もうそろそろ別離の作業や本編の修正などに手をつけなければならないのですが、まだかかりそうです(汗)
いつも感想や指摘、誤字報告などをしてくれてありがとうございます。
ただ、「こんなモンスター浮かんだ」的なコメントも多く、催促する方も増えてきました。
そういった発言は出来る限り控えてくれると嬉しいです。
リクエストを消化し終え、変異種編を別離するなりすればまた募集するかもしれないので。
11/2:文章修正(段落付け・文章一部改定など
―ふわぁ……暇だなぁ……。
と言っているかのように、ババコンガは欠伸をしながら背中を掻く。
海岸近くの木に背中を預けて座り、海を眺めながら体中を掻く。なんとも暢気な光景だろうか。
ここは旧大陸の最東部にある密林の海辺。太陽の光を受けた植物たちは活き活きとしており、この地の豊かさを物語っている。
程よい湿気が多くのキノコ類を生やし、モスやブルファンゴがそれを食べる姿が多く見られる。
そんな密林に住まうババコンガは、腹を満たし、やることをやり終えたらしく、暇そうにしていた。
このババコンガは中々の強さと大きさを誇っているらしく、ここしばらくの密林全体を縄張りとしている。
つい先ほども、それなりの腕を持つハンター集団を返り討ち、それどころかフンまみれにしてやった程だ。
だからこそこのババコンガは優越感に満ち溢れており、のんびりと過ごしていた。
そんなババコンガが、興味が湧いて身を乗り出すほどの物が現れた。
かなりでかいダイミョウザザミ……オニムシャザザミである。
ここら付近の海域でジエン・モーランの背から降り、海からこの海岸まで上がってきたオニムシャザザミ。
そんな彼は、のっしのっしと歩き続け、この密林の主であるババコンガの横を平然と通り過ぎていった。
警戒心どころか敵対心の欠片ですら見せずに歩くその姿は、ふてぶてしくもある意味での貫禄を見せ付けていた。
ババコンガもそんなオニムシャザザミを見て圧倒的な何かを感じられるが、それ以上に好奇心が疼く。
ババコンガは好奇心が旺盛なモンスターでもあり、興味を持てばちょっかいをかける困り者である。
しかし、流石のババコンガも躊躇はあった。オニムシャザザミに対する威圧感や劣等感などではない。
過去に何度かヤオザミにちょっかいをかけては痛い思いをしてきたからだ。
その辺に生えていたキノコを食べているオニムシャザザミの背中を見つめるババコンガ。
威嚇もなかったとはいえ仮にも己の縄張りを侵しているというのに、ババコンガは悩む一方だ。
いや、ババコンガはオニムシャザザミに対して警戒はしている。ただ。
―触るぐらいなら別にいいよな?
なお、上記の台詞はイメージです。
ババコンガは次へ移動していくオニムシャザザミに続いてゆっくりと歩き出す。
付かず離れずの距離を保ちながら、ババコンガは覇竜の頭蓋骨を見ながら後を付いて行くのだった。
それに気づかずに、食べられる物はないかと適当に歩くオニムシャザザミ。なんと奇妙な光景だろうか。
「黒き神」とも「火山の暴君」とも呼ばれている覇竜・アカムトルム。
亡き者となって頭蓋骨となったとしても、その名に恥じぬ迫力を見せ付けている。
しかし桃毛獣には、そんなの関係ねぇ、と言わんばかりに触りたがっていた。
触りたいのだが……一応はオニムシャザザミを強そうな敵だと認めたのか、警戒して触れようとしない。
一方のオニムシャザザミはといえば、攻撃してこないことをいい事に、旧大陸ならではの大好物を捕食していた。
過去にもここへ来たことがある彼は、キノコと生肉を同時に食べられるモスを気に入っており、積極的に食している。
毒ではなく鋏で一撃死させてあげるあたり、彼なりの弱肉強食が見える気がする。
そしてついにババコンガが動いた。結局触ることにしたのである。
その圧倒的な強さを見せ付ける頭蓋骨を、まずは鼻で匂いをかいで見る。潮の香りがした。
続いては長い爪で小突いてみる。食事に夢中でいることもあって、これぐらいなら気づかれないらしい。
次は眼に当たる空洞に手を突っ込んでみる。何か無いかと手探りで探してみる。
―直後、激痛がババコンガを襲った。
これにはババコンガも、ババコンガの叫びを背後から聞いたオニムシャザザミも驚いた。両者ともにほぼ同時に動いたが、ババコンガの方が早かった。
突っ込んでいた手を引っ張り出し、その勢いで後ろへごろごろと転がっていく。
しかし、もし引き抜くのが遅かったら、オニムシャザザミのバックジャンプヤド突進を受けるところだった。
条件反射も含めて咄嗟の攻撃だったとはいえ避けたのだ。運のいいババコンガだ。
だがババコンガはそれどころではない。今も尚、手を噛み付いて離れない何かを振り払おうと手を振って暴れている。
その何かとは―――クアルセプスの幼生体であった。
不運の事故でヤドに入りっぱなしだった彼は、突然入り込んできた手に思わず噛み付いてしまったのだ。
やがてババコンガのパワーに負けて振り払われたが、その拍子に地面に着地、草むらに紛れて逃げていく。
―この後、このクアルセプスは立派な成体になることをここに記そう。
ババコンガは怒り狂って我を忘れていた。先ほど噛み付いてきたモンスターの幼子を見失い、完全に頭にきたようだ。
こうなったらあのヤド野郎をぶっ潰して……そう思ってババコンガは後ろを向いた。
―アカムトルムのヤドが目の前にあった。
―そして彼は、空を飛んでいき、お星様となったのだ……。
オニムシャザザミの必殺技の一つ……「水ジェットヤド突進」。
高圧縮の水を地面に向けて噴出することで得た推進力で、強力な突進攻撃を生み出す。その威力は、大きなババコンガを空高くまで吹っ飛ばすほどである。恐ろしい。
彼も突然叫ばれたことでビックリした上に、せっかくの食事を邪魔されたこともあり腹が立っていたのだ。
そうなってしまえば、事の発端であるババコンガに攻撃したくなるというもの。天誅、である。
事を終えて周囲を確認した後、また食べる為にあちこちを回り始める。大きくなった以上、胃袋(?)が大きくなるのは当たり前。まだまだ食べる。
とはいえ、食欲の塊であるオニムシャザザミでもイビルジョーのように考え無しに食べるわけではない。
ほどほどにキノコやモスは残すし、雑食性だから様々な物を少しずつ食べるだけで事足りるからだ。
長旅で空腹だった胃袋を満たすことができたオニムシャザザミは、またゆっくりと歩き出す。
今回はキノコを主に堪能したから、次はもう少し質のいい鉱石を食べようというのだ。
目指すは火山、あるいは旧火山。今日もオニムシャザザミはのんびりと歩くのだった。
こっそりと木陰で隠れ、オニムシャザザミの後姿を見る一匹の獣人種の姿があった。
とてとてと、時々隠れながらも、しっかりとオニムシャザザミの後へと付いて行くのだった。
―完―
ちなみに、このババコンガは生きています。落っこちて重傷を負ったけど。
さらにここまで来たクアルセプスの出番はここまでです。立派に育ちます。