VSドサイドンも一応折り返しに入ったつもりです。
サブタイトルはダグトリオの時と名前の付け方が違いますが、探り探りやっておりますのでできればおきになさらないでください。
前回のあらすじ
「サイドンたちを圧倒し始めるケン、リョウ、ハリー。しかし、一方ミモザは体が限界に近づいていた」
ケンたちが戦っている姿を少し離れたところで見守るミモザ。その表情は悔しさがにじみ出ていた。
「また見てるだけなの?」
ミモザの脳裏に幼い頃の記憶がよぎる。父と母、執事の最後をただ見ていることしかできなかった。弱かった自分。
「…そんなのもう嫌なの!」
ミモザはボールを開ける。ギルガルド、ニャオニクス、クレッフィ、フワンテ、ペロリームが出てきた。ギルガルドとニャオニクスにはやはり疲れの色が出ている。
「ペロリー“アロマセラピー”」
ペロリームの体から甘い香りが広がりミモザたちを包み込む。“アロマセラピー”は本来状態異常を回復する技だが、時折ストレスや疲労を解消するために使われることもある。ミモザもその目的のために使っていた。
ミモザは手持ちポケモンを抱きしめた。その目には涙が光っていた。
「お願いなのみんな…もう、見ているだけは嫌なの…」
ミモザの体が震える。ニャオニクスが心配そうにミモザの涙を拭う。
「ありがとう、にゃおにゃお…でもどうしたらいいの?」
ミモザは立ち上がろうとするがすぐに座り込んでしまう。ペロリームの“アロマセラピー”で少し力が戻ったものの蓄積された疲労は大きかった。
「また、“あの時”みたいに見てるだけなんて嫌なの…でもどうしたらいいの…?」
悩むミモザの目線に倒れているサイホーンが飛び込んできた。その時ミモザの頭のなかにひらめきが走った。
「これならミモザ自身が動けなくても移動ができるの!」
ミモザはアイテム袋から空のモンスターボールを取り出した。
「みんな、お願いなの」
ミモザの考えを察知したギルガルドとニャオニクスは“アロマセラピー”でほぼ回復した体を起こしミモザの前に立った。
一方ケンたちはサイホーンたちを制圧しつつあった。あとはサイドンが数体いるだけだった。しかし、そのサイドンもすでに戦意喪失していた。
「よし!もう一息だ!」
マルマインに乗ったケンがエレキッドに“ばくれつパンチ”を指示。エレキッドはサイドンのびびりながらの反撃をなんなくかわし“ばくれつパンチ”の射程内に入る。
「今だ!打ち込めー!」
ケンが叫んだその時、
ドゥン…
どこからか爆発音のような音が聞こえた。
「なんの音だ?」
それに気づいたハリーが辺りを確認しようとしたその瞬間。
「がげびっ」
ケンの目の前にいたサイドンの横腹に直径一メートルぐらいの岩がめり込んでいた。
「わあぁ!?」
サイドンはそのまま二メートルほど吹き飛び、ありえない回転をしながら完全に沈黙した。エレキッドは砂の上に座り込み吹き飛ばされたサイドンをただただ見ていた。一瞬の沈黙のあと三人は慌てて次の攻撃に備えた。
「なんだ!?今の攻撃は!」
「どこから来た!」
「エレキッド!戻れ!マルマイン“ひかりのかべ”!」
ケンはエレキッドをボールに戻し、“ひかりのかべ”で岩が飛んできた方向に防御壁を作る。残ったサイドンたちは身を寄せあって震えていた。
「ぐおおおおおん!」
今度は叫び声が聞こえた。それに驚いた、というよりは恐怖心を刺激されサイドンたちが必死の形相で動き出す。一匹は判断力の低下で“ひかりのかべ”にぶち当たりまくりながらケンに辿りつこうともがく。
「な、なんだ?さっきより明らかに攻撃的になってやがる」
ハリーは二匹のサイドンを相手にしていた。
「アーボック!“アイアンテール”!」
はがねタイプの技を中心にサイドンを寄せ付けない。
「マタドガス、“えんまく”」
そしてマタドガスに“えんまく”をまかせ、有利にたちまわろうとするが、サイドンは全くひるまずに無茶苦茶に“とっしん”を繰り返してきた。ハリーは危うく一匹に当たりそうになったが、アーボックがうまく体をくねらせて避けてくれた。
「こいつらどうしたんだ?」
時折味方同士でぶつかりながらも攻撃を止めないサイドンに狂気のようなものを感じハリーはゾッとした。
そしてリョウは一番大変だった。
「わ~~!!」
追ってくるサイドンは一匹だったが、リョウは他の二人と違い砂漠に適した手持ちを持っていなかった。キリンリキを出そうとしたが一度ボールに戻したことで一気に疲れが出てしまい、とても動けそうになかった。
「うおおおおおお!スリーパー“いばる”」
スリーパーはサイドンに向かってものすごいどや顔をきめた。
(これでこんらんしてくれれば…!)
サイドンはこんらんしなかった。本来ならば“いばる”を使った相手に対し怒り狂いこんらんするのだが、今のサイドンはそんな余裕もないようだ。
「くぅ~!もどれスリーパー!いけゲンガー!」
スリーパーが引っ込みゲンガーが現れる。
「“かげう…”」
「!」
リョウが“かげうち”を指示しようとしたが、サイドンは先程のゲンガーの攻撃を思いだし地面に潜った。
「あぁ~!」
サイドンが潜ったことによって影がなくなった。
「“あなをほる”か、だがゲンガーは『ふゆう』をもってる。じめん技はダメージをうけないぜ!」
リョウは完全にサイドンに意識を集中させていた。
ドゥン…
故に遠くで聞こえた音には気づかなかった。ハリーが気づいて叫ぶ。
「!リョウ!後ろだ!!」
「なに!?」
慌てて振り向いたらリョウの眼前に先程と同じ大きさの巨岩が迫る。
(避けられない!)
リョウは少しでもダメージを減らせればと両腕で顔を隠そうとした瞬間、体が何かに引っ張られた。
「うおっ!」
リョウはひっばられるまま身をまかせる。巨岩は先程までリョウがいた場所を通りすぎていった。
「わだだだだだだ!」
巨岩は避けたもののリョウはなにかに捕まれたまま引きずられていた。
「ちょっ、いたいいたい!なんだなんだぁ!?」
「いったいの!早く自分で
「あ?その声は…」
リョウがなんとか顔を動かし目線を上げていく。まず見えたのはサイホーンの特徴的な皮膚とそれにまたがる小さな足だった。さらに目線を上げていくと、小さく華奢な体が見えてきた。そして最後に顔が目にはいる。
「ミモザ!」
リョウを引きずっていたのはサイホーンにまたがったミモザだった。
「お前、そのサイホーンは?」
「い・い・か・ら!早く後ろに乗るの~~!!」
「あ、ああ、すまん」
リョウはなんとかサイホーンの背中に飛び乗る。
「ぷは~助かったぁ。ていうかミモザこのサイホーンどうしたんだ?」
「捕まえたの、といってもすでにひんしだったからボールを当てただけなの」
「そうか、それにして、も、いたぁ!」
サイホーンの背中は乗り心地がいいとはお世辞にも言えなかった。キリンリキやケンタロスとは違って背中がゴツゴツしていてあまり乗るのには向いていない。
しかし、ミモザはそんな風には見えなかった。むしろキリンリキやケンタロスよりも動きがいいかもしれない。
「ミモザ、お前なんでこんなにうまいんだ?」
サイホーンを操作するミモザの目付きはかなり鋭かった。しかも手綱がないので背中のとげを持ちコントロールしている。その技術は素人のそれではないことが明白だ。
ミモザは前方を見たままいつもより低い声で答えた。
「さっき洞穴でも言ったけど…」
ドゥン…
また謎の音が聞こえた。しかしミモザはその方向も正体もわかっていた。サイホーンへの指示を動作で伝える。サイホーンが右に曲がる。そこにまた巨岩が通りすぎる。避けてすぐにミモザはサイホーンを元の方向に戻す。息を整え先程の言葉を紡ぐ。
「ミモザは昔、一年間だけだけど【サイホーンレース】の選手だったの」
ミモザの乗るサイホーンにケンとハリーが追い付く。
「ミモザ!もう動けるのか?」
ハリーが心配する。ミモザは前を向いたままだが、顔を少し緩ませ答える。
「一人だとまだ歩けないけど、こういう風にすれば大丈夫なの。それより…」
ミモザが前方を指差す。
「“アレ”を見るの!」
ケン、リョウ、ハリーがミモザの指差した方向を見ると、ドサイドンがこちらを睨んでいた。
「ド、ドサイドンが起きてる!」
「夜行性じゃないんじゃないのか!?」
「もうすく朝なの、でも時間じゃなくてミモザたちが近づきすぎたから目が覚めたの」
ドサイドンは不適な笑みを浮かべながら自分の周りにある三つの山の一つに手を突っ込み引き抜く。その手にはさっきから何回も飛んできている巨岩が握られていた。
「さっきの攻撃はドサイドンだったのか!」
ドサイドンは巨岩を握った手をこちらに向けた。そして握っている腕が少し膨らんだかと思うと「ドゥン!」という音と共に巨岩が発射された。
「よけるの!」
ミモザの指示とほぼ同時にサイホーン、マルマイン、アーボックが飛び退いた。そして巨岩がその間を飛びすぎる。後ろで先程地面の中に潜っていたサイドンがその巨岩に当たって倒れたが四人は気づかなかった。
「あの技は“がんせきほう”なの」
「“がんせきほう”?すごく強そうだな!」
「いわタイプの技の中でも一、ニを争う威力なの。それにドサイドンは手のひらにくぼみがあってそこに岩をはめ込んで腕の筋力でとばしてくるの!」
ドサイドンはまでは目測で七百メートルほどある。『ぼうじんゴーグル』の望遠で見てみるとドサイドンの手のひらに確かにくぼみがあり、そこから煙が上がっていた。
「本当だ、あるぞ」
「だがなぜすぐに次を打ってこないんだ?」
「“がんせきほう”はその威力ゆえに反動で少し動けなくなるの」
「じゃあ今が攻めるチャンスってことか!」
「そうだな、よし気を付けながら今のうちに距離をつめるぞ」
四人はドサイドンから目を離さずに距離を縮めていく。ケンは“でんじふゆう”したマルマインに乗り肩にエレキッドを乗せている。ハリーはアーボックの背中にまるで忍者のように立ち、アリアドスを体にまとわせている。リョウはサイホーンの背中の後ろの方にまたがり、マネネを自分の前に座らせ、ミモザはハリーのアリアドスにつくってもらった即席の手綱をサイホーンの角にかけ、ギルガルドをまるで剣士のように背中に構えている。
するとドサイドン巨岩を打ってきた。しかも今度は四発連続で
「いぃ!?反動がある技をこんなに一気に打てるのかよ!」
「いや…違うの」
ミモザ、ケン、ハリーはその攻撃を難なく回避した。
「技の感じは似てるけど、スピードと威力がさっきの“がんせきほう”と比べると遥かに低いの」
ドサイドンは地団駄を踏みながらさっきまでとは違う
「多分今のは“ロックブラスト”なの」
「技が何回か続くやつか!」
「そうなの、でもどちらにしても真っ直ぐにしか飛んでこないの、だからちゃんと見てれば当たらないの!」
「あぁ、そうだな!アーボック!少し体をあげられるか?」
アーボックが頷き少し体を伸ばす。
「おれが少し高い位置から見る…ドサイドンは次の岩を手に持ってるぞ!」
それは他の三人も視認していた。
「だがなんだ?さっきまでと違って岩が小さいぞ…?」
ハリーがもっとよく見ようと目を細めた時、ドサイドンが“がんせきほう”を発射した。
「きたの!」
すぐにミモザが反応し攻撃ラインから外れる。岩はそのまま通りすぎる…はずだった。
「!ミモザ!リョウ!それはただの岩じゃない!」
ハリーの叫びと同時に飛んでくる岩に
「え?」
「マネネ!“リフレクター”!」
ハリーの警告を聞くと同時にリョウのマネネが“リフレクター”を展開したおかげで急に方向を変えた
「な、なんなの?」
予想外の動きをした岩に驚き足を止める四人。岩?が落ちた場所をよく見るとそこには…
「イシツブテ!?」
そこにはイシツブテが目を回して倒れていた。
読んでいただきありがとうございました!
ドサイドンはちゃんと育成したことがなく、図鑑情報のみを元に少し脚色して書いています。このあとも作者のドサイドンに対するイメージで本来はない設定も追加されるかも知れませんが、お許しください。
ては、早めに次も書いていこうと思います!