R団のズッコケ3隊長と不思議少女    作:長星浪漫

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とうとうここまできました。最終話はじまりです。


エピローグ

 しばらくしてサカキを乗せたR団の戦闘ヘリが四人の前に降りてきた。ミモザも起こしてもらいまだ眠さは残るもののしっかりと自分の足でたっている。ヘリが降り立ち中からサカキが姿をみせた。

 

「ご苦労だったな、お前たち」

 

 ケン、リョウ、ハリーはものさしを背中に入れられたのかのようにこれ以上ないくらいビシッと背筋を伸ばして敬礼する。

 

「ありがとうございます!いたっ!」

 

「頑張りまし…つぅ、た!」

 

「勉強になりま……した!」

 

「…なの」

 

 ケン、リョウ、ハリーは涙を流しながら(半分くらいは痛みのせいで)喜んだ。ミモザはそんな三人に少し圧倒されながらもサカキの誉め言葉に頬を少し赤らめて喜んだ。

 

「…さっきまではマチスもいたんだが…」

 

「マチス様がいらしたんですか!?」

 

 ケン、リョウ、ハリーとくにケンがかなり前のめりに食いついた。

 

「マ、マチス?確かカントーのクチバのジムリーダーで元幹部の?」

 

 ミモザは入団の時に覚えたR団の知識を思い出した。

 

「ああ。まぁ正確には通信で会話していたのだがな。お前らの顔を見たがっていたが部下に呼ばれしぶしぶ自分の仕事に戻っていった」

 

「そうですか…」

 

「はは、マチス様らしいな」

 

「お元気そうで何よりだ!」

 

「そういえば、お前たちに伝言を残していったぞ」

 

「伝言…ですか?」

 

 ケン、リョウ、ハリーが分かりやすくワクワクし始めた。

 

「『お前ら強くなったな!お前らの元上司として嬉しいぜ!』…ということだ」

 

「「「マヂズ様~~~!!!」」」

 

 完全に涙腺が崩壊するケン、リョウ、ハリー。ミモザはついていけず、鼻水が飛んでこないように少し距離をとる。

 少しまってサカキが話を再開した。

 

「さて、本題に入るわけだが、その前にお前たちの手持ちを回復させよう。あと、お前たちも少し休息が必要だろう、話は明日にしよう。しっかり休めよ」

 

「「「はっ!!」」」

 

「はい、なの」

 

 その日はそのままヘリの中の部屋で眠った四人。昼過ぎから眠ったのだが、次に起きた時には次の日の早朝だった。サカキが指定した時間よりも三十分早くヘリの外に集合するケン、リョウ、ハリー。ミモザは十分前にそこに合流した。ほどなくしてサカキがヘリから降りてきた。

 

「早いなお前たち」

 

「はっ!おはようございます!サカキ様!」

 

「うむ、おはよう。ミモザもおはよう。昨晩はぐっすり眠れたか?」

 

「はいなの、サカキ様」

 

 ミモザは少しモジモジしながら返事する。その様子を見ていたリョウが勘違いをし、

 

「なんだミモザ、トイレか?行きたいならさっさと行ってこいよ」

 

 その言葉に「あ、ばか!」とケンとハリーが止めようとしたがもう遅かった。顔を真っ赤にしたミモザがリョウの脛をR団用のブーツで思いきり蹴り飛ばした。

 余談だが、R団から支給されるブーツの爪先には鉄板が入っている。工場などで使われる作業用靴と同じ感じだ。だから蹴られるとかなり痛い。

 

「うぎゃあああぁぁぁぁ~~!」

 

 朝の澄んだ空気を切り裂くようにリョウの悲鳴が響き渡った。蹴られた箇所を押さえながら地面を転げ回る。その様子があまりにも痛そうでケンとハリーは無意識に自分の脛を隠した。

 リョウが落ち着き、ミモザとにらみあっているのを無視してサカキは話を始めた。

 

「まず改めて、特訓クリアおめでとう」

 

「ありがとうございます!」

 

「まずはケン。戦いかたは豪快でいいのだが、ここぞというときに油断が見える」

 

「も、申し訳ありません…」

 

「だが、マチス譲りのアレンジ技は中々のものだったぞ」

 

「ありがとうございます!」

 

「次にリョウ。うかつ過ぎる」

 

「うぐっ…はい」

 

「その分仲間のピンチには素早く反応していたな、もっと先のことを考えられればなおよくなるだろう」

 

「は、はい!頑張ります!」

 

「ハリー、ひとつのことに対する集中力は大したものだ。しかし集中のあまり周りが見えなくなってしまうのはよくないぞ」

 

「かえす言葉もありません」

 

「しかし、その身体能力はキョウにしこまれだけはある。手持ちの使い方も素晴らしいものがあったぞ」

 

「あ、ありがとうごじゃ…!!(泣)」

 

「そして、ミモザ」

 

 サカキがミモザの目を見る。ミモザは緊張と気恥ずかしさで少し震える。

 

「は、はいなの」

 

「…もう俺だけじゃなくても大丈夫か?」

 

「…!」

 

 その言葉の意味を察したミモザは少し考えたあと、まだ幼さが残る顔をあげ、サカキの目を真っ直ぐに見た。

 

「この三人は見ていて危なっかしいの、だからミモザが一緒にいてあげなくちゃなの」

 

「「「はあ!??!」」」

 

 ケン、リョウ、ハリーが不服そうに声をあげたが、サカキは口の端を少し持ち上げミモザにしかわからないように微笑んだ。

 

「そうか、お前の抱えている問題がすべて解決したわけではないが、進歩はあったようだな」

 

「はいなの」

 

「なんか納得いかねぇ」

 

「右に同じく」

 

「まぁ、サカキ様がいいのなら仕方ないか…」

 

「さて、最終的な評価を発表しようか」

 

「!!!!」

 

 四人に緊張が走った。それを焦らすように少し間をあけてから次の言葉に繋げる。

 

「合格だ。お前たちは見事に俺の求める水準まで達してくれた」

 

「よっしゃー!」

 

「やったー!」

 

「ありがとうございます!」

 

「…」

 

 ケン、リョウ、ハリーが小躍りしながら喜ぶなかミモザは胸の前で両手をきゅっと握り嬉しさに体を震わせた。

 

「これで、俺たちは幹部になれるんですね!?」

 

「あぁその話だが」

 

 テンションMAXで聞くリョウとは対照的にサカキは石像のように無表情だった。

 

「あれは嘘だ」

 

「「「はいぃぃ!?」」」

 

「えっ?」

 

 ケン、リョウ、ハリーはすごい声で叫び、ミモザもポカンとなった。ケン、リョウ、ハリーがサカキに畳み掛けるように質問をぶつける。

 

「ど、どどどどどういうことですか!!?」

 

「じゃあ今までのバトルは一体…??」

 

「うおおおおおお??!」

 

「パルシェン」

 

 パルシェンが“こごえるかぜ”でミモザ以外の三人の足元を凍らせ、三人はその冷たさで頭が冷えた。

 

「落ち着いたか?」

 

「はい、申し訳ありませんでした」

 

(このやり取り最初にも見たの)

 

「幹部にするというのは目的を持たせ、お前たちにやる気を出させるためだ」

 

「そうだったんですね…」

 

 がっかりするケン、リョウ、ハリー。ミモザは気の毒そうに三人を見やる。しかし、サカキのしゃべり方に少し違和感を感じていた。その違和感は次のサカキの言葉で解き明かされた。

 

「幹部というのは嘘だが、お前たちにはある特別な命令をあたえる」

 

「え?」

 

「特別な…」

 

「命令!」

 

 まるで目の前に餌をたらされたガーディのように見えない尻尾をが見えるような気がするくらいワクワクするケン、リョウ、ハリー。ミモザもそわそわしている。そんな四人の反応を少し楽しんだあと、話を続けた。

 

「お前たち四人でチームを組んでもらう」

 

「チ、チー…ム?」

 

 今度は四人でポカンとする。気にせずサカキは続けた。

 

「このサカキ直属の特別なチームだ」

 

「サカキ様直属!?」

 

「ま、まじか!?」

 

「サカキ様、本当ですよね?」

 

「もちろん本当だ。『R団特殊任務実行部隊』という名称で活動してもらう」

 

「R団…」

 

「特殊任務実行部隊…!」

 

(略すと、R.S.E…かな?)

 

 それぞれが思い思いに感動をかみしめるなか、ミモザは複雑な表情でサカキを見上げていた。それに気づいたサカキがミモザの側までくる。

 

「どうした?不服か?」

 

「サカキ様、今回の特訓はこのチームを作り出すために個人のスキルをあげるのが目的だったの?」

 

「そうだ」

 

「…他にも目的があるんじゃ?」

 

「それを知ってどうする?」

 

「あるのね…どうもしないの、サカキ様の目的が達成されているのならもうそれでいいの」

 

 不機嫌そうにそっぽを向くミモザ。サカキは一瞬考えたのち、しゃがんでミモザの頭を撫でる。

 

「フフフ、あの三人には少し申し訳ないが一番の目的はミモザ、お前のコミュニティーを最善の形で広げることだ。あの三人は恐らく部下のなかでも一番と言っていいくらい長くR団のために働いてくれている。あの三人とならうまくやっていけるさ」

 

「…そう」

 

 ミモザはふくれながらもサカキの優しさに触れて嬉しそうに身を震わせた。サカキは立ち上がると表情を引き締めた。

 

「整列!!」

 

「は!!!!」

 

 サカキの号令ひとつで四人は横一列に並び直った。

 

「お前たちは俺の特訓を乗り越えた。だが、慢心するな、常に上を目指すことを忘れるな!」

 

「はい!!!」

 

「なの!」 

 

「お前たちは今からチームとなる。まだまだ荒い部分は多い、チームとしてなにが必要か?それを考えながら前に進め!」

 

「は!!!!」

 

 四人がサカキに向かって敬礼する。

 

「お前たちの今後に期待する。さて、三十分後にここを出発し本部へ戻る。それまでは各自自由に過ごすといい」

 

 そういってサカキはヘリのなかに入っていった。残された四人はサカキが見えなくなるまで見送った。サカキの背中が見えなくなると、ケン、リョウ、ハリーは興奮冷めやらぬといった様子で互いの肩を叩きあう。

 

「おい、やったなぁ!」

 

「幹部にはなれなかったがサカキ様の直属の部隊だぞ!」

 

「こりゃあ、大出世だな!」

 

 騒ぐケン、リョウ、ハリーを少し距離をとって見守るミモザ。しかし、唐突にミモザの目の前にリョウが手を差し出した。

 

「…?」

 

「なにボーッとしてるんだよ」

 

「俺たち四人でチームだろ?」

 

「その通りだ」

 

 ケン、リョウ、ハリーがミモザを見る。ミモザもケン、リョウ、ハリーをじっと見つめた。そして、

 

「ふん、サカキ様の命令だから仕方なく一緒にいてあげるの」

 

「…やっぱり小生意気なガキだぜ」

 

「素直じゃないな」

 

「よろしく頼むぜ!ミモザ!!」

 

 頭をわしゃわしゃされ嫌がりながらも悪い気はしなかった。

 三十分後、ヘリが出発した。本部に向かうヘリのなかでミモザはギルガルドとニャオニクスが入ったボールを眺めていた。ケン、リョウ、ハリーはチームの略称やら決めポーズやらで修学旅行中の学生みたいに騒いでいる。

 

(パパ、ママ、ミモザはちゃんと生きてるよ。だから、安心してなの…)

 

 二つのボールを抱き締めボールに向かってそう呟いた。

 窓の外ではキャモメが数匹並走している。下の海ではホエルオーかしおを吹き上げていた。過ぎていく景色を見ながらミモザはこれからの事を考え少しワクワクしていた。そんな自分に驚きながらも、そう思えるようになったことに安心した。

 これから先どんなことがあろうとも自分で進むと決めたこの道を全力で生きていく。今はもう一人じゃない。そう思えることがなによりも幸せだ。ミモザの表情は雲一つない今日の空のように晴れやかだった。




最後まで読んでいただきありがとうございました!
初めての小説だったのでちゃんと終われるか心配でしたがなんとか自分が考えていた終わりまでもってこれました。
これを読んで少しでも面白いと思っていただけたなら嬉しいです。

あと、いくつかお知らせです。
①なんどか読み直したのですが、誤字が多い!なので修正作業を行います。終了は活動報告にて行いたいと思います。

②エピローグの終わりかたから察せられたかたもいらっしゃるかも知れませんがこの四人のお話をもう少し書こうと思っています。4.5年くらい妄想していたのでいくつか頭のなかに構成もできています。キャラクターは変わらないのですが、もしかしたらタイトルが少し変わるかも知れないので、見つけたら読んでいただけたら嬉しいです!

長々と失礼しました。読んでいただいた方々には感謝で一杯です。ではまたお会いできる日まで!

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