ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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ダリー・ドドル・ミラージャの出番は前回で終わりです。噛ませじゃないよ?
それにしてもドドルとミラージャのデートの様子が見たいというもの好きな方が居て驚きです。
……頑張れダリー超頑張れ(ホロリ)
年末という事でアワアワしていて雑ですが、どうかご了承ください。うちは物語進行優先ですので。

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第25話「ハンターVS鬼鉄蟹、再戦!」

―オニムシャザザミが王国に近づいてくる。

 

 足止めを任されたハンターが城に帰還してそう伝えると、国はオニムシャザザミの来襲を国民に伝えた。

 モンスターを詳しく知らない国民達はオニムシャザザミに身の危険を感じ、急いで避難を開始する。

 そんな国民を誘導しつつ、城ではオニムシャザザミに対する緊急会議が開かれていた。

 

 ここまで早急な対応が出来たのも、全てはセバスとネコートのおかげとも言えよう。

 両者ともにある意味で似通った信頼を受けており、前者は経験豊富な執事として、後者はハンターズギルドの中で最も繋がっているからだった。

 セバスは執事でありながら、元ベテランハンターとしての知識と経験というアドバンテージがある。

 その知識故に第三王女をあのような子にしてしまったという汚点もあるが、国王は彼の提案を待った。

 王女捜索も重要なことだが、今は国の危機だ。オニムシャザザミの対策を優先するべく、国王はどんな対応を取るのかと尋ねた。

 

 そしてセバスは、国王と将軍達に答える。最初から食料で誘き寄せると考えていた将軍達にとって、驚きの答えを。

 

「この事態を想定して、事前にオニムシャザザミを討ち取ったというハンターを呼んでおきました」

 

―そして、彼らは招集された。

 

 彼らとは、ユクモ地方において伝説の域に達している名高いハンター二人組の事だ。

 ユクモ地方の霊峰に出没した古龍・嵐龍アマツカグツチ、そして鬼鉄蟹オニムシャザザミを討ち取った強者として。

 女の名はアザナ、男の名はカリガ。二人とも旧大陸出身ではあるが、若くして新大陸に乗り込み、実力を持ってして富と名声を手に入れたハンターだ。

 今は楽土の所有者として、多くの商人や学者達から収入を貰っている身分だという。しかもセバスが聞いた「ある噂」によると……。

 

 王国前の、城門へと続いている山脈にそびえ立つようにして建っている砦の前に、三つの人影が立っていた。

 門番も見張りも今はここにはいない。超巨大モンスターを迎え撃つ為のこの施設に立っている一般人はそうは居ないからだ。

 

 さて、砦の前に立つ三人の内の一人は、王国専属ハンターにして第三王女直属の執事・セバス。いつもは執事服を着込んでいる彼だが、今は違っていた。

 かつて彼がハンターを務めていた頃、長年愛用していたというモノブロXシリーズを着込んでいる。

 ポッケ村の専属ハンターとして幾多ものモノブロスとその亜種の激闘を繰り返した、謙虚な彼が唯一誇れる証だ。

 

 もう一人はアザナ。オニムシャザザミを撃退した、凛々しくも美しい女ハンター。ちなみに未だに胸が増量ty(略)

 装備しているのは優雅な蒼天シリーズだが、その手に持つハンマーだけは違っていた。

 過去に鬼鉄蟹の素材を研究した工房が、この度の撃退によって得られた素材によって作られた最新武器なのだ。

 オニムシャザザミの甲殻を余すことなく注ぎ込んだハンマー……その名も【オニゴロシ】。硬度による防御力と切れ味の長さが自慢だ。

 

 最後にカリガ。アザナのパートナーにして、細めでありながら身長2mを越える大柄なハンター。

 ゴールドルナシリーズを着こなし、やはりオニムシャザザミの素材で出来た大剣を手にしている。

 加工困難と思われた金属質の甲殻を削り、刃としての機能を見出した傑作だ。名は【オニギリ】。

 

 そんな彼らが砦の前で何をしているのかというと。

 

「なんと、ご結婚の噂は本当でしたか。おめでとうございます」

 

「……改めてそう言われると恥ずかしいんですが」

 

 セバスから祝言を貰い、それをカリガが恥ずかしそうに返す。これからオニムシャザザミがやって来るというのに暢気なことである。

 しかしアザナは、蚊帳の外と言わんばかりに仁王立ちで構え、まっすぐと前を見ていた。

 相変わらずの無表情だが、うっすらと喜びがこみ上げている。宿敵を待つ狩人の目だ。

 

 オニムシャザザミを楽土から撃退してしばらく経った後、アザナとカリガはめでたく夫婦となった。

 なったのだが……アザナもカリガも、ハンターを辞めてはいない。

 楽土の収入がありながらハンターを続けるのは、オニムシャザザミの存在だった。

 「完全に討伐するか体が限界を迎えるまで辞めない」と言ったアザナと、それに再度惚れ込み、今もなお相方として付いて行くことを決めたカリガ。

 

 こうして二人は、夫婦でありながらハンターを続けているという、奇妙な二人組とも噂されるようになった。

 そんな噂を聞いていたセバスは、年寄り故か、若き夫婦を盛大に祝おうとお節介を焼きたくなったのだ。

 

「では私がお世話になったポッケ村で式を挙げませんか?落ち着いていて静かな、私も大好きな村ですのでオススメですぞ」

 

「いえ、ですから今はそんな話は……」

 

「来たぞ」

 

 しかしそんなセバスのお節介を余所に、凛としたままのアザナは二人に声を掛けた。

 徐々に大きくなっていく振動を感じ取った三人は、肉眼でその姿を確認することができた。

 微かに見えるほどに遠い地面からボコリと出てくる紅い巨体。間違いなくオニムシャザザミであった。

 

 地中から這い出てきたオニムシャザザミには多少ながらも焦げやひび割れが残っている。

 ダリーというハンターからの情報によれば、王女がヤドに居ると解っていながらも、追い出しを狙って爆弾を使ったという。

 アザナとカリガはともかく、彼女の執事であるセバスは気にしていない。

 

 一番の理由が

 

「爆弾如きでどうにかなる姫様ではございませんからの」

 

 ……と笑って言ってのけた執事を三人が見た時は、どこか達観したようなものを感じたそうな。

 

 ところで何故地中に潜行していたオニムシャザザミが砦の前に出てきたのかお解りだろうか?

 ドドルとミラージャの二人組の方が先に砦に到着したから……ではない。ネコタクといえども間に合わなかったのだ。

 

 その理由は、アザナ達の先に置いてある物―――オニムシャザザミの好物とされるキノコ類の山があるからだ。

 これは事前にアザナ達が依頼を受け、セバスと相談していた時に、もしかしてを考えて提案された案だ。

 オニムシャザザミは甲殻種の癖に匂いに敏感で、空腹時となれば一目散に食べ物のある場所に向かう習性もある。

 いくらオニムシャザザミといえども、鉱石ですら見つからない山脈では食べ物に困る事もあるだろう。

 

 というわけでオニムシャザザミは真っ先にキノコの山へと向かい、アオキノコやら特産キノコやらを食べ始める。

 目の前にハンター――それも楽土で戦った強豪―を前にしても遠慮無しの食いっぷり。流石オニムシャザザミだ。

 

 しかしこれも計算の内。その様子を見たアザナとカリガはセバスに顔を向け、セバスが頷く。

 そしてハンター夫婦を差し置いてセバスが走り出し、オニムシャザザミへと向かっていった。

 

 

 

 その頃、第三王女とブッチャーは。

 

「ぜー、はー……い、息ができるとはこんなにも素晴らしかったのか……」

 

「キ、キキィ……」

 

 髄骸骨でいう目に当たる空洞から顔を出し、新鮮な空気で深呼吸していた。

 地中を潜行していても奇跡的に土や岩がヤドの中に流れてくる事はなかったが、息が物凄くしにくかった。

 これで第三王女は、当たり前にあるような物でも凄く大事なんだなぁ、と学んだのだった。

 

「姫様―!」

 

「む?」

 

 ふと聞こえる声。ブッチャーはしきりに周囲を見渡すが、王女は声が聞こえた方角からして下だと判断し、見下ろす。

 そこには厳つい鎧に身を纏い、火竜から作れたガンランスを背負っている男が手を大きく振っていた。

 一見だけなら誰なのか解らないのが基本だろうが、第三王女は違っていた。

 

「……おお、そこにおるのは爺ではないか!?おーい!」

 

 ぱっと嬉しそうな表情を浮かべ、応じて大きく手を振る第三王女。

 王女の視力の高さによる判別もあるが、王女は一度セバスにせがんで装備姿を拝んだ事があるのだ。

 

「姫様ぁー!今の内にそこから降りてくだされー!」

 

「嫌じゃー!」

 

 余りの即答に、二人の事情を知らないはずのブッチャーがズッコケる。第三王女の爽やかな笑顔が眩しいぜ。

 ことさらワガママと反骨精神は立派な第三王女を説得するのは至難の技だ。親しいとされる爺やことセバスでも例外ではない。

 しかしセバスは、今回限りのとっておきの切り札があった。

 

「オニムシャザザミを撃退しにきた伝説級ハンター殿が来ておりますぞー!それも二名も!」

 

「で、伝説級ハンターじゃと!?」

 

 さっそく食いついてきた。そしてセバスはトドメを指す。

 

「今なら近いところから観戦できますぞ!さぁ私の所まで降りてきてくだされ!」

 

「行く!降りる!待っておれ爺よ!」

 

 といって飛び出す事はなく、ロープを使って慎重に、しかし素早く降りていく第三王女。

 さすが何度も城から飛び出て身勝手に探検しているだけの事はあり、少女とは思えぬ行動力と体力を持つ。

 するするとヤドから下っていき、最後は適度な距離からセバスに向けてダイブ。

 対するセバスはこれを両手で軽々と受け止め、オニムシャザザミから距離を取るために王女を脇に抱えて走り出す。

 

「姫様、私も含め、城中の皆が心配しておりましたぞ?」

 

「心配かけてすまなかったな。しかし楽しかったぞ!」

 

 反省はしているが、それ以上に楽しかった。セバスの額から汗を垂らさずにはいられなかった。

 姫のこういう素直さは子供ではあるが、自分が迷惑をかけているという自覚も(少なからず)あるというから困り者だ。

 

 それはさておき、とセバスは立ち止まって翻り、王女を地面に降ろす。

 その先に見える光景を見て興奮したのか、王女は嬉しそうに目を輝かせ、子供のようにピョンピョンと跳ね始めた。

 これを見たセバスは、仕方ない、とばかりに肩を竦める。彼にとって王女は大事な上司であり、可愛い孫も当然なのだ。

 

 

 王女にとって生まれて初めての―――本格的な狩猟を目の当たりにするのだから。

 

 

 二人のハンターが武器を持って身構え、キノコを食べ終えた甲殻種がハンターに向かい合う。

 両者は武器を握る手に力を込め、オニムシャザザミは強豪を前に鋏を打ち鳴らし防御姿勢を取る。

 アザナの表情は凛としつつも口角が釣り上がっており、カリガもヘルムの下で獰猛な笑みを浮かべる。 

 知ってるか?笑みって元々は攻撃的な意味なんだぜ?今の二人がその例だ。

 

 

 

―いざ、再戦の時!

 

 

 

―完―

 




グダグダですみません(汗)機会をみて修正なりしたいと思います。
とりあえず今の目標は、年末までに王女編を完結させたいなぁ……!

あ、ちなみにブッチャーはまだヤドの中にいます。

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