今回からしばし渓流編です。モグモグパクパク(笑)
強化やモンスターよりは人間とハンターが中心となります。
10/31:文章修正(段落付け・文章一部改定など)
生え渡る新緑の木々。穏やかに流れる川。活き活きとしたモンスター達。
ここは渓流。季節が変わる毎にその全貌を変える、自然豊かな土地。
孤島とは違った自然の育み。その理由は山から湧き出て川となっている水にあった。
澄み渡る透明度を誇るその水は、草木を育て、川魚を繁栄させ、モンスター達の喉を潤す。
草木が育てば、モンスターの餌になるばかりでなく、昆虫の住処になり、キノコ類の苗床となる。
清らかな水がこの自然を育てたといっても過言ではないだろう。
豊富な自然の恵みがあるからこそ、人々はここに集落を作った。
ここには、人間の主な住処とされるユクモ村より離れている、林業が盛んな小さい村がある。
頑丈でしなやかな木は居住地を作るには持って来いで、あちこちに木造建築が立ち並んでいた。
また、この強度の高い木のおかげで林業が盛んで、この地の特産物として世間から注目を浴びているほどだ。
だがしかし、全て万事OK、と行かないのが自然である。
豊かな自然の恵みは、人々を繁栄させるだけでなく、大型の肉食モンスターを育てる要因にも繋がる。
現にこの渓流には様々な肉食モンスターが蔓延っており、危険性も高まっている。
雑食性で食いしん坊な牙獣種アオアシラ、同じく牙獣種だが突進で大抵の物を破壊するブルファンゴ、ユクモ地域に広く生息しているドスジャギィ。
リオレウスやディアブロスに比べれば弱いとはえ、ハンターでない村人から見てみれば脅威でしかない。
ではどうするのかといえば、やはりハンターの力を借りるのが妥当だろう。
アオアシラやドスファンゴなど、広く多く生息しているが、決して強敵とは言えないモンスター。
それらを村人が発見した場合、討伐または捕獲してもらう為、ユクモ村でクエストを発注する。
ユクモ大陸中に若きハンター達が散らばっているとはいえ、それらは主にユクモ村を中心に活動している。
速達の郵便アイルーに出せばすぐにユクモ村に発注し、血気盛んなハンター達が数日内に駆けつけてくれる。
「だりゃぁぁ!」
―そして今日もまた、1人のハンターがアオアシラを討伐してくれた所だ。
鍾乳洞に続く滝の麓で、一匹のアオアシラと1人のハンターが浅い河の上で争っている。しかしその勝負は、つい先ほどの怒号と共に決したようだ。
ジャギィシリーズを着込んだハンターの大剣がアオアシラの腹部に向けて振り下ろされる。
重量感溢れる刃の一撃を受けたアオアシラの腹部が切り裂かれ、とうとう力尽きて倒れこんだ。
倒れてくるアオアシラに潰されないよう、ハンターは斜め前に転がり込む。
起き上がった直後に振り向いて大剣を構えるが、アオアシラが動かないのを確認すると、緊張が解けたのか大きく息を吐く。
長きに渡る戦いだったのか、倒れたアオアシラの身体は傷だらけだった。
数多くの傷の中には、刀傷だけではなく、銃弾を撃たれた跡も幾つか残っている。それがどういう意味を表しているかというと……。
「よー!とうとうアオアシラを仕留めたか!」
「お疲れ様だニャー、若旦那さん!」
ようするに、剣士だけでなく、ガンナーもアオアシラ討伐に参戦していたのだ。
ガチャガチャと金属音を鳴らしながら近づいてくる、一人のハンターと一匹のアイルー。
両者とも鉱石で出来た装備で統一されており、ハンターの方はインゴット、アイルーはアロイで身を固めていた。
ヘヴィボウガン『青熊筒』を片手で軽々と振り回すほどの豪腕を持つハンターの名は、アームス。
全身を鎧で隠しているが、笑顔とダンディな髭が自慢の(自称)若き怪力親父なんです。
「ありがとうございます、アームスさん」
疲労感と解かれた緊張感によって汗だくになったジャギィヘルムを脱ぎ捨て、アームスにお辞儀する。
汗で濡れたボサボサの紅い髪に、ある程度整った顔、頬に爪で裂かれた傷跡を宿した若き青年。
名はカリガ。彼もまた、大陸を渡ってやってきた、成り立てホヤホヤの新人ハンターである。
顔はどこかあどけなく、オマケに身体が細く近眼でメガネ持ちと、どちらかといえば体育系というより文化系のイメージが漂う。
どうして剣士なんかやっているんだという容姿だが、なんと彼は細身でありながら身長2mを越えているのだ。
おまけに結構な力持ち。これは大剣を振り回していなければ逆におかしいといえよう。
「はっはっは!次からは1人で倒せるように頑張れよ少年!」
「あだだだだ!」
自分よりも背丈の低い(それでも180cmと大柄である)親父から背を叩かれている、身長2mの青年。
傍から見ればシュールな光景である。年上なのはアームスの方なのだから仕方ないが。
「ニャ?」
そんな二人の様子を眺めていた(高みの見物ともいう)アイルーが何かを察したのか、あたりを見渡しだす。
「お?どうしたんだコテツ?」
「ニャニャ、なんかデカいのが近づいてきているみたいニャ」
己のオトモアイルー・コテツに声を掛けるアームス。ちなみに今はカリガにヘッドロックを仕掛けている最中である。
酸欠して苦しんでいるカリガのことなど知らぬと言わんばかりに、周囲を見渡しながら答えるコテツ。彼は千里眼の術を会得している為、乱入してきたモンスターに敏感なのだ。
―乱入。討伐した直後に別のモンスターが現れたという警告。
モンスターは気配に敏感だ。大型モンスターが討伐されて亡くなったとなれば、それを察知し、己の縄張りだと主張して現れるモンスターもいる。
事前に狩猟環境が不安定だと確認していたが、まさか本当に来るとは。
アームスは無言でカリガを手放し、カリガは深呼吸をして落ち着いた後、己の武器―族長の大剣―を構える。
「いいか少年、まずは様子見だ」
「はい」
解っています、とヘヴィボウガンを構えるアームスを横にして呟くカリガ。
コテツもしきりに周囲を見渡すが、気配を完全に察知できたようで、そこへ案内しようと先導する。
ここでさっさと逃げれば安全のだろうが、この時期となれば話は違う。
生態が詳しく知られていないモンスターが多い今の時期、ハンターギルドは少しでも新たな情報を欲している。
過去に、新種のモンスターを発見し報告しただけで報酬を得ることができたハンターが居たほどだ。
ガセや出任せでない限り、新種のモンスターの存在や詳しい生態は解り次第ギルドに報告する。
それがこの時期のハンターの小遣い稼ぎ兼、情報収集でもあった。
そして二人と一匹が発見したモンスターはといえば……。
「これって蟹だよな?」
「ええ……蟹ですよね……」
「でっかい蟹だニャー」
砂原付近の村人の間では有名となっている、一部では守り神として奉るべきではと噂されている甲殻種―アラムシャザザミ。
そんなモンスターがどうして、こんな森の中でキノコを黙々と食らっているのだろうか?
アラムシャザザミの噂やある程度の生態を聞いていたとはいえ、これは面食らってしまった。
これでは乱入というより、通りすがりの食べ歩きに近い。現にアラムシャザザミはキノコを食べまくっているし。
カリガはこのモンスターの後姿を見つめながら、ふとあることを思い出した。それは、自分と同じく新人ハンターである女性、アザナの事だった。
アラムシャザザミの生態を初めて報告した第一人者として知られ、ここ最近になって急激な勢いで成長しているハンターとしても名高い。
たまたま砂原の情報収集として彼女を尋ねにいった時の、あの凛とした表情には惹かれるものがあった。
何かを目指してまっすぐに突き進んでいるかのような強い眼差し。そこに惚れたといっても過言ではない。
自分よりも二つ年下だが、そんな彼女と共に狩りをしていきたいというのが、彼の最初の目的でもある。
そんなことを考えていたから、あることを見逃してしまった。
―ドンッ!ガンッ!ドンッ!ガンッ!ドンッ!ガンッ!
なんと、アームスがヘヴィボウガンに火を点け、発砲したではないか!しかも3発!
空気を僅かに揺るがず砲撃音と、それを弾く金属音が交互に響き渡る。
その音を聞いてやっと我に還った頃には、アームスのあまりの大胆な行動に驚かざるを得なかった。
「ななななな、何しているんですかアームスさん!?」
「そうだニャー旦那さん!」
彼のオトモであるコテツですらこの慌てっぷりだ。どれだけ大胆かはお分かりだろう。
アラムシャザザミは性格こそ大人しいものの、一度怒り出せばその名に恥じぬ攻撃性を見せ付けるという。
それは硝煙を放つ青熊筒を握っているアームスにも解っているはずだ。なのになぜ。
「うげ、弾ぁ弾きやがった!?安物とはいえ貫通弾だぞ!?」
「話聞いてくださいっ!」
むしろ倒すつもりだったのか。アームスの驚いた反応を見てそんなことを考えてしまったが、それどころではない。
怒って暴れたりしたらたまらないと己の武器を投げ捨て、コテツと一緒にアームスから青熊筒を奪い出す。
「ちょ、そんなに慌てなくてもいいじゃねぇか。ほれ、この蟹、余裕こいてガン無視だぜ?」
武器を奪われた理由は解るらしく、少し驚いた程度に留まったアームス。
それでも落ち着いたようにアラムシャザザミを指差し、まったく襲ってこないことを伝える。
むしろアラムシャザザミの甲殻には傷一つなく、黙々と、そして美味しそうにキノコを食していた。
「だからって何故撃つんですか!?」
「いやぁ、俺って実はかなりのザザミソ好きなんだよ」
「命知らずにも程があるニャー」
コテツの言う通りである。大人しいモンスターを怒らせる馬鹿がいるか。
そんな二人の反応など知るもんかと言わんばかりに、ガッハッハと笑い出すアームス。笑顔が似合うナイスガイの二つ名は伊達ではない、ということか。
その後、一匹のメラルーが現れ、慣れない言語でハンター達に事情を説明。
コテツの通訳も加えると、メラルー達はアラムシャザザミを使って砂原からやってきたと言う。現在メラルー達は渓流の村で商業と採取をしており、しばらく滞在するんだとか。
ではアラムシャザザミはどうするのかといえば、メラルーが交代して見張らせるから、しばらく放置するらしい。
村人にもハンターにも忠告しておけば襲う事も無いだろうから安心しろ、とはあの青メラルーの談。
本来なら信じられない話だが、これまでの噂や生態系を聞く限りでは、あながち嘘だと言い切れない。
―ハンター達が心配しようにも、当蟹は平然と餌を食べて大人しくしているのだから。
余談だが、カリガ達はアラムシャザザミが渓流に現れた事を、ユクモ村のハンターギルドに報告。
ギルドは警戒と村の護衛の為にユクモ村からハンターを派遣し、アラムシャザザミの様子を見る事にしたようだ。
この依頼にあの女ハンター・アザナが食らい付かない訳がなく、まっさきに依頼を受注。
渓流で発見したカリガも受注する流れとなり、数日間のみだが、アザナとチームを組む事になった。
何気に夢の叶ったカリガだが、アザナはそんな彼の事など気にも留めず、密かに宿るファイティングスピリットを燃やすのだった。
そんなハンター達のことなど知らぬアラムシャザザミはといえば。
頭突きを仕掛け頭を強く打って気絶しているドスファンゴをほっといて、暢気に魚を食らっていた。
ちなみに彼の背後では、ドスファンゴを討伐し終えた後も、ザザミソ狙いと負けん気で攻撃を仕掛けるアームスが居た。
尤も、今の彼の武器で撃てる弾では全て弾かれてしまい、存在すら気づいてもらえなかったようだが。
―完―
渓谷で警告されたとはこれいかに。……サムッ。
そんなわけで中編。渓流でしばし休憩です。作中では解らないですが、長い旅路でした。
忘れがちかもしれませんが、この作品は原作であるMHP3rdの過去編となっています。
なので渓流付近に村は健在しています。アマツがやってくる前の頃ですね。
あんなモンスターが蔓延る所によく村を建てたなーと思ったので、独自の解釈を加えてみました。
それでも、あんな自然豊かな土地に住めたら最高だろうなぁ、と少し憧れていたりします。
そして今回は新キャラ登場。名はカリガ。アザナとは正反対で、少し頼りない感じです。それでも力持ち。
高身長なのは私が密かに憧れていてキャラに繁栄しがちなんです。……グスンッ(涙)