R団のズッコケ3隊長と不思議少女    作:長星浪漫

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今回も少し長くなりますが、VSニドキング終了です!
どんな最後を迎えるのか?お楽しみあただけたら嬉しいです。


4-6「最後の切り札」

 「えっ…?」

 

 ミモザが目の前の現実を理解したのはニドキングの攻撃がギルガルドにヒットしそのまま四人を巻き込んで吹き飛ばされた後だった。

 

「かっ、はっ!」

 

「ぐあぁ!」

 

「いだぁ!!」

 

「ぐっは!」

 

 四人は体を思いきり地面に打ち付けた。今度は完全に動けなくなった。

 

「くうぅ…」

 

 なんとかミモザだけが起き上がる。頭から血を流し左目にかかる。その向こう側にニドキングが鋭い目付きで迫ってきていた。周りには痛みで呻く三人の姿があった。ケンはさっきの衝撃で足と口を切ったらしく出血している。ハリーとリョウは骨折が悪化しさらに吐血していた。ギルガルドはなんとか動けるようだったが体中傷だらけだった。ニドキングはゆっくりと四人に迫る。その目は虚ろでもはや本能のみで動いており、目の前の“敵”をただ倒そうとしていた。

 

(このままじゃやられちゃうの…!)

 

 ミモザは必死で考えた。この状況を乗り切るにはどうすべきか?どうするのが最善か?これまでの戦いやニドキングの行動を思いだし突破口を探した。

 

(現状を再確認するの、ハリーとリョウはそれぞれ足と肋骨を骨折、さらにさっきの衝撃で悪化しているの、動けそうではあるけどあんまり動かさない方が良さそうなの

ケンは外傷はあまりないけどさっきのしびれがまだとれてないの。ミモザは…)

 

 ミモザは体を動かしてみた。痛みはあるが他の三人に比べればましだ。ただ、頭の上のほうに擦り傷ができたようで、そこから血が流れていた。しかし、出血はもうすぐ収まりそうだった。

 

(手持ちは…ハリーとリョウは全滅、ミモザはギルガルドがいるけど…もう無理はさせられないの、ケンはケンタロスがいたけど今ここにはいないの)

 

 現状を再認識したことで解決策は浮かばず、むしろどうにもできないという絶望感が広がっていく。ニドキングはまっすぐミモザの所へ近づいてくる。

 

(はやく何とかしなきゃ、なんとかなんとか…)

 

 考えれば考えるほど思考が鈍くなっていく。「もう無理だ」という考えが頭の片隅にあるせいで考えもマイナスに向かってしまっていた。

 ニドキングは他の三人には目もくれず真っ直ぐミモザに向かっている。他の三人は最早驚異を感じていないようだった。ミモザは痛む体を引きずりながら少しでも距離をとろうとする。しかし、ニドキングの方が圧倒的に早い。足がもつれて倒れてしまうミモザ。ニドキングはどんどん近づいてくる。近づく『死』にミモザの脳裏にイベルタルと戦い死んでいった両親の姿が浮かび、今度こそ覚悟を決めて目を閉じようとした。だが、目を閉じる前にミモザの前に三つの人影が割り込んできた。

 

「これ以上行かせるかあぁ!」

 

 驚いて閉じかけた目を開くとそこには身体中傷だらけのケン、リョウ、ハリーがニドキングとにらみあっていた。  

 

「ハァ、ハァ…俺たちを無視してんじゃねぇぞ!」

 

「まだ、うご…!……ける!」  

 

「つめが甘いぞ、サカキ様の手持ちのくせに」

 

 三人が息も絶え絶えにミモザの前に立つ。リョウにいたっては足ががくがくと震えている。

 

「ケン、リョウ、ハリー…」

 

「おい!ミモザ!さっきも諦めんなって言っただろうが!」

 

 リョウが痛みで目に涙を浮かべながら叫び少し吐血する。

 

「まだだだ、なんとかかかなるるるる!」

 

 ケンが少し痙攣しながら激励する。自分を庇う三人の背中があの時の両親に見えた。

 

「やめるの!三人ともはやく逃げるの!」

 

「んなことできるか!」

 

「ミモザのために命を粗末にしないで…」

 

 両親がじいやが命を賭けて自分を守ってくれた。嬉しいけどそれ以上に寂しくて悲しい、もうあんな気持ちを味わいたくない、そんな思いだった。そんなミモザに初めに答えたのはリョウだった。  

 

「はぁ?何いってんだ?」

 

 涙がにじむ顔を「ふざけてんのか?」という表情にしながらミモザを振り向く。

 

「命を賭けるつもりなんてねぇよ!ふざけんな」

 

「は?」

 

「こうすりゃ少しは時間を稼げんだろ?いいからさっさと策を考えろ!」

 

 リョウの言葉に「そうだそうだ!」「頼んだぞ!」と同調するケンとハリー。そんな三人を見て両親やじいやの姿を重ねた自分を後悔するミモザ。しかしおかげで少し気が緩んだ。

 

(こんな馬鹿な人たち初めて見たの)

 

 突然の乱入者に少し混乱していたニドキングも状況の整理が終わり進行を再開した。

 

「わあぁ!動き始めた!」

 

「に、にげるか?」

 

「そうしたいのはやまやまだが、一応ミモザがいるし…」

 

「抱えて走れば…イッテテ!」

 

「この怪我じゃ無理だ!」

 

「どうすんだよ!」

 

「ミモザ!はやく!」

 

 そんなやり取りを見ながらミモザはフッと笑った。

 

(こんな人たちだけど、たった一日の付き合いだけど…それでも今はもう大事な人たちなの)

 

 ミモザはふらふらしながらもまだ戦う意思を見せているギルガルドの頭のつかの部分を握った。

 

「ぎるぎる、もう一度ミモザを“操って”ほしいの」

 

「!?」

 

 ギルガルドは体をふって拒否の意思を示したがミモザの意思の方が固かった。

 

「疲れと痛みでちゃんと動けないの。ぎるぎるが操ってくれればもう少し無理ができるの、もう少しなの、だから、お願い…」

 

 ミモザに抱き締められギルガルドはミモザがもう“決めて”いることを理解し、嫌だと思いながらもミモザの申し出を了承した。

 ギルガルドが能力を発動し意識を保ったままミモザの精神を支配していく。

 

「くうぅ…」

 

 支配され無理矢理動かされることで体中に痛みを感じるミモザ。と、急に体の痛みがやわらぎはじめた。

 

「?痛くなくなっていくの…」

 

 同時に胸の奥から沸き上がる熱いなにかを感じた。

 

「なんだか力が沸いてきたの!これもぎるぎるの力のひとつ…?」

 

 疑問に思ったが今はそんなことを考えている場合ではない。ニドキングの攻撃がケン、リョウ、ハリーをまさに襲おうとしている。

 

「行くの!ぎるぎる!」

 

 駆け出したミモザは三人の間をすり抜けニドキングの前に立った。

 

「ミ、ミモザ!?」

 

「お前まだそんなに動けたのか?」

 

「危ないぞ!動けるなら逃げろ!」

 

 ミモザは三人の声を聞きながらも前に進み、ギルガルドを地面に突き刺した。

 

「ミモザが守るの!」

 

 ミモザの目が金色に輝く。同時にギルガルドの体も金色の光をまとい始めた。

 

「な、なにが起こってるんだ!?」

 

「“キングシールド”!!」

 

 ミモザが技の名前を叫んだと同時にギルガルドが防御シールドを展開する。

 

「おいミモザ!それじゃあダメだってさっきわかったろ!」

 

「早くにげ…ぐぅ…!」

 

「ああぁ!ここまでなのか?」

 

 ニドキングは先程同じ技を破壊したのを覚えていた。なので足を止めることなく進行する。最後の一撃を放つために力を込め始める。。

 

「絶対に通さないのぉ!」

 

 ギルガルドの輝きがさらに増し、展開したシールドが変化を始めた。

 

「なんだ!?」

 

 全員が見守るなかシールドが変化を続け、いつものギルガルドのシールドの形から西洋の騎士が持つような盾の形になりその後ろに二本の剣が交差していて、その上にはミモザの花の王冠が浮かんでいた。

 これはミモザも想定外で目の前に出現したシールドをポカンとした表情でただ見つめた。

 ミモザが知るよしもないがこのシールドはミモザの家の紋章だった。ミモザの家では代々家の紋章にその家を継ぐものを表すモチーフを加え家長の証としてその紋章を与えられるというならわしがあった。この紋章はいつか家を継ぐであろうミモザのためにかなり早いうちに両親が考えていた紋章だった。元々ミモザの父の手持ちだったギルガルドが無意識のうちにそれを覚えていたのかはわからないが、ミモザの心の成長と気持ちの高ぶりをその身に感じ技として出現したのだった。

 

「これなら、いけるの!」

 

 ニドキングの拳が“キングシールド”にあたる。だが、今度は壊れることはなかった。

 

「「「やった!!!」」」

 

 ガッツポーズをする三人。しかし、それだけでは終わらなかった。ニドキングの攻撃を受けたシールドはその攻撃のダメージをそのままニドキングへと返した。

 

「ぎゃああぁおぉ!?」

 

 ニドキングの左腕が折れ、さらに後方へ吹き飛ばした。かなり遠くに落ちるニドキング。それを見たケン、リョウ、ハリーは痛みを忘れ喜んだ。

 

「やったー!ニドキングを倒したぜ!」

 

「長かった長かった…!」

 

「ミッションクリアだあ!」

 

 腕を組んだりハイタッチをして喜びあっている。ミモザもそのなかに加わろうとした時、目を疑う光景が飛び込んできた。

 

「うそ…なの…」

 

 絶句したミモザの目線の先にはゆっくりと立ち上がるニドキングの姿があった。他の三人もそれに気付く。

 

「おい、うそだろ…」

 

「まだやるのかよ?」

 

 一気に気持ちが冷めていく。しかし、ハリーがあることに気づいた。

 

「おいまて、あのニドキング動かないぞ!?」

 

 ニドキングはもう立ち上がるのがやっとだった。当然攻撃などもできる状態ではなかった。普通のバトルならここで終わりだが、四人はそうはいかなかった。

 

「でも、全員を倒さなきゃいけないんだろ!?」

 

「あれじゃだめなのか?!」

 

「そうだ!ミモザ!今度は攻撃を…」

 

 リョウがミモザに頼もうとした時、ミモザはその場に倒れてしまった。

 

「「「ミモザ!!!」」」

 

 三人は慌ててかけよりミモザを抱き起こす。ミモザの体は小刻みに震えていた。

 

「さすがにもう動けないの…」

 

「す、すまん!でもどうしたらいいんだ!!」

 

「あぁぁぁ…ん?」

 

 ケンがどうしたのか急に地面に耳をつけた。そしてニヤリと笑った。

 

「ミモザ、やっぱり備えといて正解だったぜ」

 

「?」

 

 なんのことかわからずきょとんとしているとどこからか地鳴りが聞こえた。

 

「え?なんだなんだ??」

 

「“じしん”?いや、ニドキングは動いてないぞ!?」

 

「まさ…か、あら、て…なの?」

 

 不安で慌てる三人。しかし、ケンはいたって冷静だった。

 

「お前ら安心しろろろ!これれは味方だ!」

 

 若干まだしびれを残しながらケンがニドキングとは逆の方向を指差した。そちらをみるとなにか黒く大きな塊がこちらに向かっていた。

 

「な、なんだ、あれ?」

 

 ハリーが《ぼうじんゴーグル》をつけ、望遠で見てみると…

 

「あれは!ケンタロスだ!ケンタロスの群れだ!!」

 

「「ええっ!?」」

 

 それはケンタロスの群れだった。しかもざっと五十頭くらいはいる。

 

「ていうかこっちに来てる?」

 

「おいおい!早く逃げようぜ!」

 

「だから、大丈夫だって」

 

 慌てるハリーとリョウの肩を叩きケンはミモザに聞く。

 

「あいつらに俺たちを攻撃する意志はあるか?」

 

「……ないの」

 

「そりゃあそうだ!なんたってあの群れを率いているリーダーはさっき俺が出した(・・・・・・・・)ケンタロスだからな」

 

 改めてケンタロスの群れを見てみると確かに先頭に一匹だけ前に出ているケンタロスがいた。そのケンタロスは真っ先にケンの所に到着するとケンの前で止まり三本の尻尾をピシピシと叩いた。すると後ろにいた群れが二つに別れて四人を避けながらニドキングに向かっていく。その様子を呆然と見送るリョウ、ハリー、ミモザ。ケンはケンタロスを撫でながら説明を始める。

 

「ハリーとリョウは知ってるだろうが俺のケンタロスは元々カントーのサファリゾーンで群れのリーダーをやってたんだ。その技量はなかなかのものさ。だからもしもの時のためにケンタロスには最後のダメおしを任せたわけだ」

 

「でもよくケンタロスの群れがいたな」

 

「昨日の夜に洞穴にいくときと砂漠地帯に行くときに群れで休んでるのを見つけたんでこうして連れてきてもらったってわけだ。さて!」

 

 ケンがケンタロスの背中を叩くとケンタロスは尻尾をまた鳴らす。するとケンタロスの群れがニドキングを囲むように四つのグループに別れた。

 

「さあ!最後は全員で攻撃の指示だ!ケンタロスの技っていったら…わかるよな?」

 

 ケンがウインクする。他の三人はニヤリと笑った。

 

「ああ」

 

「もちろんだ」

 

「さっさとやるの」

 

「よーし!じゃあいくぞ?せーの!!」

 

 四人は一斉に技の名前を叫ぶ。

 

「“メガホーン”!(ケン)」

 

「“たいあたり”!(リョウ)」

 

「“すてみタックル”!(ハリー)」

 

「“とっしん”!(ミモザ)」

 

 全員が別々の技名を叫んだ。

 

「「「「え?」」」」

 

 だがケンタロスは元々群れのボスをやっていただけのことはあり、尻尾をうちならし四つのグループに指示を出した。

 

「ぶもおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 四つに別れた群れがそれぞれ雄叫びをあげ攻撃を始めた。

 まず、“とっしん”のグループが動きだし、続いて“すてみタックル”“たいあたり”“メガホーン”の順番に動き始める。スピードが一番早い“とっしん”グループがニドキングに突っ込んでいく。ニドキングはすぐに回避しようとしたがダメージが大きすぎて動けなかった。

 

「ぶもお!」

 

「ぐぎゃあ!」

 

 ニドキングが吹っ飛ばされる。飛んでいった先には“すてみタックル”のグループが向かってきていて地面に落ちる前に“すてみタックル”に吹き飛ばされる。

 

「あぁぁぁ!」

 

 今度は“たいあたり”のグループに飛んでいきやはり飛ばされた。最後には“メガホーン”のグループの所へ飛んでいき、ケンタロスの自慢の角ではるか上空に突き飛ばされた。

 

「があああ…あ…!」

 

 ケンタロスたちはお互いぶつかることもなくその場を離れていきニドキングはそのまま地面に叩きつけられた。

 

「………!!」

 

 そのまま声もなく動きが止まった。

 

「……」

 

 しばらくニドキングを見つめる四人。しかし目覚める気配はない。

 

「やったの?」

 

 ミモザが誰に聞くともなく言うと、ハリーが《ぼうじんゴーグル》で確認する。ニドキングは白目をむき、口をだらしなく開けて完全にひんしになっている。その事実を全員で確認すると同時に喜びの声をあげた。

 

「「「「やったーーー!!!!………」」」」

 

 そしてそのまま地面に倒れた。

 

「ハリー、時間は?」

 

「えーっと…うわ!リミットまであと三分だった!」

 

「危なかったぜー」

 

「でも…これ…で…」

 

 安心感からミモザは猛烈な眠気に襲われていた。他の三人も眠気や痛みに呻きながらも喜びを分かち合っている。

 

「あ…でも…、サカキ様のところへ戻らなくちゃ…な…の」

 

「うっ、それもそうだ…いてて」

 

「サカキ様をお待たせするわけにはいかないからな」

 

 ケン、リョウ、ハリーの三人が立ち上がり、一番怪我が少ないケンがミモザを背負う。その時どこからともなく声が聞こえてきた。

 

『よくやった、お前たち』

 

「えっ!?サカキ様??」

 

 周りを必死に探す。しかしサカキは見当たらない。

 

『ここだ』

 

 四人が同時に上を見上げるとそこにはカメラとスピーカーを装着したスピアーが降りてきた。声はそのスピーカーから聞こえていた。

 

『今そこに向かっている。あと十分くらいで到着するから、しばらく休んでいろ』

 

「りょ、了解です!」

 

 ビシッと敬礼する三人。ミモザも眠気を我慢しながらゆるゆると敬礼する。サカキの通信が終わるとスピアーはニドキングのもとに向かいボールに戻すと四人のそばに戻ってきた。

 

「本当に終わったんだな」

 

 ケンが敬礼したまま呟いた。

 

「あぁ」

 

「長い一日だった」

 

「む…そ、…な、の…」

 

「ミモザ、起こしてやるから少し寝てろ」

 

「わかった…の、……くぅ…」

 

 ケンの背中で寝息をたてはじめたミモザ。それを見たハリーとリョウはにっこりと微笑んだ。

 

「まだガキの癖に頑張ったな、こいつ」

 

「あぁ、本当に強い子だ」

 

「なんだか楽しかったしな…でもこれでお別れだな」

 

「そうだな…」

 

 ミモザの寝顔を見ながら三人は少し寂しい気持ちになった。その気持ちを察してかまだボールに戻っていなかったケンタロスが体をすりよせる。

 爽やかな風が草原の草を揺らしながら四人の間を駆け抜ける。三人はしばらくミモザの子供らしい寝顔をただ見つめていた。




長い文を読んでいただきありがとうございました!
次回はとうとう最終話です。なんとか処女作を最後まで書けそうです。なるべく早く投稿できるよう空いた時間を見つけてどんどん書いていきます!
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