ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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 ついに火山へ到着!しかしまずは慣れから始めましょう。
 皆さんも、温泉にいきなり入らずに、まずは身体を洗ったりして慣らしましょう(謎)

 11/1:文章修正(段落付け・文章一部改定など
 7/24:誤字修正。報告ありがとうございました。


第11話「到着!火山へ行き隊!」

―これをお読みの皆様方へ。

 

―どうかお手元に厚手のハンカチと、感動の再会に相応しいBGMを用意してお読みください。

 

 

 

 

 最初は夢かと思った。

 

 それは、愛すべき夫と共に育ててきた、大事な愛息子の姿。

 彼が独り立ちする頃の、仲間と共に火山の集落から旅立って行った息子の背中を、今でも忘れてはいない。

 もちろん背中だけではない。父譲りの青み掛かった黒毛も、自分譲りの柔らかな眼だってちゃんと覚えていた。

 

―そんな息子の姿が、目の前にあった。

 

 思わず手に持っていた魚を落としてしまい、後ろに居た夫もツルハシを落としてしまったようだ。

 しかし彼の気持ちはわからないでもない。砂原から火山へは遠いと再会を半ば諦め、手紙で互いの生活を知り合うしかなかったというのに。

 そんな遠くに居た息子が、すぐそこまで来ている。しかも自分達の名前を呼んで。

 蜃気楼と幻聴が同時に襲ってきたとも思ってしまったが、それよりも先に身体が動いていた。

 愛息子に抱き付くべく、夫と並んで駆けつけた。夫なんか涙を零していた。

 

―父ちゃ~ん!母ちゃ~ん!

 

―息子よ~!

 

 

 

 もふっと柔らかな音を立てて、メラルー親子はついに再会し、抱き合うことが出来た。

 長きに渡る家族への想いが、ついに青メラルーの小さな夢を叶えるに至ったのだ。

 今はただ、柔らかく毛並みの良い両親の抱擁を心行くまで身体で味わう。

 後ろで仲間達が自分達の再会に感動してくれているようだが、気にしないようにしよう。

 

 こうしてメラルー達一同は、長き旅を追え、火山の麓にまでたどり着くことが出来たのである。

 近辺の村や国への行商も兼ねているが、大抵のメラルー達は火山の集落での里帰りが目当てだ。

 商いをする前に、ここでゆっくりと家族で暮らし、長旅の疲れを癒す為に。

 

 

 

 さて、そんな再会の最大の貢献者であるはずのアラムシャザザミはといえば。

 とある森の中で、フロギィ達の威嚇を無視して木の実類を吟味していた所だ。

 彼も長旅だったので疲れたのだろう。見事なまでの無視っぷりと食べっぷりだ。

 

 それに加えて、渓流にてジンオウガへの恐怖が忘れられないからこそ、夢中で食べているのかもしれない。

 砂原にてディアブロスという脅威が現れたとはいえ、それ以上の脅威を知ったのは久々だった。

 いつも暢気でいるが、ヤオザミ期には脅威となるモンスターばかり居たので、こう見えても危険予知能力は高い。

 ジンオウガの姿を目撃しただけでそのプレッシャーや脅威を察知することができ、生き延びることができたのだ。

 今度またあのような脅威に出会っても逃げられるよう、食べて体力をつけようとしていた。

 

 さてさて、森の中を散策して食べ歩いていると、ドスジャギィに似たモンスター……毒狗竜ドスフロギィがお出迎え。

 いきなり毒を吐いてきたが、ドクキノコを食してきたアラムシャザザミにはちっとも効果が無い。

 だが視界を防がれたことにより危機感を得たアラムシャザザミは、我武者羅に鋏を振るって攻撃を仕掛ける。

 

―グシャッ!

 

 呆気なく分厚い鋼鉄の鋏はドスフロギィに直撃。横から重量感のある一撃を得たドスフロギィは大樹に激突。そのまま絶命してしまう。

 毒霧が晴れた頃になってドスフロギィが倒れているのを目撃したアラムシャザザミだが、そのまま無視。

 向こうに見える虫の群れに向けて足を進めるのだった。哀れ毒狗竜。

 

 

 

 とりあえず腹が一杯になった。

 水平線が見える海辺で食休みをするかのように、ズワロポスに並んで海辺に身体を浸かる。

 

 ここら辺りは残念ながら好物のキノコ類が無く、代わりに珍しい昆虫や木の実が沢山あった。

 忍耐の実やドスヘラクレスなど、砂原や渓流、そしてかつての故郷である孤島でも中々見つからない珍味ばかりだ。

 中でもマレコガネが気に入ったらしく、見つけた物は即座に鋏が食らい付いたほど。

 

 しかし、ある意味でここからが本題だった―――いよいよ火山へと突入する時が来たのである。

 

 先ほど転げ落ちていた石ころを食していた際、珍しい鉱石を発見することができた。

 それがドラグライト鉱石。火山でしか見つからない、マカライト鉱石を越える硬度を持つ鉱石だ。

 歯ごたえがマカライト鉱石や鉄鉱石とは比べ物にならず、自身の殻をより強化させるには十分な硬度だった。

 しかも、ごくたまに見つかるカブレライト鉱石とは違って多くの量を食すことができる。

 

 その為には、この先にある、高温の熱風が漏れている火山への入り口に入らなければならない。

 太陽の日差しと熱した砂とは比べ物にならない熱を誇るその空気に、アラムシャザザミは若干の抵抗を覚える。

 しかし、ここから先ならきっと良質な鉱石にありつけ、今以上に甲殻の硬度を高めることができるはず。

 

―そうすれば、あのジンオウガやドボルベルグにも対抗できるかもしれない。

 

 久しく忘れていた危機感と防衛本能を沸かしたアラムシャザザミは、そのまま歩き出す。

 全ては己の身を強め、自然界に生き残る為だ。熱が何ぼのものだ。アラムシャザザミはゆっくりと歩き出し、火山へ続く道へと進んでいった。

 

 

 

―ここから先は、ズワロポスの視点でお楽しみください。

 

 

 

―ドタバタと、熱を帯びて赤くなった蟹が水辺に向かって走ってきた。

 

―蟹が水に身を浸すと、ジュウ、と音を立てて水が少し蒸発した。

 

―しばらくして、また蟹が火山へと歩き出した。

 

―しばらく姿を現さなくなった。

 

―やっぱり火山から出てきて、慌てて水に浸って湯気を上げた。

 

―しばらくして、またまた蟹が火山へと歩き出した。

 

―今度は噛み付いて離さないウロコトルを連れて蟹が出てきた。

 

―水に浸り、身体を冷やす。ウロコトルが零れ落ちて水に慌てるが、しばらくしたら平然と泳いでいた。

 

―また蟹が水から上がって火山へ向かった。ウロコトルは自分の周りを泳いできた。

 

 

 

 しばらく水辺と火山内部を行き来していたが、やっと溶岩から放つ熱に対応することができた。

 ポッケ地域からユクモ地域に流れても適応したほどだが、改めて、彼の環境に対する適応力の高さが解る。

 邪魔なウロコトルを蹴散らしながら、アラムシャザザミは注意深く辺りを見渡しながら、内部を探索する。

 

 すると、どこからかゴロゴロと大きな音を立てて何かが近づいてくるのが解った。

 音の主が放っているであろう地面の揺れも感じており、それが何なのかと周囲を見渡す。

 

 

―ゴヅン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転がって移動していたウラガンキンが何かを踏んだのを察知して振り向いたが、結局気づかずに行ってしまった。

 そんなウラガンキンに踏まれたアラムシャザザミはといえば、その巨体と重量に耐え切れず、地面に埋まっていた。

 この後、アラムシャザザミは無事に抜け出すことに成功したことだけは記しておこう。

 

 

 

―完―




 ちなみに作者は熱めのお風呂より、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かるのが好きです。皆さんはどうですか?

 そんなこんなで火山入り。まずはメラルー親子の感動の再会でした。
 アラムシャザザミは火山に適応すべく色々とやっていました。次回は強化です。

 そして珍しいアラムシャザザミの悲劇。だって相手はウラガンキンだもん。仕方ないよね。
 ドボルベルグもそうですが、純粋なパワータイプを相手にするのは苦手なんです。火山でしっかりと強化させていきます。

 ・・・ここでハーメルンにて怒涛の連続投稿。砂原から火山までの旅路でした(笑)

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