覇種とG級の強さの見解などはあくまで作者の妄想です。あしからず。
というか作者にもいまひとつわかってません。長く生き延びているから強いってぐらいしか……。
この世には、想像もつかない力と体格を持つモンスターが多数存在している。
それこそ、人間が決して敵わないと思わせるほどに凄まじい見た目を持つモンスターが多い。
逆に見た目や声の変化により威嚇し、身を守るモンスターもいる。灯魚竜チャナガブルや彩鳥クルペッコがその一例だ。
そんな見た目の中でも一番解かりやすいのは、やはり体の大きさだろう。
大きい体は武器にもなり、圧倒的な体格や質量は防御にも攻撃にも適用できる。さらに敵が小さければ小さいほど、その差による一撃はより重くなる。
老山龍ラオシャオロンや砦蟹シェンガオレンが齎す被害を考えれば納得できるだろう。彼らは歩くだけでも害を及ぼすのだ。
小さな動物達にとって、大きな動物とはいるだけで脅威として捉えられる。そして大きな動物は小さな動物を容易く捻じ伏せる。
そう、身体が大きいモンスターとは、一種の勝利条件なのだ。
オニムシャザザミは生まれて始めての危機感―――絶体絶命のピンチとやらを覚えた。
4人のハンターに楽土を追い出された時や、ユクモのディアブロスに襲われた時など屁ではないほどのピンチを味わっている。
逃げようにも逃げ切れず、自慢の防御力が通用しない。いつもなら勇敢なブッチャーですら、ヤドの中の隅で震えていることだろう。
彼は今、灼熱の光注ぐ大砂漠のど真ん中で、ある巨大なモンスターに襲われていた。
名はオディバトラス―――通称「弩岩竜」と呼ばれる、セクアーヌ砂漠に出没する飛竜種だ。
オディバトラスはアカムトルムやウカムルバス同様にワイバーンレックスの骨格を持ち、飛竜種であることが疑わしい程に凄まじい巨体を誇る。
その巨体に見合う食欲はイビルジョーに匹敵するほどの環境破壊を齎し、獰猛な性格はあらゆる獲物と障害物をまとめて喰らい尽くすという。
噂ではこのセクアーヌ砂漠は太古の昔にオディバトラスが暴れまわった影響も一因しているとあり、その脅威が古龍に匹敵するのが解る。
そんなオディバトラスにとって、ダイミョウザザミよりも大きいオニムシャザザミはご馳走そのもの。見た事も無いモンスターだが、獲物には違い無い。
なんでも食らうという顎でオニムシャザザミのヤドに噛み付いてはいるが、骨とはいえ元は覇竜と呼ばれる強者の頭だ。
中々歯が通らないが、それでも亀裂は走っている以上、頭蓋骨と殻が割れるのは時間の問題だ。
食べられる部分を食べる為にヤドと甲殻を噛み砕こうと力を込め、逃げようともがくオニムシャザザミを手で押さえつけている。
対するオニムシャザザミは、オディバトラスがアカムトルムのヤドに噛み付いている為に身動きが取れないという事態に陥っている。
しかもオディバトラスは身体の下半分を砂に入れることで固定しており、オニムシャザザミはもがこうとも砂を掻き分ける程度に終わってしまう。
ここしばらく砂漠を放浪していたからか高圧水ブレスも使えず、蓄えている毒も麻痺も睡眠もオディバトラスには通じない。自慢の鋏も背中には届かない。
こうしてもがいている間にも、奇跡的にオディバトラスの噛み付きに耐えているとはいえ、ミシミシという嫌な音が徐々に大きくなっていく。
これをピンチといわずなんとするか。このままではヤドを破壊され、自慢の甲殻を噛み砕いて食われてしまう。
しかもこのオディバトラス、オニムシャザザミが遭遇したこともない『覇種』と呼ばれる分類に当たる。
もう駄目だと思われた―――その時。
オディバトラスとオニムシャザザミの動きが止まった。
オディバトラスは顎に込められていた力を維持するように止め、オニムシャザザミは振り回していた鋏と足をピタリと止める。
まるで石像のように動かないのには理由がある。それは動きを止めざるを得ない「何か」を感じたからだ。
その原因は、二匹の頭上を飛び交い、二匹の前に降り立った。
二匹が感じている「何か」とは、人間でも測れるような「感覚」―――生命の危機と強者の気配だ。
二匹は目の前に降り立った飛竜らしきモンスターの気配に『怯え』、その気配から感じ取れる絶対的な差を前にして『警戒』しているのだ。
そんな謎のモンスターを前にして、最初に動き出したのはオニムシャザザミ。
甲殻種特有の防衛本能がフル稼働したからか、なんとアカムトルムの頭蓋骨を捨てるという強引な手段を見出したのである。
弱点である柔らかい身にブッチャーがしがみついており、「なんじゃこりゃー!」と言わんばかりに叫んでいる。お気の毒に。
そしてオニムシャザザミは未だ動きの無いオディバトラスと謎のモンスターから逃げるように地中へ避難。軽くなった為か、潜行速度も上がっている。
次に行動したのはオディバトラス。謎のモンスターがゆっくりとこちらへ向けて歩き出している。
オディバトラスは銜えていた頭蓋骨を捨て、巨躯を支える前脚をばたつかせ、謎のモンスターに向けて砂上を泳ぎだす。
弩岩竜、それも覇種たるプライドなのだろうか。ただならぬ気配とプレッシャーを前にしても怯むことなく、吼えながら向かってくる様は勇敢さですら垣間見る。
何倍もの大きさを誇り、自然環境を破壊したとさえ言い伝えられる巨躯の飛竜種―弩岩竜。
砂上の楼閣の異名を持つ巨大なモンスターが口をあけて襲い掛かる様は、まるで岩山が命を持って怪物となったかのよう。
砂の津波を起こしながら大口を開けて迫る弩岩竜。
それを前にしても、黒い竜のようなモンスターは微動ですらせず弩岩竜を紅い眼で睨み続けていた。
冒頭でもあったが、巨躯とはそれだけで武器となる。圧倒的な質量は攻撃にも防御にも役立ち、巨大な腕や脚はそのまま筋力となって攻撃力と安定性を増す。
しかし、それだけが全てというわけではない。自然界に置いて身体の大きさなど、多種多様な能力の内の、一種の利点でしかない。
世の中にはいるのだ。目で見て解る力ですら凌駕する、目には見えない不可解な力というものが。
オニムシャザザミが砂漠から逃げ出した頃―――オディバトラスは死んだ。
その赤い巨躯はより赤く染まり、頑丈だった甲羅は卵の殻のようにボロボロと崩れ落ち、破片という名の残骸が砂漠の上で広がっている。
砂上の楼閣は崩れ去った。完全なる崩壊という名の死を持って。その残骸は月明かりに照らされ、奇しくも鮮やかな赤を彩っていた。
そんな赤の残骸の頂上には黒い影が居た。
月光を余すことなく受け止めようとしているかのように黒い翼を広げ、月に向かって首を伸ばす。
そして咆哮――月まで届かんばかりの咆哮は、遠くの砂漠に居るアクラ・ヴァシムやディアブロス達に恐怖を植え付けていた。
対して黒い竜の傷は少ないが、あの巨躯を前に僅かな傷となるとおかしい。腕による一撃を受けたとしたら怪我どころではないはずだから。
しかしこの黒き竜―――通称「刻竜」に常識など通用しない。少なくとも人間が築き上げた「常識」など、力を持ってねじ伏せられるのがオチだ。
そもそもこの黒き竜には名前がつけられていない。それだけ解明されている情報が少ないのだ、この黒き
あの巨躯をボロボロになるまで打ちのめし、覇種という選ばれた生き残りを無残な死体に変貌させる。
それでも、この世界から見れば
伝承であって欲しかった生物、大自然をも凌駕しかねない強大な敵……それこそ『G級』の世界は果てしない。
―それでも挑む気があるというのなら……越えていけ。『G』の世界へ。
ちなみにオニムシャザザミはといえば。
―――旧大陸怖いマジ怖い。
なお、上記の台詞はイメージです。
オニムシャザザミは(可哀相な)ダイミョウザザミから奪ったモノブロスの頭蓋骨を背負い、走っていた。
弩岩竜にUNKNOWN……広い旧大陸の『G』の実力者達を前に、暢気だった性格が打ち消すほどの恐怖を抱いていた。
完全にビビリになってしまったオニムシャザザミは、こんなところ出て行ってやる!と言わんばかりに地を走っている。
ブッチャーも二匹の気に当てられたのか、ヤドにしがみついたまま気絶してしまい、今はモノブロスのヤドの中で震えていた。
何はともあれ、オニムシャザザミは休まず走る。覇種とG級の世界から逃げ出し、生きてそこに挑戦する為に。
人間が挑むように、いずれはこの蟹も『G』の世界に挑む。それは遠いようで、実は近い道のりのようだ。
―完―
オディバトラスですら噛ませ犬化させるUNKNOWNマジ鬼畜。
ブッチャーは完全に空気。まぁ舎弟キャラなんてそんなもんだよね?(コラ)
そして次回より舞台はバルバレへ!
旧大陸からバルバレへ移動する為にまた人間が絡んできます。申し訳ありません。
同時投稿「モンスターハンターデルシオン」もよろしくお願いします。IFとして最終的な目標を掲げてます。