん(コイツ)がそれで納得してるなら良いか。それよりも話しを聞いてると、もしかして人捜しの相手って……)

 

 彩鐘の話しを聞いている内に連想した1つの仮定が渡の頭に浮かぶ。そのことを彼女に聞いてみようとしたその時であった。

 

 

──ゴアアッ

 

 

「ッ!?」

 

 渡の音感知能力にその場に残る重低音に極めて近いリズムが引っかかる。しかしその音量はここから離れすぎているためかなり小さく、相棒()のいない今の渡では追うことができないのは明白であった。

 

(微かに聞こえても響がいねえと。多分ここから移動した聖遺物だろうが……。こんなことならさっきのお好み焼き屋の近くに待っておくべきだったか)

 

「なあ音無さん──」

「あっすいません古藤先輩、私ちょっと用事思い出したので失礼します」

「えっ、おお、分かった」

「それじゃ、古藤先輩ありがとうございました」

 

 聖遺物のことも気になったが、先に目の前の問題からと渡は彩鐘に意識をを向けた。しかし、彼女は渡に軽く手を振った後駆け足気味に去って行く。そんな彩鐘の背を見ながら、彼は大きく手を振り続けた。

 

(……行っちまったか。ったくタイミングが悪くてしょうがねえ。まあ俺の想像が合ってるとは限らないが、それでもなあ……)

 

 

──私と同い年

──女子

──近くに住んではいない

──久しぶりに見かけた

 

 

(条件にピッタリなんだよな……)

 

 渡の脳裏に浮かんだのは──

 

 

──ピリリィ

 

 

 渡のスマホに着信が入る。画面を見てみると相手は響であった。どうやら幼馴染み(未来)との話し合いが一段落し、彼に連絡を寄越したようだ。

 

「おっす、響か」

「うん。ごめんね待たせた」

「構わねえよこれくらい。あの子幼馴染みだったんだろ」

「うん、変わってなかったよ。いや、ちょっとは心配性になってたかな」

「さよならもせずに別れたんだろ、当然だ」

「だね」

「まあ今の俺たちがやっていることを考えたら心配なんてレベルじゃないが」

「違いないね。未来からもノイズに注意するように言われちゃったし」

「まさかとは思うが…」

「もちろん言ってないよ。言うわけない。未来を巻き込むわけにはいかない」

「当然。これは俺たちのわがままだ」

 

 それから他愛もない話しを少し続けた後、渡は響に自身が今いる場所に来るように頼んだ。

 

「俺の音感知能力(チカラ)で聖遺物があったことは分かるがもっと細かく調べたい」

「OK、私が補助するよ」

「助かる。ああそれとなんだが……」

「どうしたの?」

 

 渡は迷うように言葉を詰まらせ、数秒目蓋を閉じて考える。

 

「なあ響、お前の友達に”茶髪の女子”っているか?」

「ええと…それってこの町…昔の学校でってこと?」

「そうだ。響と似たような茶髪で高1のヤツ」

「うーん……そうだね、”いない”…と思う」

「自信なさげだな」

「”3年”……いやその子にとっては2年か。髪色なんて簡単に染められるからね。私と会ってたときと変わっててもおかしくないよ。というか、なんなの急に?」

「ああそれがよ、ソイツが人捜ししてるって言うんで相談に乗ったんだけど、その特徴が響にピッタリでな。もしかしてと思って」

「ハア、私が未来と話してる内に何やってたんだか…。まさかナンパ? …は渡はやらないか。それより、そう思うなら本人に聞かなかったの?」

「用事があるって言って帰った」

「なるほど。それでその子の名前は? 聞いたんでしょ」

「聞いたというか、勝手に名乗ってくれたというか、まあ良いか。”音無(おとなし)彩鐘(あかね)”さんだってよ。知ってるか?」

「………」

「……響?」

 

 渡が彩鐘の名前を出した途端に響は沈黙する。電話越しで響の様子が分からない彼は戸惑いながら相棒の名前を呼ぶ。暫しの静寂の後、スマホは再び声を伝えた。

 

「……………渡。”今は知らない”」

「……了解。じゃあ”また今度な”」

「ありがとう渡」

「良いって。それよりも今は早くこっち来てくれ」

「分かった。もうすぐ着くと思う」

「おう気を付けてな」

 

 通話を切った渡はそれを見上げた。空は何気ない晴れ模様であった。

 

 

 

○●○

 

 

 

 茶髪の少女──音無彩鐘は走っていた。ランニングシューズで走っていた。脇目も振らずに走っていた。

 

(──”友達”……そう、私は謝らなくちゃって思った。思ったのなら迷っちゃ駄目。それなら……)

 

 彼女は足を止める。辿り着いたのは町外れにある森林。近隣の住民であろうとほとんど立ち寄らないであろう整備もされていない場所であった。彩鐘が中に入って少し歩くと、彼女の目の前に人一人程度のサイズの穴が現れた。彼女は一顧だにせず中へと降りていく。しばらくして巨大な空洞に出たかと思えば、彩鐘の視界に紫色の巨体が入り込んだ。

 

「あなたよね私に話しかけたのは?」

「グウアアァ……」

 

 紫色の巨体──ゴライアスが深いうなり声を漏らしながら、彩鐘に顔を近づけた。彼女の身長より遙かに大きく人間とはまるで違う異形が近づいたにもかかわらず、彩鐘は怯えた表情すら見せない。

 

「あなたの”お願い”を聞いてあげる。だからさ──

 

 彩鐘はそこで不敵に口を三日月のように歪ませた。

 

──私を立花さんの所に連れて行って」

 

「……グアウウウ」

 

 ゴライアスは応えるように一声鳴いた。

 




カンパニュラ
形が鐘に似ている花。名前はラテン語に由来。
花言葉は、感謝・後悔など。
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