R団のズッコケ3隊長と不思議少女    作:長星浪漫

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今回も長くなってしまいました。
最後まどあと少しなのでかなり書き込んだつもりです。楽しんでいただけたら本望です!


4-5「窮地」

 ニドキングの攻撃がマネネの三重の壁の一枚目に当たる。すると、ニドキングの拳が止まった。壁に異常はない。

 

「よし!止めた!」

 

 そう思った瞬間マネネの張った壁が一気にすべて割れた。

 

「んん!?」

 

 同時にニドキングの悲痛な叫びも聞こえてきた。

 

「ぐあおぉ…」

 

 見ると右腕が完全に壊れていた。ニドキング歯を食いしばりハリーとリョウに向かっていく。壊れた右腕はブラブラと揺れている。

 

「ヤドン!“まもる”!」

 

 淡い光の幕がリョウ、ハリー、ヤドン、マネネ、アリアドスを包み込む。ニドキングは無事な左腕を振り上げ“まもる”に攻撃する。

 

「よし、判断力が低下してるな」

 

「そのまま左腕も壊れちまえ!」

 

 降り下ろされた左腕は“まもる”をいともたやすく打ち破った。

 

「「えっ?」」

 

 目の前でヤドンの背中にニドキングの攻撃が叩き込まれる。威力は下がっているが攻撃が急所に当たり、ヤドンはひんしになった。ニドキングは腕が痛むはずなのに動きを鈍らせることなく追撃のしっぽ攻撃を行った。

 その攻撃は“いやしのねがい”を発動しようとしていたマネネにヒットし吹き飛ばした。

 

「マネネ!」

 

 リョウがマネネを受け止める。ニドキングが体勢を低くしハリーとリョウに角を突き立てようと“とっしん”してきた。

 

「今度こそおわりだぁ!」

 

 二人が叫びながら抱き合ったとき、トランシーバーから声が聞こえた。

 

「にゃおにゃお!マネネとペロリーを“サイドチェンジ”なの!」

 

 二人がその声を聞いたときにはリョウの腕の中にはミモザのペロリームがおさまっていた。

 

「“わたほうし”!」

 

 ペロリームから大量の綿が放出され、ニドキングの腕をおおう。そのまま攻撃がハリーとリョウに当たったが“わたほうし”がクッションになって威力を吸収した。が、“ほのおのパンチ”を発動し“わたほうし”を燃やす。

 

「離れろ!」

 

 リョウはヤドンをボールに戻した。現時点で戦えるポケモンはミモザのペロリームだけだった。しかし、ニドキングはすでに“ほのおのパンチ”にすら耐えられなくなっていて軽くやけどしていた。しかし痛覚もまひしているのでニドキングの動きは止まらない。

 

「アリアドス!“いとをはく”で動きを止めろ!」

 

 アリアドスが糸を吐き出したが、ニドキングはそれを回避しアリアドスに“メガトンパンチ”を叩き込んだ。

 

「ぎいぃ~」

 

 短い叫び声をあげるアリアドス。しかし、紙一重のところで体力が残った。ペロリームか“なかよくする”で攻撃力を下げていたのが幸いした。

 

「アリアドス!“かげぶんしん”!」

 

 アリアドスの分身が複数現れる。ニドキングは本体を見失った。

 

「今のうちに離れよう」

 

「ああ!」

 

 二人が離れようとした時、衝撃が体を襲った。

 

「かっ!?」

 

「ぐ…?!」

 

 ニドキングのしっぽが地面の下を通り地上に出た部分がハリーとリョウの横腹をとらえていた。二人は吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。衝撃でリョウは右腕をハリーは肋骨を数本骨折した。

 

「うぐぅ…」

 

「ぐ、がは!」

 

 痛みで動けない二人、ペロリームが“アロマセラピー”で癒そうとするがそれでフォローできるダメージをオーバーしていた。ニドキングはアリアドスの分身を次々と蹴散らしていく。アリアドスの体力がほとんど空のため分身を作るスピーがニドキングの攻撃スピードに追い付かれつつある。

 その状況を遠くから見ていたケンとミモザが慌ててサイホーンにまたがる。

 

「“もしもの時”なんて考えてる場合じゃないの!」

 

「そうだな!助けにいくぞ!」

 

 ケンとミモザがサイホーンにまたがる。ヤドンはケンに預け、ミモザの前にニャオニクス、後ろにヤドンを頭に縛り付けたケンが座り、エレキッドがその後ろでケンの服をつかんでいた。

 

「さいさい!出発なの!」

 

 ミモザの合図で走り出すサイホーン。その動きを察知し、ちょうど最後の分身を蹴散らしたニドキングがミモザたちを見据える。ハリーがそれをミモザたちに伝える。  

 

「おい!ニドキングがぐ、そっちに、気づいた…!」

 

 ミモザたちがニドキングの方を見るとニドキングがまるで力士のように片足をあげ四股を踏むような状態にあった。

 

「なんのつもりかわからないけど今は止まってる暇はないの!」

 

 ニドキングに注意しながら走っているとニドキングが上げたら片足を思いきり地面におろした。その瞬間地面が大きく揺れた。

 

「ぎゃああ!?」

 

「あぅ、いってぇ!」

 

 ハリーとリョウは痛みもありかなり影響を受けた。一方サイホーンはこういった事態にも慣れており地面が揺れていてもお構いなしだ。

 

「!まずいの!」

 

 ミモザがなにかを感じ取ったとき、ハリーとリョウの場所までの地面がひび割れ“じわれ”を起こした。

 

「わあぁ!」

 

 なんとかギリギリハリーとリョウは落ちなかった。ミモザは一度サイホーンの方向を変え、ハリーとリョウから離れる。ニドキングは割れた地面のハリーとリョウ側にいるのでミモザたちが離れていくのを確認するとハリーとリョウの方へゆっくりと迫っていく。もはや走るだけの体力もなくなっているが、その目はギラギラと輝いている。今のニドキングの頭のなかにあるのは「敵を倒す」という目的だけだった。

 

「おいミモザ!なんで引き返すんだよ!」

 

 遠くなっていくハリーとリョウを後ろに見ながらケンが慌てる。

 

「…」

 

 ミモザは答えずただサイホーンを走らせる。そして急にUターンした。

 

「どぅおわぁ!」

 

 遠心力で吹き飛ばされそうになった。サイホーンは再びハリーとリョウの方向を向いている。

 

「つかまってるの…」

 

 ミモザは深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。

 

「行くの!」

 

 ミモザがサイホーンの横腹を蹴る。サイホーンは走り始めた。段々とスピードを上げる。風圧でケンとエレキッドがのけぞる。どんどんスピードが上がっていく、ミモザとニャオニクスはいつのまにかゴーグルをしていたから大丈夫だが、ケンとエレキッドは風をもろに受けてすごい顔になっている。

 

「おふぃ、みもじゃ、どうするちゅもりどあ(おい、ミモザ、どうするつもりだ)」

 

「とりあえず、これをつけるの」

 

 渡されたゴーグルを自分とエレキッドにつける。そして改めて問う。

 

「どうするつもりなんだ?」

 

「もちろんあの二人を助けに行くの」

 

「それはわかるが、ならなんで一回引き返したんだ?ニドキングを油断させるためか?」

 

「それもあるの、でも目的は助走をするためなの」

 

「助走?なんのために?」

 

「あの“じわれ”を飛び越えるためなの」

 

「あぁなるほど…ってえぇ?!」

 

 ケンが驚くのも無理はなかった。ニドキングがおこした“じわれ”の幅は10メートルを越えていた。

 

「回り道してもっと狭いところを探してから…」

 

「そんなことやってる時間はないの!」

 

 ミモザは止まる気はなかった。見えている範囲で狭いところはなく、あったとしてもそこまでいっている時間はない。

 

「覚悟を決めるの!あと、エレキッドを抱えて後ろを向いてなの!」

 

「えぇ!?わ、わかった!……よし!!」

 

 ケンは言われるがままエレキッドを抱えて後ろを向いた。ミモザはさらに速度をあげる。

 

「さぁ、行くの!」

 

 

 

 「ペロリーム!えーっとぉ“コットンガード”!」

 

 ハリーとリョウはペロリームのお陰でギリギリ助かっていた。ニドキングの動きははじめよりも大分鈍っている上に左腕は壊れていて動かない。そのためペロリーム以外の手持ちが全部ひんしという絶望的な状況でもなんとかなっていた。

 

「ぐおぅ」

 

 綿を何重にもまとったペロリームの防御力が数段上がる。ニドキングの攻撃は綿に威力を吸収される。が、フェアリータイプのペロリームにどくタイプの攻撃はばつぐんで、じりじりと体力が削られていく。それでも必死に二人の盾になっていた。

 

「くうぅ、ペロリームぅぅ!」

 

「くそっ、おれたちはなにもできないのかよ…!」

 

 手持ちが全滅の上に体を負傷していては逃げることもできない。そんな自分にイライラしていた時、ふと“じわれ”の向こう側を見たハリーはびっくりした。ケンたちを乗せたサイホーンがこちらに猛突進してくるではないか。

 

(どうする気だ?)

 

 目の前には幅が広い“じわれ”。色々考えたが答えはひとつしかなかった。

 

(まさか、飛び越える気か!?)

 

 サイホーンの重量などを考えるとかなり無茶な行動だった。

 

(でも他に手もないか!)

 

 ハリーはペロリームに指示を出す。

 

「“フラッシュ”!」

 

 ペロリームから強烈な光が炸裂する。あたりは明るいとはいえ急な強い光は目へのダメージが大きい。

 

「がっ…」

 

 ニドキングは目を押さえ痛がっている。これを好機とハリーはミモザのほうを見た。ちょうどジャンプをしたところだった。

 

 

 

 「わああああ!」

 

 ケンが恐怖で叫ぶ。ミモザは届かないことをわかっていたのですぐに手をうつ。

 

「ケン!空中に“ばくれつパンチ”!」

 

「え、“ば、ばくれつパンチ”!」

 

 言われた通り技を放った。“ばくれつパンチ”は空中で爆発しその爆風がサイホーンをさらに前へ進める。

 

「仕上げは、にゃおにゃお!」

 

 待ってましたと言わんばかりにニャオニクスが“サイコキネシス”でサイホーンを浮かす。なぜ初めにこうしなかったかというとニャオニクスのエスパーの力そのものがギリギリだったからだ。しかし、想像以上にニャオニクスの消費は激しかったらしくサイホーンの前足がギリギリかかったぐらいだった。

 

「お、落ちる!」

 

「ケン!ミモザ!っつぅ!」

 

 二人を助けようとしたが痛みで動けないハリーとリョウ。そんな二人をよそに落ち始めるケンとミモザ。ニドキングも相手にする必要はないと邪魔を続けるペロリームを攻撃し続ける。

 

「だ、だめなの」

 

「こ、こんなところで!」

 

 ケンとミモザが諦めかけたその時、ケンの頭の上でぐったりしていたヤドンが本気を出した。  

 

「ヤアァァ…ン!」

 

 渾身の“みずのはどう”を放つ。

 

「ぐお!?く、くびが…!」

 

 ヤドンの余った力を振り絞った“みずのはどう”の威力は凄まじかった。ケンが鍛えていなければ首がヤバイことになっていたかもしれない。とにかくケンはヤドンを頭に乗せ、エレキッドを抱えたまま後ろに吹き飛びミモザに背中からあたった。

 

「きゃあ!?」

 

 そのまま対岸に吹き飛ぶ。サイホーンは急に背中が軽くなりバランスを崩した。

 

「さ、さいさい!戻るの!」

 

 間一髪、ボールにサイホーンを戻したお陰でサイホーンも無事だった。

 ヤドンはひんしぎりぎりだったこともあり、技の威力とか色々調整できずにいた。なのでケンとミモザ、エレキッド、ヤドン、ニャオニクスはハリーとリョウの方へ勢いそのままに吹き飛んでいった。

 

「「わきゃああぁぁぁ!」」

 

「「ぎゃああぁぁぁぁぁ!!!」」

 

 そのままぶつかる四人、怪我をしているハリーとリョウを押し潰す感じになった。ハリーとリョウは痛みで気絶しそうになった。そして心のなかで「サイホーンが出ていなくて良かった」と本気で思った。

 

「大丈夫なの?二人とも!」

 

「あぁ、大丈夫だから、早く降りて」

 

「わあぁ!すまん、ハリー、リョウ!」

 

 慌てて降りるケンとミモザ。ハリーとリョウは立ち上がれず座ったままだ。

 

「全く、無茶しやがって」

 

「本当に死ぬかと思った…」

 

「生きてたからいいの。あ、ヤドン返すの」

 

「なんだか、この1日で大分たくましくなったなぁ」

 

「ヤドン目を閉じたまま動かねぇぞ!?……寝てるだけか」

 

 落ちなかった安堵から談笑を始めた四人の方へなにかが飛んできた。

 

「ペロリー!」

 

 それがなにかわかったミモザはなんとかキャッチした。ペロリームは汗をかきながら震えており、見るからにどくに侵されていた。とりあえずボールに戻す。そして地響きとともにニドキングが迫ってきた。

 

「ハリー!リョウ!下がってろ!ここは俺たちが相手をする!」

 

「にゃおにゃお!“サイケこうせん”!」

 

 ニャオニクスの目から虹色の光線が発射され、ニドキングの頭部をとらえる。昨晩と比べるとやはりニドキングにあたえるダメージは大きくなっているようだった。しかし、限界を何度も越え様々なリミッターが外れてしまっているニドキングは悪魔のようなタフさを見せる。

 

「があぁぁぁぁぁ!」

 

 まだかろうじて使える左腕で“メガトンパンチ”をうってくる。

 

「まかせろ!集中は極限だぜ!」

 

 エレキッドを抱えたままケンが割り込む。エレキッドは閉じていた目をカッと見開くと腕を離れ“きあいパンチ”を打ち込んだ。

 “メガトンパンチ”と“きあいパンチ”がぶつかり二匹を巨大な衝撃が襲う。エレキッドは小柄だが元気はあったので耐えきったが、ボロボロのニドキングは一歩引いた。その動作にミモザが攻撃を察知した。

 

「ケン!しっぽ攻撃がくるの!」

 

「了解!エレキッド!“でんきショック”!」

 

 エレキッドが地面に“でんきショック”を放つ。バチっという音がして反動でエレキッドの体が少し浮いた。その下をしっぽが通りすぎる。

 

「よっしゃあ!」

 

 そう喜んだのもつかの間、そのまま体を回転させニドキングの壊れた方の右腕が回転の勢いを持ちながらまるでムチのようにエレキッドをうちすえた。

 

「な!!」

 

「うそなの!?」

 

 壊れた腕を使ったのはニドキングもほぼ無意識だったのでミモザも予想できなかった。はじかれたエレキッドは吹き飛ばされ電気を漏らしながらケンのほうに飛んでいった。

 

「ちょっ、まっ!」

 

 避けられずにケンはエレキッドに当たってしまう。電力は低いが直接電気をあびてしびれてしまう。

 

「あばばばばばば…」

 

「にゃおにゃお!“じんつうりき”!」

 

 “じんつうりき”にひるみかけたニドキングは下唇にキバをつかたて意識を保つ。そして距離をつめていく。

 

「“サイコキネシス”!」

 

 さらに強いエスパーの攻撃を速度をあげ無理矢理押しとおる。そしてニャオニクスを殴り飛ばした。

 

「にゃー!!」

 

「あうっ!」

 

 殴り飛ばされたニャオニクスがミモザのお腹にあたり一緒に飛んでいく。そして四人が一ヶ所に集められた。それもニドキングの狙いだった。左の拳を握りしめそこに毒のエネルギーを溜める。

 

「かはっにゃ、にゃおにゃお…」

 

 ニャオニクスはさっきの一撃で完全にひんしになっている。エレキッドも目を回している。

 

「ぐぅ!いてぇ!」

 

「早く逃げなくては…!」

 

 しかしケンはしびれて動けず、ハリーとリョウは痛みが増して動けない。ミモザもさっきの衝撃で目が霞んでいた。四人の前まで来たニドキングがニヤリと笑う。左手は毒のエネルギーで紫と緑の混じった毒々しい色に輝いている。

 

「くっ…」

 

 三人は諦めかけた。しかし、ミモザが最後の一匹をボールから出した。剣の体が太陽の光を受けてギラリと輝く。

 

「ギルガルド!」

 

 三人の顔がパッと輝く。ギルガルドは今にいたるまで何度も助けてくれた。その存在だけで大きな希望になった。

 ニドキングは毒を帯びた拳を降り下ろした。

 

「“キングシールド”!」

 

 『シールドフォルム』になったギルガルドの前方に絶対防御のシールドが発生する。ニドキングの攻撃ははじかれ…るはずだった。

 

パリイィィィィン!

 

 ガラスが割れるような音とともに“キングシールド”が砕かれた。

 

 




読んでいただきありがとうございました!
ニドキング引っ張りすぎと思われたらすいません!サカキのニドキングが大好きなのでもう少しお付き合いください!

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