今回も長くなりました。以前文字数について書きましたが、忘れてください(^-^;
今回はダグトリオとの戦いに決着がつきます。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
「反撃?なにを言ってんだ?」
リョウは「わけがわからない」と言った様子でインカムに叫ぶが、ミモザは相手にしない。
「ケン、タイミングを間違えちゃだめなのよ」
「わかってる」
「ーーー?」
ケンはなんのことかわかっているようだ。…と誰かに肩を叩かれた。振り向くとハリーがいた。
「俺が説明する」
一方ミモザは行動を開始した。
「フワンテ、“かぜおこし”!」
フワンテが上空からダグトリオに向かい“かぜおこし”を放つ、威力は弱いがコントロールは簡単なので、うまくダグトリオに当てる。ダグトリオは空にいるミモザを警戒していなかったので、“かぜおこし”をもろにくらった。しかし、すぐに三匹全てがミモザの方を向いた。そして“トライアタック”を出す準備に入った。
「今なの!」
ミモザが叫ぶと同時にケンが動き出す。
「オクタン!“ハイドロポンプ”!」
ダグトリオは慌てて“トライアタック”を中止し、周りを警戒する。戦闘不能で転がっているマタドガス、木の下敷きになっているゲンガー、そしてオクタン…がいなかった。すぐさま三匹がそれぞれ違う方向を見てオクタンを探す。360度探し回ったがどこにもいない。騙された?と思ったその時、オクタンが
「!!」
まさか下から出てくるとは思わなかったダグトリオは慌てて逃げようとした。しかし、逃げられない。ゲンガーがひんしになったことで“くろいまなざし”の束縛は解除されているはずだった。
「“フェアリーロック”なの」
ミモザが種明かしをすると、リョウの後ろからミモザのクレッフィが顔を出した。ぶら下げた鍵束が淡いピンク色に輝いていた。
ダグトリオがもたついている間にオクタンは完全にダグトリオを“ロックオン”していた。そして、オクタンの口から“ハイドロポンプ”が放たれダグトリオを直撃した。とてつもない水圧がダグトリオを襲い体力を削っていく。“ハイドロポンプ”が終了し、オクタンが疲労て倒れる。ダグトリオはまだ少し体力が残っているらしく、反撃にでようとした。しかし、すでに勝負は決していた。ダグトリオが技を放つ前に動く影が二つ、ひんしになったはずのマタドガスとゲンガーだった。その光景を見てミモザは小悪魔のように微笑んだ。
「“いやしのねがい”は届いたの。これで終わりなの!」
「マタドガス“すてみタックル”!」
「ゲンガー“シャドーパンチ”!」
リョウとハリーが同時に指示を出す。マタドガスとゲンガーの技が左右から挟むようにダグトリオにあたり、今度こそ決着はついた。ダグトリオは目を回しひんしになった。ケン、リョウ、ハリーの三人はおそるおそるダグトリオに近づき行動不能であることを確認すると、両腕を上にあげ力一杯喜んだ。
「やったー!ダグトリオを倒したぞ!」
「ひゃっほぅ!」
「手強い相手だったぜ!」
三人が小躍りしながら喜ぶ様子を見てミモザもほっと胸を撫で下ろした。
「ミモザ!お前のおかげだ!」
「ふぇっ?」
急に名前を呼ばれ変な声が出るミモザ。
「べ、別にこれで貸し借りはなしなの!」
そういってフワンテにプカプカ浮かびながら顔をそらした。しかし、初めて顔を合わせた時に比べミモザの実力を完全に認知しているのでもう怒ったりはしない。
「本当にすごいなお前!」
「言うだけのことはあるぜ!」
「俺達もまだまだだな」
賛辞の言葉を浴びせられまくりミモザは照れで密かに悶えた。
「しかし、あの作戦はいつ思い付いたんだ?」
リョウがそう言ったのを聞いたミモザは照れを隠すついでに先程の作戦の詳細を説明した。
「この作戦を思い付いたのはケンのオクタンが穴に潜ったのを見たからなの」
「なんでオクタンは穴に入ったんだ?」
「オクタンは狩りをする時や危険を回避する際に穴に潜る習性があるの。今回は多分ひんし寸前になったことで本能で穴に潜ったんだと思うの。そこですぐにケンに指示を出して、リョウのゲンガーが戦っているうちにすきをみて“ロックオン”しておいたの」
「おれが戦っている間にそんなことが…」
「ゲンガーが倒れた段階で“かぜおこし”を放ってダグトリオの注意を私に引き付け、三匹が私を見た瞬間にケンに呼び掛け、ダグトリオが混乱している隙に私のフィフィをハリーのもとに飛ばしたの。そして“ハイドロポンプ”をうってもらったの。でも、万が一とどめをさせなかった場合のことも考えたの」
「おれのマネネの“いやしのねがい”か」
リョウがひんしになっているマネネをボールからだし抱き抱えた。
「そうなの、“いやしのねがい”はひんしになる代わりに味方全員の体力を完全に回復させるの。そして回復してマタドガスとゲンガーでフィニッシュ!なの」
「そこまでを一気に考えて実行できるとは本当にすごいな」
「だけど、マネネがひんしになっちまったのは…」
「マネネのアフターケアもばっちりなの、フィフィ」
ミモザに指示されクレッフィがリョウにあるアイテムを渡す。
「《げんきのかたまり》!」
「はやく使ってあげるの」
「お、おう恩に着る!」
リョウは急いで《げんきのかたまり》をマネネに使う。マネネはすぐに目を覚ましリョウに抱きついた。
「おーー、マネネよかったなぁ!」
リョウとマネネの様子を見てケン、ハリー、ミモザはほほえましい気持ちになった。そんなミモザを見上げリョウが呼ぶ。
「はやく降りてこいよ!今度こそちゃんと仲間として迎え入れてやるよ」
リョウを中心にケンとハリーも笑顔でミモザを迎え入れてくれる。ミモザは密かな喜びを胸に隠して降りようとしたその時、近くの木が揺れる。フワンテがそれに早く気付きその木から距離をとる。その瞬間その木からヤミカラスの群れが飛び出した。
「きゃあ!」
「ミモザ!」
「だ、大丈夫なの。フワンテが気づいてくれて避けてくれての」
特訓が始まってすでに五時間が経っていた。ヤミカラスなどの夜行性のポケモンが活動を始める時間帯だった。ヤミカラスの群れは敵意があるわけではなく、ミモザのことは気にせず空に飛んでいった。最後の一羽が飛んでいったのを確認するとミモザはホッと胸を撫で下ろした。…が、また木が揺れだしたので身構えた。揺れが大きくなり一羽のポケモンが出てきた。
「カァー!」
出てきたのは先程のヤミカラスたちのボスのドンカラスだった。ドンカラスはミモザを視認はしたが、害はないと判断したようだった。下の三人もそれがわかったようで安心した。
「ほっ、よかった」
「危なかったな」
「早く降りてこい!」
下からリョウが呼んだがミモザからの返答がない。
「ミモザ?」
ミモザを見ると明らかに様子がおかしかった。顔が青ざめ見開かれた目がドンカラスを凝視している。
「あ…あぁ…」
体が震えだし、汗が吹き出す。
「黒い…大きな…と、り…」
ミモザの頭にあるビジョンが浮かぶ。
『ミモザ!早く逃げろ!』
『じい!ミモザを頼んだわよ!』
「あああぁ…」
『お嬢様には指一本触らせませんぞ!』
「あ、あぁ!」
ミモザの記憶の中で誰かが次々に消えていく。
『ミ…モザ…』
『に、げて…』
「あああああああああぁぁぁ!!!!」
ミモザが叫びだした。その声に驚きドンカラスは慌てて群れの方に飛んでいった。それでもミモザは叫ぶのをやめない。その小さい体のどこから出しているのかと思うほどの声をだし続ける。
「いやぁぁぁ!だめぇぇぇぇ!」
パニックを起こし、暴れだす。フワンテが落とさないように必死にミモザをつかむ。
「ミモザ!」
「おい、ヤバイんじゃないのか?」
「落ち着け!ミモザ!」
ケン、リョウ、ハリーがなんとか正気に戻そうと何度も呼び掛けるが声が届かない。
「く、仕方ないリョウ!スリーパーをだせ!」
「え?どうするんだケン?」
リョウはスリーパーを出した。ケンはルージュラを出した。
「“さいみんじゅつ”で眠らせるんだ!」
「そうか!わかった!」
「スリーパー!」
「ルージュラ!」
「「“さいみんじゅつ”!!」」
ルージュラとスリーパーが同時に“さいみんじゅつ”を放った。それは的確にミモザをとらえた。
「あ…ぅ…」
すぐに効果が出たようで、ミモザは一気に眠りに落ちた。ケンとリョウは安心した…のも束の間、ミモザが一気に眠ったため、フワンテに一気に体重がかかる。フワンテは子供をあの世に連れていくという話もあるか、その子供に振り回されてしまうくらいかよわい。当然ミモザの体重に耐えられずその手を離してしまう。
「ミモザー!」
「わわわわぁ!」
ケンとリョウかわあわてふためくなかハリーはこの状況を予測していた。
「イトマル、“くものす”!」
イトマルが何重にも“くものす”を張り巡らせ即席のハンモックを作った。そこにミモザが落ちたが、幸い怪我はなかった。ケンかミモザを抱き止める。“さいみんじゅつ”がよく効いているようでしっかり寝ている。
「とりあえず、安心だな」
「さっさとこの森を出ようぜ」
ぶぶぶ…
「そうだな、夜の森は危ないからな」
ぶぶぶぶぶ…
「ミモザはおれが持つよ」
「任せたリョウ」
ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ
「だぁぁ!うるさいなぁ!一体なんの…」
先程から聞こえる音に三人が振り向くとそこには大量のスピアーが見るからに怒りながらケンたちを睨んでいた。
三人の顔が一気に青ざめる。逆にスピアーは赤い眼をさらに赤くしておしりの針をこちらに向けて威嚇している。
「や、やばい」
「に、逃げろぉ!!」
ケンたち四人は急いでケンタロスとキリンリキを出して走り出した。それをスピアーの群れが追いかけていく。
ケン、リョウ、ハリー、ミモザの四人とスピアーがいなくなった広場にスピアーか一匹残っていた。そのスピアーがダグトリオに近づくと足に付けた小型カメラから声が聞こえてきた。
『ダグトリオは倒したか』
その声の主、サカキが満足そうにそう言い、スピアーにダグトリオを持ち帰るように指示した。スピアーは器用にダグトリオをボールにしまうとサカキの元に戻っていった。
読んでいただきありがとうございます。
自分がおもってる以上に長くなりそうですが、末長くお付きあいいただければうれしいです。