ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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以前感想にて色々なご指摘を頂き、「ハンターズギルドを蔑ろにしすぎ」とも言われました。
なので今話からはピクシブとは違う、ハンターズギルドの存在などを織り交ぜた新しい展開となります。
楽しんでもらえれば幸いです。



第21話「鬼鉄蟹と奇面族の生態」

 ワガママ第三王女が行方知れずになって国中が慌てふためいている頃。

 国が慌てる原因の一つであるオニムシャザザミが、近辺の砂漠で何をしているのかというと。

 

―ドヤァ。

 

―ま、参りました・・・・・・。

 

 同種であるダイミョウザザミ相手に縄張り争いをして勝っていた。

 

 太陽の光が降り注ぎガレオス達が悠々と泳ぐ砂漠のど真ん中で繰り広げられる、甲殻種同士の戦い。

 戦いとは言うが、お互いに傷一つ無く、それでいてさほど時間も取らずに終わっていた。

 弱肉強食が掟である大自然の中で生きるモンスター達だが、なにも力ばかりが全てというわけではない。

 いくら生存競争が掛かっているとはいえ、無闇に同族同士が争って種が絶えてしまっては元も子もないからだ。

 かといって縄張りを侵され、食や身の危険が迫ってしまうようではいけない。難しい話だ。

 

 そこでダイミョウザザミが自分の縄張りを賭けてやることが、大きさの競い合いである。両の鋏をこれでもかと言わんばかりに広げ、より大きい方が勝者となる単純な争い方だ。

 ちなみにショウグンギザミは好戦的な性格をしている為、同族だろうが戦うことになる。

 

 で、普通のダイミョウザザミよりも二周り大きいオニムシャザザミが勝利を掴んだ、と。

 

 すごすごと寂しげに立ち去るダイミョウザザミを後に、オニムシャザザミは悠々と食事にありつくのであった。

 まぁオニムシャザザミは放浪癖(?)がある為、すぐに縄張りを返してやるだろう。そもそもオニムシャザザミは、その食欲を満たす為に各地を点々と回っているに過ぎない。

 楽土というお気に入りの縄張りがあったとはいえ、その頑丈な身体と高い適応能力があれば一定の場所にこだわる必要も無い。

 何よりも、今以上に強くなるには各地を回る必要がある。そうオニムシャザザミの経験が語っているのだ。

 伊達で幼少の頃より波に揉まれ、新天地に移り住んで逞しく生きたわけでない、ということ。

 

 もっとも、他者の縄張りに堂々と踏み込む辺り、このオニムシャザザミは意外とふてぶてしい奴なのかもしれないが。

 

 さて、彼の旅路はそんな簡単な理由で始まっている。

 楽土を強者(ハンター)に乗っ取られた以上、より強く、より美味しい物を求めて世界を回る。

 そんなオニムシャザザミだが、最近になって新たな変化が生じた。

 

 

 それが、己の足元でキーキーと鳴いている小型モンスターの存在である。

 

 

 足元を見れば、イャンクックの嘴を被った獣人種・・・・・・小柄なチャチャブーが大量のガレオスの肝を持っている。

 砂竜ガレオスから獲れる砂肝は珍味として有名で、オニムシャザザミの味覚にも見合ったご馳走だ。

 それらが全て血まみれということは、今さっき獲ったばかりの新鮮な物だということ。血まみれなのは倒した後で解体したから・・・・・・だと思いたい。

 チャチャブーはそれを置いて距離を取ると、オニムシャザザミはここぞとばかりに食し、味を堪能するのだった。

 

 このチャチャブーの名はブッチャー。強さを求めオニムシャザザミに付き添う奇面族の子供である。

 もちろんオニムシャザザミはその名を知らない。ブッチャーは人語を話せないし、話せたとしてもオニムシャザザミがそれを理解できるわけがないからだ。

 

 それでもブッチャーはオニムシャザザミに付きまとい、彼に美味しい物を献上してくれる。

 さらにはヤドに巣を作ろうとするランゴスタを追い払ったりするなど身の回りの面倒まで見てくれる。

 

 もちろんブッチャーにも見返りはある。

 オニムシャザザミの行動力と強さは、各地を移動し、様々なモンスターを返り討ちにしてきた。

 いわばオニムシャザザミはブッチャーにとって、移動手段であり用心棒のようなものだ。

 

 だがブッチャーにとって一番の目的が……オニムシャザザミの甲殻の破片である。

 奇面族は様々な物を収集しそれで面を作るという習性がある(例えそれがゴミにしか見えなくても)。

 だからこそ、ブッチャーはオニムシャザザミの甲殻の破片を集めるのを日課としているのだ。

 

 こうして、いつしかオニムシャザザミとブッチャーの間には共生に似た関係を築くことになる。

 ブッチャーとしてはオニムシャザザミを慕っているのだが、肝心のオニムシャザザミは気づかぬまま。

 それでもブッチャーに攻撃を仕掛けない辺り、気に入ってはいるようだ。

 

 

 

「キー、キー!(あっちに行くでヤンス!)」

 

 ぶんぶんと鉈を振り回し、オニムシャザザミに群がるゲネポスを追い払おうとするブッチャー。

 彼らの狙いは食事のお零れ……つまりブッチャーが献上した砂肝の余りを横取りしようとしていたのだ。

 せっかく苦労して集めた物を横取りされてはたまらないと、ブッチャーは張り切って鉈を振るう。

 

 その小柄な体に似合わぬ怪力を目の当たりにしたゲネポス達は呆気なく退散。

 オニムシャザザミの食事も終わったのを見て、ふう、と安堵の溜息を漏らしたブッチャー。

 日差しを避けるために大きな岩の陰に移り、二匹は一休みすることに。

 

「お~」

 

「・・・・・・キ?」

 

 気づけば、ブッチャーの隣にはオニムシャザザミを見上げている少女がいた。

 小柄な体でありながら多くの荷物が入っている巨大なリュックを背負い、暑さから身を守る為に外套を纏っている。

 手には空になったクーラードリンクの瓶がもたれているが、肌は汗でぐっしょりと濡れていた。

 

 ブッチャーは何度か人間・・・・・・ハンターを見たことがあり、彼らの強さや習性もある程度は理解している。

 しかしこのような小さく細い人間は初めてみた。なので興味が沸き、じーっと見つめることに。

 

「や、やっと見つけたのじゃ・・・・・・大きいのぉ」

 

 少女はゼェゼェと荒い呼吸を繰り返しながら、しかし報われたかのように笑みを浮かべて見上げている。

 ここに来るまで、相当な苦労をしたのだろう。こんな広く暑い砂漠を練り歩いていたのだから当たり前だが。

 

 やがて、少女は糸が切れた操り人形のように日陰の中で倒れこみ、ブッチャーを驚かす。

 ブッチャーは恐る恐る倒れた少女に近づくが、顔を見て納得した。寝息を立てて寝ていたのだ。

 

(なんでヤンスか、コイツは……?)

 

 ハンターやモンスターのように襲いかかるわけでもなく、勝手に倒れた小柄な人間。

 敵意が無いからと攻撃はしないが、得体の知れない生物に首を傾げるブッチャーであった。

 オニムシャザザミといえば、我関せずとばかりに日陰で昼寝を始めていた。

 

 

 

―これが、ワガママな第三王女とオニムシャザザミとブッチャーの出会いなのであった。

 

 

 

一方その頃、そんな第三王女の王国は何をしているかといえば。

 

「オニムシャザザミの位置はまだ掴めぬのか!?」

 

「現在、王女様探索隊はドスガレオスに襲われているとのこと!ネコート殿を経由に、ハンターに依頼を発注しておきます!」

 

「そんなことよりも国内の防衛対策を整えるのだ!ありったけの兵を城壁に集めろ!」

 

「何を言う!王女の無事が最優先であるぞ!」

 

「オニムシャザザミを討ち取ったというハンターからの返事はまだか!?」

 

「そんなことよりこんがり肉食べたい」

 

「ダメだこいつ早くなんとかしないと・・・」

 

 周囲の騒々しさと慌しさに、セバス=チャスゲンは眉間を揉む。

 

 過去に一度、楽土を追い出されたオニムシャザザミがどうやってかこの旧大陸に渡り、好き勝手に行動していた時期があった。

 これといった縄張り意識を持たないオニムシャザザミは自ら攻撃するような事はしないし、好んで何かを破壊したりするわけではない。

 だが彼の被害は、通る為に邪魔な障害物……街や建物をいくつか破壊する事はあった。地形が悪かったといえばそこまでだが、この王国もその例外ではない。

 

 なにせ城の後ろには巨大なオアシスがある。そのオアシスの存在に気づき、水を欲して王国にやって来たモンスターは多い。

 その度にハンターギルドに依頼し、ハンターに撃退または狩猟してもらっていたからこそ、今まで大きな問題にはならなかった。

 

 しかし今回は違う。旧大陸でも有名なオニムシャザザミがこの城に向けてやって来るのだ。

 そのオニムシャザザミの対応だけでも慌てる要因になるのに、さらに追い討ちをかけるようにして王女が失踪。

 騒動という騒動に拍車をかけ、今のように城内が慌しくなっている、というわけだ。致し方ないことだろう。

 

 とりあえずその要因を一つでも解消しようと、同僚達を落ち着かせるべく、セバスは大声を発する。

 

「静かにせぬか!姫様の捜索ならワシが行くから」

 

「お待ちください」

 

 その落ち着いた声に、セバスが大声を上げたにも関わらず周囲の人々は声の主を探す。

 声のした方角・・・すなわちセバスの方へ部下や将軍の視線が向かうが、セバスは違うといわんばかりに首を振る。では誰が待ったをかけたのだろうか?

 

「ここです、ここ。セバス殿の足元です」

 

 先ほどと同じ声がするが、周囲は何故足元なのかと困惑し、全員が視線を下に落とす。

 そこにはコートのようなものを着込んだ一匹のアイルーが居た。周囲の殆どが「誰?」と首を傾げる中、セバスは強張った顔を崩す。

 

「おお、ネコート殿、よく来てくださいましたな」

 

「噂の甲殻種が再び現れた他、国の一大事となれば黙ってはいられませんからな」

 

 セバスはネコートにあわせるようにして屈み、言葉を交わしつつ握手をする。

 一方で周囲の人々は、ネコートという名に小さな衝撃を受け、小さく声を交し合う。

 

 ネコート・・・・・・ポッケ村でよく見かける、上位のクエストを依頼してくれる謎の多いアイルーだ。

 所謂「表向きには言えない頼み」を多数依頼しており、ハンターズギルドに深く関わっている奇妙な存在である。

 ネコートはこの国との関わりも深く、現在絶賛行方不明中の「第三王女」との繋がりもそれなりにあるという。

 いわば第三王女のワガママの原因の一つとも言えなくもないが……ハンターズギルドとしても国相手には迂闊に逆らえない、ということだろう。

 

「ところでネコート殿、待ってくれとは……」

 

「オニムシャザザミはまだ砂漠にいるので、本腰の為の時間稼ぎはできるはず」

 

 そういってネコートは椅子から机へと跳び移り、失礼と理解しつつも、机の上に広がる周辺を記した地図を凝視する。

 そしてオニムシャザザミが出没しているという砂漠に手をあて、皆の注目を集める。

 

「まず、捜索隊の邪魔になるであろうドスガレオスを狩るハンターを雇い、ついでにオニムシャザザミを監視するようお願いしています」

 

「ついででオニムシャザザミの監視を?」

 

「王女様はオニムシャザザミを探しに行くとあったので、必然的に砂漠に足を運んだことになります。オニムシャザザミとドスガレオスが同一エリアに出没しても可笑しくありません」

 

 確かに、とセバスが頷き、遅れて周囲の者達もネコートの解説を静かに聞く。

 

「あの王女様のことですから、オニムシャザザミに接近する恐れもある。ならドスガレオス討伐と同時にオニムシャザザミを観察し、王女の姿を発見次第調査団に伝えるようにしておくべきです」

 

「そして王女捜索隊の包囲網も広げておくと・・・なるほど、ドスガレオス掃討だけでなく、自由に動ける視点も用意しておくわけですな」

 

 捜索隊は捜索活動に専念しているとはいえ、モンスターに対する自衛能力が無い他、団体行動故に自由度は低い。

 ハンターならフィールド外に出ない限り自由に行動できる為、ひょんなことから王女を見つけられる可能性も高い。戦う力もある為、下手をすれば捜索隊以上に期待が持てる。

 とはいえ、ハンターは己の命を守る為に全力を尽くして戦うのだ。王女を見つけたからといって救出に手を回せるかといったら怪しいだろう。

 だからこそ、王女の救出ではなく、周囲の情報収集に力を貸してもらう。これだけでもハンターと捜索隊に対する難易度はグッと下がるだろう。

 

 ハンターはドスガレオスとその群れの掃討、捜索隊は王女の捜索にあたる。

 両者の肝となるのは「オニムシャザザミと王女の情報収集」。それを理解できるだけの判断力を求めることになるだろう。

 

「既にドスガレオス掃討の依頼を受けたハンターと会いましたが、腕と経験は確かです。私が保証します」

 

「ありがたい。では私達はオニムシャザザミ撃退の依頼を発注しましょう」

 

「承りますニャ・・・いえ、承ります」

 

 気恥ずかしそうに言い直すネコートに和んだのか、先ほどの慌てぶりが嘘のように朗らかに笑う人々。

 というのも、人は具体的な案が纏まればすんなりと行くものだ。率先する内容が一つ減れば、次の案を進めることができる。

 

 

 

―では続いて、オニムシャザザミ撃退と国の防衛、それぞれどのハンターを雇うかを検討する。

 

 

 

―完―




ネコートさんって本当に謎が多いですよね。
第三王女様も謎が多いですよね。一度酷い目に合えばいいのに(コラ)
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