ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

13 / 86
 11/1:文章修正(段落付け・文章一部改定など


第12話「鎧蟹の食いしん坊バンザイ!」

 ウラガンキンが痺れて動けずにいる。

 原因はアラムシャザザミで、防衛本能による咄嗟の麻痺ガス攻撃が原因だ。黄色い濃霧がウラガンキンの周囲を取り囲み、絶えず麻痺毒が充満している。

 その効果は高く、たまたま地中から出てきたウロコトルが痺れて倒れてしまう程。

 

 ……で、肝心のアラムシャザザミはといえば。

 ドボルベルグやディアブロスに勝るパワーと重量感を持つウラガンキンの相手をしたくなかったのだろう。

 しっかりと正面からウラガンキンに睨まれた途端、麻痺ガスを口から吐き、背を向けて逃げていた。

 生き物の持つ武器は、戦うことだけが全てではない。時には逃げるために使われることもある。アラムシャザザミの場合、単に面倒くさいだけなのかもしれないが。

 

 

 

 さて、アラムシャザザミが逃げ続けて数刻後。やっとウラガンキンから逃げ切れたと本能が察したのか、動きが遅くなった。

 安心したとばかりに、いつものようにのんびりと歩きながら、周囲を見渡してみる。

 どうやらここは火口へ続く道らしく、アラムシャザザミがぎりぎり通れるほどの細い坂道が続いている。

 

 しかし、アラムシャザザミにとってそれは些細なこと。なぜならあちこちに鉱石が散らばっており、それをも食すアラムシャザザミからすれば穴場も当然。

 動き回って腹が減っていたのか、すぐさま地面に転がっているそれらを鋏で挟み込み、それを食べる。

 どれもこれも歯ごたえがよく、中には噛み砕きにくいものもあるが、食欲を満たしたいが為に遠慮なく食べる。

 

―ザリ

 

 何か不味いものが口の中に入っていたらしく、奇妙な音が鳴った。

 なんでも食べるアラムシャザザミでもさすがにこれは不味いと思ったのか、それをぽろりと吐き捨てる。

 この茶色い物体は、かつて古代で使われていた武器が地層の奥底に眠り、錆びて変形した物。もちろん現代の技術を用いれば再生が可能で、時には優れた武器が手に入る。

 当然、それら錆びた塊はハンターにとって大変貴重な素材なのだが、この蟹からすれば食べられない物でしかない。

 食べられない物は捨てる。それがアラムシャザザミの選択だ。

 

―全国の鉱山夫ハンターさん、ごめんなさい。この作品は生き物を主点にしております。

 

 それはいいとして、食欲を満たすべく、とにかく食べ続ける。

 この道の細さならウラガンキンは通って来られないだろうし、安心してのんびりできる。

 火山ゆえに時々揺れるのがネックだが、暢気なアラムシャザザミには気になる程度。

 

 

 

―余談だが、もちろん食べている物の中には、お守りという不思議な加護を持つ石が混ざっている。

 

 

 

 そしてアラムシャザザミが火山に適応しかけていた頃。ついにメラルー達が砂原に帰る時が来たのである。

 

 火山でしか手に入らない素材をたんまりと荷物に詰め込み、近辺の村に挨拶をしてから帰宅の準備を始める。

 あの青メラルーも、一ヶ月滞在していれば安定したようで、両親に再会を約束して元気に旅立ったようだ。

 

 肝心のアラムシャザザミを探す為、餌を持って、火山に突入。暑さは砂原で鍛えているから問題は無い。

 フロギィやリノプロスから逃げながら探すこと十数分。目的のモンスターは呆気なく現れた。

 マンドラゴラの匂いに誘われ、アラムシャザザミはメラルー達の前に姿を現し、近づいてくる。

 何事も無く出てきたアラムシャザザミに安心するが、ここでメラルーはある変化に気づいた。

 

 

―なんか、前よりゴツくなっているニャ。

 

 

 もちろん姿がめっきり変わったわけではない。ここ一ヶ月間でちらほらと見かけていたし。

 だが、なんというか甲殻が二割増しで分厚くなっているような気がする。

 ここの良質な鉱石を食らってきたのだろうが、それにしたって反映し過ぎではないだろうか?

 

 そんなことを考えているアイルー達だが、アラムシャザザミは相変わらず。

 好物のマンドラゴラを食べたいが為に、警戒心も無くこちらへと歩み寄ってくる。

 相変わらずなアラムシャザザミにほっとすると、メラルー達は餌を使って誘き寄せる。

 

 

 

 こうして、メラルー一行は火山の仲間に別れを告げ、無事に出発することとなった。

 いつもよりもアラムシャザザミの甲殻が厚くなった分、動きが多少鈍くなっているが、旅に支障無しと気にしないでおく。むしろより頑丈になって強くなった分、安心感が増すというもの。

 意気揚々とマンドラゴラを吊り下げ、アラムシャザザミの脚を前へ進ませるのだった。

 

 

 

 ふと青メラルーが遠くの空を見つめると、そこには分厚い雲と、時節光る雷が見えていた。

 大きな嵐がやってきているらしいが、なんとそこは自分達の帰り道……渓流付近ではないか。

 雲の流れからして、自分達がやってくる頃には嵐が通り過ぎているだろうが、果たしてどうなるのやら。

 アラムシャザザミも自然と歩く速度を落としており、あの嵐に多少なりの脅威を抱いている事がわかる。

 

 

 

―まぁ、なんとかなるだろう。

 

 

 

 それが、空の景色を見た後の青メラルーの見解だった。

 

 

 

―完―




 青メラルー、何気にフラグ。果たして彼らの行方はいかに!?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。