実況はワタクシ、通りすがりのクンチュウが解説いたします。
皆さん揃ってシャガル化やら甲殻パージやらと急かしすぎです(苦笑)
ゴア・マガラ―――バルバレギルドが確認した、かつて謎だらけだとされていた大型モンスターの名だ。
しかし近年になって大半の謎が解明され、ゴア・マガラの生態や特性が徐々に把握されていくようになった。
後に狂竜ウィルスと呼ばれる、黒蝕竜の最たる特徴である「モンスターを凶暴化させる黒い靄」の正体。
狂竜ウィルスである鱗粉を使った感知能力の高さと、自ら狂竜ウィルスに汚染されることで強化する狂竜化現象。
そしてこの黒蝕竜の正体が判明するのだが……それはまた後ほど記すとしよう。
ゴア・マガラの戦闘はその狂竜ウィルスを用いた攻撃方法も多数存在しているが……それだけが全てではない。
高い飛行能力や攻撃性などといった純粋な戦闘能力の高さも、ギルドが古龍種の線を引こうとした理由の一つだ。
もちろん狂竜ウィルスを用いたブレスや粉塵爆発などの高火力攻撃もある為、動きを見切ったからと安心はできない。
オニムシャザザミは、そんなゴア・マガラと地底洞窟で争いあっていた。
オニムシャザザミにとってこの対決は二度目である。
一度目はバルバレ地方に上陸して早々に遭遇した時。あの時のゴア・マガラは長距離飛行による疲労もあって早々に逃げ出したが。
それでも戦闘を行ったのは事実で、取っ組み合った事で密着状態が続き、大量の狂竜ウィルスを吸収する羽目となった。
その結果、オニムシャザザミとブッチャーの戦闘は大きく変わった。
滞空していたゴア・マガラが着地し、息を吸う。鱗粉による粉塵爆発を狙っての行動だ。
しかしオニムシャザザミは見逃さない。距離はあるが構うものかと走り出し、ヒビが入った分厚い鋏を盾に突っ込む。
ゴアの口から幾多もの爆発が起こり、その反動で後方へ飛ぶ。爆煙はオニムシャザザミを包み込んだが、彼は健在。
そのまま構えていた鋏を振り回すが、ゴアは反動で飛ぶ中で翼を羽ばたかせることで、オニムシャとの距離を広げる。
滞空しているとはいえ届かないわけではない。そのままゆっくりと上昇するゴアを前に、オニムシャは四脚に力を込めて跳躍。
ゴアを頭上から踏みつけようとするが、それを易々と受けるほどマヌケではない。身を捻る事で避け、超重量の身体は地面に激突する。
陥没するほどの落下速度と重量を持ちながらオニムシャザザミは身を起こし、飛行するゴアを追いかけるようにして走る。
飛来したまま距離を取ろうとするゴアだが、突如として背中から微かな痛感が走る。
体躯の都合上ゴアは背中を見る事は出来ないが、その背にはなんと子供のチャチャブーが張り付き、杖でポカポカと殴っているではないか。
狂竜ウィルスに侵されている事もあり、その杖の一撃はかなりの威力を誇る。無論ゴアにとっては問題ではない。
しかし鬱陶しい事この上ないので、振り落としてやろうと高度を落とし、そのまま急上昇。宙帰りを狙う。
そこをオニムシャザザミは逃さない。高度が下がるのを見て急停止し、狙いを定め、急上昇と同時に口から麻痺毒の液を発射。
直線を描くように勢いよく射出された黄色い液体は、その勢いを保ったまま(ブッチャーごと)ゴア・マガラの背に命中。
水鉄砲を意識した攻撃故に水を多く含んでいた為、ゴアを麻痺させることは叶わなかったが、それでも墜落させることには成功したようだ。
若干の痺れを誤魔化すようにもがく中、毒性に耐性を持つブッチャーはゴアの背に立ち、身震いして水気を払う。
そのままブッチャーは背から首、首から頭へと移動して杖で殴ろうとするが、その前にゴアが起き上がる。
再び眼前で対峙するオニムシャザザミとゴア・マガラ。黒いオーラを撒き散らす中、ブッチャーはオニムシャへと走り、彼のヤドによじ登る。
このように、大人しいオニムシャザザミにしては執拗に攻撃を繰り返している。
対するゴアもオニムシャに蓄積された狂竜ウィルスに刺激されたのか、今もなおオニムシャザザミを敵と認識している。
互いに討ち取る気満々、といった雰囲気を、殺意にも似た黒いオーラが克明に映し出していた。
しかし、二匹の戦いは更なる境地へと向かう。
ゴア・マガラのもう一つの特徴として「狂竜化状態」というものがある。
黒い鱗粉を目印にする特殊な感覚器官を持ち合わせるが、このウィルスはゴア・マガラ自身にも影響を齎す。
感知能力がピークに達する頃には、ゴア・マガラの更なる脅威が猛威を振るう事になる。
オニムシャザザミは多種多様な食物を摂取しており、その中には鉱石類も含まれる。
摂取した鉱石は体内で混ざり合って新たな甲殻として滲み出るのだが、その中には多種多様な護石も含んでいる。
この護石はオニムシャザザミが興奮状態になると反応を示し、様々な恩恵を与えることができるのだ。
地底洞窟がより濃い漆黒の世界に変わるとき、二匹に変化が訪れた。
―ゴア・マガラに一対の角が生え、翼脚の爪が展開。六本脚の魔物へと変貌する。
―オニムシャザザミの甲殻に混ざる大量の護石から淡い光が溢れ出し、全身を点々と光らせる。
『狂竜化状態』となって黒い靄を広範囲に広げるゴア・マガラは咆哮を轟かせ。
護石によってオレンジ色に変色したオニムシャザザミは、鋏を擦り合わせて不快音を発する。
ここからは、ただ力と力がぶつかり合うだけだ。
ここで一手上回るのがゴア・マガラだ。
ゴア・マガラは狂竜化すると翼脚の爪を展開し、翼としてではなく、第5・第6の脚として機能させる。
この一撃が凄まじく、後ろ脚で身体を持ち上げ翼脚を叩きつける事で地面を陥没させるほどだ。
そしてオニムシャザザミは相変わらずの弱点を抱えている。
弱点である背を隠すために背負っている頭蓋骨。これはオニムシャザザミ並に大きな物でないといけない。
そして両の鋏は背中に届かず、もしこの頭蓋骨に張り付こうものなら、潜る以外の選択肢は決定打にならなくなる。
で、ゴア・マガラはその弱点を突こうと背を目指して迂回する。
当然オニムシャザザミは阻止しようと旋回するのだが、向こうは助走により滑空、上から仕掛けてきた。
再び跳躍しようと四肢に力を込めるオニムシャザザミだが、跳ぶより早くゴア・マガラが突っ込んできた。
超重量の身体は滑空しながらの突進にも耐え切ったが、ゴア・マガラが六つの脚を駆使して引っ付こうと躍起になる。
張り付いてくるゴア・マガラをどうにかしようと身を振ったり鋏を振り回したりするが、ゴア・マガラは離れようとしない。
前脚と後ろ脚でしっかりとオニムシャザザミの胴体にしがみ付き、その間は翼脚でヤドを殴りつける。
翼脚の力もあるが頭蓋骨の硬度もそれなりにあるらしく、なんとか持ちこたえている。どうやらこの頭蓋骨は上位種のものだったようだ。
それでもこのまま殴られれば粉砕されるのは時間の問題だろう。オニムシャも、ゴアを追い返そうと杖を叩きつけるブッチャーも必死だった。
跳ねたり体を揺らしたりして振り払おうとする蟹と、それに必死にしがみ付いて殴り続けるゴア・マガラ。まるで乗り状態だ。
だが、どうにもならないことはない。
ここは地底洞窟のエリア8。広い空間と、壁のように聳える高い崖がある場所。
それに気づいたオニムシャザザミは、バック走行で崖へと向かう。そのままぶつけてしまおうという魂胆なのだろう。
それに気づかないほどゴア・マガラは馬鹿ではない。頭蓋骨を殴っていた翼脚の翼膜を広げ、壁にぶつかる寸前に飛来。
オニムシャザザミは気づきながらもそのまま直進。壁に激突し、頭蓋骨ごと背面が岩の壁にめり込んだ。
ゴア・マガラは巨大な翼を広げ、その様子を伺っているかのように滞空していた。まるでオニムシャの行動を怪訝に思っているかのように。
そしてオニムシャザザミは―――地面を鋏で砕きながら、地中へと逃げ出す。
弱点である背部を攻められている以上、狂竜ウィルスに侵されているオニムシャザザミも防衛本能を働かざるを得ない。
では最初からそうすればと言うかもしれないが、狂竜ウィルスによる性格の変化は著しいし、引っ付いたままでは上手く潜行できない。
その為には一度ゴア・マガラを自身から切り離す必要があり、だからこそ自ら崖に激突する必要があった。
その甲斐あって、オニムシャザザミは無事にゴア・マガラから逃げ出したのだった。
ゴア・マガラは発達した感知能力で探し出そうと翼を広げ、より高空へと舞い上がる。
この一時間後にオニムシャザザミの捜索が無駄足だと理解するのだが……狂竜ウィルスを広くばら撒けた為、それは省く。
このゴア・マガラが地底洞窟に現れた噂と報告がバルバレギルドに届き、警告を発令。
ハンターを向かわせた頃には別のフィールドに移動した可能性が高まり、全バルバレギルド所属ハンターに通達を送ることになった。
さらに【我らの団】の報告により、旧大陸にて確認されていたオニムシャザザミがこのバルバレ地方に辿り着いたことが発覚。
ゴア・マガラの再来とオニムシャザザミの襲来。
バルバレギルドにとっての悩みの種が二つもやってきたと聞き、お偉いさんは頭を抱える事となった。
今ギルドにできることは、二匹の更なる情報を収集することぐらいだ。
―完―
まだ続くんじゃよ。とりあえずシャガル化やらウィルス克服やらはもう少し先です。
しばらくはオニムシャザザミのバルバレ散策が続きます。各地にウィルスをばら撒きに。
焦らしすぎ・さっさと対決してくれという方、申し訳ありません(汗)
次の目的地:原生林(の予定)