R団のズッコケ3隊長と不思議少女    作:長星浪漫

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少し長くなってしまった上に、VSダグトリオはもう一話続きます。まとめが下手ですいません。
中にはいくつか無理のある設定が出てきますが、温かいめで納得してください。
では、お楽しみいただけたら嬉しいです。


1-3b「大地の支配者」

「これより対ダグトリオを開始するの。これからは三人を名前で呼ばせてもらうの」

 

 ミモザの声は先ほどまでの少女のそれではなくなっていた。ケン、リョウ、ハリーはとりあえずミモザに従うことにした。

 

「わかった、指示を頼む」

 

「まずは、三人バラバラになってほしいの、ただしそれぞれの姿が認識できる範囲でなの!」

 

「了解!」

 

 ミモザの指示通り三人はお互いの姿が認識できる範囲で距離をとった。

 

「次に各自手持ちを出すの、ケンはオクタン、リョウはゲンガー、ハリーはマタドガスを出してなの!」

 

「呼び捨てかよ…」

 

 リョウがぶつくさと文句をいったが、すぐに指示されたポケモンを出した。ミモザはそれを確認すると、何かに気づいたように南の方を向いた。

 

「来たの…」

 

 その言葉に呼応するように地面が揺れ始めた。

 

「うお、“マグニチュードか”!?」

 

「違うの、“あなをほる”の移動時の振動なの」

 

「こんなに揺れるのか!?」

 

「ダグトリオは地下百キロまで硬い岩盤を掘り進めるパワーがあるの、しかも技として使わなくてもそれだけで地震が発生した事例もあるの」

 

「そんなにすごいポケモンだったのか!」

 

 地上の三人があわてふためいていると三人のちょうど同じ距離の地面が盛り上がった。

 

「来るぞ!」

 

 ケンがそう言うと同時にダグトリオが現れた。ダグトリオは三匹がそれぞれ違う方向を見て四人を探している。

 

「今なの!」

 

 三人が同時に指示を出す。

 

「オクタン!“ハイドロポンプ”!」

 

「ゲンガー!“はかいこうせん”!」

 

「マタドガス!“ヘドロばくだん”!」

 

「ちょ…やり過ぎなの!」

 

 ミモザの注意も虚しく、三人が放ったのは威力が比較的強い技。威力は強いがその分コントロールが難しく、スキもうまれやすい。ダグトリオは当然のように地面にもぐり攻撃をかわす、ターゲットを失った攻撃はそのまま新たな標的に向かってとんでいく。

 

「どわぁ!?」

 

「ひいぃ!」

 

「ぐわっち!」

 

 ケン、リョウ、ハリーの三人はなんとかそれをかわした。ミモザもそれを見て安心した。そして真下を見るとダグトリオがミモザの方を向いて身構えているところだった。ミモザはその先なにが起こるわかり慌てて対処にうつる。

 

「フィフィ!」

 

 ミモザがクレッフィを出すのと同時にダグトリオが“トライアタック”を放った。

 

「“ようせいのかぜ”!」

 

 クレッフィが“トライアタック”に向かって不思議な風を放つ。その風に乱され“トライアタック”は攻撃の軌道が少しずれたが、ミモザの肩にかすった。

 

「きゃう!」

 

「ミモザ!」

 

「くっ、オクタン!“みずでっぽう”!」

 

 ケンがダグトリオの注意をひくために“みずでっぽう”を放つ。ダグトリオは地面にもぐってそれをかわす。その間にハリーかミモザの状況を確かめる。

 

「ミモザ、大丈夫か!?」

 

「だい…じょうぶ…なの」

 

 声が少し震えていたが、ヤバイ状態には陥っていないようだった。

 

「本当か?」

 

「いいから…集中、するの!」

 

「ぐっ、わかった」

 

 ハリーはまだ気になったが、ダグトリオが顔を出したのでそっちを優先することにした。

 ダグトリオは地上の三人からちょうど同じ位置、三人にダグトリオの全身が見えない位置に現れた。しかし、ケンたちの動きを警戒しているのかにらみあったまま動かない。

 

(動くべきか?)

 

 ケン、リョウ、ハリーが次の行動に悩んでいると、急にミモザの声が飛び込んできた。

 

「なにやってるの!ケン、ダグトリオがそっちに向かったの!」

 

「は?」

 

 ケンが慌ててダグトリオを確認する。そこには変わらずダグトリオのうちの二匹が見えている。

 

「動いてないじゃないか…」

 

 ケンが小首を傾げた瞬間、オクタンの下の地面が盛り上がりそこからダグトリオのうちの一匹が現れた。

 

「なにぃ!」

 

 下からの攻撃を受けたオクタンは近くの木に叩きつけられ、体内の水分やスミが木の幹にビッシャリついた。

 

「オクタン!」

 

 ケンがオクタンの状態をチェックする。ギリギリひんしにはなっていないが、まともに戦える状態ではなかった。ダグトリオは残りの二匹と勝利を喜びあっている。それを見ていたハリーは目の前の二匹が自分に背を向けていることに気づいた。

 

(チャンス!)

 

 ハリーはマタドガスに指示を出す。

 

「マタドガス!“たいあたり”!」

 

「!うかつに攻撃したらだめなの!」

 

「えっ?」

 

 なるべく威力が小さく、小回りがきく技を選択し実行した。先ほどの失敗もあるからだ。さらに相手の状況も考えた。しかし、ミモザの声は少し焦っていた。そしてその焦りは現実のものとなった。

 ハリーに対して背を向けていた二匹がまるでマタドガスの行動が見えていたかのようなタイミングで振り返りマタドガスを“きりさいた”。マタドガスは避けられず急所に当たった。さらに追撃の“ストーンエッジ”を受け、完全にひんしになった。

 

「マタドガース!」

 

 ハリーはマタドガスを抱え込み叫んだ。ダグトリオはその間に合流し、もとの状態に戻った。

 

「な、なんでマタドガスの攻撃がわかったんだ?」

 

 ケンが驚きの表情で誰ともなく疑問を口にする。その疑問にミモザが答えた。

 

「オクタンの所にいた一匹がハリーの方を見ていたの」

 

「えぇ!?そうだとしても合図も何もしてなかったよな?」

 

「ダグトリオは進化の時に一匹のディグダが三匹に別れた三つ子のポケモンなの。だから合図をわざわざ使わなくてもさっきみたいな事ができるの」

 

「そうだったのか、わぁ!」

 

 回避したハリーの袖が少し破れる。ダグトリオが「無駄口をたたいてんじゃない!」とでも言いたそうにハリーを睨み付けた。

 

「あわわ、次のポケモンを…」

 

 ハリーが腰のボールを探ろうといた時、

 

「ゲンガー!“シャドーパンチ”!」

 

 リョウの指示を受けたゲンガーがダグトリオに攻撃を行う。しかし、見えていたダグトリオはそれをかわし、カウンターの“どろばくだん”を発射した。

 

「にししししし!」

 

 しかし、ゲンガーはバカにするような笑い声と共にその攻撃をなんなく避けた。標的を失った“どろばくだん”はゲンガーの後ろの木にあたる。その様子を見てリョウは高笑いをあげた。

 

「はーっはっはっはぁ!おれのゲンガーの特性は『ふゆう』!じめんタイプの技など当たらんわぁ!」

 

 ダグトリオは少したじろいだが、気を取り直し攻撃を再開する。ひたすら“どろばくだん”をゲンガーに放つが、全て避けられる。リョウは余裕たっぷりに次の指示をだす。

 

「“したでなめる”」

 

「ぎゃははははは!」

 

 大笑いしながらダグトリオを“したでなめる”。なめられたダグトリオはマヒこそならなかったが、一瞬動きが止まる。そこをすかさずゲンガーが追撃する。

 

「ゲンガー!“シャドーボール”!」

 

 ダグトリオは地面に逃げようとしたが、もぐれなかった。その事態に混乱していると、リョウが勝ち誇った表情をダグトリオに向け、説明する。

 

「“くろいまなざし”を発動しておいた。逃げられまい?」

 

 ゲンガーのシャドーボールが直撃する。だがサカキの手持ちというだけあってもちこたえた。そして、“いあいぎり”を放つ。しかし、ゴーストタイプのゲンガーに、ノーマルタイプの技は当たらず、後ろの木にあたる。

 

「もう諦めろ!じめんタイプとノーマルタイプの技は当たらない。つまり、お前の技は全て当たらんということだ!」

 

 リョウがまたも勝ち誇る。端から見れば確かにリョウの圧倒的有利な状況だが、ミモザほはさらに先を見ていた。

 

「リョウ!よけるの!」

 

「はぉ?なんで…」

 

 そこまで言ってリョウは自分のピンチを認識した。しかしすでに遅く、ダグトリオは“じならし”した。その瞬間、リョウの近く、ゲンガーの背後で音がした。そちらを見ると、ダグトリオの攻撃が当たった木がゆっくり傾きはじめ、そのスピードが少しずつ速くなっていく。

 

「まずい!」

 

 リョウはすぐにわきに避けたが、ゲンガーはダグトリオに注意を向けていたので反応が遅れた。

 

「ゲンガー!」

 

 リョウがゲンガーを呼ぶが時すでに遅し、ダグトリオが倒した巨木がゲンガーにヒットした。

 

「ゲンガー!!」

 

 リョウが駆け寄るとゲンガーはゆっくり木の下から出てきた。しかし、出てきたところで力尽き、ひんしになった。

 

「ゲンガーが…一撃で…」

 

「“ウッドハンマー”」

 

「なに?」

 

 ミモザの言葉にリョウは疑問を抱いた。

 

「“ウッドハンマー”だと?その技はくさタイプの技だろ?じめんタイプのダグトリオは使えないはずじゃ?」

 

「その通りなの、だから周りの樹木を利用したの」

 

 つまり、ダグトリオはゲンガーに対して自分が有効な手を持っていないことにはじめから気づいていた。同時にこの作戦を思い付いていた。確実に1対1に持ち込むためにまずは自分の技が当たる二匹を倒し、そのあとにゲンガーの攻撃をわざと受けつつ、オクタンを打ちつけた木の前に誘導、やけくそでゲンガーを攻撃するように見せつつ後ろの木に“どろばくだん”を破裂しないように打ち続けた。そしてオクタンの蓄えていた水とスミが“どろばくだん”を固めていき、十分になったところを見計らって“いあいぎり”で切れ込みをいれ、とどめに“じならし”で木を倒す。

 

「これがダグトリオが考えたことなの」

 

「まじか…いや、だがもしそれが“ウッドハンマー”だとしてゲンガーはどくタイプなんだぞ?一撃で倒れるとは思えない」

 

「だから、はじめにたくさんの“どろばくだん”を使ったの。“どろばくだん”を木に付着させることでじめんタイプを追加したんだと思うの」

 

「そんなことが…」

 

 リョウは愕然としてダグトリオを見た。ダグトリオは辺りを見回しまだ警戒を続けている。四人の誰かが次の一手を出すことを警戒しているようだ。リョウの目の前が少し暗くなった。

 

(おれたちは勝てるのか?ここまで策を労してくる相手に…)

 

 リョウの思考が停止しつつあるなか、耳につけたインカムから少女の自信に満ちた声が聞こえてきた。

 

「準備は整ったの、今から反撃開始なの」

 

 驚き見上げた目線の先でフワンテにつかまりふわふわ飛んでいる少女は不敵な笑みを浮かべていた。

 




読んでいただきありがとうございます!
次でVSダグトリオは終わります。どう決着するか楽しみにしていてください。

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