主に【我らの団】がメインになっていると思いますが、ご了承ください。
うちの【我らの団】は凄いんだぞ!てな事を書きたかった(コラ
地底洞窟にてオニムシャザザミとテツカブラ(ついでにブッチャー)が正面衝突するより前の事。
オニムシャザザミが狂竜ウィルスに犯され、以前とは裏腹に攻撃的になってしまった理由を記すとしよう。
その為には時間、正確に言えば一週間ほど前に遡る必要がある。
―――
その日の夜は風も雲もなく、漆黒の夜は星と月で美しく飾られ、海原は静かに波打っていた。
そんな大海原の上で、【我らの団】とオニムシャザザミ、そしてブッチャーを乗せたイサナ船がゆりかごのように小さく揺れる。
イサナ船はオニムシャザザミの重みで沈まぬよう気球を膨らませており、この浮力も加わって波の影響を減らし、より静かな時を過ごせるようになった。
そのおかげもあってか、【我らの団】全員がマッハで眠ることができた。
夜の船旅な上に大型モンスターが甲板に居るというのになんて暢気なのだと思われるかもしれない。
彼らは確かに楽観的ではあるが、決して旅を侮っているわけではない。
イサナ船がゴア・マガラの強襲にも耐え切ったという経験があったからこその信頼もあるが、それとは別の理由もある。
団長は伊達や酔狂で各地を旅しておらず、その経験と旅路は彼という人物を固める「スタンス」を生み出したのだ。
彼のスタンス―――それはどんなことが起こっても受け止め対するという覚悟と余裕だ。
旅をするということは、一つの場所に留まらないこと。一つの場所に留まらないということは、一つの常識に囚われないということ。
世界を旅する以上はあらゆる危険性が生じる事を考慮しなければならない。予想外など日常茶飯事だ。
だからこそ団長は、如何なる事態に陥ろうともそれに対処できるだけの図太い神経と判断力を備えている。
事実、【我らの団】が今のメンバーになる以前から数多の危機を乗り越えてきた。ハンターが入ってきてからも、そうであり続けた。
備えもあるとはいえ、ハンターを含めた【我らの団】は、そんな団長を心から信頼している。その突拍子な行動に戸惑うことも沢山あるが。
―故に
「蟹は今も大人しいし、波も風も静かで、潮の流れに乗っているから寝ていてもいいだろ。……よし、全員就寝!」
「ラジャー!」
団長の掛け声に対し看板娘が元気良く返事をしたと同時に解散。各自納得した上で眠りにつくのだった。
一応、筆頭オトモが起きているのだが……彼は船酔いで随分と苦しんでいる為、アテにはできないだろう。
さて、そんな蟹ことオニムシャザザミは、月が天頂に座す頃になって目を覚ました。
彼にも睡眠欲というものがあるが、身を丸めて眠っている中、ふと目を覚ましてしまう。
何事かと触覚を揺らしてみれば、ヤドである巨大な貝から音が響いていることに気づく。
巨大な貝の頂上では、ブッチャーが杖を振るいながら踊っていた。
杖を振るう際に生じる遠心力を無視するかのように、緩急をつけた鋭角的な動きで踊る。
小さく飛び跳ねたりしながらも、自身の鳥兜風の仮面や巨大貝を、杖の先端でカッ、カッ、カッと叩き付けながら音を奏でる。
これはブッチャー曰く「元気を出せよダンス」らしく、船に乗り込んでからずっと踊っている。
彼もオニムシャザザミ同様、オディバトラスや
頭が悪いと自覚しているものの、彼も立派なチャチャブーだ。それなりに賢いし、それなりに理解力もある。
ついていくと決めたオニムシャザザミよりも強い存在が居ることを知り、もっと強くなれるということを理解したのだ。
彼らに出来て自分達に出来ないことはないはずだとブッチャーは思っている。いつまでも怯えているわけにはいかない。
だからこそ「元気を出せよダンス」でオニムシャザザミを元気付けようと一心不乱に踊っている。
いるのだが……それがオニムシャザザミに伝わるかといえば、とても怪しい。
むしろ絶対に伝わってない。哀れブッチャー。
そんなこんなで音の正体が解ったオニムシャザザミは安堵しようとし―――再び周囲を見渡す。
それも慌しく右へ左へ、時には後ろへと振り向くなど、先ほどとは慌て具合が異なる。
ブッチャーは慌てて貝に掴まるが……どうやらブッチャーはオニムシャザザミが狼狽する理由が解ったらしく、周囲を慌しく見渡す。
―そして、それは飛来してきた。
闇夜の彼方から、夜空の星を覆い隠すような漆黒が降りてきた。
降りてきたというよりは、墜落してきたという表現が正しい程の速度で。
そして水面が激しく波打つほどにスレスレの所で曲がり、墜落時の速度を保ったまま突進して行く。
―オニムシャザザミに向かって。
―ドゴン
加速を保ったまま突進してきたことで、オニムシャザザミはもちろん、イザナ船に大きな衝撃が走る。
その衝撃は激震という形で【我らの団】に襲い掛かり、即座に反応を示す者がいた。団長である。
「みんな起きろ!」
目覚めて早々渇を入れるその姿は、先ほどまでグースカと寝込んでいたのが嘘のよう。
その一喝を耳にした【我らの団】はすぐさま目覚め、眠気を振り払いつつ動き出す。
加工屋や問屋爺はともかく、幼いナグリ村の娘や看板娘ですら、慌てはすれど若干の冷静さを持って行動している。
腹痛が完治したのか、我らの団のハンターも自身が持てる最上級の装備と武具を急いで身に纏う。
―筆頭オトモ?そこで船酔いでダウンしていますが、なにか。
混乱を避けるべく必要最小限の指示を各自に飛ばした後、団長は危険を承知で甲板へと向かう。
こうして周りが急いで事態を収拾しようとする間にも、団長はこの船の異変を肌で感じ取り、頭の中で整理していた。
轟音と衝撃、その直後に襲いかかった大きな揺れ、そして浮遊感――――これだけでも想像できる出来事は三つ。
一つ目は、何かが飛来してきたということ。
仮にこの海域に潜む大型モンスターだとしたらその前兆……水面の揺れが激しくなるなどして目を覚ますだろう。
ここで飛来だと判断できるのは、先ほどの凄まじい衝撃。恐らくはオニムシャザザミにぶつかったのだろう。
海からの突進だとしたら勢いが足りないが、逆に高高度からの突進だと考えれば妥当である。
よって飛竜種の中でも特に飛行能力の高い火竜か、もしかすると黒蝕竜という可能性も考えられる。
二つ目は、オニムシャザザミが海に落ちたということ。
イサナ船に襲い掛かった揺れは二度あった。恐らく一度目は飛翔物体からの突進、二度目は突進を受けたオニミシャザザミによるものだろう。
飛翔物体はイサナ船に体当たりを仕掛けたつもりだったのだろうが、その結果がオニムシャザザミに激突し、海に落ちたのだ。
この考察が正しければ、三つ目はイサナ船が浮遊していること。
超重量級のモンスターが甲板から海に落ちたことで、気球の浮力を持って海面から空へ上ったのだろう。
ドアノブを握り、冷静になるべく一瞬だけ握る手に力を込めた後、勢いよく扉を開く。
その先にあったのは……。
「―――――――――何も、いない?」
イサナ船の甲板には、何も無かった。
いや、無かったといったら嘘になる。無かったのは団長が予想していたような強敵だ。
そもそも、『無かった』のではない。……『居なくなった』のだ。
―――甲板上に微かに漂う黒い鱗粉……これが、居なくなった者の正体を克明に現していた。
時は、イサナ船が襲撃されて何日か経過した頃。とある岬にオニムシャザザミとブッチャーが上陸してきた。
落ちた地点から岬までの距離はさほどなかったらしく、水平線から浮かぶ朝日が赤い全身を照らす。
そんな2匹の身体からは、黒い靄のようなものが微かに溢れ出ていた。
陸に上がるや否や、其の場で我慢できないとばかりに暴れ出し、その辺の岩を壊しにかかる。
そしてその黒い靄―狂竜ウィルス―を頼りに、あるモンスターが飛来してくる。狂竜ウィルスの根源である、黒蝕竜ゴア・マガラが。
目の前で降り立つゴア・マガラを前に、黒い靄に侵食されたオニムシャザザミとブッチャーは闘争心を燃やし、迎撃に移る。
この時の戦闘の様子は省かせてもらうが、凄まじい物だったと記しておこう。
結果的に言えば、ゴア・マガラが負傷を負って離脱、オニムシャザザミがそれを追うようにして走って行った。
そして現在は、近接することが多かった為か狂竜ウィルスをより多く吸収し、その状態のまま地底洞窟に辿り着いたのだ。
そんなことを言っている間に、地底洞窟で行われた鬼同士の決闘が決着。
無惨に殴り殺されたテツカブラを四足で踏み締め、オニムシャザザミが勝利を祝うかのように鋏を振り上げていた。
背負っている頭蓋骨の上では、狂竜ウィルスを振りまきながら血まみれブッチャーが祝いのダンスを踊る。
そしてその二匹の上を、巨大な翼を持って飛行するゴア・マガラが飛び交い、目の前に着地する。
その姿を確認するや否や、オニムシャザザミは「やんのかコラ」と言わんばかりに鋏同士で打ち鳴らす。
―再び、激戦の時来たれり。
―完―
穴だらけな考察ですね解ってます(涙)頭のいい文章が書けるようになりたいです。
次回、ゴアVSザザミ、お楽しみに!……あ、ブッチャーも頑張れ。