今回はオリジナル設定が結構入ってますが、気にせずお読みください!
『………』
モニターの向こうで固まるマチス。サカキはニドキングの猛攻を満足げな笑みを浮かべながら見ていた。我に返ったマチスがサカキに質問をぶつけた。
『ボ、ボス。あれが“生物兵器”ですかい?』
「フフ、そうだ。ニドキングにはある細胞を組み込んである」
『ある細胞?なんですそれは?』
「フム…、まぁお前は元軍人だけあって口は固いからな。今はR団員ではないが教えてやろう。ニドキングに組み込んだ細胞の名は《EX細胞》だ」
『《EX細胞》?』
「《疑似メガ進化細胞》と言ったほうがわかりやすいかな?メガ進化に近い状態を作り出す細胞というわけだ。今のニドキングの状態に名前をつけるなら“ニドキングEX”といったところだな」
『そんなもんどうやって作ったんです?』
「“作った”というより“見つけた”というほうが正しいな」
サカキはモニターの向こうで暴れるニドキングを楽しそうに見守りながら話を続ける。
「カロス地方でメガ進化を習得した後、R団の研究施設でメガ進化についていろいろ調べさせた。そんなとき現在メガ進化が確認されているポケモンがメガ進化したときに体の中に特殊な細胞が形成されることを発見した。それが《EX細胞》だ」
『その細胞がありゃあどんなポケモンでもメガ進化みたいなことができるんですかい?』
「いろんな種類のポケモンで試したが、この細胞に適合できるのは主に最終形体のポケモンか進化しないポケモン。もしくは特別な道具を進化に必要とするポケモンだ。それ以外のポケモンは変化についていけなかった。だが、適合できれば《キーストーン》も《メガリング》も必要とせずメガ進化に近い進化が可能となった」
『じゃあ、それはもう完成してるってことですか?』
「残念ながらまだ完全ではない。だからこそ実験なんだ」
『でもみる限りじゃかなりの戦闘力だぜ?』
「発動が安定していないだろう?《EX細胞》は一度ひんしにならなければ発動しない。まぁ奇襲という使い方もできるが、一度負けるというのは気持ちがいいものではないし、相手を倒すことで発動する特性もあることを考えると合理的ではないだろう?」
『まぁ、確かに…でもあいつらこのままじゃ危ないんじゃ?』
「先にも言ったが、殺すつもりはもちろんないぞ?だが…」
サカキはモニターを見てほくそ笑む。
「怪我くらいは仕方ないだろう?」
その顔にはためらいや心配といった感情は全くなかった。あるのはただ自分の目的を遂行するという単純かつ明確な意思だけだった。マチスはモニターの向こうでニヤリと笑った。
『さすが、オレのボスだぜ…』
「まぁ、あの四人の忠誠心と諦めの悪さとメンタルに関してはかなり評価している」
『?』
なにを言いたいのかわからず首をかしげるマチス。気にせずサカキはモニターを眺める。
「単純な力だけでは計れないものもある。あの四人にどれくらいの“ちから”があるのか…さぁ、見せてくれ」
豹変したニドキングに手持ちを瞬殺されたリョウ以外の三人は手持ちを入れ換えた。オクタン、ベトベトン、クレッフィが現れ、スリーパーはようやくドラピオンを押し退け復帰した。
ケンが指示を出す。
「四人がバラけすぎるのはだめだ!二人一組になって常に2対1になるようにたち振る舞え!」
「「「了解!」」」
ケンとリョウ、ハリーとミモザの二チームにわかれた。ニドキングはケンとリョウの方へと突っ込んでいった。
「オ、オクタン!“えんまく”!」
ニドキングをオクタンの墨を含んだ“えんまく”がおおう。オクタンの墨には嗅覚を鈍らせる成分が含まれている。昨日の強襲でそれを知ったハリーはこれで少しでも時間が稼げると思った。しかし、ニドキングは足を止めることなく“えんまく”を突っ切り一直線に向かってくる。
「スリーパー!“ヨガのポーズ”!からの“サイコキネシス”!」
“ヨガのポーズ”は物理攻撃をあげる技だが、集中力の一時的な上昇をも引き出し、エスパーなどの力を一時的にあげることもできる。スリーパーの“ねんりき”でニドキングの足が止まる。ニドキング全体ではなく、足などの一部分に力を集中させることでより効果的になると判断した。その判断は正しかった。足をもつれさせたニドキングは地面に倒れこんでしまった。
「よっしゃあ!」
歓喜するケンとリョウ、ニドキングが倒れたのを見たミモザとハリーは追撃を開始した。
「ベトベトン!“スモッグ”!」
ベトベトンの口から毒素が混じった煙が放出されニドキングを包み込む。どくタイプのニドキングに毒攻撃は当然効かないが、ベトベトンの“スモッグ”は臭いが強烈だ。その証拠にハリーのベトベトンが動き出した瞬間に四人全員が《ガスマスク》をつけた。そして、完全に動けないようにするために“フェアリーロック”でだめ押しする。
動けないニドキングが完全に悪臭満ちる“スモッグ”に包まれた。
「今だ!畳み掛けろ!」
ケンの合図と共に一斉に攻撃が始まる。
「“オクタンほう”!」
「“ねんりき”!」
「“かえんほうしゃ”!」
「“ミラーショット”!」
“スモッグ”で満ちた場所に四匹の攻撃が吸い込まれていく。そして最後に届いた“かえんほうしゃ”が“スモッグ”に引火しニドキングを燃やした。炎に包まれるニドキング。が、しかしニドキングは倒れることなく右手を握り力を込める。するとそこに炎が集まっていった。
「はぁ!?」
驚き目を丸くするリョウ。全員が次の指示を出そうとしたがニドキングはさらに早くなったスピードでまずはクレッフィを狙う。
「フィフィ!“まもる”!」
クレッフィがニドキングとの間に淡く光る壁を作り出した。ニドキングはそのまま壁に攻撃すると思いきや、寸前で止まり一度足を引いた。ミモザはそれがなんなのかわかったので指示を変える。
「“てっぺき”!」
クレッフィの体がさらに硬化し攻撃に備える。“フェイント”で“まもる”のタイミングをずらしたニドキングが炎をまとっていないほうの手でクレッフィを鷲掴んだ。
「“しんぴのまもり”!」
さらにやけど対策も行った。ニドキングの“ほのおのパンチ”がクレッフィの顔を思いきりとらえた。その怪物的なパワーの前には“てっぺき”も“しんぴのまもり”も意味をなさなかった。地面にめり込むほど叩きつけられたクレッフィは持っていた鍵をすべて散らしてひんしになった。
「ミモザを援護しろ!オクタン、“バブルこうせん”!」
振り向いたニドキングの眼前で“バブルこうせん”がはしける。
「ぐぎゃあ!??」
目のなかに泡が入り一瞬視界がなくなる。さらにベトベトンが“とおせんぼ”でニドキングの移動範囲を制限した。その間にミモザはニドキングから離れ、ニャオニクスに入れ換える。視界が回復したニドキングの前には振り子を構えたスリーパーが立っていた。
「“さいみんじゅつ”!」
振り子がゆれニドキングを催眠ねんぱが襲う。
「スリーパーの本分は相手に“さいみんじゅつ”をかけることにある!」
ニドキングの目がとろんとなってきた。
「よし、いける!」
誰もがそう思った瞬間、スリーパーの動きが止まった。その光景にその場の誰もが自分の目を疑った。
「どういうこった?」
ニドキングのしっぽがまるで蛇腹剣のように伸び曲がり背後からスリーパーを貫いていた。
「…!!」
スリーパーは目を見開いたまま倒れ伏した。ニドキングのしっぽがまるで生き物のように動きもとの長さに戻った。
「も、戻れ!スリーパー!」
急いでスリーパーを戻した。ニドキングはすでに次の標的であるオクタンに向かっていた。
「わわわわ、“ねっとう”!」
オクタンの口から“ねっとう”が吹き付けられた。しかし、ニドキングはそれを片手ではらいのけオクタンの頭を掴む。そしてそのままハリーに投げつけた。
「おぐぅ!」
お腹にもろにオクタンがヒットし一緒に吹き飛ぶケン。
「ベトベトン!」
ベトベトンがニドキングにまとわりつく。ニドキングはうっとおしそうにベトベトンに攻撃をするが、“とける”で体を柔らかくし、防御が上がっているベトベトンは中々しぶとかった。
「今のうちに体制を立て直すぞ!」
ケンはオクタンをそのまま使用し、リョウはタイプの相性を考えヤドンを選択。ミモザはニャオニクスに“めいそう”させた。しかし、時間はあまり稼げなかった。
「ベトベトン!!」
ハリーの悲痛な声にニドキングのほうを見るとニドキングの背中のとげが伸び、ベトベトンを串刺しにしていた。防御が上がっているとはいえ、ベトベトンはひんしになっていた。
「ちょっと待て、なんなんだあのニドキングは!」
「さっきのしっぽといいおかしいぞ!」
「まるで、メガ進化みたいなの…」
四人のなかで唯一カロス地方出身であるミモザがその考えを持った。しかし、だからといって現状は変わらない。ベトベトンをはがしたニドキングは首を二、三度コキコキとならすと地面に“メガトンパンチ”を打ち込んだ。地面が揺れ、地割れが起こったり、地面が隆起したりして地形が変わってしまう。
「わああぁぁ!」
「キャアアア!」
立っていられずに倒れてしまう四人の姿を見てニドキングはおかしそうに笑った。そして間髪いれずに“はかいこうせん”を放った。狙いはオクタン。
「オクタン!にげっ…どわぁ!?」
オクタンを抱えて逃げようとしたケンが地面につまずいて転び、その上を“はかいこうせん”が通りすぎる。
「ひいい!」
「ケン!大丈夫か、わぁ!」
ケンのもとに向かったリョウも足をとられこける。
「ハリー!この足場じゃ歩くのも困難なの!ミモザはサイホーンでケンを拾うからアーボックでリョウをお願いなの!」
「わかった!アーボック!そしてマタドガス!」
アーボックの背中に乗りマタドガスをしたがえハリーはリョウを、サイホーンにまたがりニャオニクスに加えペロリームを乗せたミモザはケンを拾いにいった。ニドキングは“はかいこうせん”の反動がとけ、動き出した。
「にゃおにゃお!“じんつうりき”!」
「マタドガス!“えんまく”!」
ニャオニクスの“じんつうりき”で少しひるんだニドキングを再び“えんまく”が隠す。しかし、EX細胞によって変化したニドキングの五感はすべて洗練され、その程度の妨害は妨害にすらならなかった。
「ごがあぁぁぁぁ!」
“えんまく”を逆に隠れ蓑に利用し、その中からオクタンに狙いを定めた。
そうとは知らずミモザとハリーはそれぞれケンとリョウを自分のポケモンの上に拾い上げようとしていた。
「すまん、ハリー」
「ミモザ、ありがとう」
「いいから早く乗るの!」
ミモザがケンをサイホーンに乗せようとしたとき、丁度オクタンがサイホーンの角の前に来た瞬間にニドキングは“でんげきは”を放った。“でんげきは”はまっすぐ
「しまった!」
《ひらいしん》があることででんき技に対して注意ができていなかったミモザは咄嗟にニャオニクスに“ひかりのかべ”を指示したが時すでに遅し。“でんげきは”をうけたオクタンはひんしになった。
「オクターン!」
ケンはオクタンをボールに戻した。
「!ケン!早く!」
ニドキングがこちらに向かっていた。慌ててケンがサイホーンにまたがる。ハリーが時間を稼ごうとする。
「マタドガス!“スモッグ”!かーらーのー…」
ニドキングに目眩ましが効かないのはすでにわかっている。それでも少しくらいなら動きは鈍る。マタドガスが“スモッグ”に紛れながら突っ込んでいく。
「“ギガインパクト”!」
“はかいこうせん”と同等の威力をもつ“ギガインパクト”がニドキングの横っ腹にめり込む。さすがに予想外の一撃をうけ吹き飛んだニドキングとその逆方向に吹き飛んだマタドガス。できた隙を逃さず四人は急いで距離をとる。
「ミモザ!さっき言った作戦、いくぞ!」
いつのまにかつけたトランシーバーからハリーの声を聞き、「了解」と答える。
「作戦ってなんだ?」
「説明している暇はないの」
「お、おう、内容はわからんがもう一手くらい準備しておくか」
ケンはケンタロスが入ったボールになにかを呟くとニドキングとは正反対のほうへ投げた。ケンタロスが現れケンと目を合わせると走り去ってしまった。
「ケン!?ケンタロスを逃がしたの!!?」
ペロリームに“ようせいのかぜ”を使わせながら貴重な戦力を逃がしてしまったケンに驚く。
「違う違う、保険だよ保険」
「?」
いぶかしげな顔をしながらもミモザは作業を続けた。先ほどの“ギガインパクト”が効いているようでニドキングは動きが鈍い。たが“とげキャノン”や“かみなり”を乱発してくる。サイホーンとアーボックには避けることに集中させ、マタドガスは“どくガス”“スモッグ”“えんまく”をひたすら撒き散らし、“ふぶき”でちらそうとするニドキングに対してペロリームが“ようせいのかぜ”で“ふぶき”の風を乱し、ニャオニクスとヤドンがエスパーの力ですべてのガスがニドキングの周辺に溜まるように操作した。
ニドキングの周りの混合ガスが濃くなっていく。しかし、どくは絶対にニドキングには効果がない。だが、目的はそこではなかった。
「よし!そろそろだ!ミモザ、壁をはれ!」
「了解!」
サイホーンの足を止めニャオニクスに“ひかりのかべ”をはらせる。リョウはマネネを追加で出し同じように“ひかりのかべ”をはる。
「どうするつもりなんだよ?」
「フフ…今から大きな花火を打ち上げちゃうの」
だんだん不安な顔になるケンとは反対にミモザの顔はものすごく悪い笑顔をしていた。
読んでいただきありがとうございます!
オリジナル設定について補足説明をさせていただきます。
今回でてきた《EX細胞》はスペシャルでは出てこないオリジナル設定です。ただ元ネタはありまして「ポケモンカード」の「ポケモンEX」です。ニドキングの強さを誇張するために考えてみました。使っている技にもいくつか使えない技もつかっていますが、そのあたりはご了承ください。