R団のズッコケ3隊長と不思議少女    作:長星浪漫

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お久し振りです。やっと次の話がかけました。
今回はケン、リョウ、ハリーをいつもよりメインな感じで書きました。

あらすじ
「砂漠地帯に入った四人。すぐにドサイドンを見つけるが、この辺りを縄張りにしているポケモンたちに阻まれてしまった。やっと突破口を見つけるが、慣れない砂漠地帯に苦戦する。その中でミモザがピンチに陥ってしまう。己の不甲斐なさを感じる三人は己と向き合い始める」


3-2「覚醒」

 一方、サカキは眠ることなく四人を見ていた。そして、あの男も…

 

『かぁ~、見てらんねぇぜ!』

 

 モニターの向こうでマチスが大袈裟に頭をかきむしる。一緒にいるライチュウも主人をまねる。しかし、サカキはケン、リョウ、ハリーの変化に気づいていた。 

 

「フフフ…、思い出せ、お前たちの力を…」

 

 

 

 一方の砂漠地帯。ミモザは次の行動に移れずにいた。

 

(このままじゃダメなの)

 

 しかし、どうしようもなかった。ミモザの攻撃要員の手持ちであるギルガルドとニャオニクスは自由に動けない。だからといってペロリームとクレッフィではたちうちできない。フワンテにつかまって逃げようとしても確実に攻撃される。まさに万事休すといった状況だった。

 

(なにか、なにか手は…)

 

 ミモザが必死に打開策を探していたその時、急にサイドンの攻撃が止まった。

 

 

「ど、どうしたの?」

 

 恐る恐るギルガルドの後ろから顔を出すと、ミモザを攻撃していたサイドンが全員宙に浮いていた。

 

「こ、これは?」

 

 ミモザが現状に困惑していると、今度は糸がサイドンを絡めとり一瞬でがんじがらめにしてしまった。

 ミモザが糸が飛んできた方を見るとハリーの背中に張り付いているイトマルのものだった。

 

「ハリー…?ケンとリョウも…?」

 

 乱戦は続いていた。しかし、三人の雰囲気ば確実に変わっていた。その場の空気が張りつめているようなピリッとした感じが伝わってくる。

 

「本当に俺たちはなにをやってるんだろうな」

 

 ケンが誰に問いかけるでもなく言葉をもらす。

 

「俺たちは中隊長だ、R団のエリート団員だ」

 

 頭にヤドンを乗せながら真顔でサイホーンを見据える。

 

「ずっと負け続き、失敗続きで忘れてたぜ」

 

 イトマルを体に張り付かせ、アーボックの背中(広がっている部分の裏)に乗ったハリーが天を仰ぐ。そして、三人が次々に宣誓した。

 

「俺はマチス中隊中隊長ケン!」

 

 マルマインが震え始め、体から電気エネルギーの塊が放出されサイホーンの群れの中に漂い始める。サイホーンたちはそれを警戒し攻撃の手が緩む。

 

「マチス様から教わったのは戦いだけじゃない!戦況に応じての技のアレンジ(・・・・・・)も教わった!」

 

 ケンが指をパチン!とならすと漂っている電気エネルギーが膨張を始めた。

 

My Electric Boms!(電気の爆弾だぜ)

 

 マルマインのエレクトンエネルギーがたっぷりつまった電気の爆弾が一斉に破裂した。

 

「!!??!!?」

 

 電気のダメージはないものの、破裂音と衝撃波でサイホーンたちは気絶したりパニックに陥り互いにぶつかり合ったりし始めた。それを見て肩に捕まっているエレキッドと豪快に笑いながらビシッとサイホーンを指差した。

 

「どうだ!これが俺のElectric style(戦い方)だ!」

 

 “でんじふゆう”したマルマインの上でケンはポーズを決めた。

 

 一方リョウはかつてR団の幹部であったナツメの言葉を思い出していた。

 

『エスパーポケモンの力の源を知りなさい。そうすればよりハイレベルな戦いができるわ』

 

「わかりました、ナツメ様!スリーパー“さいみんじゅつ”!」

 

 スリーパーの振り子が怪しく揺れる。しかし、サイホーンは本能的に「振り子を見てはならない」と察知し見ない。見ているのはリョウの頭に乗っているヤドンだ。

 

「ヤファ~~ン?」

 

 ヤドンが尻尾をぐーっと伸ばした。しかしなにも起こらない。サイホーンが攻撃しようとした…が、サイホーンたちの前にマネネが立ちふさがった。サイホーンたちは一瞬面食らったが、すぐに攻撃を再開しようとした。

 

「~~♪♪」

 

 マネネがフラフラと踊り出した。その奇怪な動きにサイホーンたちの目が集まる。同時に前にいたサイホーンの動きが止まり、それにぶつかる形で後ろのサイホーンも止まる。さらに止まったサイホーンが急に仲間に“たいあたり”を始めた。

 

「~~~♪」

 

 マネネは躍り続ける。仲間を乗り越え何匹かのサイホーンが“とっしん”する…が、まるで見えない壁があるように動きがまた止まる。

 

「ケラケラケラケラ♪」

 

 その様子を見てマネネが楽しそうに笑う。それに怒ったサイホーンがさらに攻撃をしようとマネネの方を見た。

 

「ゴ…!?」

 

 サイホーンは動けなくなっていた。先程の壁が原因ではない。しかし全く動けなかった。その様子を見てリョウがニヤリと笑う。

 

「ヤドン“ねっとう”」

 

 リョウの頭に乗っかっているヤドンが“ねっとう”を放つ。“ねっとう”はサイホーンにかかり次々に戦闘不能にしていく。だが、それでも倒れなかった数匹が群れから飛びだし側面からリョウを襲う。迫るサイホーン。しかしリョウはあせる様子はなかった。それどころか反撃しようともしない。

 

「そろそろだな」

 

 リョウがそう言ったまさにその時、サイホーンたちを抗えない睡魔が襲う。その睡魔に勝てるわけもなくサイホーンたちは眠っていく。

 

「はっはぁ!これが俺なりの『エスパー戦法』だ!」

 

 ここまでの流れを説明すると、まずマネネが踊ったのは“フラフラダンス”。見た相手をこんらんさせる躍りだ。それでこんらんしたサイホーンは自らを攻撃する。しかしこんらんしない個体も当然いる。その時のために“リフレクター”をはった。それに阻まれ怒りが高まったサイホーンはさらに判断力が低下する。そして“リフレクター”越しにマネネを睨み付ける。“リフレクター”などの壁はガラスのように物を映すことができる。そしてこの時“リフレクター”には背後に回っていたスリーパーが映っていた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)それを無意識のうちに視界にとらえてしまったサイホーンがスリーパーの振り子を壁越しに見てしまいねむりに落ちてしまったというわけだ。

 

「そして残りはヤドンが使った“あくび”で眠ったってわけよ!」

 

 リョウの頭でヤドンがねむり始めた。リョウはヤドンとマネネをボールに戻し、一緒に戦っていたニャオニクスに「ここは大丈夫だからミモザの所へいってやれ」と言った。ニャオニクスはこくりと頷き急いでミモザのもとへ向かった。

 

「…さて、スリーパー援護するぞ」

 

 スリーパーは答える代わりにニャオニクスに“とっしん”しようとしたサイホーンをエスパーの力で止めた。

 

「よっしゃ!いくぜ!」

 

 スリーパーと共に残りのサイホーンに攻撃を始めた。

 

 ハリーは首に巻いているスカーフを口元まであげ、まるで忍者のような感じになっていた。

 

「アーボック、“アイアンテール”!」

 

 先程縛り付けたサイドンを鉄のように固くなったアーボックの尻尾が豪快にとらえる。サイドンたちは体をくの字に曲げながら吹き飛んだ。そしてリョウがニャオニクスをミモザの元へ向かわせたのを確認するとイトマルをそちら側に向けた。

 

「イトマル、網目で粘着質にだぞ」

 

 イトマルが口をモゴモゴ動かし始める。モゴモゴが止まったのを確認し、ハリーはイトマルに指示を出す。

 

「“いとをはく”」

 

 イトマルの口から網のように編まれた糸が放たれサイホーンたちに覆い被さる。サイホーンたちは身動きがとれなくなった。その間にハリーはニャオニクスを抱えミモザの所へ運んでやる。

 

「にやおにゃお!」

 

 ミモザはニャオニクスを抱きしめる。ギルガルドもフォルムを解きバタンと倒れる。

 

「ミモザ、ギルガルドにこれを」

 

 ハリーはミモザに《まんたんのくすり》と《ヒメリのみ》を渡した。ミモザはそれでギルガルドを回復させながらハリーを見た。

 

「みんなどうしたの?なんだか雰囲気が違うの」

 

「おっと質問は後でね」

 

 ハリーが見ている方を見るとサイドンが立ち上がろうとしていた。“アイアンテール”ではとどめをさせなかったようだ。

 

「ミモザ、いったんみんなをボールに戻して」

 

「わかったの」

 

 ミモザは素直にしたがい、手持ちをボールに戻す。それを確認したハリーはミモザを抱えあげた。 

 

「えっ?ちょっとなにするの!?」

 

「アーボック!少し任せる!」

 

 アーボックが舌をチロチロ出しながらサイドンの前に立ちふさがる。リョウはその間にミモザを少し離れた所に連れていった。

 

「ちょっとリョウ!どういうつもりなの!」

 

「ミモザはここにいて」

 

「なにいってるの!ミモザも戦うの!」

 

「手持ちがかなり疲れてるんじゃないのか?」

 

「…」

 

 それはわかっていた。さっきのギルガルドもかなり無理をしていた。一応《きずぐすり》系のアイテムを使い続け、さっきも《まんたんのくすり》を使って体力はバッチリなのだが、蓄積された疲労までは回復していない。ニャオニクスやフワンテたちも疲れが見えた。だが問題はまだあった。

 

「ミモザ、お前の疲労もかなりのものなんだろ?」

 

「…!」

 

 なにも言えずに俯くミモザ。夜に起きていることに慣れているというのは本当だが、それと疲れは関係ない。慣れない砂の上にずっといたせいですでに体は悲鳴をあげ始めていた。

 

「だ、大丈夫なの…!」

 

 ミモザはすっくと立ち上がった。しかし、足がガクガクと震えてすぐにへたりこんでしまった。

 

「無理するな、眠気がなくても体はもう限界なんだよ」

 

 リョウがミモザの肩を叩いて諭す。ミモザはまだ納得できずになんとか立とうと頑張るが立ち上がれない。リョウは肩をすくめミモザに目線を合わせた。

 

「なあ、ミモザ」

 

「なんなの?」

 

「少しは俺たちを頼ってくれよ」

 

 ハリーの心に呼応するかのようにイトマルの体が震え始め、そしてアリアドスに進化した。

 

「な?」

 

「むぅ…」

 

 リョウの目を見たミモザは唸った。その目から本気でミモザを心配しているのが伝わってきてしまった。それを感じてしまったミモザはもうなにも言えなかった。

 ミモザがなにも言わなくなったのでリョウは理解してくれたと判断し、「すぐにすむから」とだけ言い残し戦線に復帰した。ミモザはただそれを見送るしかなかった。

 

 

 

 サイホーンたちとのバトルはケン、リョウ、ハリーの優勢で進んでいた。

 

「マルマイン!“いやなおと”!」

 

 あたりに鳥肌がたつような不快な音が響き渡る。サイホーンたちはたまらず動きを止め頭をふる。

 

「野生にゃこの攻撃はきついだろぉ?エレキッド!」

 

 ケンのエレキッドがサイホーンの群れの中に飛び込んだ。

 

「強烈なパンチをぶち込めぇ!“ばくれつパンチ”!」

 

 エレキッドが口の端をニヤリと歪めながら近くの一匹に拳を打ち込んだ。拳が触れると、触れた部分から爆発したかのような音がした。同時にサイホーンが吹き飛び気絶する。他のサイホーンはその光景をみて唖然とした。

 エレキッドの攻撃は止まらない。続けざまに“れいとうパンチ”“ほのおのパンチ”を連続して打ち込んだ。様々なタイプの攻撃にサイホーンたちはなすすべがなかった。

 

 

 

 「囲まれちまったか」

 

 リョウはスリーパーと背中合わせになりながらフッと笑った。サイホーンたちは興奮しながら地面を前足で掻いている。今にも突っ込んできそうだった。

 と、スリーパーがリョウの肩を叩いた。

 

「ん?そろそろか(・・・・・)?」

 

 リョウがそう口にした瞬間、サイホーンが一匹倒れた。それを合図にサイホーンが次々に倒れ出す。あっという間にリョウを囲んでいたサイホーンがすべて倒れてしまった。その光景を見てリョウは満足そうに笑った。

 

「よくやったぞゲンガー(・・・・)」  

 

 ゲンガーが最後に倒れたサイホーンの影から現れた。そして満足そうに笑いながらリョウの所に戻っていった。リョウは背中にまとわりついてきたゲンガーの頭を撫でる。

 

「闇夜で自分の影が笑い出したり、急に体温が下がったら気を付けな?それはゲンガーかもよ?」

 

 

 

 ハリーは進化したばかりのアリアドスをうまく使いこなしていた。

 

「アリアドスは夜行性だから今の時間帯はかなり元気だぜ」

 

 その言葉の通りアリアドスは元気一杯だった。素早い動きでサイドンを翻弄する。その間にアーボックを回復する。

 

「アリアドス“くものす”」

 

 ネバネバした糸がサイドンに絡み付く。

 

「アーボック“はかいこうせん”」

 

 動きが鈍ったところをアーボックの“はかいこうせん”が襲いかっこくものす”もろとも焼き尽くす。この一撃でほとんどのサイドンは倒れたがまだ動けるサイドンがいた。そのサイドンたちは体勢を整え、反動で動けないアーボックに突っ込んでくる。

 

「準備は整ってるぜ」

 

 ハリーは表情を変えずに手をあげた。その瞬間サイドンたちの動きが完全に止まる。

 

「アリアドスは獲物に糸を巻き付けてわざと逃がして追い詰める。さっき密かに巻き付けておいたんだ」

 

 サイドンは力ずくでちぎろうとするがびくともしない。そしてそのまま倒れてしまう。

 ハリーはスカーフを下にずらして顔を出す。

 

「相手に気づかれず勝利をつかむ、それが忍びの戦い方だ」

 

 ケンたちが善戦している最中、離れた所にたたずんでいる巨体。その巨体が身じろぎし始めた。

 

 




次はなるべく早く投稿できるように頑張ります。

バトルシーンが続く予定ですが、できる限り臨場感が出るように書けるように努力します!

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