バルテド「先手必勝!ズガーン!」
三人「なにやってんのー!」
バルテド「反省はしてる。けど後悔はしていない(キリッ」
三人「ざけんな戦闘厨」
けどモンスター相手に先手を取るハンターは多いと思うんだ!(言い訳)
2/10:サブタイトル修正+誤字修正(ガラダとバルテドの名前が入れ替わっていた)
かつて見習い(という名の雑用)だった頃のガラダは、鍛冶屋の親方にこう問いかけた事がある。
「親方、どうしてモンスターの素材で造った防具には力が湧くんだべ?」
加工されたパーツを手に取って黙々とレイアSヘルムを組み立てる親方の背を、ハンターとなった今でもハッキリと覚えている。
陸の女王と呼ばれる雌火竜リオレイア。その甲殻や鱗から作られた防具を纏った者は、凄まじい生命力を得るとされる。
モンスターの素材で造られた防具は、どれもこれもが不思議な力を宿し、ハンター達に個性的な力を与えることが出来る。
しかしそのメカニズムや仕組みは未だハッキリしておらず、職人の技と経験が問われる、ということしか解かっていない。
だからこそガラダは聞いてみた。どうしてモンスターの素材で造られた武器や防具には力が宿るのか。
そして親方は、振り向くことなくこう言った。
「見てりゃわかるようになる」
ただそれだけしか言わず、黙々とレイアSヘルムを組み立て、布を縫い上げていく。
親方の後ろからその作業を眺めていたが、一つ一つの手作業がとてもスムーズで、無駄がないように思える。
今思えば、あの素早い作業は経験や理論の問題ではなく、「見てりゃわかるようになる」ものなのだろうか?
しかしそれは、人の作業や物の構造を指しているようには思えなかった。親方という人物を知った自分なら、そう思えた。
何を見れば解かるようになるのか。それが鍛冶見習いにして見習いハンターのガラダが今でも思っている疑問だった。
忘れているようだが、討伐クエストと採取クエストでは目的が違う。
上位以上になると採取ツアーでもモンスターが出没することがあるが、大抵のハンターはそのモンスターを相手にしないだろう。
立派な防具が欲しい為にモンスターを多々狩るハンターが多いだろうが、忘れてはならない。ハンターとは決してモンスターを殺す職業ではないのだ。
個体数調整の為の狩猟はもちろん、必要以上の殺傷を控え、大型モンスターの目を掻い潜って必要なものだけを採取する事だって立派な仕事だ。
故に、憤怒したエスピナスを前にフィジク達の取る行動は・・・・・・。
「フィジク、採掘終わったか!?」
「オッケ!」
「じゃあ次は私ね!」
三人は怒るエスピナスを誘導し、その隙に一人が防御姿勢のままでいるオニムシャザザミから採掘する。
怒ったエスピナスは確かに強いが、それを相手にする必要は無い。今回の狙いはただ一つ・・・ザザメタルの回収にあるからだ。
ここで納品だけと言わないのは、彼らもまたザザメタルの採掘が目的だからだ。一つでも多く採取しようと躍起になっている。
最新鋭と噂されるオニムシャ武器であったり、未だ開発されていない防具の為の貯蓄であったり、単に金儲けであったりと、四人それぞれの野望がある。
その為にはエスピナスをオニムシャザザミから遠ざける必要がある。採取中に邪魔されたり、エスピナスを恐れて逃げてしまってはたまらないからだ。
なので、現在はラメイラがピッケルを持ち、残るフィジク・バルテド・ガラダの三人がエスピナスに対峙する。
エスピナスが採掘中のハンターに気をとられないよう、戦闘の原因は自分達ではないので不本意なことだが、武器を手にして戦いながら誘導する。
もちろん目的は狩猟ではないので、ひきつける程度に攻撃を仕掛け、逆に攻撃されそうなら即座に納刀して逃げる。
こうしてラメイラはピッケルで確実にザザメタルや甲殻を採掘していくのだが……またしても。
「キー!キーキー!」
「ふごっ!?」
オニムシャザザミから降りてきた奇面族の子ブッチャーが、助走の勢いで頭から突っ込んできたのだ。
これを横っ腹から受けたからには、か弱い(?)ラメイラは吹っ飛ぶしかなかった。
「ああもう!しつこいわね!」
吹っ飛んでも流石はハンターか、すぐに体勢を建て直し、ブッチャーを追い出そうと片手剣を振るう。
持っていた杖で防ぐも、ブッチャーは再び杖を振り回して突進、ラメイラと戦闘を開始する。
先ほど採掘したバルテドやフィジクもそうだったが、このブッチャーがしつこいのなんの。
バルテトはこのブッチャーに対し狩猟笛で応戦、見事スタン状態にして気絶させることに成功した。
バルテトの採掘が終わりフィジクと交代した途端、ブッチャーは復活し、今度はフィジクに勝負を挑む。
最初は状態異常弾で黙らせようとするが効果がなかったので、通常弾で吹き飛ばし、脱退させることに成功。
そしてラメイラの番となり……またしてもブッチャーが戻ってきて妨害に入る、というわけだ。
タダでさえ頭にかぶっている鳥兜のような仮面が硬いのに、ここまでタフで回復力が高いとも思わなかった。
モガ村の年季の入った専属ハンターから、二匹の奇面族の子に助けられてばかりいたと聞いたことがあったが……奇面族は子の方が強いのだろうか?
とにかく、ブッチャーは杖を我武者羅に振ってオニムシャザザミから近付けないようにしている。
防御しながら地道に攻撃する片手剣とは相性が悪いのか、片手シールドを構えて防御しているしかなかった。
そこへ。
「よいしょっ!」
―ゴゲンッ!
「ギッ!?」
掛け声と、鈍い金属音と、奇面族の断末魔。
目の前のブッチャーと背後で暴れているエスピナスばかりに気を取られていたからか、さらにその後ろにいた存在に気づけなかったようだ。
フラフラとして最後に突っ伏して倒れたブッチャーを見てから、防御の姿勢を解き、その打撃音の正体を知った。
「ガラダ君?」
「ごめんよチャチャブー君……あだだ、コイツめっさ硬いっぺなぁ……」
ハンマーを片手で持って肩に掛けながら、もう片方の痺れている手を振るガラダの姿。
直に後方を見れば、怒り暴れるエスピナスの周囲を走り回るバルテドと、遠くから狙撃するフィジクの姿。
牽きつけている方は問題ないようなのでホッとしたが、ラメイラは直にガラダを見て、メッと小さく注意した。
「援護は嬉しいし、確かにこのチャチャブーは手ごわかったわ。けど私でもなんとかなるし、自分の与えられた役割はしっかりしないと」
叱る様はまるで姉のようだが、気の弱いガラダは「す、すみません」と咄嗟に謝ってしまう。
咄嗟とはいえ、エスピナスを牽き付けるという役目も重要だと理解はしていた。だからこそ怒られても仕方ない。
しかし、この助けは失敗を呼ぶことになる。エスピナスがオニムシャザザミの前にいるガラダとラメイラに目をつけてしまったのだ。
オニムシャザザミの存在などただの岩だと思っているかのように二人に釘付けで、そこに敵がわかると知って走り出す。
「ちょ、こら!待ちやがれ!」
「二人ともそっち行ったぞ!」
エスピナスを追いかけるバルテトとラメイラ達に忠告するフィジク。どちらが適切な判断かは一目瞭然だろう。
エスピナスは追いつけないバルテトなど気にする事なく、慌てふためいているガラダとこちらを睨むラメイラに向けて突進する。
「こっち!」
「へぁっ?」
慌てている人は強引に引っ張った方が良い。ラメイラはガラダの手を引き、咄嗟に動き出す。
動き出した先は後方。オニムシャザザミの背後に回り込み、エスピナスの突進を受け止めてもらおうという魂胆だ。
肝心のオニムシャザザミはといえば防御姿勢のまま。直撃は免れない状況であり……。
―ドゴンッ!
強烈な音が周囲に響き渡る。
大型モンスター同士の激突は音だけでなく振動をも引き起こし、周囲の鳥が驚きのあまり一斉に飛び立つほどだ。
ラメイラとガラダは耳を塞ぎ衝撃から身を守り、遠くから見ていたフィジクとバルテドは目を丸くした。
オニムシャザザミは微動だにせず、エスピナスは鼻先の角を折って地面に伏した。
エスピナスの象徴でもあった角がポッキリと折れているだけでも重大だが、それだけではない。
力なくグッタリとした様子からして、どうやら頭の骨か首の骨にヒビが入ったようだ。
古龍種に生存競争で打ち勝ったとされる、下手をすれば火竜よりも強大とされる飛竜・エスピナス。
全身に生えた棘と重厚な甲殻に覆われたその体から繰り出す突進は、鎧竜グラビモスとは違ったパワーを示すのには充分。
オニムシャザザミはそれに耐えるどころか、エスピナスの角と骨をへし折った。
しかもその突進を受け止めたにも関わらず、軽く地面にめり込み、鋏の表面に僅かなヒビ割れを残しただけ。
それでもオニムシャザザミは心配なのか、鋏の間から触覚を伸ばし、凭れ掛かっているエスピナスに触れて確かめようとしている。
重厚過ぎる身体と甲殻、それに見合わぬ度を越えた心配性。
鉱石を取り込み防御に防御を重ね、鉄壁という二つ名に相応しい頑丈な身体を手に入れた。
竜を越える鋼鉄の身体。甲殻種故の雑食性により生き延びた生命力。世界の広さを知ったからこその臆病さ。
噂に違えぬその性質と身体を、ガラダはその背後から見ていた。焼き付けるようにして目撃した。
ゾワゾワする。なんて硬いんだ、なんて重いんだ、なんてこうも臆病であり続けるのか!
その頑丈な甲殻を―その大きな鋏を―その分厚い全身を―その臆病すぎる性質を―――。
―どうすれば、防具として再現できるのだろうか。
「ちょ、こらまてオニムシャ!逃げるなっての!」
「っ!?」
バルテトの声と同時に思考に浸っていたガラダが動き出したのは、一種の本能だったのかもしれない。
オニムシャザザミが地中へ潜ろうとしているのを見た瞬間に手が動き、懐にしまっていたペイントボールを投げつけたのだ。
地中に姿を消す寸前にペイントが命中。臭気と煙だけを残してオニムシャザザミは地中へと潜っていく。
後に残されたのはハンター四人と、気絶しているエスピナスとブッチャーだけ。
幸いな事に今のエスピナスは力なく伏せているが、回復するのは時間の問題だろう。ブッチャーは未だに目を回しているが。
ハンター達にとっての今の問題は、これからどうするのか、である。
「よくやったよガラダ。さて、これからどうしようか?」
「オニムシャザザミの噂を考えると……既に遠くに逃げてしまっているかもね」
フィジクの問い掛けに対し、ラメイラは残念そうな顔をして答える。
オニムシャザザミを事前に調べていた彼らは、彼(?)が再びこの狩猟地に見えることは難しいのではないかと推測する。
依頼目的であるザザメタルの個数も揃っているし、今回は諦めた方が良いのでは・・・そう考えていたのだが。
「まだいるはずだす!探すっぺ!」
その考えに至らず訴えるのが、ガラダだった。
「ちょ、今日は随分と張り切ってんなぁガラダ」
いつもなら自己主張を控えるはずのガラダの気迫に思わず身を引く三人だが、それでもバルテトは感心したように言う。
それにガラダの言う事は正しいようで、嗅げばペイントの臭気がまだ漂っているのが解かる。
「驚いたな……オニムシャザザミの事だから、てっきりこの場から逃げ出しているものかと・・・」
「エスピナスが気絶したことで、今この場に居る頂点があいつに入れ替わったから余裕が出たとか……?」
「いや単に腹が減ってたんじゃねーの?」
―――ありえる。
「とにかく探しに行くだ!まだ採掘できるかもしんねぇべ!」
必死なガラダの訴えに三人は無言で頷き、四人は脱兎の如く走り出す。未だに目を回しているブッチャーを置いてけぼりにして。
「何かが……何かが解かる気がするんだべ……!」
ハンターとしても、鍛冶屋を目指す者としても。己の道を見出せるような何かを、あのオニムシャザザミは持っている。
其れを理解したいが為に、ザザメタルを欲している自分がいる―――いや、オニムシャザザミを知りたい、が正しいか。
―今ここに、オニムシャザザミへの挑戦者が増えた瞬間だった。
―完―
元祖オニムシャザザミ挑戦者は巨乳ハンターことアザナさん。今は休養中。
そしてオニムシャザザミの犠牲者の一匹がまた増えました。哀れエスピナス。
決してエスピナスが弱いわけでないのでご安心ください。スタンしたようなものです。